サプライヤー監査とは、買い手が仕入先の工場を訪ね、品質を保つための作業や管理が、決められた手順どおりに行われているかを確かめる活動です。届いた品物を調べる受入検査だけでは、こうした仕組みの状況までは分かりません。
当日の現場確認と同じくらい重いのが、どの仕入先の何を確かめるかを決める準備と、指摘した問題の手直し(是正)が終わったことを確かめるまでのフォローです。
チェック項目も、規格の条項を順に読み上げるより、モノの流れに沿って現場を回れる形にしたほうが、事実をつかみやすくなります。
この記事では、仕入先を監査する側の立場に絞り、チェック項目の全体像と6つのステップを示します。そのうえで、準備で決めること、当日の現場での確認点、指摘の出し方、是正のフォローと取引判断へのつなぎ方の順で整理します。
サプライヤー監査とは|受入検査では見えない仕組みを確かめる

サプライヤー監査とは、買い手が仕入先の工場や事務所を訪ね、品質をつくり込む仕組みが決めたとおりに動いているかを確かめる活動です。
監査の世界では、自社を自分で点検する内部監査を第一者監査、認証機関による審査を第三者監査と呼び、顧客が仕入先に対して行うものを第二者監査と呼びます。
監査の進め方の指針である JIS Q 19011:2019(ISO 19011:2018)は、内部監査とこの第二者監査を主な対象にしています。
指針であって強制力のある要求事項ではありませんが、監査の開始、準備、実施、報告、完了、フォローアップという流れは、仕入先の監査にもそのまま使えます。
ISO 9001:2015 の箇条8.4は、外部提供者(仕入先や外注先)について定めています。評価、選択、パフォーマンスの監視、再評価の基準を決めて適用し、その記録を残すことを求めています。
ただし、現地に出向く監査そのものを義務づけているわけではありません。管理の方法は、リスクの大小に応じて決めてよいとされています。
なお、ISO 9001 は2026年9月16日に改訂版の ISO 9001:2026 が発行されました。この記事では、これまで広く使われてきた2015年版の箇条で説明します。
では、受入検査で不良をはじき、納入実績を毎月集計していれば十分かというと、そうではありません。受入検査と実績の集計が見ているのは、すでに起きた結果です。
監査は、その結果を生み出している工程、人、ルールを見にいく手段であり、まだ不良として表に出ていない弱点を見つけられる点に意味があります。
3つは代わりになるものではなく、見ている対象が違います。
※ISO 9001:2015 の箇条8.4が求めているのは評価・選択・監視・再評価の基準と記録で、どの手段を使うかは会社が決めます。
自社の内部監査の進め方は別の記事で扱っているため、ここから先は仕入先を監査する側の手順に絞ります。

サプライヤー監査のチェック項目一覧|8つの領域
まず全体を押さえ、今回の目的に合わせて深く見る領域を選びます。
※領域ごとの質問例と照合する記録は、後半の図7にまとめています。
サプライヤー監査で確かめることは、大きく8つの領域に分けられます。品質体制と文書、受入と保管、工程管理、検査と計測器、不適合品と是正までは、自社の内部監査で見る内容とほぼ同じです。
買い手の立場で重みが増すのが、残りの3つです。変更管理、二次仕入先・外注、ロットの追跡は、仕入先の中で完結せず、自社の受入や顧客への納入に直接響く領域だからです。
仕入先が良かれと思って材料や設備を変えた結果、こちらの工程で不具合が出るという事態は、納入品の検査だけでは防ぎきれません。
8領域すべてを同じ深さで見ない
1日の監査で8領域を均等に見ようとすると、どの領域も書類の有無を確かめるだけで終わります。監査には場面があり、場面ごとに深く見るべき領域が変わります。
新しい仕入先を採用する前の新規認定では、体制と工程の実力を広く見ます。取引中の仕入先への定期監査では、前回の指摘が続いているかと、その後の変更が中心です。
不良の流出や納期遅延が続いたあとの臨時監査では、問題の起きた工程と是正処置に時間を集中させます。工程や材料の変更の連絡を受けたときは、変更箇所とその影響範囲だけを狭く深く見るのが基本です。
◎は時間をかけて現物と記録を追う領域、○は一通り確認する領域です。
※配分は一例です。対象品の重要度や過去の実績に合わせて、監査ごとに決め直します。
サプライヤー監査の流れ|6つのステップ
当日は6つのうちの1つで、前後の5つが結果の使いみちを決めます。
※JIS Q 19011:2019 の箇条6(監査の開始・準備・実施・報告・完了・フォローアップ)を、仕入先の監査に合わせて並べ直したものです。
サプライヤー監査は、準備の3ステップ、当日の1ステップ、監査後の2ステップで進みます。形だけになりやすいのは、ステップ4だけを行事としてこなし、ステップ5と6が担当者任せになっている場合です。
監査チームは、購買と品質保証の2人を基本に、工程が複雑な場合は生産技術や設計の担当者を加える形が多く見られます。
購買は取引条件と連絡ルールを、品質保証は検査と是正処置を、技術者は工程条件の妥当性を見るという分担です。購買・調達の仕事の流れの中では、仕入先の選定と評価の工程にあたります。
誰が行くかは、結果の質を左右します。
自動車産業の品質規格 IATF 16949 は、箇条7.2.4で仕入先を監査する人(第二者監査員)の力量を実証するよう求めています。
その内容として挙げているのが、監査する製造工程を理解していることなどです。理解の範囲には、工程FMEAやコントロールプラン(QC工程表にあたる管理計画)も含まれます。
業種を問わず、対象の工程を知っている人が1人は入るようにしておくと、書類の確認だけで終わるのを防げます。
準備|目的・判定の根拠・重点項目を決める

準備で決めるのは、どこへ行くか、何と照らして良否を判断するか、どの方式で確かめるかの3つです。ここでは、板金プレスと亜鉛めっきで作るブラケットを例に進めます。プレスは一次仕入先の社内で行い、めっきは別の会社に外注している、という想定です。
行き先はリスクで選ぶ
取引のある仕入先すべてを毎年訪ねるのは、現実的ではありません。
IATF(国際自動車産業特別委員会)の公式FAQは、仕入先の管理にリスクに基づく考え方を組み込むよう求めています。そのうえで、リスク分析の結果によっては第二者監査が要らない場合もあるとの説明です。
同じFAQは、リスク分析で検討する基準として、仕入先の認証の状態、製品の複雑さ、新製品の立上げ、従業員の大幅な入れ替わり、品質問題、納入問題などを挙げています。自動車以外の業種でも、この並びはそのまま優先順位づけの物差しになります。
- 壊れたときの影響が大きい部品(安全や法規に関わるもの)を作っているか
- 受入不良や納期遅延が続いていないか、是正の回答が遅れていないか
- 新製品の立上げや、工場・設備・担当者の大きな変更が予定されていないか
- ISO 9001 などの認証を持っているか、代わりの仕入先があるか
判定の根拠になる文書をそろえる
現場を見ても良否を言えない、という状態は、照らし合わせる基準を持たずに行ったときに起きます。監査で「不適合」と言えるのは、仕入先と合意した要求に対して、事実が合っていないときだけです。
判定の根拠になるのは、図面と仕様書、品質保証協定書や取引基本契約の品質条項、納入仕様書、検査協定、変更連絡のルール、仕入先自身が定めたQC工程表と作業標準です。
ブラケットの例なら、めっきの膜厚と外観の基準、外注先を変えるときは事前に連絡するという取り決めが、どの文書のどこに書いてあるかを出発前に確かめておきます。
この作業をすると、買い手側の不備が見つかることがあります。変更連絡の対象が文書になっていない、図面に書いていない要求を口頭で伝えただけになっている、といった場合です。
伝えていない要求を監査で指摘しても、仕入先の是正にはつながりません。先に取り決めを整えるのが順序です。
事前調査票と実績データで当たりをつける
当日の時間を現物の確認に使うため、書類で分かることは先に集めます。仕入先に事前調査票(自己診断票)を送り、組織図、工程フロー、QC工程表、主要設備、外注している工程と外注先、保有している認証を回答してもらいます。
自社側では、過去1〜2年の受入不良の件数と内容、納期遵守の状況、過去の是正要求と回答、変更連絡の履歴を並べます。
不良の多い工程、回答が形だけだった是正、連絡なしに変わっていた項目があれば、そこが当日の重点です。追跡の確認に使うロットも、この段階で実際に納入されたものの中から1つ選んでおきます。
現地・書面・リモートを使い分ける
確かめる方式は、現地監査だけではありません。リスクの低い仕入先は自己診断票の回答と証拠書類の確認で済ませ、その分の工数を重要な仕入先の現地監査に回すほうが、全体としての見落としは減ります。
方式は機械的に決まるものではなく、確かめたいことから選びます。
※JIS Q 19011:2019 は2012年版からの変更点として、仮想監査やサプライチェーンの監査に関する手引の追加を挙げています。
監査計画を通知する
日程が決まったら、監査計画を文書で仕入先に送ります。目的、対象の品番と工程、監査員、当日の時間割、見せてもらいたい記録、撮影や資料の持ち帰りの可否を書いておくと、当日の行き違いが減ります。
仕入先の工場には、他社向けの製品や独自の製造ノウハウがあります。見せてもらえる範囲と、知り得た情報の扱いは、取引基本契約や秘密保持契約の定めを確かめたうえで、事前に合意しておきます。
予告なしで訪ねるやり方は、契約に定めがあり、重大な問題が疑われる場合に限るのが無難です。
当日のチェック項目|モノの流れに沿って現場を回る
材料が入ってから製品が出るまでを、モノと同じ順に歩きます。
※外注工程がある場合は、出ていく場所と戻ってくる場所の両方を順路に入れます。
当日は、初回会議、現場の確認、書類の確認、監査員どうしの打ち合わせ、最終会議の順に進めます。初回会議は目的と範囲、時間割、立ち入りや撮影の条件をそろえる場です。短く切り上げ、現場に時間を残します。
現場は、材料の受入から出荷まで、モノが流れる順に歩きます。規格の条項の順に会議室で質問していくやり方に比べ、工程と工程のつなぎ目で起きる問題が見えやすいのが利点です。
識別のない仕掛品、どちらが検査前か分からない置き場、外注から戻った箱の扱いなどは、歩いてはじめて気づきます。
エリア別のチェック項目と質問例
質問で手順を聞き、現物で実態を見て、記録で続いていることを確かめます。
※質問は想定例です。結果欄には適合・不適合のほかに「適用外」「未確認」を設け、見られなかった項目をあいまいにしないようにします。
質問・現物・記録をつなげて確認する
チェック項目を「はい・いいえ」で答えられる形にすると、返ってくるのは「やっています」だけになります。作業者や担当者には、手順を説明してもらう聞き方をします。
そのうえで、説明と目の前の現物が合っているか、その状態が記録の上でも続いているかを順に確かめます。
ブラケットの例で言えば、プレス機の前で「金型を交換したあと、最初の1個は何を確認しますか」と聞きます。
答えを聞いたら、その日の初品の確認記録を見せてもらい、さらに1か月前の記録を数件抜き出して、抜けや後からのまとめ書きがないかを見ます。
確認の手順が紙にあるだけで守られていない場合の背景は、作業標準書が守られない原因と重なることが多く、作業者個人を責めても解決しません。
抜き出す記録は、仕入先に選んでもらわず、監査員が日付やロットを指定します。見たもの、聞いた相手の職位、記録の名前と日付は、その場でメモに残します。あとで指摘を書くときの証拠になるためです。
買い手として重点を置きたい5項目
変更管理では、連絡のルールがあるかどうかより、現場の人がどこからを「変更」と捉えているかを確かめます。
材料メーカーの切り替え、金型の更新、設備の移設、作業者の交代、外注先の変更は、いずれも変更にあたります。これらは人(Man)・設備(Machine)・材料(Material)・方法(Method)の4M変更と呼ばれます。
直近の変更を1件選び、買い手への連絡、承認、初品の確認、現場への反映までをたどってもらうと、仕組みが動いているかが分かります。
二次仕入先・外注は、どこまでを直接の仕入先に確かめ、どこから先を自分の目で見るかを分けて考えます。まず確かめるのは、一次仕入先が外注先をどう評価し、戻ってきた品をどう受け入れているかです。
ブラケットの例なら、めっき後の膜厚を一次仕入先が自分で測っているのか、外注先の成績書を受け取るだけなのかで、管理の強さは大きく変わります。
二次仕入先を直接訪ねることを検討するのは、その工程が品質を決めていて、一次仕入先の管理だけでは不安が残る場合です。ただし、買い手と二次仕入先の間には契約がないのが普通です。
訪問は一次仕入先を通じて依頼し、同行してもらう形が基本で、立ち入りや情報開示の範囲は契約の定めによります。
ロットの追跡(トレーサビリティ)は、質問ではなく実演で確かめます。準備で選んでおいた納入ロットの番号を伝え、材料ロット、加工日と設備、検査記録、外注の出荷日と戻り日をその場で出してもらいます。
何分で、どこまで遡れたかが、そのまま不具合発生時に影響範囲を絞り込める力を表します。
特殊工程は、熱処理、溶接、めっき、塗装のように、でき上がった製品を検査しても良否を確かめにくい工程です。
ここでは完成品の検査記録より、温度や時間、液の濃度といった条件が連続して記録されているか、条件が外れたときのロットの扱いが決まっているかを見ます。
どの条件が不良につながるかは工程FMEAに整理されているはずなので、その内容とQC工程表の管理項目が対応しているかも確かめます。
計測器は、現場で使われているものを数点選び、校正の有効期限と管理台帳の記載が合っているかを見ます。あわせて、校正で外れが見つかったときに、それまでに測った製品をどう扱ったかを聞きます。
詳しい考え方は計測器の校正とトレーサビリティの記事で整理しています。
最終会議で事実をそろえる
現場と書類の確認が終わったら、監査員だけで打ち合わせ、見つけた事実を照らし合わせます。そのうえで最終会議を開き、指摘の候補を1件ずつ、どの要求に対して、どこで何を見たかを添えて伝えます。
最終会議の目的は、評価を言い渡すことではなく、事実の認識を仕入先とそろえることです。見落としていた記録がその場で出てくれば、指摘は取り下げます。是正の回答期限と双方の窓口も、この場で決めておきます。
指摘の整理と是正要求の出し方

監査後は、できるだけ早く報告書と是正要求書をまとめて仕入先に送ります。時間があくと、仕入先の側でも当日の記憶と熱が薄れます。1週間以内など、社内で目安を決めておくとよいでしょう。
事実・要求・判定を分けて書く
指摘は、確認した事実、照らし合わせた要求、判定の3つに分けて書きます。ブラケットの例なら、次のような形です(日付や条項は説明用の想定です)。
- 確認した事実:めっきの外注先が2026年4月から別の会社に変わっていた。変更申請の記録はなく、当社への連絡もなかった(製造課長への聞き取りと、外注品の受入記録で確認)
- 照らし合わせた要求:品質保証協定書の「外注先を変更する場合は、事前に書面で連絡し承認を得る」という条項
- 判定:不適合(変更管理)
「変更管理が不十分」のような書き方では、仕入先は何を直せばよいのか分かりません。誰が読んでも同じ場面を思い浮かべられる事実を書くことが、的を射た是正を引き出す前提です。
重みづけは「製品への影響」で決める
指摘は、重大な不適合、軽微な不適合、観察事項(改善の機会)の3段階に分ける会社が多く見られます。
この区分は規格で一律に決まっているものではなく、段階の数や分け方の基準は会社ごとに決めます。仕入先の監査では、納入品の品質や自社の顧客に影響が及ぶかどうかを軸にすると判断がぶれにくくなります。
この軸で考えると、連絡なしの外注先変更は、すでに納入された製品の品質に関わるため、重大な不適合として扱う例にあたります。
一方、点検表に1日分の記入漏れがあった、というような単発の抜けは、軽微な不適合とするのが一例です。合意した要求には反していないが、放っておくと問題になりそうな点は、観察事項として伝えます。
是正要求書に書くこと
是正要求書には、指摘の内容に加えて、回答してほしい項目と期限を書きます。回答項目は、応急処置(すでに納入した分を含む影響範囲の確認)、原因、恒久対策と実施予定日、効果を確かめる方法の4つが基本です。
期限は、重大な不適合なら応急処置の回答を数日以内、原因と恒久対策を2〜4週間以内というように、重みに応じて分けます。これは想定例で、実際の日数は品質保証協定書などの取り決めに合わせます。
自動車分野では、回答の様式として8Dレポートを指定する会社が多く見られます。

点数とランクをつける場合
仕入先どうしを比べたり、前回からの変化を追ったりするために、結果を点数にする会社もあります。代表的な例が、ドイツ自動車工業会(VDA)のプロセス監査規格 VDA 6.3 です。
質問ごとに10・8・6・4・0点の5段階で評価し、達成度に応じて全体をA・B・Cの3つに分類します。
分類の基準は、達成度90%以上がA、80%以上90%未満がB、80%未満がCです。ただし、達成度が高くても重要な質問の評価が低いと格下げになるルールがあり、点数だけで合否が決まるわけではありません。
現行版は2023年1月に発行された VDA 6.3:2023 で、質問は59問です。
自社で点数制を作るときも、この考え方は参考になります。点数は傾向をつかむための補助で、取引の判断は個々の指摘の重さと是正の進み具合で行う、という順序を崩さないことが大切です。
指摘後のフォロー|是正を閉じる条件と取引判断

サプライヤー監査の成果は、報告書を送った時点ではまだ出ていません。指摘が是正され、その状態が続いていると確かめて、はじめて仕入先の品質が変わります。
是正回答は4つの観点で読む
仕入先から届いた回答は、次の4点で読みます。足りなければ、理由を添えて差し戻します。
- 影響範囲:すでに納入した分、仕掛品、在庫まで確認しているか
- 原因:発生した原因と、それに気づけなかった原因の両方に触れているか
- 恒久対策:「周知徹底」「再教育」だけで終わらず、仕組みや手順が変わっているか
- 効果の確認:何を、いつまで、どの記録で確かめるかが決まっているか
差し戻しの多くは、原因が「担当者の認識不足」で止まっている場合です。認識が不足していても止まる仕組みになっていなかったのはなぜか、まで掘り下げてもらいます。
工程のばらつきが原因に挙がっている場合は、QC七つ道具の管理図や工程能力指数で、対策前後の変化を示してもらうと判断しやすくなります。
「実施した」と「効いている」を分けて閉じる
是正を閉じる条件は、指摘を出す時点で決めておきます。気をつけたいのは、対策を実施したことと、対策が効いていることは別だという点です。手順書を改訂した時点では、まだ実施の確認までしか終わっていません。
連絡なしの外注先変更を指摘した場合の、確認の進み方です。
※「3か月」は想定例です。確認する期間と件数は、変更や生産の頻度に合わせて指摘ごとに決めます。
効果の確認には、書面と証拠で見る方法、リモートで記録を見せてもらう方法、もう一度現地へ行く方法があります。重大な不適合や、現場の作業そのものを変える対策は、再訪して確かめるのが確実です。
納入品の不良に関わる指摘なら、対策後の一定期間の受入実績も効果の判断材料に加えます。
期限を過ぎたとき、改善が進まないとき
回答が期限を過ぎたら、担当者どうしの催促を繰り返すのではなく、決めておいた順に段階を上げます。担当者から管理職へ、管理職から責任者へと連絡の相手を上げ、並行して自社側の受入検査を強めて流出を防ぎます。
それでも改善が進まない場合は、新しい品番の発注を控える、代わりの仕入先を探す、といった取引上の対応が選択肢に入ります。ここで注意したいのは、監査員や品質部門だけで取引の判断をしないことです。
発注を止めれば自社の生産も止まるおそれがあり、切り替えには認定のやり直しと時間がかかります。
品質部門は事実とリスクの評価を示し、購買部門は供給への影響と代替の見通しを示し、決裁者が判断する、という役割分担をあらかじめ決めておきます。
仕入先にとっても、どの状態になるとどの対応が取られるのかが分かっているほうが、改善に優先順位をつけやすくなります。
結果を仕入先評価と次回の計画に戻す
監査の結果は、報告書として保管するだけでなく、仕入先評価の記録に反映します。
ISO 9001:2015 の箇条8.4は、評価と再評価の活動と、その結果として必要になった処置の記録を残すことを求めています。
監査報告書、是正要求と回答、効果確認の記録がそろっていれば、その要求にも応えられます。
あわせて、次回の計画も見直します。指摘が少なく是正も早い仕入先は、間隔を延ばすか書面での確認に切り替えます。
是正が長引いた仕入先や、同じ種類の指摘が繰り返される仕入先は、間隔を詰めます。毎年同じ相手に同じチェックリストで行く状態になっていたら、行き先と項目の両方を見直す時期です。
最後に、監査の姿勢について触れておきます。監査は欠点を探して責める場ではありません。
指摘の数を成果として数えたり、取り調べのような聞き方をしたりすると、仕入先は次回から都合の悪い事実を見せなくなります。
事実に基づいて指摘し、是正に必要な情報は買い手側からも出すという関係を保つことが、結果として自社の品質を守ります。
まとめ
- サプライヤー監査は、受入検査や実績の集計では見えない、仕入先の仕組みを確かめる手段
- チェック項目は8領域。変更管理、二次仕入先・外注、ロットの追跡は買い手として重点を置く
- 準備では、行き先をリスクで選び、判定の根拠になる文書と重点項目を決めておく
- 当日はモノの流れに沿って現場を回り、質問・現物・記録をつなげて事実を集める
- 是正は「実施した」と「効いている」を分けて確認し、結果を仕入先評価と次回の計画に戻す
サプライヤー監査は、購買と品質保証が同じ事実を見て、仕入先と一緒に品質を上げていくための仕事です。
それぞれの職種の全体像は購買・調達と品質保証・品質管理のページで、仕入先との関係が特に密な業種の事情は自動車・輸送機器のページで紹介しています。
出典
出典・参考資料(8件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 監査の指針と改正内容:日本規格協会 JIS Q 19011:2019(ISO 19011:2018)マネジメントシステム監査のための指針(プレビュー)
- ISO 19011 の対象とリスクに基づくアプローチ:IRCAジャパン「ISO 19011:2018 主な変更点と影響」、テクノファ「ISO19011とは」
- ISO 9001:2015 箇条8.4の考え方:日本品質保証機構(JQA)「情報誌 ISO NETWORK Vol.27」、マネジメントオフィスいまむら「ISO9001:2015 8.4における「供給者評価」では何が求められているか」
- 第二者監査とリスク分析の基準:IATF「IATF 16949:2016 よくある質問(FAQ)」日本語版(2021年4月)
- 第二者監査員の力量:QMS学習支援サイト「【IATF16949攻略】7.2.4:第二者監査員の力量の要求事項徹底解説」
- VDA 6.3:2023 の発行時期・質問数・評価方法:DQS「Changes to VDA 6.3:2023」
- VDA 6.3 の総合評価(A・B・C)の基準:VDA QMC 掲載 QZ誌「Globale Automotive-Prozesse auf dem Radar」(VDA 6.3 改訂の解説、表1)
- ISO 9001:2026 の発行日:日本規格協会 ISO 9001:2026 品質マネジメントシステム-要求事項
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