タービンの仕事は、入口と出口の蒸気の比エンタルピーの差に、蒸気流量を掛けて求め、この差を熱落差ともいいます。
損失のない理想の膨張と考える場合、出口の比エンタルピーは乾き度(湿り蒸気のうち蒸気の割合)から計算します。乾き度は比エントロピーを使い、x=(s−s′)/(s″−s′)で求めます。
この記事では、乾き度の求め方、出口の比エンタルピー、仕事と出力の計算、kWへの換算を4つのステップで整理し、蒸気表を使った計算例とh-s線図で確かめます。内容は動画でも解説しています。
タービンの仕事の求め方

ランキンサイクルでは、図の1から2がタービンで、ボイラーと過熱器でつくった高温・高圧の蒸気が、タービンの中で膨張して軸を回します。
サイクル全体の流れと熱効率はランキンサイクルとはで解説していますが、ここでは、そのうちタービンの仕事だけを取り出して計算します。
先に単位を整理しておきます。比エンタルピーの差[kJ/kg]は、蒸気1 kgあたりの仕事です。これに蒸気流量[kg/h]を掛けると、1時間あたりの仕事、つまり出力になります。タービンの仕事は、次の4つのステップで求めます。
- タービン出口の蒸気の乾き度を求める
- タービン出口の蒸気の比エンタルピーを求める
- タービン入口の比エンタルピーと出口の比エンタルピーの差に流量を掛ける
- タービンの仕事の単位に変換する
蒸気表で出口の圧力の値を読めば、あとは比例配分と掛け算です。
※STEP 1・2 は、損失のない理想の膨張(等エントロピー膨張)を考えた場合の出口の値です。
なぜエンタルピーの差がそのまま仕事になるのかも押さえておきます。タービンのように蒸気が流れ続ける機械では、入ってくるエネルギーと出ていくエネルギーの差が、軸の仕事と熱の出入りに分かれます。
タービンは保温されていて外への放熱が小さく、入口と出口の速度の差も小さいとみなせるため、比エンタルピーの差を軸の仕事と考えて計算します。
仕事を取り出さない弁やオリフィスの絞りでは、エンタルピーは変わらず、この変化は、絞り膨張とはで解説しています。
タービン出口の蒸気の乾き度を求める
まずは、損失のない理想のタービンで出口の状態を求め、実際のタービンとの違いは、後の計算例で扱います。
タービンに入った高温・高圧の過熱蒸気は、熱の出入りがないまま、エネルギーを仕事として軸に渡しながら膨張します。摩擦がまったくなければ、この膨張は可逆断熱膨張(等エントロピー変化)です。
膨張して圧力と温度が下がると、復水タービンでは蒸気の一部が飽和水(水滴)に戻り、このように水滴を含む蒸気を湿り蒸気といいます。
湿り蒸気のうち、飽和蒸気と飽和水の割合を表す指標が乾き度で、質量で数え、蒸気1 kgのうち飽和蒸気が何kgかを表します。
例えば乾き度が0.8(80%)なら、8割が飽和蒸気、2割が飽和水で、乾き度1は水滴を含まない乾き飽和蒸気、0は飽和水を表します。
理想の膨張は真下(2)へ、損失がある膨張は右下(2′)へ進みます。どちらも湿り蒸気の領域に入ります。
※後で使う計算例(入口10 MPa・500℃、出口5 kPa)の値を IAPWS-IF97 で計算して描いた図です。2′は内部効率を0.85と仮定した場合。灰色の実線は等圧線、点線は乾き度が一定の線です。
h-s線図(モリエ線図)では、縦軸が比エンタルピーなので、タービンの仕事は縦の長さとして読め、等エントロピー膨張は横に動かない真下への線です。出口の点が山形の飽和蒸気線より下にあれば湿り蒸気で、点線の位置から乾き度のおよその値も読めます。
乾き度を計算するには、入口の過熱蒸気の比エントロピー s と、出口の圧力での飽和水・飽和蒸気の比エントロピーが必要で、どちらも蒸気表から読み取ります。
理想の膨張は等エントロピー変化なので、出口の湿り蒸気の比エントロピーも入口と同じ s になります。湿り蒸気の比エントロピーは、飽和蒸気と飽和水の値を乾き度で割り振った値です。
分母は飽和水から飽和蒸気までの幅で、分子はそのうち出口の点がどこまで進んだかです。出口の圧力が高い背圧タービンなどでは、蒸気が湿らずに過熱蒸気のまま出ることもあります。その場合は x が1を超える値になるので、よくある質問で扱う方法で求めます。
タービン出口の蒸気の比エンタルピーを求める
乾き度が求まったら、次はタービン出口の蒸気の比エンタルピーです。乾き度は飽和蒸気と飽和水の割合なので、比エンタルピーも比エントロピーと同じ形で割り振ります。
2つ目の形は、「飽和水の比エンタルピーに、蒸発した割合ぶんの潜熱を足す」と読め、ランキンサイクルの記事でも、この形で計算しています。湿り蒸気1 kgを、飽和蒸気と水滴に分けて見ると次のようになります。
比エンタルピーは、飽和蒸気と飽和水の値を質量の割合で足し合わせた値です。
※5 kPa(飽和温度約32.9℃)まで等エントロピー膨張した場合の値です。乾き度・比エンタルピーの出し方は計算例で示します。
エンタルピーそのものの意味や、内部エネルギーとの違いはエンタルピーとはで解説しています。
タービン入口の比エンタルピーと出口の比エンタルピーの差に流量を掛ける
入口と出口の比エンタルピーの差に蒸気流量を掛ければ、タービンでの熱落差が求まります。
損失がなくタービン効率が100%なら、この熱落差がそのままタービンの仕事になります。実際のタービンでは、蒸気と翼の摩擦や翼のすき間からの漏れ(内部損失)で、出口の比エンタルピーが理想より高いところで止まります。理想の熱落差に対する実際の熱落差の割合が内部効率です。
内部効率・機械効率とタービン効率の関係は、熱落差とタービン効率の公式で詳しく整理しています。
タービンの仕事の単位に変換する
タービンの出力はkWで表すことが多いので、熱落差のkJ/hをkWに変換し、1 kW=1 kJ/sなので、1時間=3,600秒で割ります。
ワットとジュールの関係はワット(W)とジュール(J)の違いと変換方法で解説しています。
蒸気表で計算してみよう
ランキンサイクルの記事と同じ条件で、4つのステップを数値で追ってみます。蒸気表は、水と蒸気の性質を圧力・温度ごとにまとめた表です。
入口の蒸気が10 MPa・500℃、出口(復水器)の圧力が5 kPa(どちらも絶対圧)の復水タービンがある。蒸気流量は36,000 kg/h。理想の膨張としたときの出口の乾き度、比エンタルピー、タービン出力を求めよ。
理想の膨張(等エントロピー膨張)で求める
まず蒸気表から、入口の値と、出口の圧力5 kPaでの飽和水・飽和蒸気の値を読み取ります。
この値を、STEP 1から順に式へ入れます。
出口の乾き度は約0.77で、蒸気の2割以上が水滴になっている計算です。比エンタルピーの差1363.5 kJ/kgは、ランキンサイクルの記事で求めたタービン仕事と同じ値です。
損失がある場合(内部効率を仮定する)
実際のタービンの出口は、比エントロピー一定の点にはならないので、ここでは説明のために、内部効率を0.85と仮定して実際の出口を求めます。0.85は計算用の値で、実機の代表値ではありません。
損失のぶんだけ出口に熱が残るので、実際の出口の乾き度は理想より高くなります。比エントロピーで求めた0.773は、あくまで理想の出口の値です。
同じ入口・同じ出口圧力でも、損失があると出口の状態と出力が変わります。
※入口10 MPa・500℃、出口5 kPa。出口の比エントロピーは理想が6.5995、損失がある場合は約7.27 kJ/(kg·K) に増えます。
試験問題では、問題文が「断熱膨張」「等エントロピー膨張」なら理想の膨張として解きます。「タービン効率」「内部効率」が与えられたら、理想の差に効率を掛けて実際の出口を求めます。
こうした計算はエネルギー管理士試験の熱分野でよく出ます。試験のつまずきやすい点はエネルギー管理士が難しいと感じる原因と勉強法で紹介しています。
タービンの仕事と乾き度のよくある質問
乾き度の公式は?エンタルピーからも求められる?
乾き度は、比エントロピー・比エンタルピー・比体積のどれからでも、同じ形の比例配分で求められるので、分かっている量に合わせて使い分けます。
どの式も、湿り蒸気の性質が飽和水と飽和蒸気の値の加重平均になることから出てきて、逆に、乾き度が分かれば比体積も求められます。
計算例の理想の出口なら、v=0.0010053+0.773×(28.19−0.0010053)≒21.8 m3/kgです。真空に近い圧力なので、蒸気1 kgが20 m3以上に膨らんでいます。
計算した乾き度が1を超えたら?
x>1になったら、出口の蒸気は湿り蒸気ではなく過熱蒸気です。乾き度は湿り蒸気にだけ使う量なので、1を超えた値を「過熱蒸気の乾き度」として使うことはできません。
この場合は、過熱蒸気表で出口の圧力のページを開き、比エントロピーが入口と同じになる温度と比エンタルピーを読み取ります。
例えば、3.0 MPa・400℃(s=6.9233)の蒸気を1.0 MPaまで等エントロピー膨張させるとします。式に入れると x=(6.9233−2.1381)/(6.5850−2.1381)≒1.08になります。
過熱蒸気表で読むと、出口は約249℃・h≒2941 kJ/kgの過熱蒸気です。1.0 MPaの飽和温度179.9℃より高く、水滴はできていません。
工場の背圧タービンのように出口の圧力が高いと、こうしたケースが多くなります。抽気や背圧のタービンは抽気復水タービンの仕組みで紹介しています。
温度と圧力が分かれば乾き度は分かる?
湿り蒸気の領域では分かりません。湿り蒸気の温度は、乾き度に関係なくその圧力の飽和温度で一定だからです。
5 kPaの湿り蒸気なら、乾き度が0.7でも0.9でも温度は約32.9℃で、温度と圧力は、過熱蒸気なら状態を決められますが、湿り蒸気では片方だけの情報になります。
そのため湿り蒸気の乾き度は、比エントロピーや比エンタルピー、比体積など、もう1つの量から求めます。現場で温度を測るセンサーの違いは熱電対と測温抵抗体の違いで解説しています。
出口の乾き度が低いと何が困る?
低圧タービンの最終段にある長い翼の先端部は、蒸気の湿りが多く周速も速いため、水滴が高速で当たって浸食(エロージョン)が起きやすい部分です。水滴が翼に当たることは、効率を下げる損失にもなります。
翼の構造は動翼と静翼の違いで解説しています。乾き度を高く保つ方法の1つが再熱サイクルです。膨張の途中の蒸気をボイラーで温め直すと、ランキンサイクルの記事の計算では出口の乾き度が0.77から0.88に上がります。
蒸気タービンの効率はどのくらい?
「効率」がどこからどこまでを指すかで、数字が大きく変わります。タービン単体の内部効率と、燃料から見た発電所の効率は別の指標です。
- 内部効率:理想の比エンタルピー差に対する実際の差の割合。この記事の0.85は説明用の仮定
- タービン効率:理想の熱落差に対する軸出力の割合(内部効率×機械効率)
- タービン熱効率・プラント熱効率:タービン設備や発電所全体に入れた熱に対する電気の割合
原子力百科事典ATOMICA(1998年登録)は、超臨界圧・566℃の大容量の汽力発電所で、タービン熱効率46%、プラント熱効率約40%としています。こちらは復水器で捨てる熱まで含めた効率で、内部効率とは範囲が違います。
タービン効率の公式と計算例は熱落差とタービン効率の記事にまとめています。
まとめ
- タービンの仕事は、入口と出口の比エンタルピーの差に流量を掛けて求める
- 理想の出口の乾き度は x=(s−s′)/(s″−s′)。s′・s″は出口の圧力で読む
- 出口の比エンタルピーは hout=h″x+h′(1−x)
- kJ/hの熱落差を3,600で割るとkW。流量をkg/sにすればそのままkW
- 比エントロピーで求めた乾き度は理想の値。損失があると出口の乾き度は高くなる
ランキンサイクルの計算は式が多いので、「どの圧力の値を読むか」「理想か実際か」を一つずつ確かめながら解くと間違えにくくなります。抽気がある場合の出力は抽気タービンの出力計算方法で解説しています。
タービンの計算は、発電設備を扱うプラントエンジニアの仕事や、製造業のエネルギー管理士の仕事の基礎にもなります。
出典
出典・参考資料(7件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 乾き度(quality)の定義と比体積の式、二相域の温度と圧力:MIT 16.Unified Thermodynamics「8.1 Behavior of Two-Phase Systems」
- 湿り蒸気の性質の加重平均と蒸発潜熱:MIT 16.Unified Thermodynamics「8.2 Work and Heat Transfer with Two-Phase Media」
- ランキンサイクルのタービン出口の乾き度、不可逆な膨張:MIT 16.Unified Thermodynamics「8.5 Rankine Power Cycles」
- 定常流のエネルギーの式:MIT OpenCourseWare 16.Unified「Steady Flow Energy Equation」
- 蒸気表の値:NIST Chemistry WebBook「Thermophysical Properties of Fluid Systems」(IAPWS-IF97 による計算値と照合)
- 汽力発電所のタービン熱効率・プラント熱効率:原子力百科事典 ATOMICA「汽力発電所」(1998年2月登録)
- 低圧タービン最終段の長翼先端部の水滴エロージョン:日立評論「蒸気タービン長翼におけるエロージョン防止技術の開発」(1988年2月)
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