電子部品のデザインインとは|FAEが採用を勝ち取る流れとポイント

作業台の上で測定器につながれた評価ボードとICのサンプル

デザインインとは、顧客が製品を設計している段階で、自社の部品を採用候補として検討してもらうこと、またはそのための活動です。電子部品や半導体では、どの部品を使うかが、注文よりずっと前の設計段階でほぼ決まります。

設計者が回路を考えている段階で候補に入り、評価を通って採用されなければ、見積を出す機会そのものが巡ってきにくくなります。この場面で技術面から顧客を支えるのが、FAE(フィールド・アプリケーション・エンジニア)と呼ばれる技術者です。

この記事では、電子部品のデザインインを、言葉の意味とデザインウィンとの違い、設計段階が勝負になる理由、顧客の開発段階ごとの動き方から整理します。

続いて、営業・FAE・商社の役割分担、採用を後押しする道具、採用後の量産・PCN・EOL、車載で加わる認定の順に見ていきます。

目次

デザインインとは

デザインインとは、顧客が製品を設計している段階で、自社の部品を採用候補として検討してもらうこと、またはそのための活動を指します。

エレクトロニクス商社の丸文は、用語集で「お客様の製品開発過程で、提案している商品が、採用候補として検討に着手されること」と説明しています。

対になる言葉がデザインウィンです。同じ用語集では「お客様の製品開発過程で、提案している商品の採用が決定すること」とされています。検討が始まった状態がデザインイン、採用が決まった状態がデザインウィン、という関係です。

ただし、この2つの線引きは会社や人によって異なります。半導体業界の解説では、最終製品に組み込まれるまでの売り込みのプロセス全体をデザインインと呼ぶ使い方も紹介されています。

その使い方では、その製品が実際に市場で売れて売上になることをデザインウィンと呼ぶとされています。

社内や取引先と話すときは、「検討開始」「採用決定」「量産での売上」のどこを指しているのかを最初に確認しておくと、案件の進み具合の認識がずれません。

この記事では、丸文の用語集と同じく、検討開始をデザインイン、採用決定をデザインウィンとして話を進めます。

図1:デザインインとデザインウィンの違い

検討が始まった状態と、採用が決まった状態を分けて呼びます。

デザインイン
デザインウィン
何が起きた状態か
提案した部品が、採用候補として検討され始めた
提案した部品の採用が決まった
顧客側の動き
データシートの確認、サンプルや評価ボードでの評価
回路図と部品表への登録、試作・量産に向けた手配
売り手の主な仕事
技術提案、サンプル提供、評価中の質問への回答
量産数量と時期の確認、供給の準備、購買との条件調整
この時点の売上
まだない(サンプル提供が中心)
まだ小さい(売上は量産が始まってから)

※定義は丸文の用語集による。最終製品が市場で売れて売上になることまでを「デザインウィン」と呼ぶ使い方もあり、会社によって指す範囲が異なります。

設計段階が勝負になる理由

多面付けのプリント基板と表面実装部品のリール

電子部品の営業で設計段階が重視されるのは、部品が一度回路に組み込まれると、後から別の部品に置き換えにくいからです。仕組みを2つの面から見ていきます。

回路と基板は、選んだ部品に合わせて作られる

ICを1つ選ぶと、その周りに付ける抵抗やコンデンサの値、基板上の配線、場合によってはソフトウェアまで、その部品に合わせて設計されます。

同じ機能の他社品があっても、端子の並びや電気的な特性が少しずつ違うため、そのまま差し替えられるとは限りません。

置き換えるとなれば、回路の見直しと基板の作り直し、動作や信頼性の再評価が必要になることが多くあります。顧客にとっては手間と費用がかかるため、量産が始まった製品の部品は、よほどの理由がない限り変更されにくい傾向があります。

売り手から見ると、設計段階で採用されれば、その製品が生産されているあいだ注文が続くことが期待できます。

逆に、仕様が固まった後で声をかけても、残っているのは同等品どうしの価格比較だけ、ということになりがちです。

電子部品・半導体業界の商流で、部品メーカーと商社が顧客の設計部門に技術者を送り込むのはこのためです。

採用が決まっても、売上はまだ立たない

もう一つ押さえておきたいのは、採用の決定と売上の発生には時間差があることです。顧客はそこから試作と評価を重ね、量産に入って初めてまとまった数量を発注します。顧客の製品が計画どおりに売れなければ、採用されていても数量は伸びません。

このずれを投資家向けに開示している企業もあります。

顧客ごとに専用の半導体(カスタムSoC)を開発するソシオネクストは、獲得した商談から見込まれる将来の需要を公表しています。名称は「商談獲得金額」で、英語版の資料ではDesign Win Amountです。

2025年度は約3,100億円、2025年度末の商談獲得残高は約1兆5,100億円でした(いずれも1ドル120円で算出)。

同社の資料には、2019〜2025年度の商談獲得金額の合計のうち、およそ15%に相当する商談が獲得後に中止になったという注記もあります。

他の商談での単価上昇や数量増で一部が相殺され、合計への影響は数%の減少だったとも説明されています。

汎用の電子部品とは事業の形が異なりますが、採用を獲得しても売上になるまでに年単位の時間がかかり、途中で案件がなくなることもある、という点は共通しています。

図2:採用の獲得と売上のずれ(ソシオネクストの開示例)

採用を獲得した時点の見込みと、実際の売上は別のものとして管理されています。

2025年度に獲得約3,100億円商談獲得金額。獲得した商談から見込まれる将来の顧客需要の予測
2025年度末の残高約1兆5,100億円商談獲得残高。存続している商談から今後見込まれる需要の見積り
獲得後に中止およそ15%2019〜2025年度の商談獲得金額の合計に対する、事後的に中止になった商談の割合
採用が決まった案件の数や金額は「将来の売上の見込み」であり、量産が始まって初めて売上になります。

※ソシオネクスト「2025年度通期 決算概要と成長戦略」(2026年4月28日)より。金額は1ドル120円で算出された同社の予測値。カスタムSoCの事業であり、汎用部品の一般的な水準を示すものではありません。

このため、採用件数だけを追いかけると判断を誤ります。半導体業界の解説でも、採用を多く獲得したものの、1件ごとの数量が小さく開発費を回収できなかった例が紹介されています。

件数とあわせて、量産時の数量と時期の見込みを確認しておくことが欠かせません。

製品開発の段階と部品が決まるタイミング

デザインインの活動は、顧客の製品開発の進み方に合わせて内容が変わります。開発の流れは会社や製品によって違いますが、おおまかには構想、回路設計と部品選定、試作、評価、量産準備、量産の順に進みます。

図3:顧客の開発段階と、売り手の動き

部品が決まるのは前半です。後半は、決まった部品を量産につなげる仕事になります。

部品が決まるまで(デザインイン)
01構想顧客:製品の機能・目標コスト・発売時期を決める
売り手:次の製品で何を実現したいかを聞き、使えそうな部品を紹介する
02回路設計・部品選定顧客:候補の部品を比較し、回路図を描く
売り手:データシート、サンプル、評価ボード、参考回路を提供する
03試作顧客:試作基板を作り、動作を確かめる
売り手:回路や基板配線の確認、不具合の切り分けを支援する
採用の決定(デザインウィン)から量産へ
04評価顧客:温度・ノイズ・寿命などの試験を行い、部品を確定する
売り手:信頼性データや環境関連の資料を提出する
05量産準備顧客:部品表を確定し、購買が価格・納期・供給条件を決める
売り手:見積、量産数量と時期の確認、生産枠の確保
06量産顧客:継続して発注する
売り手:納期管理、品質問題への対応、変更や生産中止の連絡

※段階の呼び方と順番は顧客によって異なります。部品の種類によっては、構想より前の技術調査の段階から関わることもあります。

候補に入るのは、回路図が描かれる前

部品の候補が絞られるのは、構想から回路設計にかけての時期です。電気・電子設計の仕事の流れでいえば、仕様確認と構想設計にあたります。この時期の設計者は、実現したい機能と目標コストに合う部品を探している最中です。

ここで名前が挙がらなかった部品は、比較の対象になりにくくなります。売り手にとっては、顧客の次の製品の計画をどれだけ早く知れるかが最初の分かれ目です。前の製品で採用されていれば設計者との接点があるため、情報を得やすい立場にあります。

試作に入ってから提案しても、間に合わないことが多くなります。回路図と基板の設計が進んでいるため、部品を替えるには設計をやり直す必要があるからです。

その場合は無理に押し込むのではなく、次の製品や派生製品での採用を目標に関係をつくっておくほうが現実的です。

想定例:電源ICを提案する場合

流れを具体的にするため、架空の想定例で見てみます。産業用コントローラを開発しているA社に、部品メーカーB社が電源ICを提案する場面です(企業も製品も説明のための想定です)。

構想段階で、B社の営業はA社が次の機種で基板を小さくしたいと考えていることを知ります。FAEが同行して現行機種の電源まわりの構成を聞き、外付け部品を減らせる電源ICを紹介しました。

A社の設計者は評価ボードを借り、自社の負荷条件で効率と発熱を測ります。

試作では、出力にノイズが乗る問題が起きました。FAEが基板の配線を確認し、コンデンサの位置を変える案を示して解決します。評価試験を通過した時点で、この電源ICがA社の部品表に登録されました。ここがデザインウィンです。

その後は、A社の購買部門と価格・納期・供給条件を詰め、量産に入ります。B社にまとまった売上が立つのは、この量産が始まってからです。

部品表の管理については、E-BOMとM-BOMの違いを知っておくと、設計と製造のどちらの部品表に載った段階なのかを区別しやすくなります。

営業・FAE・商社の役割分担

デザインインは一人で進める仕事ではありません。部品メーカーの営業とFAE、そして商社(代理店)が、それぞれの持ち場を分担します。

図4:デザインインに関わる人と、その相手

売り手は顧客の設計・購買・品質の各部門と、それぞれ別の話をしています。

部品メーカー営業・FAE・製品担当・品質保証。製品そのものと技術情報を持つ
製品・技術情報・案件の共有
商社(代理店)営業とFAEが顧客を訪問。複数メーカーの部品を組み合わせて提案し、在庫と納期も管理する
提案・技術サポート・供給
設計部門部品を選び、評価する
購買部門価格・納期・供給条件を決める
品質部門信頼性と変更管理を確認する

※取引量の大きい顧客には、部品メーカーが商社を介さず直接対応することもあります。

営業:顧客との関係全体を見る

営業は、顧客との関係全体を受け持ちます。次にどんな製品を、いつ、どのくらいの数量で計画しているかを聞き出し、社内の誰をいつ連れていくかを決める役割です。採用が近づくと、価格、納期、供給の条件を購買部門と詰めます。

設計者が部品を気に入っても、価格や供給の条件が合わなければ採用には至りません。購買・調達の仕事では品質・コスト・納期の3点で仕入先を評価するため、設計部門と購買部門の両方に話を通しておくことが営業の仕事になります。

FAE:技術面から採用を後押しする

FAE(Field Application Engineer)は、技術面から採用を後押しする技術者です。

丸文の用語集では「製品やソリューションの専門知識を持ち技術的な提案ができる営業担当者」と説明されています。技術営業・FAEの仕事内容のなかでも、電子部品の分野ではデザインインの推進が中心になります。

求められるのは、自社の部品だけでなく顧客の機器がどう設計されているかを理解し、どう組み込めばよいかを助言することです。顧客から聞いた要望や技術の動向を本社の開発部門に伝え、次の製品に反映させる役割もあります。

マクニカは自社のFAEについて、営業とともに顧客のもとへ足を運び、専門的な技術知識をもとにサポートする仕事だと紹介しています。データシートを読み込み、評価ボードを実際に動かして製品の挙動を理解しておくことが、提案の土台になります。

商社(代理店):幅広い顧客と複数メーカーをつなぐ

部品メーカーの人員だけでは、すべての顧客を回りきれません。そこで、多くの顧客への提案と技術サポートは商社が担います。商社にも営業とFAEがおり、顧客の相談を受けて、取り扱う製品の中から合うものを選んで提案します。

商社の強みは、複数のメーカーの部品を組み合わせて提案できることです。マイコンはX社、電源はY社、センサはZ社というように、回路全体を見た提案ができます。在庫を持ち、納期を調整する機能も顧客にとっては大きな価値です。

商社が設計段階で採用を獲得した案件をメーカーに登録し、その貢献に報いる仕組み(デザインレジストレーション)を設けているメーカーもあります。

米国の電子部品業界団体ECIAの手引きでは、設計段階でFAEを派遣するなど、商社が費やした時間や労力に報いるための制度と説明されています。

登録が認められた商社は、仕入価格の面で優遇されるのが通例とされています。制度の有無や条件はメーカーによって異なります。

採用を後押しする4つの道具

評価用の基板を前に打ち合わせをする技術者の後ろ姿

設計者は、カタログの数字だけでは部品を決めません。自分の回路で動かして確かめたうえで判断します。その確認を早く、楽にするために、売り手はいくつかの道具を用意しています。

図5:デザインインで使う4つの道具

設計者が「自分の回路で使えるか」を確かめる手間を減らすためのものです。

サンプル量産前に少量を提供する部品。顧客の試作基板に載せて動作を確かめてもらう
評価ボード部品と周辺回路を載せた基板。届いてすぐに特性を測れる。評価用であり、完成品に組み込んで使うものではない
リファレンスデザイン回路図、基板のパターン図、ガーバーデータ、サンプルソフトなどをまとめた参考設計。流用して設計できる
技術サポート回路や基板配線の確認、不具合の切り分け、ソフトウェアの使い方の説明など、評価中の疑問に答える

サンプルと評価ボード

サンプルは、試作用に少量提供する部品です。ただし部品だけを渡されても、動かすには周辺回路を組む必要があります。そこで、部品と周辺回路をあらかじめ基板に載せた評価ボードが用意されます。電源と測定器をつなげば、すぐに特性を確かめられます。

テキサス・インスツルメンツ(TI)は、評価用のボード、キット、モジュールをソフトウェアや文書と一緒に提供するものをEVMと呼んでいます。

約款では、用途を調査・開発の環境での評価や実験に限り、完成品に組み込んで使うことは想定していないと定めています。評価ボードはあくまで確かめるための道具、という位置づけです。

リファレンスデザイン

リファレンスデザインは、部品メーカーが用意する参考設計です。

東芝デバイス&ストレージのリファレンスデザインセンターは、回路図だけでなく、基板のパターン図やサンプルソフトなども提供しています。ガーバーデータ(基板製造用のデータ)もそろっており、流用して設計できるとしています。

設計者にとっては、動作が確認された回路を出発点にできるため、検討の時間を短くできます。売り手にとっては、自社の部品を複数まとめて使った回路を示せるため、1つの部品だけでなく周辺の部品まで一緒に採用してもらえる可能性が高まります。

評価中の技術サポート

道具をそろえても、評価の途中では疑問や不具合が出てくるものです。思ったとおりの特性が出ない、ノイズが乗る、起動しないことがある、といった問題です。ここで原因を分析し、解決までの道筋を立てるのがFAEの役割です。

回答が遅れると、顧客の開発日程に影響します。設計者は日程を守るために、対応の早い別の部品に切り替えることもあります。評価中の対応の速さと正確さも、採用を左右する要素の一つです。

採用後に続く仕事:量産・PCN・EOL

採用が決まったら終わり、ではありません。顧客の製品が生産されているあいだ、部品を安定して届け、変更があれば事前に知らせる責任が続きます。ここでの対応が、次の製品で再び選ばれるかどうかに影響します。

量産立ち上げと供給

量産準備の段階では、顧客の生産計画に合わせて数量と時期を確認し、メーカー側の生産に反映させます。

顧客が自社で組み立てず、EMS(電子機器の受託製造サービス)に生産を委託している場合は、発注元がEMSになります。そのため、採用を獲得した案件と実際の注文を結びつけて追う管理が必要です。

量産が始まってからは、納期の管理と、品質問題が起きたときの原因調査・報告が主な仕事になります。量産中の対応の積み重ねが、次の機種の構想段階で声をかけてもらえるかを決めます。

PCN:製品や工程の変更を知らせる

PCN(Product Change Notification、製品変更通知)は、部品の供給を続ける前提で、製品や製造工程の変更を顧客に知らせる通知です。材料の変更、工程の変更、製造工場の移管などが対象になります。

通知の出し方には業界標準があります。

J-STD-046(現行版はJ-STD-046A)は、半導体分野の標準化団体JEDECが公開している規格です。電子製品とその製造工程の変更を、顧客に適切な時期に通知するための要求事項を定めたものです。

NXPやTIなどの半導体メーカーが、この規格に沿って通知する方針を公表しています。

たとえばNXPは、製品の形状・適合性・機能・品質・信頼性に影響しうる変更を、実施の90日前にPCNで通知する方針です。

通知から30日以内に応答がなければ、変更を受け入れたものとみなす、との記載もあります。

TIも同じ規格に従うとし、PCNには変更の内容と理由、対象製品、影響の見込み、認定試験の計画や結果、サンプルの入手可能日などを記載するとしています。

ここに挙げた日数は各社が公表している方針の例で、実際の扱いは製品や契約によって異なります。

顧客はPCNを受け取ると、自社製品への影響を調べ、必要なら再評価を行います。売り手側の営業やFAEは、対象の製品を使っている顧客に確実に届け、質問をメーカーに取り次ぐ役割を担います。

EOL:生産中止を知らせる

EOL(End of Life、生産中止)は、部品の供給が終わることを知らせる通知です。通知には、最後に注文を受け付ける日(最終受注日)と、最後に出荷する日(最終出荷日)が示されます。

最後の注文はLTB(Last Time Buy)と呼ばれます。

こちらの業界標準はJ-STD-048(現行版はJ-STD-048A)です。JEDECは、この規格について、製品の生産中止による混乱を顧客が管理・軽減し、供給を途切れさせないようにすることを目的に挙げています。

期間は、各社がそれぞれ方針を公表済みです。TIの方針は、最終受注を通知後12か月以内、最終納入を受注期間の終了後6か月までです。ルネサスは、最終受注を通知日から6〜12か月受け付け、その後およそ6〜12か月は生産を続けるとの方針です。

図6:PCNとEOLの違い

供給が続くのか、終わるのかで、顧客が取るべき対応が変わります。

PCN(製品変更通知)
EOL(生産中止通知)
知らせる内容
材料・工程・製造工場などの変更
生産の終了。最終受注日と最終出荷日
部品の供給
続く
終わる
関連する規格
J-STD-046
J-STD-048
公表されている期間の例
NXP:実施の90日前に通知
TI:最終受注は通知後12か月以内、最終納入はその後6か月まで
ルネサス:最終受注は通知日から6〜12か月
顧客の対応
影響の調査、必要に応じて再評価
最終の発注数量を決める、代わりの部品を探す、設計を変更する

※期間は各社が公表している方針の例であり、製品や契約によって異なります。実際の日付は個別の通知で確認します。

ルネサスは製品の状態を、開発中、量産中、新規設計非推奨(NRND)、EOL通知済み、EOL済みといった段階で公開しています。

設計段階の提案では、その部品が今どの段階にあり、どのくらい供給が続く見込みかを伝えることも大切です。生産期間の長い産業機器や車載機器の顧客ほど、この点を重視します。

車載で加わる認定:AEC-QとPPAP

デザインインの進め方は、顧客の製品分野によっても変わります。違いが大きいのが自動車向けです。評価の段階で、部品そのものの信頼性と、量産工程の両方について、決まった形式での証明を求められます。

図7:車載向けで求められる主な規格・手続き

部品の信頼性を確かめる規格と、量産工程を確かめる手続きに分かれます。

AEC-Q100
部品の信頼性集積回路(IC)を対象とする、故障メカニズムにもとづくストレス試験の認定規格
AEC-Q101
部品の信頼性トランジスタやダイオードなどのディスクリート半導体を対象とする認定規格
AEC-Q200
部品の信頼性抵抗、コンデンサ、インダクタなどの受動部品を対象とするストレス試験の認定規格
PPAP
量産工程の承認生産部品承認プロセス。実際の生産速度での量産で、設計と仕様の要求を満たし続けられることを示す
PCN・EOLの運用
変更管理変更や生産中止の通知。TIは車載向け製品の変更通知について、AEC-Q100にも従うとしている

※AEC-QはAutomotive Electronics Council、PPAPはAIAG(Automotive Industry Action Group)が文書を発行しています。

AEC-Qは、車載用電子部品の信頼性試験の規格群です。

AEC(Automotive Electronics Council)は、1990年代にクライスラー、フォード、GMの米国自動車メーカー3社が設立した団体です。

ICを対象とするAEC-Q100、ディスクリート半導体のAEC-Q101、受動部品のAEC-Q200などを発行しています。

車載向けの提案では、該当するAEC-Q規格の要求を満たした製品であることが、候補に入るための前提になることが多くあります。民生機器向けの部品をそのまま提案しても、評価の入口で外されることが少なくありません。

PPAP(Production Part Approval Process、生産部品承認プロセス)は、量産工程の承認手続きです。

米国の自動車業界団体AIAGがマニュアルを発行しており、実際の生産速度での量産で、設計記録と仕様の要求を一貫して満たせることを確認する目的があります。

車載の案件では、採用の決定から量産開始までに、こうした書類の提出と承認の工程が加わります。営業とFAEだけでなく品質保証部門も早い段階から関わるため、社内の段取りを組む力が求められます。

民生機器や産業機器では求められる書類がこれより少ないことが多いものの、顧客ごとに独自の認定手続きを持つ場合があるため、最初に確認しておくと安心です。

まとめ

この記事のまとめ
  • デザインインは、顧客の設計段階で自社の部品が採用候補として検討されること。採用の決定はデザインウィンと呼ぶ
  • 回路と基板は選んだ部品に合わせて作られるため、量産後の置き換えは起きにくい。設計段階が勝負になる
  • 採用が決まっても売上は量産が始まってから。件数だけでなく数量と時期の見込みを確認する
  • 営業は関係全体と条件、FAEは技術、商社は幅広い顧客への提案と供給を担う
  • 採用後もPCNとEOLの通知を通じて責任が続く。車載ではAEC-QとPPAPへの対応が加わる

デザインインは、売り込みというよりも、顧客の設計の仕事を手伝いながら自社の部品を選んでもらう活動です。

この仕事に就くために必要な知識や経験は、技術営業・FAEに必要なスキルとキャリアパスで整理しています。部品メーカーや商社にどんな会社があるかは、電子部品・半導体業界の主要企業にまとめています。

職種としての全体像は技術営業・FAEの職種ページから、業界の動きは電子部品・半導体の業種ページから、関連記事もあわせてご覧ください。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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