「製造業の人手不足」と聞くと、多くの方は工場の求人がなかなか埋まらない様子を思い浮かべるのではないでしょうか。
実際には、人が足りないのは工場の作業者だけではありません。設備保全や技術職など職種によって不足の度合いは大きく異なり、採用だけでなく、定着や技能の受け継ぎ、省人化まで含めた対策が求められています。
この記事では、製造業の人手不足の現状を統計で確かめたうえで、人手不足が起きる理由、職種ごとの違い、現場への影響、企業の打ち手、働く人ができることという順で整理します。
製造業の人手不足の現状

製造業の人手不足とは、事業を続けるのに必要な働き手を、量と質の両面で確保しにくくなっている状態を指します。単に人数が足りないだけでなく、必要な技能を持つ人が足りないことも含まれます。
総務省の労働力調査によると、2025年平均の製造業の就業者数は1,033万人で、前年より13万人減りました。全産業の就業者6,828万人のおよそ15%にあたり、今も国内で最も大きな産業の一つです。2026年版ものづくり白書によると、2002年の1,202万人からは170万人近く減っています。
企業側の不足感も続いています。同じ白書が中小企業庁の「中小企業景況調査」をもとにまとめた数字では、中小製造業の従業員数過不足DIは2025年にマイナス17.9でした。マイナスが大きいほど「不足」と答えた企業が多いことを示し、新型コロナウイルス感染症の感染拡大前(2019年)に近い不足感に戻っています。
ハローワークの求人と求職の状況を職業別に見ると、不足の度合いには大きな差があります。
同じ製造の現場でも、職業によって人の集まりやすさが大きく違います。
※厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年3月分)」参考統計表の常用(パートタイムを含む)の有効求人数・有効求職者数から算出。季節調整をしていない値です。機械整備・修理従事者には、自動車などの整備に携わる人も含まれます。
2026年3月の値で見ると、生産工程に関わる職業全体の有効求人倍率は1.57倍で、令和7年度平均の全職業の1.20倍を上回ります。なかでも機械整備・修理従事者は3.89倍と、求職者1人に対して4件近い求人がある状態です。一方、機械組立従事者は0.83倍と1倍を下回っています。
人手不足が起きる理由

製造業の人手不足には、人口の変化という大きな流れと、業界や職場に固有の事情の両方が関わっています。主な理由は次の4つです。
一つの理由ではなく、いくつかの要因が重なっています。
若い働き手の減少と高齢化
2026年版ものづくり白書によると、製造業では2002年と比べて34歳以下の若年就業者が減り、65歳以上の高齢就業者が増えています。近年はどちらもほぼ横ばいですが、若手が少ない職場構成は続いています。
ベテランの退職が進むと、人数だけでなく経験や技能もまとめて失われます。人手不足と技能継承の問題は、同じ根から生じていると言えます。
職種によるミスマッチ
図1のとおり、設備の整備・修理のように専門性の高い職業では求人が求職を大きく上回る一方、組立のように1倍を下回る職業もあります。求人の数だけでなく、求める技能と応募者の経験が合わないことも、採用が難しくなる理由です。
とくに設備保全や生産技術、制御の知識を持つ技術者は、多くの工場が同時に求めているため、経験者の採用競争が激しくなりやすい職種です。
働き方のイメージ
製造業には、交替勤務や夜勤、立ち仕事、暑さや騒音のある環境など、ほかの仕事にはない負担があります。実際には空調の整備や自動化で環境が改善された工場も多いものの、そのイメージが応募をためらわせることがあります。
職場の実態を求職者に伝えきれていないことも、採用が難しくなる一因です。休日の取り方や交替勤務の手当、空調や安全への配慮など、働く環境を具体的に示せる会社ほど、応募者の不安を減らしやすくなります。
他業界との採用競争
人手不足は製造業だけの問題ではなく、物流や建設、介護など多くの業界で起きています。同じ地域の働き手を複数の業界で取り合うため、賃金や休日、勤務時間の条件が採用を左右します。
地方の工場では、若い世代の都市部への流出も重なり、とくに採用が難しくなりやすい傾向があります。地元の高校や高専、専門学校との関係づくりを長く続けている会社が、安定して若手を採用できている例も少なくありません。

職種ごとに異なる人手不足

製造業の人手不足は、どの職種でも同じように起きているわけではありません。不足の度合いや、求められる人材の姿は職種によって違います。ここでは、とくに影響の大きい3つの領域を見ていきます。
設備保全
設備保全は、工場の設備を止めずに動かし続けるための仕事です。機械・電気・制御の幅広い知識と経験が必要で、一人前になるまでに時間がかかります。図1で機械整備・修理従事者の有効求人倍率が3.89倍と高かったのも、こうした事情を映していると考えられます。
設備が自動化されるほど、保全の重要性はむしろ高まります。自動化を進める工場ほど、保全の担い手の確保が欠かせないという点は押さえておきたいところです。仕事の中身は設備保全の仕事内容の記事で詳しく紹介しています。
生産技術・制御などの技術職
工程の設計や設備の導入、自動化を担う生産技術や、PLCなどの制御を扱う技術者も、多くの工場が求めている職種です。省人化の取り組みを進めるには、まずこうした技術者が必要になるため、需要が集中しやすくなっています。
経験者の中途採用だけでは足りず、社内の保全担当や製造オペレーターを技術職へ育てる会社も増えています。現場を知る人が技術を身につけると、実情に合った自動化や改善を進めやすいという利点もあります。
製造オペレーター
製造の現場で設備を動かし、製品をつくる製造オペレーターは、就業者の数が多い職種です。職業によっては求人倍率が1倍を下回るものもあり、全体としては技術職ほどの不足ではない場合もあります。
ただし、交替勤務の職場や地方の工場では募集しても人が集まりにくく、事情は地域や職場によって大きく異なります。全国の数字だけで判断せず、自社の地域と職種の状況を確かめることが大切です。

人手不足が現場に与える影響

人手不足は、採用担当者だけの問題ではありません。放置すると、現場の働き方や品質、会社の業績にまで影響が広がります。
人・品質・事業の3つの面に影響が出ます。
一人あたりの負担が増える
人が足りない分を残業や休日出勤で補うと、一人ひとりの負担が重くなります。疲れがたまると離職が増え、さらに人が足りなくなるという悪循環に陥りやすくなります。
交替勤務の職場では、欠員が出ると勤務のシフトを組むこと自体が難しくなる場合もあります。特定の人にしかできない作業があると、その人が休めない状態が続き、一人が抜けると現場が止まるという危うさを抱えることになります。
品質と安全への影響
忙しい職場では、新人に十分な教育をする余裕がなくなりがちです。作業に慣れていない人が十分な指導を受けないまま持ち場に就くと、品質のばらつきや労働災害のリスクが高まります。
ベテランが教える時間を確保できないことは、技能伝承の遅れにも直結します。人手が足りない職場ほど、教育に使う時間を意識して守ることが、結果的に品質と安全を支えることになります。
事業の機会を逃す
人が集まらないために、受注を見送ったり、設備を動かせる時間が限られたりすることもあります。人手不足は、そのまま売上や成長の制約になる経営課題です。
新しい設備を入れても、立ち上げや保全を担う人がいなければ十分に生かせません。取引先から見ても、人の確保に不安がある会社には安定した供給を任せにくくなるため、長期的な取引関係にも影響が及ぶことがあります。
採用難を乗り越える企業の打ち手

人手不足への対策は、大きく「採用を広げる」「辞めない職場にする」「少ない人数でも回る仕組みにする」の3つに分けられます。どれか一つではなく、組み合わせることが大切です。
新卒の若手だけに頼らず、多様な人材に目を向ける会社が増えています。
※受け入れの条件は職場や在留資格などによって異なります。
採用の対象と方法を広げる
中途採用や女性、シニア、外国人など、採用の対象を広げる動きが進んでいます。厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況(2025年10月末時点)では、外国人労働者は257万1,037人で過去最多となり、産業別では製造業が全体の24.7%と最も多くなっています。
採用の方法では、職場見学や動画で仕事の実際を伝える、未経験者向けの教育制度を示すといった工夫が効果的です。「何ができる人を求めているか」だけでなく「入ったあとにどう育てるか」を伝えることが、応募のハードルを下げます。
辞めない職場にする
せっかく採用しても、すぐに辞めてしまっては人手不足は解消しません。2026年版ものづくり白書によると、人材の定着に向けて企業が最も多く取り組んでいるのは賃金水準の向上で、その割合は71.5%でした。
賃金に加えて、休日や勤務時間の見直し、評価の透明性、相談しやすい職場づくりも定着を左右します。とくに入社後の数か月の受け入れ方は、その後の定着に大きく影響します。
少ない人数でも回る仕組みにする
人を増やすだけでなく、人が少なくても回る工場にすることも重要な打ち手です。産業用ロボットによる搬送や組立の自動化、AIを使った検査、IoTによる設備の遠隔監視など、省人化の手段は広がっています。
自動化は、重い物を運ぶ作業や単調なくり返し作業から進めるのが一般的です。人は設備の管理や改善、判断が必要な仕事に移ることで、働きがいのある職場にもつながります。
ただし、自動化の設備を選び、立ち上げ、保全するのもまた人の仕事です。省人化を進めるためにこそ、技術を持つ人材の育成が必要になるという点は見落とされがちです。作業手順の標準化や工程のムダ取りなど、設備投資をしなくても取り組める改善から始めるのも一つの方法です。

企業の取り組み・働く人ができること

最後に、人手不足に向き合うために、企業の経営・採用担当者と、働く人それぞれができることを整理します。企業として対策を進める場合は、次のような流れで考えると整理しやすくなります。
現状の把握、対策の実行、定着と改善の3つの段階に分かれます。
※会社の規模や地域によって、優先すべき対策は変わります。
経営・工場の取り組み
人手不足への対策は、採用部門だけでは進みません。工場長・マネジメントの立場から、採用・定着・省人化を一体の計画として考え、設備投資と人材育成の予算を配分することが求められます。
高年齢者雇用安定法では、2021年4月から70歳までの就業機会を確保する措置が企業の努力義務になりました。経験のあるシニアに長く活躍してもらうことは、人手の確保と技能の継承を同時に進める手段になります。
採用・人事担当ができること
採用担当者は、求人票の条件だけでなく、職場の雰囲気や教育の仕組み、キャリアの道筋を具体的に伝えることが大切です。現場の社員に採用活動へ参加してもらうと、求職者は入社後の姿を想像しやすくなります。
辞めた人の理由を丁寧に聞き取り、次の採用や職場の改善に生かすことも、地道ですが効果の大きい取り組みです。
働く人ができること
働く人にとって、人手不足は負担が増える一方で、自分の価値を高める好機でもあります。複数の工程をこなせる多能工になる、保全や品質の知識を身につけるといった努力は、社内での評価や処遇に結びつきやすくなっています。
転職を考える場合も、求人倍率が高い職種ほど、経験者が有利な条件で移りやすい状況です。自分の技能がどの職種で求められているかを知っておくと、キャリアの選択肢が広がります。
まとめ
- 製造業の就業者は2025年に1,033万人で、2002年から170万人近く減っている
- 中小製造業の従業員数過不足DIはマイナス17.9と、不足感が続いている
- 有効求人倍率は職業で差が大きく、機械整備・修理は3.89倍と特に高い
- 若手の減少、職種のミスマッチ、働き方のイメージ、他業界との競争が背景
- 採用の拡大、定着の強化、省人化を組み合わせて取り組むことが大切
人手不足は、採用市場の動きや多様な人材の活躍とも深く関わります。求人倍率や年収の動向は製造業の転職・採用市場の動向、女性やシニア、外国人が働きやすい職場づくりは製造業のダイバーシティと女性活躍の記事もあわせて参考にしてください。
働き方や人材育成など、製造業で働く人に関わるテーマについては、人・キャリアのページから関連記事もあわせてご覧ください。
出典
- 就業者数:総務省統計局「労働力調査(基本集計)2025年平均結果」
- 就業者の推移・過不足DI・定着の取組:厚生労働省「2026年版ものづくり白書 概要」
- 有効求人倍率:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年3月分及び令和7年度分)について」
- 外国人労働者数:厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)」
- 70歳までの就業確保:厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」

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