安全弁の設定圧力は、保護する機器の最高使用圧力と、適用する法令・規格を基準に決めます。通常運転で吹かない余裕に加え、異常時の流入量を放出できる容量も必要です。
設定値が正しくても、放出量が足りなければ圧力上昇を止められません。蒸気減圧設備と閉塞した温水配管を例に、圧力の決め方から保護範囲、仕様書へ記載する条件まで整理します。
動画の1:11〜1:23付近では最高使用圧力と設定圧力を同一視し、設定を下げれば圧力容器を避けられると説明しています。両者は異なる値で、区分は設定だけでなく用途・実際の使用条件・容積・寸法などから判定します。
2:30付近の少量放出で圧力が下がる説明は、閉塞した液体の熱膨張に限って考え、継続する流入や沸騰には広げません。2:39付近の「ほとんどの場合安全弁を設置」も一般化できず、異常時の過圧と適用法令から要否を判断します。
安全弁とは?
安全弁は、機器や配管の圧力が設定した値へ達したとき、流体を放出して過圧から保護する弁です。通常は閉じており、放出により圧力が下がると再び閉じる構造が使われます。
ばね式では、流体が弁体を押し上げる力に対し、ばねが閉じる方向へ力を加えます。圧力が上昇すると弁体が持ち上がり、入口から出口へ放出する通路が開きます。
代表的なばね式の作動模式図。吹出し特性・背圧の影響は弁の形式で異なります。
動画0:20付近では安全弁を逃し弁とも呼んでいますが、適用流体や作動特性によって呼び分けられます。蒸気用の弁を液体配管へ転用するような選び方をせず、メーカーの適用流体を確認します。
全量式と揚程式では流路の形や放出能力が異なり、接続口径だけでは能力を比較できません。弁体の動きと流路の違いは、安全弁の揚程式と全量式で詳しく説明しています。
減圧弁は下流の圧力を一定に調整する弁で、安全弁は異常な過圧から守るための弁です。正常な制御ができることと、その制御が故障しても安全を保てることを分けて考えます。
圧力スイッチによる警報や遮断も、設定の役割が異なります。通常制御、異常検知、供給停止、機械式の放出をどのように組み合わせるかは、想定する故障と設備の要求から決めます。
安全弁の設定圧力の基準
最初に、通常運転で到達する最大圧力と、保護する機器の最高使用圧力を分けて整理します。その間で、吹き始めと吹き止まりの特性、適用法令、設定公差を含めた成立性を確認します。
設定圧力は、安全弁が所定の作動を開始するように定める圧力です。最高使用圧力は設備側が使用を認められる圧力であり、同じ数値に設定する場合があっても同じ意味にはなりません。
圧力が下がっても設定値の直下で直ちに閉じるとは限りません。吹下りを含めて運転圧力との差を確認します。
吹き止まり圧力は、放出後に弁が再び閉じるときの圧力を指します。通常運転の圧力がここへ近すぎると、一度吹いたあとに止まらないなど、安定運転に支障を来すことがあります。
作動を開始した瞬間から、必要な量をすべて放出できるとは限りません。放出時の圧力上昇と設備側の許容範囲を、該当する法令・構造規格・弁の認定条件に沿って照合します。
通常圧力へ一定の割合を足せば、どの設備でも正しい設定になるという決め方はできません。運転変動が大きく成立する設定範囲が取れない場合は、運転条件や設備の耐圧を含めて設計を見直します。
指定する圧力の基準も統一し、ゲージ圧力と絶対圧力を混在させないことが必要です。表示の読み方は、圧力計・真空計・連成計の違いと目盛を併せて確認してください。
発注時には、流体名、設定圧力、使用温度、必要放出量、入口・出口の接続仕様を一組で示します。さらに放出先の圧力、適用法令、必要な検査や証明を添えると、条件の違う容量表を比較する誤りを減らせます。
圧力容器にならない値
圧力容器に該当するかどうかは、安全弁の設定値だけでは決まりません。労働安全衛生法施行令では、容器の用途と使用圧力に加え、内容積や胴の寸法などを組み合わせて区分しています。
第一種圧力容器では、熱媒による加熱、蒸気の発生、加熱分離など、容器の使い方が定義に含まれます。気体を保有する第二種圧力容器の条件も別なので、単一の圧力値を全用途へ当てはめられません。
区分で用いる使用圧力と、安全弁が設定されている圧力の関係は、設備の設計条件に即して確認します。既設の弁だけを低い設定に変更しても、その容器が適用除外になったと判断する根拠にはなりません。
特に、上流から高い圧力が供給される設備では、減圧後の通常圧力だけを見ないことが大切です。供給側の故障や加熱条件を含め、どの圧力を使用条件として採用したのか、設計図書と照合します。
新設設備なら、用途・温度・圧力・容積を決める段階で法令区分を確認します。既設設備では検査証や明細書、銘板を出発点とし、使用条件を変える場合は必要な手続きも併せて確認します。
詳細な区分と検査の関係は、第一種・第二種圧力容器の違いと区分に整理しています。小型圧力容器や適用除外の条件を含め、該当する用途から順に判定してください。
ボイラー及び圧力容器安全規則では、ボイラーの附属品は第28条、第一種圧力容器の附属品は第65条が対象です。それぞれ安全弁を最高使用圧力以下で作動するよう調整することが、基本として規定されています。
これらの条文には、複数の安全弁を設ける場合について、条件を伴う例外もあります。単一弁の設定へ一律に余分な圧力を加えてよいという意味ではなく、対象設備と条項を対応させて適用します。
機器の耐圧
次に、安全弁が保護する範囲の機器を一つずつ確認します。タンクだけでなく、熱交換器、ポンプ、計器、配管部品など、圧力が伝わる部品の許容条件を一覧に整理します。
保護範囲は配管のつながりと弁の開閉状態で変わります。最も厳しい許容条件を見落とさないよう一覧化します。
許容圧力は、常温のカタログ値だけで比較すると誤ることがあります。高温で使用するフランジや弁などは、その材質と温度に対応した圧力定格で、使用できる範囲を確認します。
「耐圧試験に耐えた圧力」と「連続して使用できる圧力」も区別します。試験時だけ加える圧力を根拠に、安全弁の設定を最高使用圧力より高くしてよいと考えることはできません。
配管についても、呼び径が同じなら同じ耐圧とは限りません。材質・肉厚・接続方法を合わせて調べる必要があり、厚さの表示は配管のスケジュール番号が確認の手掛かりになります。
熱交換器では一次側と二次側の条件を別々に確認し、伝熱面が破損したときの流入も検討します。熱交換器の構造と種類を踏まえ、低圧側へ高圧流体が入る経路を追います。
安全弁との間にある遮断弁を閉じると、保護したい部分が切り離されることがあります。運転・保全時の弁の状態を配管図へ落とし、どの状態で放出経路が確保されるのかを確認します。
放出配管の抵抗や合流先の圧力は、安全弁出口の背圧になります。大気へ放出する想定で選定した弁を、確認せず回収ヘッダーへつなぐと、作動や容量の条件が変わるおそれがあります。
出口は、人が蒸気や熱水を浴びない安全な場所へ導き、配管の荷重や反力も考慮します。放出先、ドレンの滞留、凍結対策を含めた施工条件は、選んだ型式の取扱説明書と照合します。
安全弁が必要な場合
安全弁が必要かどうかは、通常の運転圧力だけでなく、異常時に圧力がどこまで上がるかで検討します。法令で求められる装置を確認したうえで、故障や誤操作による過圧の経路を洗い出します。
代表例は、高い元圧が減圧設備を通って低圧側へ流入する場合と、閉じ込めた液体が加熱される場合です。原因が異なるため、必要な容量も、流体に適した弁の形式も同じにはなりません。
供給するユーティリティーの元圧が高い
蒸気や水を減圧して使う設備では、下流機器の許容圧力より元圧が高いことがあります。減圧弁が閉じなくなると、通常は低圧の配管でも、高圧側から継続して流体が入り得ます。
このときの安全弁は、通常使用量を放出できれば十分とは限りません。減圧弁の想定故障状態と上流条件から、下流へ入り得る量を求め、その条件で必要な放出容量を確保します。
口径や通常使用量だけで選ばず、想定する故障時の条件で容量を比較します。
例えば、故障時に流入する蒸気が800 kg/hと評価された架空の設備を考えます。同じ圧力・温度・背圧条件で確認した放出能力が600 kg/hの候補では、必要量に届きません。
候補の能力が1000 kg/hなら、この流入量との単純な容量比較は満たします。これは推奨の余裕率を示す計算ではなく、適用する容量補正や規格上の要求は、選定時に別途織り込む条件です。
同じ呼び径でも、設定圧力や流体の状態によって放出能力は変わります。カタログに並んだ数値のうち、どの条件で測定・算定された能力なのかを、容量表の注記まで確認します。
減圧弁のバイパスを開いたままにするなど、運用で生じる流入経路も検討に含めます。複数の供給経路が同時に成立する場合は、個々の通常流量を別々に見て終わらないようにします。
正常な圧力調整の仕組みは、圧力制御の方法と制御対象から確認できます。安全弁は減圧弁の代わりに連続調整する機器ではなく、常時吹いている状態は原因調査の対象です。
吹き続ける場合は、上流圧力、減圧弁下流の圧力、運転負荷と吹き始めた時刻を記録します。流れが時間とともに変わるかは静流水と脈動水の違いも踏まえ、実際の負荷条件と照合します。
設定を上げて止めようとする前に、減圧弁の故障や弁座漏れ、圧力計の誤差を調べます。弁座への異物や放出側の不具合もあり得るため、圧力が高いことだけを前提に原因を決めつけないことが大切です。
熱膨張が考えられる
液体で満たされた配管の両端を閉じると、温度上昇による体積増加の逃げ場がなくなります。水は圧縮されにくいため、蒸気の流入がなくても、加熱によって大きく圧力が上がることがあります。
液体の熱膨張だけが原因の場合と、沸騰や高圧側からの流入が続く場合では、必要な放出量が異なります。
対象は、温水設備だけでなく、熱交換器の保全で閉じた区間や、日射を受ける屋外配管にもあります。停止中の設備でも、どの弁を閉じると満水の区間ができるかを配管図で確認します。
液体の熱膨張だけなら、増えた体積を逃がすことで圧力を抑えられる場合があります。ただし、高圧源から流入し続ける場合や加熱により蒸気が発生する場合は、同じ小容量の考え方では選べません。
通常運転の膨張を受け持つ機器として、膨張タンク・膨張水槽があります。膨張分を吸収する機能と、異常圧力を放出する機能を分けて、必要な保護を組み合わせます。
膨張タンクが設置されていても、途中の弁を閉じて接続を断てば、その区間の膨張を吸収できません。定常運転時だけでなく、洗浄・切替・停止時の弁状態も含めて保護範囲を見直します。
液体用の逃し弁を選ぶ際は、放出される液体の温度と行き先を明確にします。熱水を大気へ出す場合には減圧に伴う蒸発も考慮し、人への接触や周辺設備への影響を避ける配置が必要です。
現場では、設定圧力の銘板、封印、腐食や漏れの有無を、設備の停止・点検手順に沿って確認します。外観が正常でも所定の能力を保証することにはならないため、必要な作動試験や整備の記録も確認します。
圧力が下がらない原因と、圧力が下がっても漏れが止まらない原因は、別々に調べます。作動履歴と圧力の記録を残すことで、容量不足、運転条件、弁座の不具合を区別しやすくなります。
ヨシタケは原則として出荷時の設定指定か工場返送での変更を求め、現場調整できる型式を限定しています。設定を変える際は、設計条件や法令上の許容範囲と、対象型式の取扱説明書を照合します。

安全弁の設定圧力のよくある質問
安全弁の設定圧力は最高使用圧力と同じですか?
同じ値に設定する場合でも、機器側の使用限界と弁側の作動基準という意味の違いがあります。適用法令と弁の特性を満たし、通常運転から十分に離れた設定が成立するかを確認します。
安全弁を低く設定すれば圧力容器になりませんか?
設定変更だけで法令区分は判定できません。用途、使用する最高のゲージ圧力、容積・寸法などの条件と、実際に採用する設計・運転条件を照合して判断します。
口径が同じなら安全弁の能力も同じですか?
形式や流体、設定圧力などで放出能力が変わるため、容量表の適用条件が重要です。安全弁の選定方法も参照し、必要量と同じ条件の容量を比較します。
吹いた安全弁が止まらないときはどうしますか?
設備の異常時手順に従い、圧力が十分に下がっているか、供給が続いていないかを確認します。圧力が下がった後の弁座漏れも区別し、設定を上げる対処で原因を隠さないことが必要です。
減圧弁があれば安全弁は不要ですか?
減圧弁の故障により、下流機器の許容圧力を超える可能性があります。減圧弁の設置だけで保護が成立したと考えず、故障時の流入と適用基準から過圧保護の必要性を検討します。
まとめ
- 設定圧力と最高使用圧力は別の意味を持つ
- 圧力容器の区分は設定値だけでなく用途・使用条件・容積等から判定する
- 保護範囲の機器について、使用温度での許容圧力を確認する
- 減圧弁故障などの想定に対し、必要放出量と放出能力を照合する
- 閉塞液の膨張、放出先、背圧、停止時の弁状態まで確認する
設定圧力の数字を一つ決める前に、何をどの異常から守るのかを明らかにします。機器の許容条件と故障時の流入量を整理し、容量・配管・放出先を一式で確認することが、過圧保護の基本です。
出典
出典・参考資料(2件)を開く出典・参考資料を閉じる
- Spirax Sarco:Safety Valve Installation(放出配管・ドレン・反力・整備)
- CGA:PS-28公開要旨(閉じ込めた流体の熱膨張による過圧。海外の設置・再検査要件は本記事に適用していません)
- e-Gov:労働安全衛生法施行令(第一条、圧力容器の定義)
- e-Gov:ボイラー及び圧力容器安全規則(第28条・第65条)
- ヨシタケ:よくある質問・安全弁(設定・作動・適用流体)
- Spirax Sarco:Safety Valve Selection(運転圧力と設定、吹下り)
- Spirax Sarco:Safety Valve Sizing(故障条件と放出容量)
- Spirax Sarco:Safety Valves(ばね式の基本構造)
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