技術営業・FAEの仕事の流れ|引き合いから量産フォローまでの各工程を実務目線で解説

顧客の設計者と基板を見ながら打ち合わせる技術営業

技術営業の仕事は、顧客からの問い合わせ(引き合い)を受けて課題を聞き取るところから始まります。技術的な検討、提案と見積もり、サンプルでの性能確認、導入時の立ち会い、量産が始まったあとの不具合対応まで、1件の案件が数週間から数年続きます。

半導体や電子部品の分野で顧客の設計を支えるFAEも、同じ流れで動きます。担当者は常に複数の案件を、それぞれ異なる段階で並行して抱えながら、顧客と社内のあいだで情報をつなぎます。

この記事では、技術営業・FAEの仕事の流れを、提案、採用・導入、量産・アフターの3つの段階に分け、各工程で使う書類や関わる人、よくある失敗まで順に整理します。

目次

技術営業・FAEの仕事の全体像

オフィスで案件の進捗を整理する技術営業

技術営業の仕事は、次のような流れで進みます。

引き合い・ヒアリング → 技術検討・製品選定 → 提案・見積もり → 評価・デモ → 仕様確定・受注 → 導入立ち上げ → 量産フォロー・不具合対応 → 次の提案

図1:技術営業・FAEの仕事の流れ

提案、採用・導入、量産・アフターの3つの段階に分かれます。

提案
01引き合い・ヒアリング問い合わせを受け、顧客の課題と条件を聞き取る
02技術検討・製品選定条件に合う製品を選び、実現できるかを確かめる
03提案・見積もり提案書と見積書をまとめ、採用の根拠を示す
採用・導入
04評価・デモサンプルや実機で、狙いどおりに動くかを確認する
05仕様確定・受注仕様書と条件を詰め、正式な注文につなげる
06導入立ち上げ据え付けや初期設定に立ち会い、稼働させる
量産・アフター
07量産フォロー・不具合対応安定稼働を見守り、トラブルの原因を調べる
08次の提案顧客の声を社内に届け、次の案件につなげる

※量産部品か受注生産の設備かによって、各工程の長さや順番は変わります。

FAEの場合は、評価の段階を「デザインイン」、顧客の製品への採用が決まることを「デザインウィン」と呼ぶことがあります。呼び方は違っても、全体の流れは共通です。

どの段階でも共通するのは、顧客と社内のあいだに立って情報をつなぐことです。案件の進み具合を記録し、関係者と共有しておくことが、流れを止めないための基本になります。

多くの会社では、営業支援システム(SFA)や顧客管理システム(CRM)に訪問記録や見込みを入力して管理しています。

1件の案件は、短ければ数週間、長ければ数年にわたります。技術営業は常に複数の案件を、それぞれ異なる段階で並行して抱えているのが普通です。順に見ていきます。

提案段階(引き合いから見積もりまで)

顧客の設計室でサンプル部品を説明する技術営業

最初の段階は、顧客の課題を理解し、自社の製品でどう解決できるかを示すまでの工程です。ここで提案の方向を誤ると、後の工程でいくら頑張っても取り返しがつきません。

提案段階で使う主な道具は、次のとおりです。

  • カタログやデータシート
  • 過去の提案書や事例集
  • 見積もりの作成ツール など

ヒアリングでは、次の4つの項目を押さえておくと、後の工程がスムーズに進みます。

図2:ヒアリングで確認したい4つの項目

技術的な条件だけでなく、商談の条件も同時に押さえます。

技術条件必要な性能、精度、使用環境、接続する装置など
予算と導入時期いくらで、いつまでに導入したいか
決定までの流れ誰が評価し、誰が最終的に決めるのか
現状と競合今使っている製品と、比較される他社製品

引き合い・ヒアリング

仕事の起点は、主に次のようなものです。

  • 顧客からの問い合わせ
  • 展示会での相談
  • 既存顧客からの追加の依頼

まずは顧客を訪問し、何に困っているのか、何を実現したいのかを聞き取ります。

問い合わせの経路は、Webサイトや展示会、販売代理店からの紹介などさまざまです。最初の返答の速さと的確さが、その後の関係を決めることも多く、引き合いには早めに反応することが基本です。

このとき大切なのは、顧客が口にした要望の背景にある本当の課題を探ることです。「もっと高精度なセンサーがほしい」という相談でも、実は取り付け方法を見直すだけで解決する場合もあります。

よくある失敗は、技術条件だけを聞いて、予算や決定の流れを確認し忘れることです。技術的に最適な提案でも、予算や社内の承認手続きに合わなければ採用されません。

ヒアリングで聞いた要望や商談の条件を整理する際の補助に、録音・文字起こしを使う「PLAUD」の紹介をご覧ください。

※リンク先の商品紹介には、アフィリエイト広告を含みます。

技術検討・製品選定

聞き取った条件をもとに、自社の製品群から候補を絞り込みます。カタログやデータシートの数値を比べるだけでなく、必要に応じて計算や簡単な試験を行い、実現できるかを確かめます。

標準品で対応できない場合は、社内の設計・開発部門に相談し、特注や改造で対応できるかを検討してもらいます。自分だけで判断せず、早い段階で社内の専門家を巻き込むことが、後の手戻りを防ぎます。

技術的な裏付けが不十分なまま提案に進むと、評価の段階で性能が出ずに信頼を失うことがあります。わからない点は「確認して回答します」と持ち帰る判断も大切です。

この工程では、社内の技術資料や過去の不具合事例のデータベースを調べることも多くなります。似た用途での採用実績があれば、提案の説得力が大きく高まります。

提案・見積もり

検討の結果を、提案書と見積書にまとめて顧客に示します。提案書に盛り込む主な内容は次のとおりです。

  • 選んだ製品の仕様
  • 課題がどう解決できるかの説明
  • 導入のスケジュール

提案書は、顧客の担当者がそのまま社内の稟議資料に使えるように作るのが理想です。導入の効果を、生産性やコストの数字で示せるかどうかが、顧客の社内承認を通るかどうかを左右します。

見積もりでは、製品価格に加えて、据え付けや保守の費用、納期も明示します。価格の根拠や値引きの幅は社内の決裁が必要になることが多く、上司や管理部門との調整もこの段階の仕事です。

提案の場には、顧客の設計者、生産技術の担当者、購買担当者などが同席します。相手の立場ごとに関心が違うため、性能を気にする人にはデータを、コストを気にする人には導入効果を示すなど、説明の重点を変える工夫が必要です。

提案のあとは、顧客の反応を確かめながら、競合との比較で不利な点がないかを見直します。価格で負けそうな場合でも、性能や保守の手厚さなど、別の価値で勝負できる余地がないかを考えます。

採用・導入段階(評価から立ち上げまで)

顧客の評価室で試作品の評価結果を確認する技術営業

提案が前向きに検討されると、次は実際に製品を試してもらい、採用を決めてもらう段階に入ります。技術営業が顧客の現場に最も深く入り込む時期です。

評価では、顧客が次の3つの観点から製品を確かめます。技術営業は、それぞれの観点で必要なデータや試験の方法を提供し、顧客の判断を支えます。

図3:評価の段階で確認する3つの観点

顧客が採用を決めるまでに、主に次の3点が確かめられます。

PPerformance/性能カタログどおりの性能が、顧客の条件でも出るか
RReliability/信頼性長時間の稼働や、厳しい環境でも問題が出ないか
CCost/コスト導入と運用にかかる費用が、効果に見合っているか
評価の結果は顧客の社内で報告されるため、技術営業は結果をわかりやすくまとめる手助けもする。

評価・デモ

評価用のサンプルを貸し出したり、実機でのデモを行ったりして、製品が顧客の条件で狙いどおりに動くかを確かめてもらいます。FAEであれば、顧客の試作基板に部品を載せ、回路の定数や設定を一緒に調整することもあります。

評価で問題が出た場合は、原因が製品にあるのか、使い方や周辺の条件にあるのかを切り分けます。問題が出たときこそ、技術営業の対応力が評価される場面です。

よくある失敗は、サンプルを渡したまま連絡が途絶えてしまうことです。評価の進み具合をこまめに確認し、困りごとがあればすぐに支援できる体制を整えておくことが大切です。

評価の期間は、短ければ数週間、FAEが支援する電子部品の採用では半年以上に及ぶこともあります。長い評価期間のあいだも、顧客との接点を切らさないことが採用への近道です。

仕様確定・受注

評価で目処が立ったら、最終的な仕様と取引の条件を詰めていきます。仕様書や承認図、納入仕様書などの書類を取り交わし、顧客の社内承認を経て正式な注文につながります。

この段階で仕様の認識がずれていると、納入後に「聞いていた内容と違う」というトラブルになります。口頭で決めたことも必ず書面に残すのが鉄則です。

受注が決まったら、社内の生産管理の担当者に生産の手配を依頼し、納期を確定させます。特注品の場合は、設計・製造の担当者との打ち合わせも行います。

契約の条件や支払い条件、保証の範囲なども、この段階で確定させます。購買・調達部門を通じた取引では、顧客の購買担当者と条件を最終確認するのが一般的です。

導入立ち上げ

設備や装置の場合は、納入後の据え付けや試運転、初期設定に立ち会います。専任のサービス部門がある会社では、その担当者と一緒に現場に入り、顧客への引き継ぎを行います。

部品の場合は、顧客の量産ラインで初めて部品が使われる量産立ち上げの時期に、工場を訪問して問題がないかを確認します。試作では出なかった不具合が、量産の数量になって初めて表に出ることもあるためです。

立ち上げでは、配線や周辺の装置との接続、ソフトウェアの設定など、現場でしかわからない問題が出ることも少なくありません。顧客の生産開始日に間に合わせるため、社内の技術者を呼んで対応することもあります。

立ち上げが終わったら、操作方法の説明や取扱説明書の引き渡しを行い、顧客の担当者が自分たちで使いこなせる状態にします。稼働を確認して引き継ぐまでが、導入の仕事です。

量産・アフター段階

顧客の量産ラインで現場担当者と確認する技術営業

製品が顧客の工場で使われ始めたり、顧客の製品に組み込まれて量産が始まったりしても、技術営業の仕事は終わりません。むしろここからの対応が、次の受注を左右します。

量産フォロー・不具合対応

量産や稼働が始まったあとも、定期的に顧客を訪問し、問題なく使われているかを確認します。消耗品の補充や追加の注文、生産量の変動に合わせた納期の調整なども、この段階の仕事です。

電子部品では、部品の生産終了や仕様変更のお知らせを顧客に伝え、代わりの部品を提案することもこの段階の仕事です。顧客の生産を止めないための先回りの連絡が、長い取引を支えます。

不具合が起きた場合は、まず現象を正確に聞き取り、品質保証の担当者と一緒に原因を調べます。応急の対応と恒久的な対策を分けて説明することで、顧客の生産への影響を最小限に抑えます。

原因の調査結果や対策は、報告書としてまとめて顧客に提出するのが一般的です。対応が遅れたり説明があいまいだったりすると、次の採用で他社に切り替えられることもあります。

よくある失敗は、原因がはっきりしないうちに推測で説明してしまうことです。わかっている事実とまだ調査中の点を分けて伝えることで、顧客の信頼を保てます。

次の提案

量産フォローの中で集まった顧客の要望や、競合の動きは、社内の開発部門や商品企画に伝えます。こうした現場の情報が、次の製品開発の種になることも少なくありません。

また、ある工場での成功事例を、同じ顧客の別の工場や、似た課題を持つ別の顧客に展開していくのも技術営業の大切な役割です。1件の案件の終わりが、次の案件の始まりになる仕事と言えます。

近年は、製品の稼働データをネットワークで集め、予知保全のように故障の兆しを事前に伝える取り組みも増えています。売ったあとの支援が、次の提案の材料になる流れはさらに強まっていると言えます。

業界・会社による違い

展示場で顧客に設備の仕様を説明する技術営業

ここまで紹介した流れは、どの技術営業にも共通する基本の形です。ただし、扱う製品や会社の規模によって、各工程の長さや重みは大きく変わります。

図4:量産部品と受注生産設備の技術営業の違い

扱う製品によって、力を入れる工程が変わります。

量産部品(電子部品・素材など)
受注生産設備(工作機械・FA設備など)
案件の期間
採用まで1〜数年、その後も長く続く
受注から納入まで数か月〜1年程度
重い工程
評価・デザインインの支援
仕様確定と導入立ち上げ
売上の形
顧客の量産数に応じて継続的に入る
1台ごとにまとまった金額が入る
主な相手
顧客の設計・開発部門
顧客の生産技術・工場部門

※同じ会社でも、製品ごとに両方の性質をあわせ持つ場合があります。

量産部品と受注生産設備の違い

電子部品や素材のような量産部品では、顧客の製品に一度採用されると、その製品が量産される限り注文が続きます。そのため、採用を勝ち取るまでの評価支援に最も時間をかけるのが特徴で、電子部品・半導体業界のFAEはこの働き方の典型です。

一方、工作機械やFA設備のような受注生産の製品では、1件ごとの金額が大きく、仕様の詰めと立ち上げの比重が高くなります。FA業界や機械業界の技術営業は、顧客の工場に入る時間が長くなる傾向があります。

どちらの場合も、顧客の業界の事情を知っておくことが欠かせません。自動車向けであれば品質の要求が厳しく、半導体製造向けであれば清浄度や装置の稼働率への要求が高いなど、同じ製品でも提案のポイントが変わります。

メーカーと商社の違い

商社の技術営業やFAEは、複数のメーカーの製品を組み合わせて提案できるのが強みです。その反面、製品の詳しい技術情報はメーカーから得る必要があり、メーカーの技術者と顧客のあいだで調整する場面が多くなります。

商社では、複数メーカーの中から顧客に合う製品を中立的に選べるため、顧客にとっては相談しやすい相手になります。メーカーと商社のFAEの関係は、次のように整理できます。

図5:商社のFAEが関わる3者の関係

商社のFAEは、メーカーと顧客のあいだで技術支援を行います。

部品メーカー製品の開発と製造を担い、詳しい技術情報を持つ
技術情報・サンプル
商社のFAE複数メーカーの製品を組み合わせ、顧客の設計を支援する
提案・評価支援
顧客(機器メーカーの設計部門)部品を選定し、自社の製品に組み込む

※メーカーのFAEが商社と一緒に顧客を訪問することもあります。

大手と中小の違い

大手メーカーでは、次のように工程ごとに担当が分かれていることが多くあります。

  • 提案を担う技術営業
  • 評価を支援するアプリケーションエンジニア
  • 立ち上げを担うサービスエンジニア

分業が進んだ会社では、自分の担当する工程を深く掘り下げられる一方で、前後の工程で何が起きているかが見えにくくなることもあります。後工程の担当者とこまめに情報を交換することが大切です。

中小のメーカーや商社では、1人の技術営業が引き合いから立ち上げ、不具合対応まで一貫して担当するのが一般的です。担当範囲は広くなりますが、案件の全体を見渡せる経験が早く積めるという良さもあります。

どの会社に所属していても、案件全体の流れを理解しておくことが、自分の担当工程の質を高めることにつながります。まずは全体像をつかみ、自分がどの工程を担っているのかを意識することが大切です。

まとめ

この記事のまとめ
  • 技術営業・FAEの仕事は、提案、採用・導入、量産・アフターの3段階で進む
  • 提案段階では、顧客の本当の課題を聞き取り、技術的な裏付けのある提案をする
  • 採用・導入段階では、評価の支援と仕様の書面化、立ち上げへの立ち会いが中心
  • 量産後も不具合対応と情報のフィードバックを通じて、次の案件につなげる
  • 量産部品か受注生産設備か、メーカーか商社かで力を入れる工程が変わる

技術営業・FAEという職種の全体像は技術営業・FAEとは、必要なスキルや資格、年収については技術営業・FAEに必要なスキル・資格とキャリアパスで詳しく解説しています。

技術営業・FAEについては、技術営業・FAEの職種ページから関連記事もあわせてご覧ください。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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