シリカ測定器の原理とは?モリブデンブルー法と測れる範囲、洗浄・校正の注意点

水分析計とセル、樹脂製採水容器を示した生成イメージ

シリカ測定器は、水中のシリカを試薬で発色させ、その光の吸収から濃度を求める分析計です。代表的なモリブデンブルー法では、酸性で生成した錯体を還元して青くし、吸光度を測ります。

数値を正しく読むには、何を測る方法か、反応に必要な時間、試料やセルの汚れを区別することが重要です。シリカの性質から発色の仕組み、洗浄と校正、現場での確認順まで整理します。

目次

シリカとは

シリカは二酸化ケイ素SiO2を指す名称で、自然界では石英などとして存在します。水の分析では、ケイ酸やケイ酸イオン、微粒子など、ケイ素を含む成分の形と測定方法を合わせて考えます。

身近な乾燥剤のシリカゲルも、シリカを利用した材料ですが、水中のシリカが全てゲルの粒子であるという意味ではありません。水源の地質や処理の状態によって含まれる量や形が変わるため、実際の水を調べます。

水の硬度は主にカルシウムとマグネシウムに関する指標であり、シリカ濃度とは別の項目です。軟水や硬水という区分だけからシリカの量を推定せず、水質分析ではそれぞれの値を確認します。

水が蒸発して成分が残る設備では、残った水の中で成分が濃縮し、付着物の原因になることがあります。ボイラーの水質管理では、給水、ボイラ水、蒸気など、どこを測る値かも重要です。

シリカなどが関係する付着物は伝熱や流路へ影響し、設備の効率や運転の安定性を損ないます。スケールとスラッジの違いを押さえると、水質の値と設備の点検結果を結び付けやすくなります。

冷却塔でも、循環水の濃縮を管理する際は、水源と設備に合った成分の監視が必要です。冷却塔の濃縮倍数の管理と、シリカという個別成分の測定を組み合わせて評価します。

図1:物質の形による分類と、試薬へ反応する範囲は同じではない

呼び方何を区別するか測定時の注意
溶存シリカ所定のろ過などで分けた溶存側ろ過条件や分析法と合わせて値を読む
コロイド状シリカ微細な粒子としての存在形態反応性シリカ計で全て測れると扱わない
反応性シリカ所定条件でモリブデン酸へ反応する成分反応条件が変われば対象範囲にも影響
全シリカ非反応性の成分も含めて評価する対象必要な前処理・別分析を指定する

溶存と反応性を同義にせず、単に「シリカ」とだけ記した数値を異なる方法間で比較しません。

モリブデン酸に反応する成分を測る比色法では、非反応性シリカをそのまま測定できません。ろ紙を通る非反応性の成分もあるため、ろ過だけで全てが反応性シリカになるわけではありません。

IAPWSの2024年版計装ガイド3.2.2では、非反応性シリカの比色分析に、アルカリと加熱する前処理を求めています。通常のオンライン計の値と、この前処理を含むオフライン分析の値を区別します。

濃度はmg/Lやμg/Lで表し、結果がSiO2としての値か、Siとしての値かも記録します。1mg/Lは1000μg/Lなので、単位を読み違えると、同じ数値表示でも濃度に大きな差が出ます。

管理値には測定位置、設備の圧力や方式、水処理の条件があり、一つの濃度を全設備へ適用することはできません。JIS B 8223:2021は現行の有効な規格で、陸用ボイラと船用蒸気ボイラの給水・ボイラ水・蒸気の質を扱い、設備に対応する区分を使います。

蒸気タービンへ送る系統では、蒸気側のシリカが付着物と流路の性能へ影響するため、その監視も検討します。ボイラ水の値と蒸気の値は別の測定対象なので、採取位置と管理目的を仕様へ明記します。

シリカ測定器の原理

モリブデンブルー法では、酸性に調整した試料中のシリカとモリブデン酸の反応を利用します。初めに生じる黄色系の錯体を、還元剤で青色の錯体へ変え、その吸光度から濃度を求めます。

アスコルビン酸は還元剤として使われる例であり、酸を加えれば何でも青くなるという反応ではありません。酸性条件を作る試薬、妨害を抑える試薬、還元する試薬は役割が異なり、添加順も分析法の一部です。

図2:酸性での錯体形成と、還元による発色を分けて考える

試料+酸性の反応試薬錯体形成後に妨害抑制還元剤を添加モリブデン酸と反応黄色系の錯体青色の錯体シュウ酸を使う例

HORIBAの原理例に沿う概念図。酸性での錯体形成→妨害抑制→還元の順を示します。分量、温度、反応時間、添加順は採用する分析法に従います。

共存するリン酸などもモリブデン酸と反応するため、方法に応じて妨害を抑えます。たとえばシュウ酸を使う方法がありますが、別の方法の試薬や操作を組み合わせず、指定手順を一組で使います。

発色液へ光を通すと、濃度に応じて透過する光の強さが変わり、検出器がその変化を読み取ります。測定波長は方法と装置で異なり、HORIBAの公開原理資料には約830nmを使う例があります。

したがって測定波長を全機種共通の600〜800nmと決めず、装置の測定法と仕様に合わせます。見える青色を目で比べる方法ではなく、決めた波長と光路長で、基準となる光との比を測る仕組みです。

図3:光源・セル・検出器で、透過した光の比を測る

光源発色液のセル検出器I₀I
光の比から吸光度へ
A = log10 I0I
(例)A = log10 10050 = log10 2
A ≒ 0.301
A:吸光度(無次元) I0:基準の光強度 I:透過光強度。同じ単位の任意の光強度で比を示した例。濃度は検量線から求めます。

吸光度は濃度そのものではないため、濃度が分かる標準液を同じ方法で測った検量線と対応させます。測定範囲を超えた発色を、そのまま濃い試料の濃度として外挿すると、正しい結果が得られなくなります。

低い濃度を測る場合は、試薬や洗浄水にもともと含まれる成分の寄与が相対的に大きくなります。ブランクを測って背景を扱うことと、既知濃度の標準液で感度を確かめることを区別します。

据置形の分析計では、採水、試薬の計量、発色、測光、排出や洗浄を、自動で繰り返します。オンラインで運転を監視できますが、試料が瞬時に発色して、現在の濃度を絶え間なく直接読む方式ではありません。

持ち運ぶ比色計や試薬キットは、採取した試料を決められた手順で測る用途に使います。低い濃度の監視や複数点の自動測定など、用途に合う測定範囲、周期、保守の条件を選びます。

シリカ測定器の注意点

安定した測定には、試料、試薬、反応条件、光学部が、分析法で定めた状態を保つことが必要です。高い表示が出たときは水質の変化だけでなく、採水や発色、光路の状態も順に調べます。

濁りや気泡、試料自体の色は、発色による光の吸収とは別の影響を測定へ与えます。採取条件や前処理を勝手に変えず、方法が想定する試料と、現場の水の状態を合わせて扱います。

計測時間がかかる

試料へ試薬を入れても、反応が所定の状態に達するまでには時間が掛かり、すぐに測ることはできません。手動の計測ではタイマーを使い、添加の順番と待ち時間を、試料ごとにそろえます。

反応時間は方法や温度で変わるため、別のキットで覚えた待ち時間を、そのまま使わないことが大切です。温度が低い試料を急いで測ると、発色の進み方の違いを濃度の差と誤って読む原因になります。

メーカー仕様でいう測定時間と測定周期も別で、反応に必要な時間と、次の値が出る間隔を分けて見ます。たとえば測定時間5分の装置でも、設定した周期や複数の採水点の切替えによって、同じ点の更新間隔は変わります。

図4:画面の更新より前に、配管の搬送と反応の時間がある

採水配管内を移動分析部へ採取表示更新搬送・置換反応・測光洗浄・次回待ち

図の長さは時間の比ではありません。配管容積、流量、測定周期、多点切替えを合わせて応答を評価します。

現場から分析計まで長い配管があると、採水した水が計器へ届くまでの時間も加わります。測定時刻だけでなく、どの時点の水を反映する値かを考えると、運転操作とのずれを整理できます。

複数の点を切り替える計器では、前の試料が残ると、次の点の値へ影響する場合があります。切替え後の置換、流量、測定開始の条件をそろえ、点名と結果の対応も記録します。

上位の監視盤へ値を送る場合は、4-20mAの濃度信号が何を表すかを明らかにします。測定中や校正中に前回値を保持する方式では、値の更新時刻と状態も合わせて見ることが重要です。

セルやチューブの洗浄が必要

光が通るセルの面に汚れや液滴があると、試料の発色以外でも透過光が変わります。測光面の状態を保ち、手動計測ではセルの向き、表面の付着物、気泡を測定の前に点検します。

セルは全てガラスと決めつけず、測定波長や装置に適合する材質と光路長のものを使います。採水容器と光学セルも用途が異なり、低濃度シリカの採水では、容器からの混入に配慮した指定容器を使います。

清浄な光学セルと樹脂製採水容器を示す写真風イメージ
吸光度測定を表す生成イメージ。液の色を実試料の濃度や合否の証拠には用いません。

洗浄には、分析法や装置で指定された洗浄液と、十分に低いシリカ濃度の水を用います。単に純水という名称だけで選ばず、低濃度の測定に使える水かを、ブランクなどの管理と合わせて確かめます。

据置計ではセルだけでなく、チューブ、試薬の供給部、混合部、排液部も保守の対象になります。液が流れているように見えても、試薬の不足やチューブの劣化で、所定の反応条件が失われることがあります。

図5:自動分析計は、光路と試薬・排液の両方を点検する

試薬の残量・保存定量供給・混合セルの光路排液容器詰まり・漏れ・満水

試薬供給→セル→排液の点検位置を示し、採水系や全試薬の配管は省略しています。装置ごとに構成は異なります。停止・隔離・保護具・排液処理は、取扱説明書と使用試薬のSDSに従います。

試薬と洗浄液の交換周期は、測定の頻度、試薬の保存条件、装置の方式によって異なります。全機種共通の60日などと決めず、採用する装置の交換条件と、開封後の有効期間を管理します。

酸や還元剤を使うため、補給、洗浄、排液の作業には、各試薬のSDSと装置の手順が必要です。指定外の薬品を混ぜたり、運転中の高温・高圧の試料配管を開いたりせず、所定の手順で停止して隔離します。

保守後は見た目の清浄さだけで終えず、ブランクと標準液など、指定された確認を行ってから測定へ戻します。測定中・校正中・異常の接点信号も利用し、保守中の値を正常値と誤認しないようにします。

測定値を水質管理へ生かす確認順

測定を始める前に、採取する場所、結果の単位、測定対象の形、管理値を同じ一覧へまとめます。オンライン計と手分析を比較する場合も、同じ採取点と時間、同じ対象範囲の方法で比べることが基本です。

ボイラ水の濃度が上がった場合は、給水の状態と、濃縮に関係する運転を合わせて調べます。ボイラーのブローは濃縮した水を排出する管理ですが、測定誤差や水処理の不具合を残したまま設定だけを変えません。

蒸気側の変化を調べる際は、水滴の同伴と、成分が蒸気へ移る挙動を含めて原因を整理します。プライミングとフォーミングも関係するため、分析計の数字と運転履歴を対応させます。

ブランクと標準液で、測定系の変化を分ける

ブランクは試料や試薬、光学系の背景を扱うためのもので、何を入れた液かは方法で異なります。何も入れない水を使えばよいと考えず、試薬ブランクと試料ブランクなどの指定を区別します。

標準液は、濃度が分かる液を測って、装置と反応が所定の応答を示すかを確かめるために使います。正常な試料の過去値だけを基準にしていると、実際の水質と計器の感度が同時に変わった場合に原因を分けられません。

標準液の濃度と単位、調製や開封の日付、保存条件は、試薬の記録と合わせて管理します。計測器の校正と記録の残し方も参考に、試薬や容器の履歴と測定の状態を対応させます。

異常時は最初から校正値を大きく直すのではなく、液量、試薬、光路、ブランク、標準液の順に状態を調べます。原因を残して校正だけで合わせると、一時的に数値が合っても、次の測定で再びずれることになります。

希釈した試料は、元の濃度まで戻して記録する

濃度が測定範囲を超える場合は、方法で認められる条件で希釈し、その倍率を結果へ反映します。試料を20mL取り、指定の水で全量100mLにした例なら、全量と採取量の比は5です。

図6:希釈後の表示値から、元の試料濃度を求める

試料20mLを全量100mLにした例
D = VtotalVsample = 10020 = 5
Coriginal = D × Cmeasured
Coriginal = 5 × 0.18 mg/L
Coriginal = 0.90 mg/L = 900 μg/L
D:希釈倍率 Vtotal:希釈後全量 Vsample:元の試料量(体積は同じ単位)。C:SiO2としての濃度。希釈水の寄与を無視できる計算例。

この例で測定器が0.18mg/Lを示したなら、元の試料は5倍の0.90mg/Lとして記録します。全量100mLにする操作と、水を100mL加える操作は異なるので、採取量と最終体積を区別します。

装置へ希釈倍率を設定して結果に反映する方式では、表示値へ手作業でもう一度倍率を掛けないようにします。測定範囲、希釈方法、機器の設定を残せば、後から値を比較する際にも計算の過程を追えます。

採水条件をそろえて、工程の変化と比較する

採水する点は、管理したい工程と、変化したときに取る操作を結び付けて決めます。処理水の入口と出口を比較するなら、点名と配管の行先を照合し、別系統の水を比べる取り違えを防ぎます。

高温の試料を取り扱う系統では、分析計へ入る試料を、装置の温度と圧力の範囲へ合わせます。採取口だけでなく、冷却や減圧、流量調整を含む採水設備全体を、所定の手順で運転します。

手分析のために採取する際は、容器を清浄に保ち、採取から分析までの時間と保存条件を記録します。しばらく保管した試料と直後のオンライン値を比べる場合は、時間の差も比較条件へ含めます。

ろ過するかどうかは、何を測りたいかと分析法によって決め、手順を記録に残します。濁りがあるからと毎回違う方法でろ過すると、測る対象そのものを変えながら数値を比較することになります。

測定記録には濃度だけでなく、試料の点名、単位、希釈倍率、測定法、校正や保守の状態も残します。工程条件と一緒に読み返せる形にすれば、一度だけ高くなった値と、継続的な水質変化を分けやすくなります。

必要な監視に合わせて、装置と運用を選ぶ

機器の選定では、期待する濃度が測定範囲に入ることに加え、必要な変化を見分けられるかを評価します。単に表示桁が多い装置を選ぶのでなく、検出下限、繰返し性、試料の条件を仕様で比較します。

異常が起きてから対応するまでに使える時間が短ければ、搬送と測定の遅れを含めて監視を設計します。定期的な手分析で足りる設備と、オンライン測定が必要な設備を、工程への影響から分けて考えます。

運用費には試薬の購入だけでなく、標準液、洗浄水、消耗するチューブ、保守に掛かる作業も含まれます。試薬を交換しやすい配置と排液の回収方法を決めておくと、測定を続けるための作業を具体化できます。

上限警報などに使う場合は、測定不能や試料断、校正中の状態を、正常な低濃度と区別できる信号にします。濃度の大小だけを監視するのでなく、値が有効かどうかを運転側へ伝えることも、計装の役目です。

よくある質問

シリカ計で全シリカを測れますか?

モリブデンブルー法の比色計は、所定の条件で反応するシリカを測るため、そのまま全シリカとは扱いません。非反応性の成分まで調べる場合は、目的に合う前処理や別の分析方法を選びます。

硬度が低ければシリカも少ないですか?

硬度は主にカルシウムとマグネシウムを表す指標で、シリカとは別に測る項目です。水源や処理の条件から一律に置き換えず、シリカ濃度が管理に必要な系統では、その値を確認します。

なぜ試薬を入れてすぐに測れないのですか?

決めた発色反応が進むまでに時間が必要で、待ち時間や温度が変わると同じ条件の比較になりません。使用する分析法の添加順と反応時間を守り、オンライン計では搬送と更新の時間も分けて読みます。

セルが汚れると高い値になりますか?

汚れは透過光へ影響しますが、補正の方式もあるため、表示のずれを一方向だけに決めることはできません。セルや気泡、試薬を点検し、ブランクと標準液の結果から、試料と測定系を切り分けます。

試薬は何日ごとに交換しますか?

交換周期は装置、測定頻度、保存条件で変わるため、全機種共通の日数にはできません。指定の補給周期と開封後の期限を管理し、残量や状態を点検記録と合わせて確認します。

まとめ

シリカ測定器は、発色反応と吸光度を使って濃度を求める分析計で、対象となるシリカの形も重要です。液面へ電極を入れて瞬時に値を得る方式とは異なり、反応、搬送、校正、洗浄を含めて測定を管理します。

単位と採水位置、反応時間、試薬とセルの状態をそろえると、測定値を設備の水質管理へつなげやすくなります。水質の変化と計器の変化を分けて確認し、ブランクや標準液、運転履歴を判断の根拠として残します。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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