空気比とは、燃料を完全燃焼させるための理論空気量に対し、実際の供給空気量が何倍かを示す値です。ボイラーでは不完全燃焼を防ぎながら、余分な空気とともに逃げる熱を抑えるために管理します。
排ガスの酸素濃度から空気比を概算できますが、酸素計の数字だけで燃焼器の状態が分かるわけではありません。乾きガスか湿りガスか、煙道で空気が漏れ込んでいないかによっても、測定値の意味が変わるためです。
定義と適正値を確かめたうえで、メタンを使った計算例から空気量の調整方法へ進みます。理論空気量と供給空気量を図で比べると、酸素濃度から求める近似式との違いも整理できます。
空気比とは
空気比には一般に記号mを使い、供給空気量を理論空気量で割って求めるので単位はありません。分母は燃料の量と成分から決まるため、風量だけを同じに保っても、燃料量が変われば空気比は変わります。
同じ燃料量に対し、理論空気量を1とした供給空気の内訳です。
※空気の供給倍率であり、酸素濃度が40%という意味ではありません。
理論上は空気比1で完全燃焼に必要な酸素がそろいますが、実機では燃料と空気を均一に混ぜることが難しくなります。燃え残りを防ぐために理論量より多くの空気を送り、使われなかった酸素が排ガスに残ると考えます。
酸素濃度から求める次の式は、完全燃焼に近い状態で使う乾き排ガス基準の近似式です。O₂が4%なら式には4を入れ、割合を小数で表した0.04を代入しないようにします。
図2:乾き排ガスのO₂濃度から読む空気比
濃度は容積%、空気比は小数第2位に丸めた概算です。
| O₂濃度 | 2% | 3% | 4% | 5% | 6% |
|---|---|---|---|---|---|
| 空気比m | 1.11 | 1.17 | 1.24 | 1.31 | 1.40 |
※推奨設定値の表ではありません。湿りガスの値をそのまま代入せず、漏れ込み空気の影響も確認します。
この近似式は完全燃焼を前提とし、乾き排ガス中の窒素の容積割合を空気と同じ約79%とみなします。燃料組成によるずれもあるため、供給量から求めた空気比と厳密には一致せず、不完全燃焼時の評価にもそのまま使えません。
乾きガスは水蒸気を除いた排ガスであり、水蒸気を含む湿りガスとは酸素濃度の分母が異なります。計器の測定基準や採取位置を確かめてから式に入れないと、同じ燃焼状態でも違った空気比として読んでしまいます。
空気を増やしすぎると、燃焼に使わない空気まで温めて煙突へ送るため、排ガスとともに逃げる熱が増えます。反対に空気が不足すると一酸化炭素(CO)やすすが生じるので、空気を絞るだけでは効率と安定した燃焼を両立できません。
通風機の負担に加え、硫黄を含む燃料では低温腐食、燃焼条件によってはNOxへの影響も検討します。炉内圧は排気側の条件にも左右されるため、空気比が高いことと、炉内が正圧になることは区別が必要です。
気体燃料は固体燃料より空気と混ざりやすい傾向がありますが、燃料の種類だけで適正値が決まるわけではありません。燃料の性質はボイラー燃料の種類と特徴、熱損失との関係はボイラー効率の計算方法につながります。
過剰空気と酸素濃度を混同しない
空気比1.4の「余分な40%」は、理論空気量を基準にした空気の増加分を意味します。供給空気全体の40%が余るという意味でも、排ガスの酸素濃度が40%になるという意味でもありません。
理論量を100と置けば供給量は140となり、その差の40が過剰空気に相当するという関係です。燃料を増やさずに空気だけを増やす場合と、燃料と空気を同じ割合で増やす場合を分けると、倍率の変化を読み取りやすくなります。
一方、排ガスの酸素濃度は、燃焼後に残った酸素が排ガス全体に占める割合を示しています。燃料成分から生じる二酸化炭素や水蒸気も分母に関わるため、空気の供給倍率をそのまま濃度に置き換えることはできません。
酸素が残っていても完全燃焼とは限らない
空気比は設備全体で見た空気の過不足を示す指標であり、火炎の各部分まで均一に酸素が届いている保証にはなりません。混合が悪い場所では、排ガスに酸素が残っていても燃料の一部が燃えきらない場合があります。
そのため、O₂だけが正常範囲にあっても、COの上昇や煙の発生を伴う場合は燃焼状態の確認が優先されます。空気を増やして数値だけを合わせる前に、メーカーの点検手順に沿ってバーナーや燃料供給の状態を調べます。
空気比の適正値は?
適正値は燃料や蒸発量だけでなく、燃焼方式や負荷を踏まえ、機種ごとに確かめる必要があります。ここでは過去の公表資料を使って表の読み方を説明し、実機の設定はメーカーが定める運転条件と燃焼状態から検討します。
図3:表の数字を運転値にする前の照合
過去の制度資料を読む例です。現行の適用条件や設定値を示す表ではありません。
| 資料 | 確認する条件 | 読み違えやすい点 |
|---|---|---|
| 工場等判断基準の過去資料 | 燃料・蒸発量・適用対象・備考 | 基準空気比と目標空気比は別 |
| メーカー仕様書 | 機種・燃焼方式・使用可能な負荷 | 他機種の値を流用しない |
| 運転記録 | 負荷・O₂・CO・排ガス温度・煙 | 燃焼が安定しているかも比較 |
※環境省の過去の公表資料には、都市ガスで蒸発量5t/h以上10t/h未満の事例の基準値として1.2〜1.3が記載されています。当時の事例値であり、現在の全ボイラー共通の推奨値ではありません。
出典に挙げた省エネルギーセンターの過去資料では、燃料や蒸発量を区別し、基準空気比と目標空気比を別表で示しています。本節は現行告示の数値や適用範囲を示すものではなく、過去の表をそのまま現在の設備へ適用することはできません。
過去資料にも「一般用ボイラー」と「小型貫流ボイラー」の区分や、対象を定める注記があります。名称の印象や装置の大きさだけで行を選ばず、表の注記と設備仕様を照合することが、読み違いを防ぐために必要です。
基準値と自設備の設定値を分けて管理する
中小機構の2019年10月23日付の解説でも、「基準空気比」と「目標空気比」は区別されています。制度を実務で参照する際は最新の公式本文で適用条件を確認し、確認日と参照資料を管理標準に残してください。
過去資料の基準空気比の表にも、燃料名だけでなく負荷率や燃焼方式などの条件が付いています。制度の表を燃焼装置の操作手順として直接使わず、機種ごとの調整範囲と照らして管理値を定めることが大切です。
例えば、定格付近で安定していた設定が低負荷でも適切かどうかは、別に確かめなければなりません。運転時間の長い負荷帯から実績を整理し、起動時や負荷変化中の値は定常運転の記録と分けて評価してください。
改善を検討する際には、調整後の空気比に加え、COなどの燃焼状態と排ガス温度も同じ条件で比較します。O₂が低くなったという結果だけでは、効率の改善幅や排出物への影響まで判断するための情報が足りません。
空気比の計算方法
燃料と空気の量が分かる場合は、燃焼反応から理論空気量を求めて、実際の供給量と比較できます。メタン1molを例に、燃料・酸素・空気の体積を同じ基準状態で表し、計算の分母と分子をそろえてみましょう。
図4:メタン1molから空気比1.4までの計算
反応式で酸素量を出し、酸素割合で割ってから供給量と比較します。
※体積は0℃・101.325kPaの乾燥状態、気体は理想気体、空気中の酸素は21%と近似した例です。水の生成量はmolで示しています。
燃料の燃焼式を立てて必要酸素量を計算する
メタンの化学式はCH₄、分子量は約16であり、完全燃焼では二酸化炭素と水が生じます。反応式の係数から酸素2molを使うと分かるため、メタン1mol当たりの必要酸素量は約44.8NLと求められます。
この例のNLは0℃・101.325kPaの乾燥状態に換算したリットルで、1molの気体を約22.4Lとして計算しています。高温の配管内の体積と比較するときは、Nm³とm³の違いと同様に基準状態をそろえます。
空気の酸素濃度から理論空気量を逆算する
乾燥空気の組成は概略で窒素78%、酸素21%、アルゴン約0.93%などなので、酸素だけを送る場合より体積が増えます。必要酸素量を酸素の容積割合で割ると、この燃料量に対する理論空気量は約213NLになります。
燃料が複数の成分を含む場合は、各成分の必要酸素量を求め、組成の割合に応じて足し合わせます。燃焼後の水蒸気を含めるかでも排ガス量は変わるため、排ガス量の計算と理論空気量の計算は区別してください。
実際に供給している空気量を理論空気量で割る
供給量を300NLと仮定すると空気比は約1.4となり、理論量より約40%多い空気を供給した計算です。213NLは途中で丸めた値ですが、丸め前の理論空気量を使っても、空気比は約1.4になります。
連続運転では燃料と空気を同じ時間当たりの流量で表せば、同じ手順で倍率を求められます。燃料が毎時なのに空気が毎分の値になっていないか、基準温度と圧力が一致しているかを、割り算の前に確認します。
この計算では純メタンを仮定しているため、都市ガスやLPGの実際の組成へそのまま流用しないでください。燃料供給元の成分情報を基に必要酸素量を計算し、体積当たりの理論空気量を求め直すのが基本です。
連続運転の流量に置き換える計算例
次は純メタンを毎時10Nm³、乾燥空気を毎時120Nm³供給するという説明用の条件を考えます。両流量とも0℃・101.325kPaへ換算した値とし、反応式の係数と空気中の酸素21%から理論流量を求めます。
得られた約1.26は、この流量条件における供給量の倍率であり、図2の酸素濃度から出す値とは求め方が異なります。両者が食い違うときは直ちに故障と決めず、燃料組成や流量の換算条件、排ガスの測定基準を順に照合します。
特に、空気流量計が配管内の実体積を示し、燃料流量計だけが標準状態へ換算されている場合は比較が成立しません。指示値の単位に加えて、温度・圧力補正の設定と、圧力が絶対圧かゲージ圧かも仕様書で確認してください。
空気比の制御方法
燃焼用空気はダンパーの開度を変える方法や、インバータで通風機の回転数を変える方法で調整します。どちらも空気の供給側を操作するので、燃料量や負荷との関係を保ちながら、必要な風量へ合わせます。
図5:操作する空気と、測定する排ガスの位置
ダンパー・通風機は燃焼器の手前、O₂計は燃焼後の排ガスを見ます。
※代表的な配置の模式図です。O₂による補正を加える構成でも、計器の値だけで燃焼の安全性を判断しません。
酸素濃度を使う方式では、燃料量や負荷に応じた空気量を基本とし、O₂計の値で補正する構成があります。COや煙、火炎の状態もメーカーの管理手順に従って確認し、負荷が変化したときにも燃焼が安定しているかを確かめます。
同じ負荷で酸素濃度が急に上がった場合は、風量増加だけでなく、燃料流量の低下や計器のずれも調べます。図5のように測定点より手前で空気が漏れ込むと、燃焼器へ送った空気が増えなくても、O₂計には高い値が現れます。
回転数を変える方式では、必要圧力や風量の変動幅と合わせて、設備費と省電力効果も検討します。インバータ制御のメリットとデメリットを踏まえ、空気比と排ガス温度を同じ負荷条件で記録すると調整前後を比べやすくなります。
ダンパーと回転数制御を選ぶときの確認点
ダンパーは通風経路の抵抗を変える仕組みなので、開度の割合と風量の割合がそのまま一致するわけではありません。リンク機構のずれや動作の引っ掛かりも調整結果に影響するため、指令値と実際の動作を分けて点検します。
回転数制御は必要風量に合わせて送風機を動かす方法で、変動負荷がある設備では電力削減も検討対象になります。ただし、最低回転数や必要な送風圧力は機種ごとに異なるため、回転数だけを基準に改造の可否は決められません。
方式を比較する際は、年間の負荷分布と送風機の消費電力を調べ、導入費だけでなく保守費も含めて評価します。小型なら必ずダンパー、大型なら必ずインバータという分類を避け、既存バーナーとの適合をメーカーに確認します。
測定値のずれを調整前に切り分ける
横河電機の解説では、煙道に直接挿入するジルコニア式は水分を含む湿りガスを測る方式として説明されています。一方で乾き値へ演算する機能を持つ機種もあるため、検出方式だけで判断せず、実際の出力設定を確かめます。
固定式計器と携帯式分析計を比べる場合は、同じ採取位置と負荷で、同じ乾湿基準の値をそろえることが先決です。採取配管の漏れや計器の応答時間も結果に関わるので、表示が安定する前の瞬間値だけで校正の良否を判断しません。
O₂が高くCOも増えているなら、全体の空気不足だけでなく混合や燃焼の偏りを疑う材料になります。反対に、燃料流量が変わらず採取位置によってO₂が違う場合は、煙道の漏れ込みや濃度分布も調査の候補です。
ジルコニア式では、共存するCOや水素などが検出器内で酸素を消費し、低めの測定値を示す場合もあります。酸素計とCO計の変化がかみ合わないときは、メーカーが示す測定原理と適用条件も点検項目へ加えてください。
調整の効果は同じ負荷の記録で比べる
調整前の基準記録には、測定日時と使用燃料、蒸発量などの負荷指標に加え、燃料流量と排ガス温度を残します。O₂とCOの測定位置・乾湿基準も併記しておくと、担当者や計器が変わった後も比較条件を引き継げます。
例えば、冬の高負荷時と夏の低負荷時をそのまま並べると、空気比調整以外の差まで改善効果に含まれてしまいます。同じ負荷帯の記録を集め、給水条件や周囲条件の違いも確認しながら燃料使用量の変化を読み取ります。
実際の設定変更は、メーカーの調整手順と工場の運転管理に従い、燃焼状態を確認できる担当者が実施します。COの増加や失火などの異常があれば、効率の追求を続けず、設備所定の異常時手順に従って対応してください。
空気比のよくある質問
空気比と空燃比は同じですか?
空燃比は燃料に対する空気の比率であり、空気比は供給空気量を理論空気量に対する倍率で表したものです。空燃比を読む場合は質量比か体積比かも確認し、数値だけを取り出して空気比と比較しないようにしてください。
酸素濃度が高ければ空気を減らしてよいですか?
乾き・湿りの違いや漏れ込み空気、計器の状態を確認し、燃焼器で空気が過剰なのかを先に判断します。調整はメーカーが定める範囲と工場の運転手順に従い、酸素濃度を下げること自体を目的にしないようにしてください。
空気比1が一番よい運転条件ですか?
空気比1は理論上必要な空気量を表す値であり、実機の推奨設定値を示しているわけではありません。燃料と空気の混合には偏りがあるため、メーカーの運転範囲で燃焼を安定させるための余裕を確保して管理します。
湿りガスの酸素濃度を早見表に使えますか?
図2は乾き排ガス基準なので、水蒸気を含む湿りガスの測定値をそのまま当てはめることはできません。計器の乾湿設定を確認し、湿り値しかない場合は水分量などの条件を調べ、適切な換算方法をメーカーに確認します。
空気比を下げた割合だけ燃料が減りますか?
空気比の低下率と燃料の削減率は異なり、同じ割合だけ燃料が減るとは計算できません。排ガス温度や燃焼状態によって熱損失の変化が違うため、同じ蒸気負荷での燃料使用量や熱収支から改善効果を評価してください。
まとめ
- 空気比は供給空気量を理論空気量で割った倍率です。
- O₂の式は乾き排ガス基準の近似式です。
- 適正値は機種の運転条件と燃焼状態から検討します。
- 燃焼式から酸素量、理論空気量、空気比の順で計算します。
- 空気の操作位置と排ガスの測定位置を分けて考えます。
空気比の記録には負荷と排ガス温度、測定条件も添えると、燃焼状態の変化を後から追いやすくなります。設備全体の関係はボイラーの仕組みと構成、改善項目の整理は工場の省エネとエネルギー管理でも確認できます。
出典
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