日銀短観は、日本銀行が約9,000社に景気の実感を聞く、年4回の企業アンケートです。今回の9月調査で読みどころになるのは、見出しの数字よりも、業種ごとの明暗と先行き、設備投資計画です。
- 大企業製造業の業況判断DIは+24。6月調査の+22から2ポイント改善し、6四半期連続の改善。民間予想平均(+26)は下回った
- 3か月後の先行きは+21で、3ポイントの悪化を見込む
- 中小企業製造業は+14(+5)と改善幅が大きく、大企業との差は10ポイントに縮小
- 業種別では非鉄金属45・生産用機械43などAI関連が高水準。石油・石炭製品、鉄鋼、窯業など素材が持ち直し、自動車は11と小幅に低下
- 2026年度の設備投資計画(大企業製造業)は11.6%増で上方修正。想定為替レート(全規模・全産業)は154.23円
短観には、業種別・規模別の景気の実感に加え、3か月後の見通し、仕入価格の判断、設備投資計画なども入っています。企業の景気の実感を数字にした業況判断DIと、その内訳を合わせて見ると、現場で使える情報が見えてきます。
2026年10月1日に9月短観が公表されました。大企業製造業の業況判断DIはプラス24で、6月から2ポイント改善し、6四半期連続の改善です。
この記事では、まず9月調査の結果の要点を示し、そのうえで6月短観までの流れと民間予想との比較を見ます。続けて、AI需要と原油高という2つの力の関係と、結果を読む5つのチェックポイントを順に整理します。
9月短観の結果|大企業製造業は+24で6四半期連続の改善
日本銀行は10月1日午前8時50分に9月調査を公表しました(回答期間は8月26日〜9月30日、対象9,104社、回答率99.4%)。大企業製造業の業況判断DIはプラス24でした。6月調査の22から2ポイントの改善です。
民間シンクタンク13社の予想平均(プラス26)には2ポイント届かなかった一方、6月調査で企業自身が見込んでいた先行き(17)は7ポイント上回りました。
予想ほどではないが、企業の3か月前の想定よりは良かったという結果です。3か月後の先行きは21で、最近から3ポイント下がる見通しです。
大企業製造業は予想を下回ったものの改善が続き、中堅・中小企業の改善幅がより大きくなりました。
※DIは%ポイント。( )内は6月調査からの変化幅。設備投資は土地を含み、ソフトウェア・研究開発を除く。雇用人員判断DIのマイナスは「不足」超。出典:日本銀行「短観(要旨)(2026年9月)」「短観(概要)―2026年9月―」。
業種別では、6月に悪化した素材業種が持ち直したのが目立ちます。大企業の素材業種は25で7ポイント改善し、加工業種(25、+2ポイント)と並びました。
石油・石炭製品は36(+27)、鉄鋼は6(+12)、窯業・土石製品は22(+11)、化学は26(+6)です。
AI関連では非鉄金属が45(+9)、生産用機械が43(+7)、電気機械が33(+4)とそろって改善しました。一方、自動車は11で1ポイント低下しています。
非鉄金属・生産用機械が高水準を保ち、石油・鉄鋼・窯業など素材の改善が大きくなりました。
※数字は業況判断DI(最近、%ポイント)と6月調査からの変化幅。先行きは化学12、窯業・土石11、石油・石炭製品45、生産用機械44、電気機械35、自動車10。出典:日本銀行「短観(概要)―2026年9月―」。
収益と投資の計画も上向きです。大企業製造業の2026年度の経常利益計画は前年度比13.6%増で、6月調査から21.7%の上方修正となりました。
設備投資計画(土地を含み、ソフトウェア・研究開発を除く)は11.6%増で、こちらも1.3%上方修正されています。
以下では、公表前に注目されていた数字と6月までの流れを振り返りながら、9月の結果をどう読むかを整理します。
公表前に注目された3つの数字と短観の基本
日銀短観(全国企業短期経済観測調査)は、日本銀行が3・6・9・12月に行う企業アンケートです。9月調査の結果は2026年10月1日(木)の午前8時50分に公表されました。
公表前に注目されていたのは、次の3つの数字です。前回6月調査の実績、民間シンクタンクの予想平均、そして予想されていた先行きの水準です。結果はいずれも図1のとおりで、最近24・先行き21と、予想平均をそれぞれ2ポイント下回りました。
予想平均は6月から4ポイントの改善でしたが、実績は2ポイントの改善(+24)でした。
※予想は2026年9月25日に報じられた民間シンクタンク13社の平均。9月調査の実績は最近+24、先行き+21(2026年10月1日公表)。
短観の中心になる「業況判断DI」では、自社の業況を「1.良い」「2.さほど良くない」「3.悪い」の3択で答えてもらいます。DIは、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた数字です。
プラス22なら、良いと答えた企業が悪いと答えた企業より22ポイント多い、という意味になります。
規模は資本金で次のように分けられます。
- 大企業:資本金10億円以上
- 中堅企業:1億円以上10億円未満
- 中小企業:2千万円以上1億円未満
ニュースで最初に報じられる「大企業製造業」は、このうち資本金10億円以上の製造業を指します。
DIには「最近」と「先行き」の2種類があります。先行きは3か月後の見通しで、9月調査なら年末ごろの景況感を企業がどう見ているかを表します。
見出しの数字だけでなく、最近と先行きの差を見ると、企業が足元の好調をどこまで続くと考えているかが分かります。
6月短観までの流れ|9月で6四半期連続の改善に
9月調査の出発点となった6月調査(2026年7月1日公表)を振り返ります。回答期間は5月28日〜6月30日で、9,141社が対象、回答率は99.4%でした。
大企業製造業の業況判断DIはプラス22で、3月調査から5ポイント改善しました。三菱UFJ銀行の整理では5四半期連続の改善です。
9月調査は+24となり、改善は6四半期連続になりました。
9月2025年
12月2026年
3月2026年
6月2026年
9月
※単位は%ポイント。2025年12月調査以降は、2026年3月の調査対象企業見直し後の新ベースの数値。出典:2026年6月までは日本銀行統計をもとにした三菱UFJ銀行経済調査室の資料、9月は日本銀行「短観(要旨)(2026年9月)」。
改善を支えたのは半導体・AI関連需要
6月調査での改善について、三菱UFJ銀行は、生産用機械、業務用機械、電気機械、非鉄金属などの改善が続いたことを挙げています。背景にあるのは、世界的な半導体・AI関連需要の拡大です。
大和総研は、円安の効果や中東情勢を受けた一部の前倒し需要も下支えになったと指摘しています。
一方で、調査期間中の中東情勢は大きく揺れました。期間の序盤に米国・イランの停戦見込みが報じられ、その後に緊張が高まる局面を経て、6月17日に両国が停戦・交渉の枠組みに署名しています。
景況感は良くても、先行きへの警戒は解けていないという状態でした。
6月の先行き17に対し、9月の実績は24
6月調査の大企業製造業の先行きDIは17で、最近の22から5ポイント低い水準でした。資源価格の上昇や、原材料・部品の調達に関する供給制約への警戒が意識されていたとみられます。
この「先行き17」は、9月調査の結果を評価する際の基準になります。9月の最近DIが17を上回れば、企業の3か月前の予想よりも実際の景況が良かったことになるからです。
9月の実績は24で、企業自身の3か月前の見立てを7ポイント上回りました。中東情勢への警戒ほどには、夏場の景況は悪化しなかったことになります。
大企業と中小企業の温度差
規模別に見ると、中小企業製造業の業況判断DIは6月調査で9でした。前回から2ポイント改善したものの、大企業の22とは13ポイントの開きがあります。先行きは2まで下がる見通しでした。
中小製造業は、原材料やエネルギーのコスト上昇を販売価格に転嫁しにくい立場にあることが多く、仕入価格判断DIも大企業製造業の62に対して76と高くなっていました。
AI関連の追い風が届きやすい大企業と、コスト高の影響を受けやすい中小企業という構図は、9月調査でも注目点でした。
結果は中小企業製造業が14と5ポイント改善し、大企業(24)との差は13ポイントから10ポイントに縮まりました。中小企業製造業の仕入価格判断DIも71と5ポイント下がっています。
業種別に見る明暗|6月の構図と9月の変化

短観の製造業は17業種に分かれています。全体のDIが同じプラス22でも、中身を見ると業種によって景況感は大きく異なります。6月調査の大企業製造業から、主な業種を抜き出したのが次の図です。9月調査の業種別の結果は図2で示しています。
AI・半導体に近い機械・非鉄が高く、石油や窯業は3月から悪化しました。
※数字は業況判断DI(最近、%ポイント)と3月調査からの変化幅。鉄鋼はマイナス圏(オレンジ)。出典:三菱UFJ銀行経済調査室「日銀短観(2026年6月調査)」。
AI・半導体関連:生産用機械・電気機械・非鉄金属
生産用機械は36で3月から10ポイント、電気機械は29で7ポイント、非鉄金属は36で13ポイント改善しました。
生産用機械には半導体製造装置、電気機械には電子部品やデバイスが含まれ、非鉄金属は銅など配線・電線向けの素材を扱います。
データセンター向けを中心とするAI投資が、装置・部品・素材の3層に波及していることがうかがえます。
9月調査でも生産用機械は43(+7)、電気機械は33(+4)、非鉄金属は45(+9)とそろって改善しました。
生産用機械は先行きも40と、最近より高い見通しでした。受注から出荷まで時間がかかる装置産業では、受注残が先行きの安心材料になりやすいためとみられます。
AI需要が電子部品や半導体市場全体に与える影響は、電子部品・半導体業界の市場規模と動向でも整理しています。
素材:6月は石油と窯業が悪化、9月はそろって改善
素材業種では動きが分かれました。化学は20で6ポイント改善した一方、石油・石炭製品は9で9ポイント、窯業・土石製品は11で14ポイント悪化しています。三菱UFJ銀行は、石油・石油製品ではサプライチェーン混乱の影響が残っているとみています。
石油・石炭製品の先行きは36と、最近の9から大きく上がる見通しでした。
原油価格の変動は、在庫の評価損益や製品価格への反映のタイミングを通じて業況を振らせやすく、素材業種のDIは原油と中東情勢の動きに敏感です。鉄鋼は▲6とマイナス圏ながら、3月から9ポイント改善しました。
9月調査では、石油・石炭製品が36(+27)、窯業・土石製品が22(+11)、鉄鋼が6(+12)、化学が26(+6)と、素材業種はそろって改善しました。
ただし先行きは化学が12、窯業・土石製品が11と大きく下がる見通しで、素材の改善が続くかは原油と需要の動き次第という見方が企業側にも残っています。
自動車:9月は11で小幅低下
自動車は12で、3月から1ポイント悪化しました。先行きも9と、さらに下がる見通しです。
大和総研は9月調査についても、製造業全体は改善する中で自動車など一部の業種は低下すると予想していました。結果は11で1ポイント低下し、先行きも10と、予想どおり伸び悩んでいます。
自動車はすそ野が広く、部品・素材・設備まで多くの中小企業が関わる業種です。米国関税とサプライチェーン再編の影響を受けやすい構造もあり、自動車の数字が伸び悩むと、中小製造業のDIにも影響が出やすくなります。

民間予測と結果の比較|予想平均+26に対して実績+24
公表前、民間シンクタンクの予想はそろって大企業製造業の改善を見込んでいました。9月25日に報じられた13社の予想平均はプラス26で、6月から4ポイントの改善です。
原油高は続くものの、AIの拡大による需要増が景況感を押し上げるという見立てでした。
製造業は3〜4ポイントの改善、非製造業は横ばいから小幅悪化という見方が中心です。
※すべて公表前の「予想」。9月調査の実績は製造業+24、非製造業+35(先行きは製造業21、非製造業30)。6月実績は製造業+22、非製造業+37。第一ライフ経済研は第一ライフ資産運用経済研究所。出典は記事末尾に記載。
個別に公表されていた予想もプラス25〜26に集まっており、「改善するかどうか」より「どこまで改善するか」が焦点でした。
実績は24で、製造業は予想平均を2ポイント、非製造業(35)は1ポイント下回りました。改善は続いたものの、予想比ではやや弱めの結果です。
一方で、先行きについては見方が分かれます。13社平均の先行きは23と6月調査の先行き17より高い一方、第一ライフ資産運用経済研究所は足元から「はっきり低下」すると予想していました。
最近の数字が良くても、先行きが大きく下がれば企業は慎重と読むのが基本です。結果の先行きは21で、予想平均の23は下回ったものの、最近からの下げ幅は3ポイントにとどまりました。
前哨戦の法人企業景気予測調査は「上昇」超
短観の前に出る先行指標として参考になるのが、内閣府と財務省の法人企業景気予測調査です。2026年7〜9月期の結果は9月11日に公表されました。調査時点は8月15日で、短観の回答期間より少し早いタイミングの企業マインドを映しています。
4〜6月のマイナスから、7〜9月はプラスに転じました。
※BSIは前の四半期と比べて景況が「上昇」と答えた企業の割合から「下降」の割合を引いた数値で、短観のDI(水準の判断)とは定義が異なります。出典:内閣府・財務省「法人企業景気予測調査(令和8年7〜9月期調査)」。
大企業製造業のBSIはプラス7.6と、前回調査時の見通し4.4を上回りました。
上昇に寄与したのは生産用機械(23.4)と情報通信機械(19.9)で、下降に寄与したのは食料品(▲6.3)と石油製品・石炭製品(▲14.3)です。
短観6月調査で見えた業種の明暗が、夏にかけても続いていることが分かります。
同じ調査では、2026年度の経常利益が全規模・全産業で2.3%の増益見込みとなり、製造業は5.8%の増益と、前回調査の減益見込みから上方修正されました。
設備投資(ソフトウェアを含み土地を除く)も11.0%の増加見込みです。短観でも収益計画や設備投資計画が上方修正されるかどうかが確認点でした。
結果は大企業製造業の経常利益計画が21.7%、設備投資計画が1.3%の上方修正です。
このほかの先行指標としては、受注の動きから設備投資の温度感を探る工作機械受注の推移と読み方や、月次で出る購買担当者景気指数(PMI)があります。
PMIは毎月の速報性が強みで、四半期に一度の短観とは役割が違います。次の12月短観の前にPMIの方向感を確認しておくと、結果を受け止めやすくなります。
AI需要と原油高の綱引き|押し上げ要因と下押し要因

9月短観を読むうえでの軸は、AI関連需要という押し上げの力と、原油高・中東情勢という下押しの力のどちらが強く出ているかでした。
結果を見ると、製造業全体では押し上げが上回り、原油高の影響が懸念された素材業種や中小企業でもDIは改善しました。ただし先行きは素材業種で大きく下がる見通しで、綱引きが終わったわけではありません。
9月調査では押し上げが上回りましたが、素材業種の先行きは大きく下がる見通しです。
押し上げ要因
- データセンター向けを中心とする半導体・AI関連需要
- 生産用機械・電気機械・非鉄金属の受注と価格
- 価格転嫁の進展(販売価格判断DIの上昇)
- 省力化・デジタル化・更新など底堅い設備投資
下押し要因
- 原油高(WTIは9月初めに1バレル90ドル台)
- ホルムズ海峡をめぐる中東情勢の不確実性
- 原材料・部品の供給制約とコスト上昇
- 自動車など一部業種の伸び悩み
押し上げ:AI関連需要は装置から素材まで
AI関連の需要は、半導体そのものだけでなく、製造装置、電子部品、電線や銅などの素材にまで広がっています。
6月短観で生産用機械、電気機械、非鉄金属がそろって改善したのはその表れで、大和総研も9月調査で化学、非鉄金属、電気機械などの上昇を予想していました。
設備投資の面でも、第一ライフ資産運用経済研究所は省力化・効率化投資やAI・半導体関連投資を構造的な需要として挙げ、2026年度計画の上方修正を予想していました。
AI需要は一時的な特需ではなく、設備投資計画にも表れ始めているかどうかが、9月調査の確認点でした。結果は大企業製造業の2026年度設備投資計画が11.6%増と、6月から上方修正されています。
下押し:原油高と中東情勢
下押し要因の中心は原油高です。9月初めには、イランが周辺国の米軍拠点を攻撃したとの報道やホルムズ海峡の回復が遅れるとの懸念から、WTI原油は1バレル92ドル台まで上がりました。
6月の停戦合意のあとも、中東情勢は落ち着いたとは言いにくい状況です。
原油高は、燃料費や電力料金、石油化学製品の原料価格を通じて製造業のコストを押し上げます。
価格転嫁が進みにくい中小企業や、エネルギー多消費型の素材業種ほど影響が出やすいため、9月調査では大企業と中小企業、加工と素材の差がどう動くかが注目でした。
結果は中小企業製造業(+5ポイント)と素材業種(+7ポイント)の改善幅が、大企業製造業(+2ポイント)や加工業種(+2ポイント)より大きくなっています。
為替:想定レートと実勢の差
6月調査で企業が事業計画の前提にした2026年度の想定為替レートは、全規模・全産業で1ドル=152.57円でした。三菱UFJ銀行は、調査公表時点の実勢(162円台)より円高の水準と指摘しています。
輸出の多い加工業種にとって、実勢が想定より円安であれば収益の上振れ要因になります。
一方で、原油などの輸入コストは円安で膨らむため、為替は業種によって追い風にも向かい風にもなることを押さえておきたいところです。
9月調査では、2026年度の想定レートが全規模・全産業で1ドル=154.23円と、6月から約1.7円円安方向に修正されました。なお、輸出企業の大企業製造業は153.79円です。
5つのチェックポイントで見る9月短観の結果
短観の結果は、次の5つの順で確認すると、見出しの数字だけでは分からない景気の中身がつかめます。各項目に9月調査の結果を添えました。
水準、先行き、内訳、価格、計画の順に見ると、数字の意味がつながります。
※大企業製造業(雇用人員判断・想定為替は全規模・全産業)。出典:日本銀行「短観(要旨)(2026年9月)」。
1. 最近DIと予想平均の差|24で予想を2ポイント下回る
最初に見るのは、大企業製造業の最近DIが予想平均のプラス26に対してどうだったかです。市場は予想をある程度織り込んでいるため、ニュースや株価の反応は「改善したか」より「予想と比べて強いか弱いか」で決まりやすくなります。
あわせて、6月調査の先行き17とも比べます。9月の実績が17を大きく上回れば、企業が3か月前に想定していたより夏場の景況が良かった、つまり中東情勢への警戒ほどには景況が悪化しなかったと読めます。
結果は24で、予想平均には2ポイント届かなかったものの、6月の先行きは7ポイント上回りました。
2. 先行きDIの落ち方|21へ3ポイント低下
次に、先行きDIが最近からどれだけ下がるかを確認します。短観では先行きが最近より低く出ることがよくありますが、下がり幅が大きいほど、企業は先の不透明感を強く意識しています。
6月調査では最近22に対して先行き17と、5ポイントの差でした。9月調査の予想平均では最近26・先行き23で、差は3ポイントです。
先行きの下がり幅が6月より縮むか広がるかで、原油高や中東情勢への警戒感の変化が読み取れます。結果は最近24・先行き21で差は3ポイントと、6月より縮みました。
ただし非製造業は最近35・先行き30と5ポイントの低下を見込んでいます。
3. 業種別と規模別の広がり|素材と中小が改善
全体の改善がどの業種に支えられているかを見ます。生産用機械、電気機械、非鉄金属といったAI関連に偏った改善なのか、化学や鉄鋼、自動車まで広がっているのかで、景気の底堅さの評価は変わります。
規模別では、中小企業製造業のDIが6月の9からどう動くかが注目点でした。大企業だけが改善し、中小企業が横ばいや悪化にとどまれば、景気の追い風がサプライチェーンの下流まで届いていないことを意味します。
9月調査では、業種は石油・石炭製品(+27)、鉄鋼(+12)、窯業・土石製品(+11)など素材の改善が大きくなりました。AI関連の非鉄金属・生産用機械・電気機械も改善しました。
規模別では中堅企業製造業が23(+6)、中小企業製造業が14(+5)と、大企業(+2)より改善幅が大きくなっています。改善はAI関連の一部業種にとどまらず、業種・規模の両面で広がったと読めます。
4. 販売価格・仕入価格と物価見通し|仕入価格DIは低下
6月調査の大企業製造業では、販売価格判断DIが40(前回比プラス12)、仕入価格判断DIが62でした。
販売価格DIは「上昇」と答えた企業の割合から「下落」の割合を引いたもので、仕入価格DIとの差が小さいほど、コスト上昇を価格に転嫁できていることを示します。
原油高が続くなか、9月調査では仕入価格DIが再び上がる可能性も指摘されていました。結果は大企業製造業の仕入価格DIが59と3ポイント下がり、販売価格DIは40で横ばいでした。
両者の差は22から19に縮まり、利益率の面ではやや追い風です。中小企業製造業は販売価格41・仕入価格71で、差は30と大企業より大きいままです。
取引先との価格交渉の進め方を考える際にも、業界全体の転嫁の進み具合を示す材料になります。
また、ニッセイ基礎研究所や第一ライフ資産運用経済研究所は、物価関連項目の動向に注目しています。販売価格判断や企業の物価見通しが高止まりすれば、日銀の次の利上げ判断を後押しする材料になりうるためです。
9月調査の大企業製造業の販売価格見通し(1年後)は3.2%と6月と同じで、物価全般の見通し(1年後)も2.3%で変わりませんでした。
5. 設備投資計画・想定為替レート・雇用人員判断|投資は上方修正
最後に計画と前提の数字を見ます。6月調査の設備投資計画は、大企業・全産業(土地を含み、研究開発とソフトウェアを除く)で2026年度が前年度比プラス11.5%と強めでした。
9月調査では大企業・全産業が11.3%増で6月からほぼ修正なし(修正率▲0.2%)だった一方、大企業製造業は11.6%増と1.3%上方修正されました。
製造業ではAI関連や省力化投資の勢いが続いていると読めます。想定為替レート(全規模・全産業、2026年度)は154.23円と、6月の152.57円から円安方向に修正されました。
雇用人員判断DIは全規模・全産業で▲37と、大幅な人手不足の状態が続いていました(マイナスは「不足」超)。
製造業の人手不足と採用難は景況感とは別の軸で続いており、景況感が良くても人が足りずに生産を増やせないという制約が、どこまで強まっているかも確認したい点です。
9月調査では▲38と不足感がやや強まり、先行きは▲41とさらに強まる見通しです。中小企業は▲42(先行き▲45)と、より厳しい状況です。
製造業の現場は短観をどう使うか

短観は投資家や日銀だけのための統計ではありません。製造業の実務でも、部署ごとに使いどころがあります。ここでは、9月短観の結果を仕事に生かす視点を職種別に整理します。
営業・技術営業:顧客業種の温度感をつかむ
営業にとって有用なのは業種別のDIです。自社の顧客が多い業種の最近DIと先行きDIを見れば、商談の優先順位をつける材料になります。たとえば生産用機械の先行きが高ければ、装置メーカー向けの部品や材料の引き合いは当面続くと見込めます。
逆に、自動車のように先行きが低い業種の顧客とは、数量の見通しや在庫の持ち方を早めにすり合わせておくことが有効です。
購買・調達:仕入価格の圧力を見積もる
購買部門では、仕入価格判断DIと販売価格判断DIが参考になります。仕入価格DIが上がっている局面では、仕入先から値上げの申し入れが増えやすくなります。
9月調査では大企業製造業の仕入価格DIが59に下がった一方、中小企業製造業は71と高いままです。仕入先の規模によって値上げ圧力の強さが違う点は、年末に向けた価格交渉の準備に直結します。
経営企画・工場管理:計画の前提を点検する
経営企画や工場の管理者にとっては、想定為替レートや設備投資計画が自社計画の前提を点検する材料になります。業界全体の想定レートと自社の前提がずれていないか、同業が設備投資を積み増しているのに自社だけ据え置いていないか、といった確認です。
短観は四半期に一度の定点観測なので、1回の数字に一喜一憂するより、3〜4回分の流れで見るのが実務的です。
9月で6四半期連続となった改善が12月も続くのか、先行き21への低下や素材業種の先行きの落ち込みが実際の悪化につながるのか。こうした点を次の12月調査まで追いかけていくと、景気の変わり目に気づきやすくなります。

まとめ
- 9月短観(2026年10月1日公表)の大企業製造業DIはプラス24。6月から2ポイント改善し、6四半期連続の改善
- 民間13社の予想平均(プラス26)は2ポイント下回った一方、6月の先行き(17)は7ポイント上回った。先行きは21
- 素材業種(石油・鉄鋼・窯業・化学)がそろって改善し、AI関連の非鉄金属・生産用機械・電気機械も改善。自動車は11で小幅低下
- 中堅(+6)・中小(+5)の改善幅が大企業(+2)より大きく、仕入価格DIは低下。設備投資・経常利益計画は上方修正
- 結果は予想との差、先行き、業種・規模の広がり、価格判断、設備投資計画の順に確認すると中身がつかめる
9月短観は、AI関連需要の強さが原油高・中東情勢の重さを上回り、改善が業種・規模の両面に広がったことを示しました。一方で、素材業種や非製造業の先行きは大きく下がる見通しです。
見出しの数字だけでなく、自社に近い業種の最近と先行きの差を確認してみてください。
景況感の背景にある設備投資の動きは製造業で使える補助金まとめ、素材業種のコスト構造は化学業界の市場規模と動向もあわせてご覧ください。
出典
出典・参考資料(9件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 短観の仕組み・規模区分・DIの定義:日本銀行「短観(全国企業短期経済観測調査)」の解説、日本銀行「短観」のFAQ
- 9月調査の結果:日本銀行「短観(要旨)(2026年9月)」、日本銀行「短観(概要)―2026年9月―」(2026年10月1日)
- 6月調査の結果:日本銀行「短観(要旨)(2026年6月)」
- 6月調査の業種別DI・推移・設備投資計画:三菱UFJ銀行 経済調査室「日銀短観(2026年6月調査)」(2026年7月1日)
- 6月調査の概要:大和総研「2026年6月日銀短観」(2026年7月1日)
- 9月調査の民間予想平均:東京新聞デジタル「製造業景況感、改善か 大企業、日銀短観」
- 9月調査の予想:大和総研「2026年9月日銀短観予想」(2026年9月9日)、第一ライフ資産運用経済研究所「日銀短観予測(2026年9月調査)」(2026年9月14日)、ニッセイ基礎研究所「日銀短観(9月調査)予測」
- 法人企業景気予測調査:内閣府・財務省「法人企業景気予測調査(令和8年7〜9月期調査)結果の概要」(2026年9月11日)
- 原油価格と中東情勢:OANDA「WTI原油見通し」(2026年9月4日)
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