エンタルピーとは?エネルギー・内部エネルギー・エントロピーとの違い

保温材を巻いた蒸気配管とフランジでつながる弁

エンタルピーとは、物質の内部エネルギーUに、圧力Pと体積Vの積を足した量です。式では H=U+PV と書き、単位は内部エネルギーと同じJ(ジュール)です。

エネルギーの一種ですが、流れる流体や圧力一定の変化を計算しやすいように決めた量で、蒸気・燃料・空気・温水の熱計算では、ほぼこの値で話が進みます。

この記事では、エンタルピーの意味と式、実務での使い方、内部エネルギー・エントロピーとの違いを整理し、最後に等エンタルピー変化と等エントロピー変化を、蒸気表の値と計算例で比べます。内容は動画でも解説しています。

目次

エンタルピーとは?

エンタルピーは、物質が持つ内部エネルギーに、まわりを押しのけて自分の居場所を確保する分の仕事を加えた量で、単位はkJ(キロジュール)やkcal(キロカロリー)で表します。

「エネルギー」は熱・仕事・運動などを含む広い言葉で、エンタルピーはそのうちの一つの決め方です。物質が持つ全エネルギーではなく、流体が装置を出入りする計算で扱いやすい量として使います。

単位質量あたりの値は比エンタルピーと呼び、kJ/kgやkcal/kgで表し、蒸気表に載っているのもこの比エンタルピーで、工業分野ではこちらをよく使います。名前が似ているエントロピーとは、まったく別の量で、違いは後半の章で詳しく比べます。

エンタルピーの語源は、ギリシア語の「エンタルペイン(中で温める)」で、オランダの物理学者カメルリング・オネスが提案し、1909年ごろから使われ始めました。

物質のエネルギーというと温度だけで決まる印象ですが、エンタルピーは圧力と体積の分も含んでいます。温めると膨らむ気体に、定圧比熱と定積比熱の2種類の比熱があるのも、この考え方につながっています。

熱力学では、仕事を含まないエネルギーを内部エネルギー、圧力と体積の仕事まで含めたものをエンタルピーと呼び分けます。理想気体なら、内部エネルギーは温度だけで決まります。

熱力学は、熱を動力に変える研究から発展した学問で、温度の分と圧力の分をまとめて扱えるエンタルピーは、熱機関や蒸気設備の計算で便利な量です。

熱力学では、全体の量を大文字、1kgあたりの「比」の量を小文字で書き分けるのが一般的です。エンタルピーはH[kJ]とh[kJ/kg]、内部エネルギーはUとu、エントロピーはSとs[kJ/(kg·K)]です。

エンタルピーは記号Hで表すことが多く、内部エネルギーと同じく状態量として扱います。状態量は、そこに至るまでの経路によらず、いまの状態だけで一つに決まる値で、詳しくは状態量とはで解説しています。

エンタルピーの式

内部エネルギーに仕事を加えたものがエンタルピーです。式に表すと次のようになります。

H = U + PV
H:エンタルピー[J] U:内部エネルギー[J] P:圧力[Pa] V:体積[m3]

PVは、流体が自分の体積の分だけまわりを押しのけるのに必要な仕事です。流れる流体は、この押しのけ仕事(流動仕事)を一緒に運んでいきます。

ボイラーやタービンのように流体が出入りする機器では、UとPVがいつも一緒に出てきます。そこで最初から足し合わせた量としてHを決めておくと、計算が一段で済みます。

図1:エンタルピーの中身

エンタルピーは、内部エネルギーと押しのけ仕事の2つを足した量です。

エンタルピー H流体が持ち運ぶエネルギーとして扱う量。単位はJ、単位質量あたりはkJ/kg(比エンタルピー h)
分けると
内部エネルギー U分子の運動や分子どうしの力によるエネルギー。理想気体では温度だけで決まる
押しのけ仕事 PV圧力Pのもとで体積Vの居場所をつくる仕事。流れる流体が一緒に運ぶ(流動仕事)

※定圧の変化では、加えた熱量Qがそのままエンタルピーの増加になります(ΔH=Q)。

圧力一定のまま加えた熱量は、そのままエンタルピーの増加になりますが、これは膨張の仕事のほかに、かき混ぜる仕事などのやり取りがない場合の関係です。ボイラーの中の水も、ほぼ一定の圧力で加熱されるので、受け取った熱量は出口と入口のエンタルピー差で表せます。

エンタルピーの使い方

エンタルピーは熱力学の最初に出てくる量ですが、工業分野では式の導出よりも、数値の意味と使い方が重要です。

図2:エンタルピーを使う4つの場面

どの場面でも「入口と出口のエンタルピー差」が、やり取りした熱や仕事になります。

燃料発熱量(主に低位発熱量)を使い、ボイラー効率や熱量単価を計算する
蒸気蒸気表の比エンタルピーで、加熱に要る蒸気量やタービンの熱落差を出す
空気湿り空気線図で、空調・乾燥・除湿に必要な熱量を読む
温水比熱×温度差で求め、温水の持つ熱量や放熱量を計算する

燃料のエンタルピー

燃料には、それぞれ単位質量あたりの発熱量が決まっていて、燃焼でできた水蒸気の潜熱を含むかどうかで、高位発熱量と低位発熱量の2つがあります。

燃料を燃やして出た熱は、蒸気やガスのエンタルピーになり、ボイラー効率などの燃焼計算では、一般に低位発熱量を使い、2つの違いは高位発熱量と低位発熱量の違いで整理しています。

燃料のエンタルピーは、蒸気・ガス・電気などの熱量単価(単位熱量あたりの価格)を比べるときにも使い、工場全体でのエネルギーの数え方は工場の省エネとエネルギー管理の基本にまとめています。

蒸気のエンタルピー

飽和蒸気の比エンタルピーは蒸気表で確かめられ、圧力か温度のどちらかが決まれば、飽和蒸気の比エンタルピーも決まります。

蒸気のエンタルピーを使うのは、被加熱物を温めるのに必要な蒸気量を出すときで、ボイラーの能力をそろえて比べる相当蒸発量の計算も、比エンタルピーの差で考えます。

蒸気タービンで発電するときにも使い、タービンの入口と出口のエンタルピー差を熱落差と呼び、これが取り出せる仕事の大きさになります。発電の熱サイクル全体はランキンサイクルの記事で解説しています。

蒸気は、減圧弁で圧力を下げて使う温度に合わせますが、減圧や絞りは等エンタルピー変化と呼ばれ、減圧後の乾き度を求めるときにもエンタルピーを使い、減圧後の蒸気の状態は減圧すると乾き度が上がる?過熱になる?で詳しく扱っています。

空気のエンタルピー

空気のエンタルピーは、湿り空気線図で使い、湿り空気線図は、空気の温度と、その空気が含む水分量の関係を1枚にまとめた線図です。

線図には、乾球温度・湿球温度・露点温度・相対湿度・絶対湿度・比エンタルピーが書き込まれており、乾球温度と相対湿度のように、このうち独立した2つが分かれば、残りの値も線図から読み取れます。

空気を冷やす・温める・除湿する・乾燥させるときは、前後の比エンタルピーの差から必要な熱量を出すため、空調機や乾燥機の能力を考える場面で欠かせない値です。

温水のエンタルピー

温水のエンタルピーは温度で変わり、水も温度でわずかに体積が変わりますが、量が小さいので比熱一定で考えることが多くあります。たとえば比熱を4.19kJ/(kg·K)とすると、1kg・80℃の温水のエンタルピーは次のとおりです。

1[kg]× 4.19[kJ/(kg·K)]×(353 − 273)[K]= 335[kJ]
0℃(273 K)の水を基準(エンタルピー0)とした値です。蒸気表の80℃の飽和水も 334.9 kJ/kg で、ほぼ同じ値になります。

温めた水が膨らむ分の扱いは、膨張タンク(膨張水槽)とは?役割と仕組み、開放式・密閉式の違いと容量の計算方法で解説しています。

エンタルピーと内部エネルギーの違い

エンタルピーと内部エネルギーは、どちらも物質のエネルギーを表す量で、単位も同じです。そのため同じものと思われやすいのですが、中身は違います。

2つの違いは、仕事を含むか含まないかで、仕事を含まないほうが内部エネルギー、仕事を含むほうがエンタルピーです。エンタルピーの式を、1kgあたりの値(比エンタルピー)で書き直すと次のとおりです。

h[J/kg]= u[J/kg]+ P[Pa]· v[m3/kg]
押しのけ仕事 Pv を W とすると
h[J/kg]= u[J/kg]+ W[J/kg]
h:比エンタルピー u:比内部エネルギー P:圧力 v:比体積(1kgあたりの体積) W:押しのけ仕事

内部エネルギーは物質の中にたくわえられたエネルギーで、エンタルピーはそれに押しのけ仕事を足し合わせたものです。

たとえば空気の入った風船を温めると、中の空気は温度が上がると同時に膨らみ、温度が上がる分だけが内部エネルギー、膨らむための仕事まで含めたものがエンタルピー、というイメージです。

図3:内部エネルギーとエンタルピーの違い

体積が一定なら内部エネルギー、圧力が一定ならエンタルピーで考えると計算が楽になります。

内部エネルギー U
エンタルピー H
中身
分子の運動・相互作用のエネルギー
U に押しのけ仕事 PV を足したもの
熱量と等しくなる条件
体積一定のとき ΔU=Q
圧力一定のとき ΔH=Q
対応する比熱
定積(定容)比熱 cv
定圧比熱 cp
よく使う場面
密閉容器・エンジンのシリンダー内の計算
ボイラー・タービン・熱交換器など流れる流体の計算

※ΔU=Q、ΔH=Q は、ほかに仕事のやり取りがない場合の関係です。

体積一定で熱を加えるオットーサイクルの熱効率の計算では、熱量を内部エネルギー(定容比熱)で表しています。

エンタルピーと内部エネルギーの計算例

内部エネルギーとエンタルピーの違いが分かりやすい問題を解いてみます。

問題:標準状態で、100℃の水が蒸発して100℃の蒸気になるときの内部エネルギーとエンタルピーの変化量を求めなさい。水の比体積は0.001 m3/kg、蒸気の比体積は1.694 m3/kg、蒸発潜熱は2257 kJ/kgとする。

潜熱は、水が蒸気に変わるために必要なエンタルピーを表しています。蒸発は圧力一定の変化なので、エンタルピーの変化量は潜熱そのものです。

ΔH = 2257[kJ/kg]
内部エネルギーの変化は、エンタルピーの式から押しのけ仕事の分を引いて求める
ΔU = ΔH − PΔV
ΔV = 1.694 − 0.001 = 1.693[m3/kg]
ΔH=2257 kJ/kg、P=1.0×105 Pa、ΔV=1.693 m3/kg より
PΔV = 1.0×105 × 1.693 = 169.3×103[J/kg]= 169.3[kJ/kg]
ΔU = 2257 − 169.3 = 2087.7 ≒ 2088[kJ/kg]
※蒸気表(IAPWS-IF97)で100℃の水と蒸気の内部エネルギーの差を見ると 2087.0 kJ/kg で、ほぼ同じ値です。

内部エネルギーの変化は約2088kJ/kg、エンタルピーの変化は2257kJ/kgで、差の169kJ/kgが、水が約1,700倍に膨らむときにまわりを押しのけた仕事です。

エンタルピーは内部エネルギーに仕事を加えたものなので、エンタルピーのほうが大きくなります。体積が一定ならΔVが0になり、内部エネルギーとエンタルピーの変化量は等しくなります。

この考え方は、定圧比熱と定積比熱の違いとよく似ており、詳しくは定圧比熱と定積比熱の違いをご覧ください。

エンタルピーとエントロピーの違い

エントロピーは、物質の「乱雑さ」を表す量です。熱量を温度で割ったkJ/K(キロジュール毎ケルビン)で表し、記号はSを使います。

エンタルピーと同じく、単位質量あたりの値は比エントロピーと呼び、kJ/(kg·K)で表します。蒸気表では、比エンタルピーの隣に比エントロピーの列があります。

図4:エンタルピーとエントロピーの違い

名前は似ていますが、エンタルピーはエネルギーの量、エントロピーはエネルギーの「質」に関わる量です。

エンタルピー H
エントロピー S
表すもの
内部エネルギー+押しのけ仕事
乱雑さ(熱の散らばり具合)
単位
kJ(比エンタルピーは kJ/kg)
kJ/K(比エントロピーは kJ/(kg·K))
求め方
H=U+PV
可逆変化で受け取る熱を、その時の温度で割って足し合わせる
一定になる変化
絞り(減圧弁)
可逆な断熱変化(理想的なタービン・圧縮機)
主な使い道
熱量・仕事の計算
損失の大きさや、取り出せる仕事の上限の判断

※どちらも状態量で、蒸気表では温度・圧力ごとに値が載っています。

エントロピーの変化は、受け取った熱をそのときの絶対温度で割って足し合わせたものです。温度が変わりながら熱を受け取るときは、熱量を最後の温度で割るだけでは求まりません。

比熱が一定の水なら、温度Tの水の比エントロピーは次の式で出せ、0℃(273.15 K)の水をエントロピー0の基準にしています。

s = c lnT273.15
水の比熱を4.2 kJ/(kg·K)とすると、10℃の水は
s = 4.2 × ln283.15273.15 ≒ 0.151[kJ/(kg·K)]
この水を30℃まで温めると
s = 4.2 × ln303.15273.15 ≒ 0.438[kJ/(kg·K)]
s:比エントロピー c:比熱 T:水の温度[K] ln:自然対数。蒸気表の値は10℃で0.151、30℃で0.437 kJ/(kg·K)です。

熱量4.2×30を303 Kで割ると0.416になり、正しい値より小さく出るのは、低い温度のときに受け取った熱まで、高い温度で割ってしまうためです。温度は水の分子の運動で表されるため、温められた水は分子の動きが速くなった分、「乱雑さ」が増えたことになります。

水蒸気は潜熱を受け取って気体になるため、比エントロピーは計算ではなく蒸気表で読むのが確実で、蒸気表は絶対圧で引くので、ゲージ圧(MPaG)に大気圧0.101MPaを足してから読みます。以下は、この換算をした飽和蒸気の値です。

0.1MPaGの飽和蒸気は、蒸気表で温度120℃、比エンタルピー2706kJ/kgで、比エントロピーは7.12kJ/(kg·K)で、水のときより気体になった分だけ「乱雑さ」が大きくなっています。

同じように、0.5MPaGの飽和蒸気は158.9℃・2756kJ/kgで、比エントロピーは6.76kJ/(kg·K)です。1.0MPaGでは184.1℃・2780kJ/kgで、6.55kJ/(kg·K)になります。

図5:飽和蒸気の比エントロピー

比エンタルピーはほとんど変わらないのに、圧力が高いほど比エントロピーは小さくなります。

0.1 MPaG(120℃)7.12
0.5 MPaG(158.9℃)6.76
1.0 MPaG(184.1℃)6.55

※単位は kJ/(kg·K)。比エンタルピーは順に 2706・2756・2780 kJ/kg。値は IAPWS-IF97(日本機械学会蒸気表と同じ国際式)で計算し、ゲージ圧に大気圧を足した絶対圧で求めています。棒の長さは 7.5 を100%としています。

こうしてみると、飽和蒸気は圧力が高いほど比エントロピーが小さくなります。圧力が高いと比体積が小さくなり、分子が動ける範囲が狭まって「乱雑さ」が小さくなるからです。たとえるなら、同じように散らかっていても、大きな部屋のほうが小さな部屋より「乱雑さ」が大きい、というイメージです。

等エンタルピー変化と等エントロピー変化

「等エンタルピー変化」と「等エントロピー変化」は、熱力学の本によく出てくる言葉で、2つの違いは、状態が変わるときにエンタルピーが一定のまま変わるのか、エントロピーが一定のまま変わるのかです。

どちらも蒸気の圧力が下がる変化で、仕事を取り出さずに圧力を落とすのが減圧弁、圧力が下がる力で羽根を回すのがタービンです。

図6:等エンタルピー変化と等エントロピー変化

減圧弁は「仕事を取り出さない膨張」、タービンは「仕事を取り出す膨張」です。

等エンタルピー変化
等エントロピー変化
代表例
減圧弁・絞り弁・オリフィスでの絞り
理想的なタービン・圧縮機・エンジンでの膨張と圧縮
成り立つ条件
断熱で、外へ仕事をせず、流速の変化が小さい
断熱で、摩擦などの損失がない(可逆)
エンタルピー
前後で変わらない
膨張では、取り出した仕事の分だけ下がる
エントロピー
増える
前後で変わらない
蒸気の状態
温度は下がる。低圧の飽和蒸気なら過熱度がつき、湿り蒸気なら乾き度が上がる
温度も圧力も大きく下がり、湿り蒸気になりやすい

※実際のタービンは損失があるため、エントロピーが少し増えます。実際の熱落差と、理想の等エントロピー変化の熱落差との比がタービン効率です。

等エンタルピー変化

等エンタルピー変化は、変化の前後で流体のエンタルピーが変わらない変化で、たとえば、蒸気の圧力を下げるバルブ(減圧弁)を通るときがこれにあたります。

バルブの前後で圧力は変わりますが、エンタルピーは変わりません。ただ通るだけで、外へ仕事をせず、熱の出入りもほとんどないからで、流速の変化も小さいとみなします。

理想気体なら、エンタルピーは温度だけで決まるので、絞っても温度は変わりません。実在の気体では温度が変わり(ジュール・トムソン効果)、ふつうの条件では多くの気体が絞ると冷えます。

例として、1.0MPaGの飽和蒸気を0.5MPaGまで減圧する場合を考えます。

① 一次側:1.0MPaGの飽和蒸気(蒸気表より)
h1 = 2780 kJ/kg t1 = 184.1℃ s1 = 6.55 kJ/(kg·K)
② 減圧弁の前後でエンタルピーは変わらない
h2 = h1 = 2780 kJ/kg
③ 二次側:0.5MPaGで比エンタルピーが2780 kJ/kgの蒸気(蒸気表より)
t2 ≒ 169℃(過熱蒸気) s2 = 6.81 kJ/(kg·K)
0.5MPaGの飽和温度は158.9℃、飽和蒸気の比エンタルピーは2756 kJ/kg。二次側はそれより約24 kJ/kg多いので、約10℃の過熱度がついた過熱蒸気になります。

減圧のような絞り膨張では、エンタルピーは変わらず、エントロピーは増えることが分かります。仕事として取り出せたはずのエネルギーを、使わずに捨てた分がエントロピーの増加として表れます。

※実際には、弁からの放熱や流速の変化があるので、エンタルピーはわずかにずれ、弁の中の摩擦はエンタルピーを変えず、エントロピーを増やす側に働きます。

絞るだけで圧力が下がるのにエンタルピーが変わらない理由と計算例は、絞り膨張とはで解説しています。

等エントロピー変化

一方、等エントロピー変化は、エンジンやタービンを流体の力で動かす計算で使い、理想的な熱機関では、流体のエネルギーは損失なく仕事として出力されると考えます。

このとき、熱機関の前後で外との熱のやり取りがなく、摩擦などの損失もないので、エントロピーは変わらないとみなします。タービン入口と出口のエンタルピー差(熱落差)が、そのまま仕事になります。

※実際には、羽根と蒸気の摩擦などの損失があるので、等エントロピーにはなりません。タービンの効率と熱落差の考え方はタービン効率の考え方、熱落差とはで、羽根の構造は動翼と静翼とはで解説しています。

エンタルピーのよくある質問

エンタルピーとエネルギーの違いは?

エネルギーは、仕事をする能力全般を指す広い言葉で、エンタルピーはその中の一つで、内部エネルギーに押しのけ仕事PVを足すと決めた量です。

物質が持つ全エネルギーという意味ではありませんが、運動エネルギーや位置エネルギーは含まず、流れる流体や圧力一定の変化で熱量を計算しやすいように定義されています。

内部エネルギーとエントロピーの違いは?

内部エネルギーはエネルギーの量で単位はJ、エントロピーは熱を温度で割った量で単位はJ/Kです。

同じ量の熱でも、高い温度で受け取るほどエントロピーの増え方(Q/T)は小さく、仕事に変えやすい熱になります。内部エネルギーは「量」、エントロピーは「使いやすさ」の目安と考えると区別しやすくなります。

エンタルピーの値が0やマイナスになることはある?

あります。値はどこを0にするかという基準の決め方で変わり、蒸気表は、三重点(0.01℃)の水の内部エネルギーとエントロピーを0にして作られています。

そのため0℃付近の水の値は0に近く、基準より低い状態ではマイナスにもなります。実務で意味を持つのは、値そのものより2つの状態の差です。

まとめ

この記事のまとめ
  • エンタルピーは内部エネルギーに押しのけ仕事を足した量(H=U+PV)
  • 燃料・蒸気・空気・温水の熱計算で、入口と出口の差として使う
  • 内部エネルギーとの違いは仕事を含むか含まないか。圧力一定なら ΔH=Q
  • エントロピーは「乱雑さ」を表し、受け取る熱をその時の温度で割って足し合わせる
  • 等エンタルピー変化は減圧弁などの絞り、等エントロピー変化は理想的なタービンなどの熱機関

エンタルピーは、燃料から動力を生み出す熱機関では欠かせない考え方です。教科書の最初の式で苦手意識を持ちやすい量ですが、蒸気表とあわせて使えば、実務で便利な指標になります。

エネルギー管理士の試験でも、蒸気表を使うエンタルピー・エントロピーの計算はよく出ますが、資格を仕事にどう生かすかは製造業のエネルギー管理士の仕事で紹介しています。

蒸気や熱を扱う設備の仕事に興味がある方は、プラントエンジニアの仕事とはもあわせてご覧ください。

出典

出典・参考資料(5件)を開く出典・参考資料を閉じる

NEWSLETTER

選んだ職種・業種に合わせた記事を、週1回メールで

週刊MONOSCOPEは、登録時に選んだ職種・業種に合わせた記事を週1回お届けする無料のメルマガです。

実際に届くメールの例を見る

件名:今週のあなた向け記事|週刊MONOSCOPE 10/9号
登録内容:生産技術 × 自動車・輸送機器

週刊MONOSCOPEの見本(生産技術 × 自動車・輸送機器)

職種3本・業種3本・製造業で働くすべての方へ2本・今週よく読まれた記事3本が届きます。記事は毎週入れ替わります。ほかの見本を見る

職種・業種を選んで登録へ ›

無料・週1回。登録後に届く確認メールのリンクを押すと登録が完了します。配信はメール内のリンクからいつでも停止できます。

WEEKLY NEWS

今週の製造業ニュース10選

メルマガは職種・業種に合わせた記事。LINEとnoteでは、全員共通の10本を毎週土曜の朝にお届けします。

LINEでニュース10選を受け取るnote今週のニュース10選をnoteで読む ›
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

MONOSCOPEの運営者

プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

▶ お仕事のご依頼はこちら

コメント

コメントする

目次