安全弁の選定は、型式→設定圧力→呼び径の順に決めますが、型式は流体と温度、設定圧力は守る機器の最高使用圧力、呼び径は逃がす必要がある量で決まります。
設定圧力の上限は、法令で「最高使用圧力以下」と決まっています。ボイラー・圧力容器・減圧弁の二次側のどこに付けるかで、参照する決まりと必要な吹出し量の考え方が変わります。
この記事では、選定の3ステップ、設定圧力の決め方と基準、吹出し量の計算式と呼び径の選び方、通しの例題、よくある質問の順に整理します。
安全弁の選定方法
安全弁を選定するには、次の3つのステップを順に進めます。
- 型式を決める
- 設定圧力を決める
- 呼び径を決める
前のステップで決めたことが、次のステップの条件になります。
※どこに付けるか(ボイラー・圧力容器・減圧弁の二次側など)で、参照する法令と必要吹出し量の決め方が変わります。
メーカーに問い合わせる前に、次の条件をそろえておくと選定が早く進みます。
- 流体の種類と状態(飽和蒸気・過熱蒸気・空気・ガス・水など)と温度
- 守る機器の最高使用圧力と、通常の運転圧力
- 逃がす必要がある量(必要吹出し量)
- 入口・出口の接続(ねじ・フランジの規格)と、出口側の条件(大気放出か配管で導くか、背圧)
- 適用される法令(ボイラー構造規格、圧力容器構造規格、高圧ガス保安法など)
型式を決める
まず、安全弁メーカーのカタログを見ながら、流体の種類、温度、安全弁の材質、接続規格から型式を選定します。型式ごとに、使える流体・温度・設定圧力の範囲と接続が決まっています。
空気、蒸気、水などの流体であれば、標準品で足りる場合がほとんどですが、特殊な流体や、接続規格が海外向けの場合は、メーカーに製作できるかを問い合わせます。
流体によって、使う弁の種類が変わり、主に蒸気・気体には一気に開く安全弁、液体には圧力に応じて開く逃し弁(レリーフ弁)を使い、両方に使える安全逃し弁もあります。
流体によって、弁の種類とキャップの形(出口側が密閉か開放か)が変わります。
※弁の種類とキャップの区分はメーカー(ベン)の技術資料、引火性・有毒性の扱いは圧力容器構造規格 第64条によります(ボイラーは第62条で、引火性蒸気なら密閉式かボイラー室外の安全な場所へ導く)。実際の型式は、温度・圧力の範囲をカタログで確認してください。
安全弁には全量式と揚程式があり、昇圧したときに一気に全開になるほうが良い場合は全量式、徐々に開かせたい場合は揚程式を選びます。
同じ呼び径なら、全量式は揚程式より多く吹き出せ、リフトの違いや構造は安全弁の揚程式と全量式の違いで詳しく解説しています。
レバー付きとレバーなしもあり、手で強制的に開けて作動を確かめられるのがレバー付きで、そうでないものがレバーなしです。レバーの有無は、ユーザーの使い方を確認して選びます。
設定圧力を決める
次に、安全弁が開く圧力(設定圧力)を決めますが、設定圧力は発注のときにメーカーへ指定し、工場で調整されて出荷されます。
安全弁の設定圧力は、設置する機器の耐圧や、圧力容器の基準をもとに決め、判断は「上限を確かめる→下限を確かめる→脈動・背圧を見る」の順に進めます。
上限は、守る機器の最高使用圧力です。ボイラー及び圧力容器安全規則は、ボイラー・第一種圧力容器・第二種圧力容器の安全弁を「最高使用圧力以下で作動するように調整」するよう定めています。
小型ボイラー・小型圧力容器は別の決まりで、0.1MPa(一部は使用する最高の圧力)以下で作動するよう調整します(同規則 第93条)。系統の中に最高使用圧力の違う機器があるときは、いちばん低い機器に合わせます。ポンプや計器など、配管の途中にある機器の最高使用圧力も確かめます。
熱交換器などに安全弁を付ける場合は、安全弁の設定圧力が、その機器が昇圧しうる最高使用圧力になります。内容積と組み合わせて圧力容器に当たる可能性があるので注意が必要です。
圧力容器の区分は第一種圧力容器と第二種の違いにまとめており、設定圧力の考え方は安全弁の正しい設定圧力でも解説しています。
下限は、閉じる圧力(吹止り圧力)で決まりますが、安全弁は開いた圧力より少し下がってから閉じるので、その差(吹下り)の分だけ、運転圧力との間にすき間が必要です。
吹下りの基準は JIS B 8210:2025 にあり、ベンのカタログが抜粋を載せています。蒸気用安全弁では、設定圧力0.4MPa以下で0.03MPa、0.4MPaを超えると設定圧力の7%以下です。
吹止り圧力が運転圧力より低いと、一度開いた安全弁が運転中に閉じきらなくなり、設定と運転の差が小さいと、漏れの原因にもなります。
上から順に、この並びが崩れないように設定圧力を決めます(すべてゲージ圧)。
※上限はボイラー及び圧力容器安全規則 第28条・第65条・第86条、吹下りは JIS B 8210:2025(ベンのカタログの抜粋)、吹止り圧力と運転圧力の余裕は Spirax Sarco の技術解説によります。
運転圧力との差の目安は、法令ではなくメーカーの技術資料にあり、Spirax Sarco は、吹止り圧力と運転圧力の間に最低0.1bar(0.01MPa)の余裕を勧めています。
Baker Hughes の技術解説は、弁座の気密を保つには運転圧力を一般に設定圧力の95%以下にするとしています。どちらも目安で、実際の値は型式ごとの吹下りで確かめます。
流体に脈動があり、瞬間的に設定圧力を超えると、安全弁が誤って作動します。ヨシタケの取扱説明書は、この場合に設定圧力を上げるか、運転圧力を下げるよう案内しています。
出口側に一定の背圧がかかる通常の安全弁は、背圧の分だけ開く圧力が下がり、その分、設定圧力を上げて補います(Spirax Sarco)。
減圧弁の二次側に付ける安全弁は、減圧弁の設定圧力より少し高く設定し、どれだけ足すかの目安は、メーカーが表で示しています。
減圧弁の設定圧力に、次の値を足した圧力を安全弁の設定圧力にします(単位 MPa)。
- 0.1以下+0.05
- 0.1を超え0.4未満+0.08
- 0.4以上0.6未満+0.12
- 0.6以上0.8未満+0.15
- 0.8以上1.0未満+0.19
- 1.0以上1.2以下+0.23
- 0.1以下+0.05以上
- 0.1を超え0.4以下+0.08以上
- 0.4を超え0.6以下+0.1以上
- 0.6を超え0.8以下+0.12以上
- 0.8を超える+15%
※左列は減圧弁の設定圧力。ベンの値はメタルシート形(ソフトシート形は別の値)、ヨシタケの値は警報用安全弁の目安です。区切りと値がメーカーで違うので、使う減圧弁と安全弁の資料で確認してください。いずれも、守る機器の最高使用圧力を超えないことが前提です。
一度決めた設定圧力は、現地で簡単には変えられないので、運転条件まで含めて、発注の前に決めきっておきます。
呼び径を決める
最後に、安全弁の呼び径を決めます。呼び径は、設定圧力で対象の流体を逃がしたい量(必要吹出し量)によって決まります。必要吹出し量の決め方は、安全弁を付ける場所によって変わります。
「何がどれだけ流れ込むか(生まれるか)」を、付ける場所ごとに考えます。
※通達は「ボイラー構造規格等の一部改正について」(令和7年11月7日 基発1107第5号)。減圧弁の二次側の考え方は、二次側の機器が一次側の圧力に耐えられるかで変わります。
ボイラーの吐出に付ける場合は、燃焼装置が故障したときなどを考え、最大蒸発量を逃がせる量にし、蒸発量の考え方は換算蒸発量とボイラーの能力で整理しています。
ボイラーでは、安全弁の数や取付け方もボイラー構造規格で決まっています。条文ごとの決まりは、揚程式と全量式の記事の「使い分け」の章で確かめられます。
圧力容器に配管から気体が流れ込む場合、流入する最大量は通達の次の式で求めます。管の断面積に流速と密度を掛け、1時間あたりの質量に直した式です。
※0.0028 は π/4 × 3600 ÷ 106 ≒ 0.00283(mm を m に、秒を時間に直す係数)
減圧弁の二次側に付ける場合は、法令で量が決まっていないことも多い場所です。ベンの資料は、警報用なら減圧弁より1〜2サイズ小さい呼び径(減圧弁の最大流量の約10%)を目安にしています。
ただし10%は、減圧弁の不調を知らせる「警報用」の目安です。二次側の機器が一次側の圧力に耐えられないなら、減圧弁が全開になったときの流量を逃がせる大きさが必要です(Spirax Sarco)。
必要吹出し量が決まったら、型式ごとの公称吹出し量(その安全弁が保証する吹出し量)と比べます。蒸気用の公称吹出し量は、メーカーの資料に次の式で示されています。
この式は、ベンのカタログが「JIS B 8210-2025 の式による」として載せているものです。係数の一部はメーカーの社内数値で、同じ吹出し面積でもメーカー・型式で公称吹出し量が数%変わります。
実際の選定では、式で一から計算するより、カタログの吹出し容量表で、必要吹出し量以上になる呼び径を選ぶのが便利です。表は型式ごとに、設定圧力と呼び径から公称吹出し量が読めるようになっています。
液体用・ガス用には別の式があり、適用する法令でも吹出し量決定圧力の取り方が変わります。吹出し量をいくらで選べばよいか分からない場合は、使い方を伝えてメーカーに相談するのが安全です。呼び径の考え方は安全弁の呼び径は何で決まるかでも解説しています。
例題:蒸気の圧力容器に付ける安全弁を選ぶ
3つのステップを、1つの条件で通して確かめますが、数字は計算の流れを示すための仮の条件です。
- 流体:飽和蒸気(第一種圧力容器に付ける。P0 は圧力容器構造規格の取り方)
- 容器の最高使用圧力:0.50MPa(ゲージ圧)、運転圧力:0.40MPa
- 必要吹出し量:200kg/h(容器に流入する蒸気の最大量)
- 照合に使う表:ベンの揚程式安全逃し弁 SL-37型シリーズの吹出し容量表
型式は、蒸気用で開放型、作動を確かめられるレバー付きを想定し、吹出し量が少ないので揚程式で足りるかを、容量表で確かめます。
設定圧力は、上限の最高使用圧力と同じ0.50MPaにして、運転圧力が下限より下にあるかを確かめます。
次に、公称吹出し量の式で、必要な吹出し面積を求めます。設定圧力0.50MPaはゲージ圧なので、P0 では大気圧を足した絶対圧力にします。
SL-37型の寸法表では、25Aの有効面積は43.3mm²、32Aは80.3mm²で、25Aでは足りず、32Aで69.1mm²を上回ります。
必要吹出し量200kg/h(点線)を超える、いちばん小さい呼び径は32Aです。
※単位 kg/h。ベン SL-37〜40,43,44型の蒸気用吹出し容量表(圧力容器構造規格)の設定圧力0.5MPaの値。上の式で計算すると 50.6・86.2・125.3・232.4・363.5・590.6 で、表と一致します。
容量表でも、32Aは232kg/hで200kg/hを上回り、この条件なら32Aが候補になり、揚程式でも足ります。
ただしこの結果は、ベンの係数と容量表を使った場合に限り、別のメーカー・型式では係数と表が違うので、使う型式の資料で照合します。
安全弁は法令の対象になる安全装置で、この記事の数字は考え方を示す目安なので、実際の選定はメーカーの資料と適用される法令・規格で確かめます。判断に迷う点は、所轄の労働基準監督署にも確認してください。
選んだ安全弁の位置や設定圧力は、P&ID(配管計装図)の読み方を押さえておくと図面で追えます。手配の段取りは購買・調達の仕事の流れが参考になります。
安全弁の選定でよくある質問
安全弁の吹出し圧力と設定圧力の違いは?
設定圧力は、安全弁が作動する圧力として指定する値で、蒸気用では、弁が一気に開く(ポップする)ときの吹出し圧力を設定圧力とします。
液体・気体用では、微量に流れ出たときの吹始め圧力を設定圧力とします(ベン)。ボイラーの蒸気用安全弁では、吹出し圧力の許容差が設定圧力0.5MPa未満で±0.015MPa、0.5以上2.3MPa未満で±3%です。
安全弁を2個付けるときの設定圧力は?
1個を最高使用圧力以下に調整すれば、ほかの安全弁は最高使用圧力の3%増以下に調整できます。ボイラー及び圧力容器安全規則が、ボイラー・第一種・第二種圧力容器について定めています。
例えば最高使用圧力0.70MPaなら、2個目は0.721MPa以下で、ボイラーの過熱器用安全弁は、胴の安全弁より先に作動するよう調整します。
安全弁の手前に止め弁を付けてもいい?
第一種圧力容器では、安全弁と容器の間や吹出し先に、止め弁などの閉止装置を設けてはならないのが原則で、安全弁が働かなくなるおそれがあるためです。
2個以上の安全弁を同時に閉じられない装置を付けた場合などは、通達で例外が認められており、減圧弁の二次側に付けた安全弁と容器の間の止め弁も、差し支えないとされています。
設定圧力をあとから変えられる?
原則として、現地で設定圧力は変えられず、ベンは現地での変更を原則不可とし、ヨシタケも再調整は工場で行うとしています。
運転条件が変わるときは、メーカーに再調整を依頼するか、新しい設定圧力の安全弁に替えます。プラントの定修(定期修理)では、安全弁の整備や作動の確認も工程に入ります。
まとめ
- 安全弁の選定は、型式→設定圧力→呼び径の3ステップで進める
- 型式は、流体の種類・温度・材質・接続規格から決める。蒸気は安全弁、液体は逃し弁が基本
- 設定圧力の上限は守る機器の最高使用圧力(法令)。下限は吹止り圧力が運転圧力より上に残ること
- 呼び径は、必要吹出し量(ボイラーは最大蒸発量以上など)を公称吹出し量が上回るように選ぶ
- 公称吹出し量は Qm=5.25C′Kdr′AP0 で計算できるが、係数はメーカーで違うので容量表で照合する
安全弁メーカーによって選定の細かな方法は変わりますが、基本の手順はこの3ステップです。流体・圧力・必要な量をそろえてメーカーに相談すると、確実に選べます。
揚程式と全量式の違いは安全弁の仕組み・構造と使い分け、ボイラー全体のしくみはボイラーとは何かにまとめています。
出典
出典・参考資料(11件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 設定圧力の上限(最高使用圧力以下)、2個目は3%増以下、過熱器用安全弁、小型ボイラー・小型圧力容器:e-Gov 法令検索「ボイラー及び圧力容器安全規則」(第28条・第65条・第86条・第93条)
- 引火性・有毒性の蒸気を発生する第一種圧力容器の安全弁:厚生労働省「圧力容器構造規格」(第64条)、ボイラーの引火性蒸気:厚生労働省「ボイラー構造規格」(第62条)
- 必要吹出し量(ボイラーは最大蒸発量以上、圧力容器は流入・発生する気体の最大量以上)、G=0.0028νρd²、止め弁の扱い:厚生労働省「ボイラー構造規格等の一部改正について」(令和7年11月7日 基発1107第5号)のボイラー構造規格 第62条関係・圧力容器構造規格 第64条関係
- 公称吹出し量の式・係数・吹出し量決定圧力、JIS B 8210:2025 の吹出し圧力の許容差と吹下り:株式会社ベン カタログ「資料/適用法規及び吹出し容量計算式」
- SL-37型シリーズの有効面積と吹出し容量表:株式会社ベン SL-38 カタログ
- 弁の種類とキャップ、減圧弁二次側の設定圧力と呼び径の目安、設定圧力の現地変更:株式会社ベン「自動弁へのアプローチ 安全弁編」
- 減圧弁二次側の警報用安全弁の設定圧力:株式会社ヨシタケ GP-1000 取扱説明書
- 脈動・設定圧力と常用圧力の差による不具合、工場での再調整:株式会社ヨシタケ AL-140 取扱説明書
- 吹止り圧力と運転圧力の余裕、背圧の補正:Spirax Sarco「Safety valve selection」
- 減圧弁が全開になったときの流量での選定:Spirax Sarco「Safety valve sizing」
- 運転圧力は設定圧力の95%以下が目安:Baker Hughes「Operational Basics of Safety Valves」(Valve Magazine 2024年5月)
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