サプライヤー監査のチェック項目|準備・当日・是正フォローの進め方

プレス工場の通路を歩く監査員と工場担当者の後ろ姿

サプライヤー監査とは、買い手が仕入先の工場を訪ね、品質を保つための作業や管理が、決められた手順どおりに行われているかを確かめる活動です。届いた品物を調べる受入検査だけでは、こうした仕組みの状況までは分かりません。

当日の現場確認と同じくらい重いのが、どの仕入先の何を確かめるかを決める準備と、指摘した問題の手直し(是正)が終わったことを確かめるまでのフォローです。

チェック項目も、規格の条項を順に読み上げるより、モノの流れに沿って現場を回れる形にしたほうが、事実をつかみやすくなります。

この記事では、仕入先を監査する側の立場に絞り、チェック項目の全体像と6つのステップを示します。そのうえで、準備で決めること、当日の現場での確認点、指摘の出し方、是正のフォローと取引判断へのつなぎ方の順で整理します。

目次

サプライヤー監査とは|受入検査では見えない仕組みを確かめる

受入検査でめっきブラケットをノギスで測る手元

サプライヤー監査とは、買い手が仕入先の工場や事務所を訪ね、品質をつくり込む仕組みが決めたとおりに動いているかを確かめる活動です。

監査の世界では、自社を自分で点検する内部監査を第一者監査、認証機関による審査を第三者監査と呼び、顧客が仕入先に対して行うものを第二者監査と呼びます。

監査の進め方の指針である JIS Q 19011:2019(ISO 19011:2018)は、内部監査とこの第二者監査を主な対象にしています。

指針であって強制力のある要求事項ではありませんが、監査の開始、準備、実施、報告、完了、フォローアップという流れは、仕入先の監査にもそのまま使えます。

ISO 9001:2015 の箇条8.4は、外部提供者(仕入先や外注先)について定めています。評価、選択、パフォーマンスの監視、再評価の基準を決めて適用し、その記録を残すことを求めています。

ただし、現地に出向く監査そのものを義務づけているわけではありません。管理の方法は、リスクの大小に応じて決めてよいとされています。

なお、ISO 9001 は2026年9月16日に改訂版の ISO 9001:2026 が発行されました。この記事では、これまで広く使われてきた2015年版の箇条で説明します。

では、受入検査で不良をはじき、納入実績を毎月集計していれば十分かというと、そうではありません。受入検査と実績の集計が見ているのは、すでに起きた結果です。

監査は、その結果を生み出している工程、人、ルールを見にいく手段であり、まだ不良として表に出ていない弱点を見つけられる点に意味があります。

図1:受入検査・実績の監視・サプライヤー監査の違い

3つは代わりになるものではなく、見ている対象が違います。

受入検査
実績の監視
サプライヤー監査
見る対象
納入されたロットそのもの
不良率や納期遵守率などの推移
工程、人、ルール、記録といった仕組み
分かること
そのロットを受け入れてよいか
仕入先ごとの傾向と順位
結果が出ている理由と、これから起きそうな問題
場所と頻度
自社の受入場で、納入のたびに
自社の机上で、月次や四半期ごとに
仕入先の現場で、必要なときに
弱いところ
抜取りでは低い不良率を見逃す
悪化してからでないと動けない
手間がかかり、全社には行けない

※ISO 9001:2015 の箇条8.4が求めているのは評価・選択・監視・再評価の基準と記録で、どの手段を使うかは会社が決めます。

自社の内部監査の進め方は別の記事で扱っているため、ここから先は仕入先を監査する側の手順に絞ります。

サプライヤー監査のチェック項目一覧|8つの領域

図2:サプライヤー監査で確かめる8つの領域

まず全体を押さえ、今回の目的に合わせて深く見る領域を選びます。

1. 品質体制と文書
仕組み責任者と権限、図面・仕様書の最新版管理、教育と作業認定
2. 受入と保管
現場材料の受入確認、識別、先入れ先出し、保管環境
3. 工程管理
現場QC工程表と作業標準、条件の設定と記録、設備と治具の点検
4. 検査と計測器
現場検査基準と記録、限度見本、計測器の校正状態
5. 不適合品と是正
仕組み不適合品の隔離と処置、過去の是正処置が続いているか
6. 変更管理
買い手の重点材料・設備・方法・人の変更を、事前に連絡する流れがあるか
7. 二次仕入先・外注
買い手の重点外注工程の把握、外注先の評価、受入時の確認方法
8. 追跡と出荷
買い手の重点ロットを材料まで遡れるか、出荷前の確認、梱包と表示

※領域ごとの質問例と照合する記録は、後半の図7にまとめています。

サプライヤー監査で確かめることは、大きく8つの領域に分けられます。品質体制と文書、受入と保管、工程管理、検査と計測器、不適合品と是正までは、自社の内部監査で見る内容とほぼ同じです。

買い手の立場で重みが増すのが、残りの3つです。変更管理、二次仕入先・外注、ロットの追跡は、仕入先の中で完結せず、自社の受入や顧客への納入に直接響く領域だからです。

仕入先が良かれと思って材料や設備を変えた結果、こちらの工程で不具合が出るという事態は、納入品の検査だけでは防ぎきれません。

8領域すべてを同じ深さで見ない

1日の監査で8領域を均等に見ようとすると、どの領域も書類の有無を確かめるだけで終わります。監査には場面があり、場面ごとに深く見るべき領域が変わります。

新しい仕入先を採用する前の新規認定では、体制と工程の実力を広く見ます。取引中の仕入先への定期監査では、前回の指摘が続いているかと、その後の変更が中心です。

不良の流出や納期遅延が続いたあとの臨時監査では、問題の起きた工程と是正処置に時間を集中させます。工程や材料の変更の連絡を受けたときは、変更箇所とその影響範囲だけを狭く深く見るのが基本です。

図3:監査の場面ごとに、深く見る領域を変える(想定例)

◎は時間をかけて現物と記録を追う領域、○は一通り確認する領域です。

領域
新規認定
定期
品質問題のあと
変更のとき
品質体制と文書
新規認定◎
定期○
品質問題のあと-
変更のとき-
受入と保管
新規認定○
定期○
品質問題のあと原因に関係すれば◎
変更のとき材料変更なら◎
工程管理
新規認定◎
定期○
品質問題のあと◎
変更のとき◎
検査と計測器
新規認定◎
定期○
品質問題のあと◎
変更のとき○
不適合品と是正
新規認定○
定期◎
品質問題のあと◎
変更のとき-
変更管理
新規認定○
定期◎
品質問題のあと○
変更のとき◎
二次仕入先・外注
新規認定○
定期◎
品質問題のあと原因に関係すれば◎
変更のとき外注先の変更なら◎
追跡と出荷
新規認定○
定期○
品質問題のあと◎
変更のとき○

※配分は一例です。対象品の重要度や過去の実績に合わせて、監査ごとに決め直します。

サプライヤー監査の流れ|6つのステップ

図4:サプライヤー監査の6つのステップ

当日は6つのうちの1つで、前後の5つが結果の使いみちを決めます。

準備
01対象と目的を決めるどの仕入先の、どの品番・工程を、何のために見るか
02事前調査と計画実績データと事前調査票を集め、方式と日程を決めて通知する
03チェックリストを作る判定の根拠になる文書をそろえ、重点項目を絞る
当日
04現地で確認する初回会議、現場、書類、最終会議の順で事実を集める
監査後
05報告と是正要求指摘を重みづけし、回答の期限と窓口を決めて文書で渡す
06是正の確認と評価への反映対策の実施と効果を確かめて閉じ、仕入先評価と次回計画に戻す

※JIS Q 19011:2019 の箇条6(監査の開始・準備・実施・報告・完了・フォローアップ)を、仕入先の監査に合わせて並べ直したものです。

サプライヤー監査は、準備の3ステップ、当日の1ステップ、監査後の2ステップで進みます。形だけになりやすいのは、ステップ4だけを行事としてこなし、ステップ5と6が担当者任せになっている場合です。

監査チームは、購買と品質保証の2人を基本に、工程が複雑な場合は生産技術や設計の担当者を加える形が多く見られます。

購買は取引条件と連絡ルールを、品質保証は検査と是正処置を、技術者は工程条件の妥当性を見るという分担です。購買・調達の仕事の流れの中では、仕入先の選定と評価の工程にあたります。

誰が行くかは、結果の質を左右します。

自動車産業の品質規格 IATF 16949 は、箇条7.2.4で仕入先を監査する人(第二者監査員)の力量を実証するよう求めています。

その内容として挙げているのが、監査する製造工程を理解していることなどです。理解の範囲には、工程FMEAやコントロールプラン(QC工程表にあたる管理計画)も含まれます。

業種を問わず、対象の工程を知っている人が1人は入るようにしておくと、書類の確認だけで終わるのを防げます。

準備|目的・判定の根拠・重点項目を決める

図面とクリップボード、部品サンプルを広げた監査準備の机

準備で決めるのは、どこへ行くか、何と照らして良否を判断するか、どの方式で確かめるかの3つです。ここでは、板金プレスと亜鉛めっきで作るブラケットを例に進めます。プレスは一次仕入先の社内で行い、めっきは別の会社に外注している、という想定です。

行き先はリスクで選ぶ

取引のある仕入先すべてを毎年訪ねるのは、現実的ではありません。

IATF(国際自動車産業特別委員会)の公式FAQは、仕入先の管理にリスクに基づく考え方を組み込むよう求めています。そのうえで、リスク分析の結果によっては第二者監査が要らない場合もあるとの説明です。

同じFAQは、リスク分析で検討する基準として、仕入先の認証の状態、製品の複雑さ、新製品の立上げ、従業員の大幅な入れ替わり、品質問題、納入問題などを挙げています。自動車以外の業種でも、この並びはそのまま優先順位づけの物差しになります。

  • 壊れたときの影響が大きい部品(安全や法規に関わるもの)を作っているか
  • 受入不良や納期遅延が続いていないか、是正の回答が遅れていないか
  • 新製品の立上げや、工場・設備・担当者の大きな変更が予定されていないか
  • ISO 9001 などの認証を持っているか、代わりの仕入先があるか

判定の根拠になる文書をそろえる

現場を見ても良否を言えない、という状態は、照らし合わせる基準を持たずに行ったときに起きます。監査で「不適合」と言えるのは、仕入先と合意した要求に対して、事実が合っていないときだけです。

判定の根拠になるのは、図面と仕様書、品質保証協定書や取引基本契約の品質条項、納入仕様書、検査協定、変更連絡のルール、仕入先自身が定めたQC工程表と作業標準です。

ブラケットの例なら、めっきの膜厚と外観の基準、外注先を変えるときは事前に連絡するという取り決めが、どの文書のどこに書いてあるかを出発前に確かめておきます。

この作業をすると、買い手側の不備が見つかることがあります。変更連絡の対象が文書になっていない、図面に書いていない要求を口頭で伝えただけになっている、といった場合です。

伝えていない要求を監査で指摘しても、仕入先の是正にはつながりません。先に取り決めを整えるのが順序です。

事前調査票と実績データで当たりをつける

当日の時間を現物の確認に使うため、書類で分かることは先に集めます。仕入先に事前調査票(自己診断票)を送り、組織図、工程フロー、QC工程表、主要設備、外注している工程と外注先、保有している認証を回答してもらいます。

自社側では、過去1〜2年の受入不良の件数と内容、納期遵守の状況、過去の是正要求と回答、変更連絡の履歴を並べます。

不良の多い工程、回答が形だけだった是正、連絡なしに変わっていた項目があれば、そこが当日の重点です。追跡の確認に使うロットも、この段階で実際に納入されたものの中から1つ選んでおきます。

現地・書面・リモートを使い分ける

確かめる方式は、現地監査だけではありません。リスクの低い仕入先は自己診断票の回答と証拠書類の確認で済ませ、その分の工数を重要な仕入先の現地監査に回すほうが、全体としての見落としは減ります。

図5:監査方式ごとの、確かめやすいこと・確かめにくいこと

方式は機械的に決まるものではなく、確かめたいことから選びます。

ON-SITE現地監査確かめやすい:作業の実態、現物の識別と置き方、設備や治具の状態、作業者への質問確かめにくい:移動と拘束の負担が大きく、件数をこなせない
DOCUMENT書面(自己診断票)確かめやすい:体制、認証、工程フロー、外注先の一覧など、文書で答えられること確かめにくい:回答どおりに運用されているか。自己申告の甘さも残る
REMOTEリモート監査確かめやすい:記録の画面共有、担当者への聞き取り、是正後の状態の再確認確かめにくい:カメラに映らない場所、現場の全体感、作業者の自然な動き
新規認定、重要部品、品質問題のあとは現地。取引が安定している低リスク品は書面。是正の確認や遠隔地の仕入先はリモートを組み合わせる、という使い方が考えられます。

※JIS Q 19011:2019 は2012年版からの変更点として、仮想監査やサプライチェーンの監査に関する手引の追加を挙げています。

監査計画を通知する

日程が決まったら、監査計画を文書で仕入先に送ります。目的、対象の品番と工程、監査員、当日の時間割、見せてもらいたい記録、撮影や資料の持ち帰りの可否を書いておくと、当日の行き違いが減ります。

仕入先の工場には、他社向けの製品や独自の製造ノウハウがあります。見せてもらえる範囲と、知り得た情報の扱いは、取引基本契約や秘密保持契約の定めを確かめたうえで、事前に合意しておきます。

予告なしで訪ねるやり方は、契約に定めがあり、重大な問題が疑われる場合に限るのが無難です。

当日のチェック項目|モノの流れに沿って現場を回る

図6:現場を回る順路

材料が入ってから製品が出るまでを、モノと同じ順に歩きます。

01受入材料・外注品の受入確認
02保管識別、置き場、先入れ先出し
03加工・組立条件、作業標準、設備と治具
04検査基準、記録、計測器
05不適合品置き場隔離と処置の記録
06梱包・出荷表示、出荷前確認、ロットの記録

※外注工程がある場合は、出ていく場所と戻ってくる場所の両方を順路に入れます。

当日は、初回会議、現場の確認、書類の確認、監査員どうしの打ち合わせ、最終会議の順に進めます。初回会議は目的と範囲、時間割、立ち入りや撮影の条件をそろえる場です。短く切り上げ、現場に時間を残します。

現場は、材料の受入から出荷まで、モノが流れる順に歩きます。規格の条項の順に会議室で質問していくやり方に比べ、工程と工程のつなぎ目で起きる問題が見えやすいのが利点です。

識別のない仕掛品、どちらが検査前か分からない置き場、外注から戻った箱の扱いなどは、歩いてはじめて気づきます。

エリア別のチェック項目と質問例

図7:エリア別のチェック項目・質問例・照合する記録

質問で手順を聞き、現物で実態を見て、記録で続いていることを確かめます。

エリア
見ること
質問例
照合する記録
受入
見ること材料や外注品を何で合否判定しているか
質問例この材料が入ったとき、何を確認してから使い始めますか
照合する記録材料証明書(ミルシート)、受入検査記録
保管
見ること識別表示、合格品と未検査品の区分、保管環境
質問例いちばん古いロットはどれで、どの順に使いますか
照合する記録現品票、在庫の入出庫記録
工程
見ることQC工程表の条件と、設備の設定値・作業の一致
質問例条件を変えるのは誰で、変えたら何に残しますか
照合する記録QC工程表、作業標準書、条件記録、始業点検表
特殊工程
見ること熱処理・溶接・めっきなど、後から検査で確かめにくい工程の条件管理と作業者の認定
質問例条件が外れたとき、そのロットはどう扱いますか
照合する記録条件の連続記録、作業者の認定記録、定期の確認試験
検査
見ること検査基準が図面の最新版と合っているか、限度見本の管理
質問例判定に迷ったときは、誰に何を見せて決めますか
照合する記録検査基準書、検査成績書、限度見本の台帳
計測器
見ること校正の有効期限、識別、保管の状態
質問例校正で外れが見つかったとき、過去の測定品はどう扱いましたか
照合する記録校正記録、計測器の管理台帳
不適合品
見ること隔離場所と表示、処置を決める人、手直し後の再検査
質問例この箱の中身は、いつ誰が処置を決めますか
照合する記録不適合品の処置記録、過去の是正処置報告
変更管理
見ること変更を洗い出す仕組みと、顧客への連絡の要否を判断する人
質問例直近で変えた設備か材料を1つ挙げて、連絡から現場への反映までを見せてください
照合する記録変更管理台帳、変更申請と承認の記録、初品の確認記録
二次仕入先・外注
見ること外注工程の一覧、外注先の評価、戻ってきた品の受入確認
質問例外注先を変えるとき、誰が承認し、当社にはいつ連絡が来ますか
照合する記録外注先一覧、外注先の評価記録、外注品の受入記録
追跡と出荷
見ること出荷ロットから材料ロット・加工日・検査記録まで遡れるか
質問例このロット番号の材料、加工日、検査結果を今から出してもらえますか
照合する記録製造記録、出荷検査記録、出荷台帳

※質問は想定例です。結果欄には適合・不適合のほかに「適用外」「未確認」を設け、見られなかった項目をあいまいにしないようにします。

質問・現物・記録をつなげて確認する

チェック項目を「はい・いいえ」で答えられる形にすると、返ってくるのは「やっています」だけになります。作業者や担当者には、手順を説明してもらう聞き方をします。

そのうえで、説明と目の前の現物が合っているか、その状態が記録の上でも続いているかを順に確かめます。

ブラケットの例で言えば、プレス機の前で「金型を交換したあと、最初の1個は何を確認しますか」と聞きます。

答えを聞いたら、その日の初品の確認記録を見せてもらい、さらに1か月前の記録を数件抜き出して、抜けや後からのまとめ書きがないかを見ます。

確認の手順が紙にあるだけで守られていない場合の背景は、作業標準書が守られない原因と重なることが多く、作業者個人を責めても解決しません。

抜き出す記録は、仕入先に選んでもらわず、監査員が日付やロットを指定します。見たもの、聞いた相手の職位、記録の名前と日付は、その場でメモに残します。あとで指摘を書くときの証拠になるためです。

買い手として重点を置きたい5項目

変更管理では、連絡のルールがあるかどうかより、現場の人がどこからを「変更」と捉えているかを確かめます。

材料メーカーの切り替え、金型の更新、設備の移設、作業者の交代、外注先の変更は、いずれも変更にあたります。これらは人(Man)・設備(Machine)・材料(Material)・方法(Method)の4M変更と呼ばれます。

直近の変更を1件選び、買い手への連絡、承認、初品の確認、現場への反映までをたどってもらうと、仕組みが動いているかが分かります。

二次仕入先・外注は、どこまでを直接の仕入先に確かめ、どこから先を自分の目で見るかを分けて考えます。まず確かめるのは、一次仕入先が外注先をどう評価し、戻ってきた品をどう受け入れているかです。

ブラケットの例なら、めっき後の膜厚を一次仕入先が自分で測っているのか、外注先の成績書を受け取るだけなのかで、管理の強さは大きく変わります。

二次仕入先を直接訪ねることを検討するのは、その工程が品質を決めていて、一次仕入先の管理だけでは不安が残る場合です。ただし、買い手と二次仕入先の間には契約がないのが普通です。

訪問は一次仕入先を通じて依頼し、同行してもらう形が基本で、立ち入りや情報開示の範囲は契約の定めによります。

ロットの追跡(トレーサビリティ)は、質問ではなく実演で確かめます。準備で選んでおいた納入ロットの番号を伝え、材料ロット、加工日と設備、検査記録、外注の出荷日と戻り日をその場で出してもらいます。

何分で、どこまで遡れたかが、そのまま不具合発生時に影響範囲を絞り込める力を表します。

特殊工程は、熱処理、溶接、めっき、塗装のように、でき上がった製品を検査しても良否を確かめにくい工程です。

ここでは完成品の検査記録より、温度や時間、液の濃度といった条件が連続して記録されているか、条件が外れたときのロットの扱いが決まっているかを見ます。

どの条件が不良につながるかは工程FMEAに整理されているはずなので、その内容とQC工程表の管理項目が対応しているかも確かめます。

計測器は、現場で使われているものを数点選び、校正の有効期限と管理台帳の記載が合っているかを見ます。あわせて、校正で外れが見つかったときに、それまでに測った製品をどう扱ったかを聞きます。

詳しい考え方は計測器の校正とトレーサビリティの記事で整理しています。

最終会議で事実をそろえる

現場と書類の確認が終わったら、監査員だけで打ち合わせ、見つけた事実を照らし合わせます。そのうえで最終会議を開き、指摘の候補を1件ずつ、どの要求に対して、どこで何を見たかを添えて伝えます。

最終会議の目的は、評価を言い渡すことではなく、事実の認識を仕入先とそろえることです。見落としていた記録がその場で出てくれば、指摘は取り下げます。是正の回答期限と双方の窓口も、この場で決めておきます。

指摘の整理と是正要求の出し方

工場横の会議室で資料を囲んで話し合う作業服姿の4人

監査後は、できるだけ早く報告書と是正要求書をまとめて仕入先に送ります。時間があくと、仕入先の側でも当日の記憶と熱が薄れます。1週間以内など、社内で目安を決めておくとよいでしょう。

事実・要求・判定を分けて書く

指摘は、確認した事実、照らし合わせた要求、判定の3つに分けて書きます。ブラケットの例なら、次のような形です(日付や条項は説明用の想定です)。

  • 確認した事実:めっきの外注先が2026年4月から別の会社に変わっていた。変更申請の記録はなく、当社への連絡もなかった(製造課長への聞き取りと、外注品の受入記録で確認)
  • 照らし合わせた要求:品質保証協定書の「外注先を変更する場合は、事前に書面で連絡し承認を得る」という条項
  • 判定:不適合(変更管理)

「変更管理が不十分」のような書き方では、仕入先は何を直せばよいのか分かりません。誰が読んでも同じ場面を思い浮かべられる事実を書くことが、的を射た是正を引き出す前提です。

重みづけは「製品への影響」で決める

指摘は、重大な不適合、軽微な不適合、観察事項(改善の機会)の3段階に分ける会社が多く見られます。

この区分は規格で一律に決まっているものではなく、段階の数や分け方の基準は会社ごとに決めます。仕入先の監査では、納入品の品質や自社の顧客に影響が及ぶかどうかを軸にすると判断がぶれにくくなります。

この軸で考えると、連絡なしの外注先変更は、すでに納入された製品の品質に関わるため、重大な不適合として扱う例にあたります。

一方、点検表に1日分の記入漏れがあった、というような単発の抜けは、軽微な不適合とするのが一例です。合意した要求には反していないが、放っておくと問題になりそうな点は、観察事項として伝えます。

是正要求書に書くこと

是正要求書には、指摘の内容に加えて、回答してほしい項目と期限を書きます。回答項目は、応急処置(すでに納入した分を含む影響範囲の確認)、原因、恒久対策と実施予定日、効果を確かめる方法の4つが基本です。

期限は、重大な不適合なら応急処置の回答を数日以内、原因と恒久対策を2〜4週間以内というように、重みに応じて分けます。これは想定例で、実際の日数は品質保証協定書などの取り決めに合わせます。

自動車分野では、回答の様式として8Dレポートを指定する会社が多く見られます。

点数とランクをつける場合

仕入先どうしを比べたり、前回からの変化を追ったりするために、結果を点数にする会社もあります。代表的な例が、ドイツ自動車工業会(VDA)のプロセス監査規格 VDA 6.3 です。

質問ごとに10・8・6・4・0点の5段階で評価し、達成度に応じて全体をA・B・Cの3つに分類します。

分類の基準は、達成度90%以上がA、80%以上90%未満がB、80%未満がCです。ただし、達成度が高くても重要な質問の評価が低いと格下げになるルールがあり、点数だけで合否が決まるわけではありません。

現行版は2023年1月に発行された VDA 6.3:2023 で、質問は59問です。

自社で点数制を作るときも、この考え方は参考になります。点数は傾向をつかむための補助で、取引の判断は個々の指摘の重さと是正の進み具合で行う、という順序を崩さないことが大切です。

指摘後のフォロー|是正を閉じる条件と取引判断

めっきラインで治具に掛かった部品を確認する作業者

サプライヤー監査の成果は、報告書を送った時点ではまだ出ていません。指摘が是正され、その状態が続いていると確かめて、はじめて仕入先の品質が変わります。

是正回答は4つの観点で読む

仕入先から届いた回答は、次の4点で読みます。足りなければ、理由を添えて差し戻します。

  • 影響範囲:すでに納入した分、仕掛品、在庫まで確認しているか
  • 原因:発生した原因と、それに気づけなかった原因の両方に触れているか
  • 恒久対策:「周知徹底」「再教育」だけで終わらず、仕組みや手順が変わっているか
  • 効果の確認:何を、いつまで、どの記録で確かめるかが決まっているか

差し戻しの多くは、原因が「担当者の認識不足」で止まっている場合です。認識が不足していても止まる仕組みになっていなかったのはなぜか、まで掘り下げてもらいます。

工程のばらつきが原因に挙がっている場合は、QC七つ道具の管理図や工程能力指数で、対策前後の変化を示してもらうと判断しやすくなります。

「実施した」と「効いている」を分けて閉じる

是正を閉じる条件は、指摘を出す時点で決めておきます。気をつけたいのは、対策を実施したことと、対策が効いていることは別だという点です。手順書を改訂した時点では、まだ実施の確認までしか終わっていません。

図8:1件の指摘を閉じるまでの流れ(想定例)

連絡なしの外注先変更を指摘した場合の、確認の進み方です。

STEP 1是正要求事実・要求・判定を書面で渡し、回答項目と期限を伝える開始
STEP 2応急処置の回答変更後に納入されたロットの範囲と、膜厚・外観の再確認結果が届くまだ閉じない
STEP 3原因と恒久対策の回答外注先の変更が変更管理の対象に入っていなかった。対象一覧と申請様式を改訂するとの回答まだ閉じない
STEP 4実施の証拠改訂した規定と様式、関係者への教育記録を受け取るまだ閉じない
STEP 5効果の確認その後3か月の変更管理台帳を確認し、外注に関わる変更が申請・連絡されているかを見る条件を満たせば閉じる
STEP 6評価への反映仕入先評価と次回の監査計画に結果を書き込み、同じ項目を次回の重点にする完了

※「3か月」は想定例です。確認する期間と件数は、変更や生産の頻度に合わせて指摘ごとに決めます。

効果の確認には、書面と証拠で見る方法、リモートで記録を見せてもらう方法、もう一度現地へ行く方法があります。重大な不適合や、現場の作業そのものを変える対策は、再訪して確かめるのが確実です。

納入品の不良に関わる指摘なら、対策後の一定期間の受入実績も効果の判断材料に加えます。

期限を過ぎたとき、改善が進まないとき

回答が期限を過ぎたら、担当者どうしの催促を繰り返すのではなく、決めておいた順に段階を上げます。担当者から管理職へ、管理職から責任者へと連絡の相手を上げ、並行して自社側の受入検査を強めて流出を防ぎます。

それでも改善が進まない場合は、新しい品番の発注を控える、代わりの仕入先を探す、といった取引上の対応が選択肢に入ります。ここで注意したいのは、監査員や品質部門だけで取引の判断をしないことです。

発注を止めれば自社の生産も止まるおそれがあり、切り替えには認定のやり直しと時間がかかります。

品質部門は事実とリスクの評価を示し、購買部門は供給への影響と代替の見通しを示し、決裁者が判断する、という役割分担をあらかじめ決めておきます。

仕入先にとっても、どの状態になるとどの対応が取られるのかが分かっているほうが、改善に優先順位をつけやすくなります。

結果を仕入先評価と次回の計画に戻す

監査の結果は、報告書として保管するだけでなく、仕入先評価の記録に反映します。

ISO 9001:2015 の箇条8.4は、評価と再評価の活動と、その結果として必要になった処置の記録を残すことを求めています。

監査報告書、是正要求と回答、効果確認の記録がそろっていれば、その要求にも応えられます。

あわせて、次回の計画も見直します。指摘が少なく是正も早い仕入先は、間隔を延ばすか書面での確認に切り替えます。

是正が長引いた仕入先や、同じ種類の指摘が繰り返される仕入先は、間隔を詰めます。毎年同じ相手に同じチェックリストで行く状態になっていたら、行き先と項目の両方を見直す時期です。

最後に、監査の姿勢について触れておきます。監査は欠点を探して責める場ではありません。

指摘の数を成果として数えたり、取り調べのような聞き方をしたりすると、仕入先は次回から都合の悪い事実を見せなくなります。

事実に基づいて指摘し、是正に必要な情報は買い手側からも出すという関係を保つことが、結果として自社の品質を守ります。

まとめ

この記事のまとめ
  • サプライヤー監査は、受入検査や実績の集計では見えない、仕入先の仕組みを確かめる手段
  • チェック項目は8領域。変更管理、二次仕入先・外注、ロットの追跡は買い手として重点を置く
  • 準備では、行き先をリスクで選び、判定の根拠になる文書と重点項目を決めておく
  • 当日はモノの流れに沿って現場を回り、質問・現物・記録をつなげて事実を集める
  • 是正は「実施した」と「効いている」を分けて確認し、結果を仕入先評価と次回の計画に戻す

サプライヤー監査は、購買と品質保証が同じ事実を見て、仕入先と一緒に品質を上げていくための仕事です。

それぞれの職種の全体像は購買・調達と品質保証・品質管理のページで、仕入先との関係が特に密な業種の事情は自動車・輸送機器のページで紹介しています。

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MONOSCOPEの運営者

プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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