購買は、製品づくりに必要な材料や部品を買う仕事です。そのコストを減らす方法は、仕入先との単価交渉に加えて、まとめて買う、仕様を見直す、つくる場所を変えるなど、9つに整理できます。
買い方や仕様、つくる場所を見直す方法は、単価の交渉に比べて効果が長く続きます。2026年1月には取適法(旧・下請法。発注する側と受ける側の取引のルールを定めた法律)が施行され、値下げの求め方にもこれまで以上に注意が要るようになりました。
この記事では、購買のコスト削減手法を9つに整理し、比較表と品目ごとの使い分けを示します。続いて、各手法の進め方、やってはいけない進め方、仕入先と利益を分け合う考え方の順で解説します。
購買のコスト削減手法は3つの方向と1つの土台に分かれる
JIS Z 8141(生産管理用語)は、購買管理を次のように定義しています。「生産活動に当たって、外部から適正な品質の資材を必要量だけ、必要な時期までに経済的に調達するための手段の体系」です。
その機能として、仕入先の選定、価格管理、納期管理、品質管理などと並んで原価低減活動が挙げられています。
つまりコスト削減は、品質や納期、仕入先との関係と切り離して進めるものではありません。単価が下がっても、不良や納期遅れが増えれば、会社全体で払う費用はかえって膨らみます。
手法は数多くありますが、どこに手を入れるかで見ると、買い方を変える、仕様・設計を変える、調達先やつくる場所を変える、の3方向に分けられます。これらを支える土台が、見積の妥当性を測る査定です。
9つの手法は、手を入れる場所によって3方向と1つの土台に分けられます。
※分類は編集部による整理です。会社によって呼び方や区分は異なります。
購買部門の役割や扱う品目の全体像は、購買・調達の仕事内容を整理した記事で解説しています。ここからは、コスト削減の手法に絞って見ていきます。
9つの手法を比較する
最初に全体を比べておきます。どの手法も万能ではなく、着手のしやすさと効果の続き方に違いがあります。
比較表の読み方
着手しやすい手法ほど効果が続きにくく、時間のかかる手法ほど長く効く傾向があります。
※◎○△は一般的な傾向を編集部が整理したもので、統計や調査に基づく評価ではありません。◎=しやすい・速い・長く続く、○=中程度、△=準備や時間が要る・続きにくい。品目や会社の体制によって変わります。
相見積もりは、購買部門だけで始められ、結果もすぐに出ます。ただし同じ品目で繰り返すと、仕様も数量も変わらないかぎり下げられる余地は小さくなっていきます。
一方、VA/VEや標準化は、設計や品質保証を巻き込むため準備に時間がかかります。その代わり、図面や仕様そのものが変わるので、効果はその製品をつくり続ける間ずっと残ります。
年度の目標を相見積もりだけで達成しようとすると、2年目以降に行き詰まりやすくなります。短期で効く手法と、時間をかけて仕込む手法を組み合わせて計画するのが現実的です。
品目の性格から手法を選ぶ
どの手法を当てるかは、品目の性格で変わります。よく使われる考え方が、P.クラルジッチが1983年にハーバード・ビジネス・レビューで示した分類です。
利益への影響の大きさと、供給リスクの高さの2軸で、購入品を4つに分けます。
次の図では、実務で当てはめやすいように、利益への影響を購入金額の大きさ、供給リスクを代わりの仕入先の見つけにくさに置き換えています。
購入金額の大きさと、代わりの仕入先の見つけやすさで手法を変えます。
※4区分は、クラルジッチの分類でいう戦略品(金額大・代替しにくい)、レバレッジ品(金額大・代替しやすい)、ボトルネック品(金額小・代替しにくい)、ノンクリティカル品(金額小・代替しやすい)に当たります。2軸を金額と代替のしやすさに置き換えた点と、各区分にどの手法を当てるかは、一般的な傾向を編集部が整理したものです。
たとえば、代わりの仕入先がない専用部品に相見積もりをかけても、比べる相手がいません。逆に、どこでも買える汎用品にVA/VEの工数をかけるのは割に合いません。
まず購入額の上位品目を4区分に振り分け、区分ごとに手法を決めると、力の入れどころがはっきりします。
買い方を変える手法

買うもの自体は変えず、まとめ方、比べ方、約束の仕方を変える手法です。購買部門が主導しやすく、最初に取り組まれることが多い領域です。
集中購買・共同購買
JIS Z 8141は、発注契約や業務を集中的にまとめて行う方式を集中購買方式、必要とする場所ごとに分散して買う方式を分散購買方式と説明しています。
複数の工場や事業部が別々に買っていた同じ品目を、本社や購買センターでまとめて契約するのが集中購買です。グループ会社や他社と一緒に買う場合は、共同購買と呼ばれます。
価格が下がる理由は、仕入先の側で費用が減ることにあります。数量がまとまれば材料をまとめて手配でき、段取り替えの回数や営業・事務の手間も減ります。その分を価格に反映してもらう、という順番で考えます。
向いているのは、鋼材、ねじ、梱包材、工具、間接材など、拠点をまたいで同じものを使っている品目です。ただし拠点ごとに品番や仕様が違うと、同じものなのにまとめられません。
品番のずれが生まれる背景は、E-BOMとM-BOMの違いを整理した記事が参考になります。
注意点は、現場の小回りが利きにくくなることです。急ぎの手配や拠点固有の仕様は、分散購買のほうが早く対応できます。すべてを集中させるのではなく、品目ごとに決めるのが一般的です。
相見積もり(競争見積)
同じ仕様・数量・条件で複数の会社から見積を取り、比較する方法です。目的は、その品目の相場と、各社の得意・不得意を知ることにあります。いちばん安い金額を探すだけの作業ではありません。
見積を出す側は、図面を読み、工程を考え、材料の価格を調べるのに時間を使っています。公正に進めるには、次の6つの手順を守ります。
依頼の前に条件と評価の軸を決めておくと、後から揉めにくくなります。
※数量の前提を実際より多く伝えて見積を取ることは、後述のとおり取適法上の問題につながるおそれがあります。
避けたいのは、発注するつもりのない会社に見積だけ出させる、いわゆる当て馬です。その見積を既存の仕入先に見せて値下げを迫る進め方は、相手の時間を奪ううえ、やがて誰も真剣な見積を出さなくなります。
見積依頼から発注までの実務の流れは、次の記事で工程ごとに整理しています。

サプライヤー集約
取引する仕入先の数を絞り、1社あたりの発注量を増やす方法です。数量がまとまる効果に加え、口座の管理、品質の確認、納期の調整にかかる購買側の手間が減ることも大きな利点です。
一方でJIS Z 8141は、同じ品目を2社以上に発注する分散発注について説明しています。事故や災害による納期遅延のリスクを減らし、発注先どうしの競争も期待できるという内容です。
集約はこの裏返しで、絞りすぎると供給が止まったときの影響が大きくなります。
集約の結果、取引をやめたり大きく減らしたりする仕入先が出る場合は、伝え方にも配慮が要ります。振興基準(受託中小企業振興法にもとづく基準)は、継続的な取引を停止または大幅に減らすときは、相当の猶予期間をもって予告するよう求めています。
長期契約・数量コミット
1年や複数年の単位で購入数量を約束し、その前提で価格を決める方法です。仕入先は材料のまとめ買いや設備・人員の計画を立てやすくなり、その見通しの良さがコストを下げる原資になります。
発注の前に品目と量の概算を知らせる内示も、同じ考え方です。振興基準は発注側に、発注計画の期間を長くし、それに沿って発注するよう努めることを求めています。
この手法は、約束した数量を守ってこそ成り立ちます。多い数量を前提に見積を取り、実際には少ししか発注せず、単価だけをそのまま使うやり方は、取適法の買いたたきに該当するおそれがある例として示されています。
数量が大きく変わったときは、単価を協議し直します。
仕様・設計を変える手法

買い方ではなく、買うものを見直す手法です。設計部門や品質保証部門との連携が欠かせず、時間はかかりますが、効果は長く続きます。
VA/VE
日本バリューエンジニアリング協会の説明では、VEは製品やサービスの「価値」を、それが果たすべき「機能」とそのためにかける「コスト」との関係で把握します。そのうえで、システム化された手順によって「価値」の向上をはかる手法です。
JIS Z 8141も、価値を機能÷コストの式で示しています。
同協会によると、VEは1947年に米国GE社のL.D.マイルズ氏が開発し、1960年頃に日本へ導入されました。当初はメーカーの資材部門に導入され、コスト低減の成果が注目されたとされています。購買と縁の深い手法です。
必要な機能を保ったまま、そのためのコストを見直します。
※JIS Z 8141はVAとVEを一つの用語として定義しています。段階による呼び分けは実務上の慣用です。必要な機能まで削ってコストを下げることは、VA/VEには当たりません。
購買の現場で見つかりやすいのは、必要以上に厳しい要求です。使い方から見て不要な精度の公差、過剰な表面仕上げ、特殊な材料の指定、重複した検査などが代表例です。寸法公差と幾何公差の考え方を知っておくと、設計者との会話がしやすくなります。
加工しにくい箇所をいちばん知っているのは、実際につくっている仕入先です。そのため、仕入先からVA/VE提案を受け付ける仕組みを設ける会社もあります。
提案の窓口、回答の期限、採用したときの成果の分け方を先に決めておくと、提案が集まりやすくなります。
仕様を変えるときは、品質への影響を必ず確認します。設計変更の審査は、デザインレビュー(DR)などの社内の手続きに乗せ、購買だけの判断で進めないことが大切です。
標準化・共通化
JIS Z 8141は、繰り返し共通に使うために標準を設け、それにもとづいて管理することを標準化、品種構成や構造の複雑さを減らすことを単純化と説明しています。購買では、似た部品を1つにまとめ、部品の種類を減らすことを指します。
種類が減れば1品目あたりの数量が増え、集中購買や長期契約の効果も出やすくなります。在庫の点数、図面の管理、検査の手間も減ります。仕様を変える手法でありながら、買い方の手法の前提にもなる点が特徴です。
振興基準は発注側に対して、発注量の平準化とあわせて、物品の標準化と規格の整理統合に努めるよう求めています。種類が減れば段取り替えも減るので、仕入先にとっても利益になります。
注意点は2つあります。共通部品に不具合が出ると影響が多くの製品に広がること、そして高い仕様に合わせて共通化すると一部の製品では過剰品質になることです。どこまで共通にするかは、設計部門と数量の見通しを見ながら決めます。
調達先を変える手法と、査定の土台

3つ目の方向は、どこでつくるか、どこから買うかを見直す手法です。あわせて、すべての手法の土台になる査定についても整理します。
内外製の見直し
JIS Z 8141は、内作にするか外注にするかを決める活動を内外製区分と呼んでいます。外注の要件としては、自社の技術や生産能力の不足を補い、要求品質を満たし、コスト効率が良いことを挙げています。
判断で気をつけたいのは、比べる数字です。外注をやめて内製に戻しても、設備や人が空いていなければ新たな投資が要ります。
反対に、内製をやめて外注に出しても、建屋や設備の費用はすぐには減りません。単価どうしではなく、会社全体で出ていくお金がどう変わるかで比べます。
内製化を検討する過程で、仕入先の加工条件やノウハウを聞き出すことは避けます。
知財取引指針は、公正取引委員会・中小企業庁・特許庁が2026年6月に公表した指針です。正式名称は「知的財産権・ノウハウ・データの適切な取引のための優越的地位の濫用等に関する指針」です。
内製化や転注を目的にノウハウの開示を一方的に求める行為を、問題となり得る事例として挙げています。
グローバル調達
JIS Z 8141は国際購買を、原材料や部品を世界市場から、最適な機能、品質、価格、納期で調達する活動と定義しています。国内より安い見積が出ても、単価だけで決めないことが要点です。
海外から買う場合は、輸送費、関税、為替の変動、輸送中と安全在庫の分の在庫、品質確認のための出張や検査の費用が加わります。輸送に時間がかかるぶん、設計変更や需要の変動への対応も遅くなります。これらを含めた総額で国内と比べます。
近年は通商政策の変化で前提が変わりやすくなっています。米国関税とサプライチェーン再編の動きのように、関税や規制で調達先の損得が入れ替わることもあるため、調達先を1か国に寄せすぎない判断も必要です。
コストテーブル・査定
査定とは、受け取った見積の金額が妥当かを、購買側で確かめることです。そのための物差しがコストテーブルで、材料の単価、加工にかかる時間、設備や人の時間あたりの費用などを、仕様や寸法から計算できるようにまとめた基準表を指します。
査定の役割は、値切るための数字をつくることではありません。見積との差がどこにあるかを具体的に話し合うための共通の言葉を持つことです。材料の歩留まりの見方が違うのか、加工時間の見積が違うのかが分かれば、仕様や工程を変える相談につながります。
気をつけたいのは、コストテーブルの更新です。材料費や労務費が上がっているのに古い単価のまま査定すると、実態より低い目標価格が出てしまいます。
複数社の見積の比較や査定を支援するツールも登場しており、AIによる見積業務の効率化の記事で、受注側と発注側の使い方の違いを紹介しています。
手法ごとの「やってはいけない進め方」
ここまでの手法は、進め方を誤ると、根拠のない値下げの押し付けに変わってしまいます。取引の公正さに関わる部分なので、法令と公的な基準が何を示しているかを確認しておきます。
取適法で禁止される行為
中小受託取引適正化法(取適法)は、下請法を改正して2026年1月1日に施行された法律です。製造委託などの取引で、発注側(委託事業者)に11項目の禁止事項を定めています。コスト削減の場面で特に関わるのは次の4つです。
- 買いたたき:通常支払われる対価に比べて著しく低い代金を不当に定めること
- 減額:受注側に責任がないのに、発注時に決めた代金を後から減らすこと
- 不当な経済上の利益の提供要請:協賛金や労務の提供、発注の内容に含まれていない技術資料の無償提供などを求め、受注側の利益を不当に害すること
- 協議に応じない一方的な代金決定:協議を求められたのに応じず、または必要な説明をせずに代金を決めること
公正取引委員会と中小企業庁のテキストは、買いたたきに該当するおそれがある方法をいくつも挙げています。
一律に一定比率で単価を引き下げることや、発注側の予算単価だけを基準に、一方的に通常より低い単価を決めることなどです。多量発注を前提にした見積単価を少量の発注に当てはめることも含まれます。
違反行為の事例には、自社の「○年後までに製品コスト○%減」という目標を達成するため、半年ごとに加工費の一定率の原価低減を求めたケースも載っています。このケースでは、十分な協議をせずに、通常の対価を大幅に下回る代金を一方的に定めていました。
決算対策として単価を一律に下げることも、同じく買いたたきに該当するおそれがあるとされています。
減額は、名目や金額の大小を問いません。受注側に責任がないのに発注時の代金を減らせば、「原価低減」「コストダウン協力金」といった名目でも、取適法の違反とされます。
合意した新しい単価を、合意より前に発注した分までさかのぼって当てはめ、差額を差し引くことも減額の例です。
テキストは、禁止事項に触れる行為は、相手の了解を得ていても、発注側に違法という意識がなくても違反になると明記しています。
2026年1月に新設された「協議に応じない一方的な代金決定」は、値上げの場面だけの規定ではありません。
発注側が代金の引き下げを求め、相手から説明を求められたのに、具体的な理由や根拠資料を示さずに引き下げた額を提示することも、該当する場合として挙げられています。
取適法の対象になるかどうかは、取引の内容と、双方の資本金や従業員数で決まります。
物品の製造委託では、発注側の資本金が3億円超で受注側が3億円以下の場合、発注側が1千万円超3億円以下で受注側が1千万円以下の場合が対象です。発注側の従業員が300人超で受注側が300人以下の場合も対象になります。
一方、規格品や標準品をそのまま購入する取引は、原則として製造委託に当たりません。ここまでの説明は、取適法の対象になる取引についてのものです。
ただし対象外の取引でも、独占禁止法の優越的地位の濫用や、次に述べる振興基準の考え方は関わってきます。自社の取引がどれに当たるかは、取引ごとに確認が必要です。
振興基準が挙げる望ましくない事例
振興基準は、受託中小企業振興法にもとづいて経済産業大臣が定める、発注側と受注側の「よるべき一般的な基準」です。2026年6月24日に改正され、同日に施行されました。
パートナーシップ構築宣言をしている会社は、この基準を守ることが前提になります。
基準は、合理性や十分な協議を欠く原価低減要請を行わないよう求めています。原価低減を求める見積や提案の提出要請も、ここに含まれます。対価の協議や原価低減要請について、望ましくない事例として挙げられているのは次のような進め方です。
- 具体的な根拠を示さず、または目標数値だけを提示して原価低減を求める
- 要請に応じることが発注継続の前提だと示唆して、事実上押し付ける
- 口頭で削減幅を示唆して見積書を出させるなど、記録を残さずに要請する
- 目標価格だけを提示して、それに辻褄の合う見積や提案を求める
- 転注するつもりがないのに他社への転注を示唆して危機感を与え、協議なしに価格を押し付ける
- 受注側の努力で生まれたコスト削減効果を、一方的に価格の引き下げに反映する
これらを手法ごとに当てはめると、次のようになります。
同じ手法でも、根拠と協議があるかどうかで意味が変わります。
※取適法テキスト、振興基準、知財取引指針、自動車産業適正取引ガイドラインの記載をもとに編集部が整理しました。相見積もりの当て馬のように、公的な資料に直接の記載はなく、取引上の配慮として加えた項目も含みます。左の列がすべて法令違反に当たるという意味ではありません。個別の取引が法令違反に当たるかは、取適法の対象かどうかや、取引の内容・経緯によって判断されます。
判断に迷ったときの相談先
ここで挙げた例は、公的な資料に載っている代表的なものです。実際の取引が違反に当たるかどうかは、協議の経緯や価格の水準などを踏まえて総合的に判断されます。
社内の進め方に迷うときは、法務部門や弁護士に確認するほか、公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口を利用できます。仕入先の側には、全国に設置された「取引かけこみ寺」で、相談員への相談や弁護士による無料相談を利用できる仕組みがあります。
仕入先と発注側の双方に利益が出る進め方

中小企業庁は毎年3月と9月の価格交渉促進月間に合わせて、受注側の中小企業30万社に調査票を送っています。
2026年3月の月間についての調査(回答は約7万社)では、コスト全体の上昇分のうち価格に転嫁できた割合を示す価格転嫁率は54.2%でした。
コストの要素別では、原材料費55.7%、労務費50.0%、エネルギーコスト48.9%です。
つまり平均すると、上がったコストの半分近くは、受注側がまだ自社で吸収していることになります。この状況で利益を削る値下げを求めても、続きません。下げる余地があるのは、仕入先の努力の中ではなく、発注側の仕様や発注の仕方が生んでいるムダの中です。
発注側が変えることで、仕入先の費用そのものが減る部分です。
※振興基準は発注側に、発注量の平準化、事前情報の精度向上、リードタイムや最小購入単位への配慮を求めています。
これらは発注側が自分で変えられることばかりです。仕入先に「どの要求がいちばん費用を押し上げていますか」と聞くところから始めると、具体的なテーマが見つかります。
成果の分け方を先に決める
経済産業省の自動車産業適正取引ガイドラインは、原価低減活動を、事後の一方的な値引き要求ではなく、課題と目標を共有した事前の共同作業と位置づけています。そのうえで、成果は貢献の度合いに応じて取引先と適切に分け合うべきとする考え方です。
振興基準も同じ考え方で、双方が協力した原価低減の効果を価格に反映するときは、寄与度を踏まえて合理的に決めるよう求めています。考え方を、架空の想定例で確かめてみます。
仕入先の提案で材料費が下がった場合の、成果の分け方の一例です。
※数字はすべて説明のための架空の想定例です。分け方の割合は、誰の提案か、評価や設備の費用をどちらが負担したかなどを踏まえて、取引ごとに協議して決めます。
半分ずつという割合は、あくまで一例です。振興基準は、受注側の努力で生まれたコスト削減効果を一方的に価格の引き下げに反映することを、望ましくない事例に挙げています。
仕入先だけの工夫で生まれた効果であれば、仕入先の取り分を大きくするのが自然で、割合は双方の協議で決めます。
この例で、発注側が60円をすべて単価の引き下げに反映させると、仕入先には提案する理由がなくなります。成果を分けるルールがあるから次の提案が出てきます。長い目で見れば、そのほうが発注側の得る額も大きくなります。
なお、仕入先から労務費や原材料費の上昇を理由に協議を求められたときは、原価低減の話とは切り分けて向き合います。受注側から見た交渉の進め方は、次の記事で整理しています。

購買担当の評価の仕方も変わる
2026年6月の振興基準の改正では、調達部門の担当者の評価に関する項目が新たに盛り込まれました。適切な価格転嫁や取引の適正化に取り組んだ担当者が、正当に評価される人事評価制度の整備に努めることです。
背景には、担当者が単価の下げ幅だけで評価されていると、会社の方針がどうであっても、現場では無理な要請が起きやすいという問題があります。
評価の物差しに、仕様の見直し件数、採用したVA/VE提案の数、納期や品質の安定といった項目を加えることが考えられます。
購買部門の目標を立てる立場の方は、削減額の数字とあわせて、その数字をどの手法で達成するかまで計画に書くことをおすすめします。手法が書かれていれば、無理な要請に頼っていないかを上司も確認できます。
まとめ
- 購買のコスト削減手法は、買い方・仕様・調達先の3方向と、土台になる査定に分けられる
- 相見積もりは早く効くが続きにくく、VA/VEや標準化は時間がかかるが長く効く
- 購入金額の大きさと代替のしやすさで品目を分け、区分ごとに手法を選ぶ
- 一律の値下げ要請や根拠のない原価低減要請は、取適法や振興基準に触れるおそれがある
- 仕様や発注の仕方のムダを減らし、成果を仕入先と分け合う進め方が長続きする
コスト削減の手法は、交渉の技術というより、設計・生産管理・仕入先と一緒にコストの原因を減らしていく仕事です。必要な知識の広げ方は、購買・調達に必要なスキルとキャリアパスの記事でも整理しています。
関連する記事は購買・調達の職種ページにまとめています。仕様の見直しで連携する機械設計や、発注の平準化に関わる生産管理の記事もあわせてご覧ください。
出典
出典・参考資料(11件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 購買管理・集中購買方式・分散発注・内外製区分・国際購買・VA/VE・標準化の定義:日本規格協会「JIS Z 8141:2022 生産管理用語」
- VEの定義と歴史:公益社団法人日本バリューエンジニアリング協会「VEとは」
- 品目の4区分:Peter Kraljic “Purchasing Must Become Supply Management”(Harvard Business Review、1983年9–10月号)
- 取適法の禁止事項、買いたたき・減額などの考え方と事例:公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法テキスト」(令和7年11月)
- 取適法の概要:公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」
- 振興基準(2026年6月24日改正):中小企業庁「振興基準」、経済産業省「受託中小企業振興法に基づく『振興基準』を改正しました」
- 労務費の転嫁に関する発注者の行動:公正取引委員会「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」
- 知財取引指針(2026年6月24日、公正取引委員会・中小企業庁・特許庁):公正取引委員会「知的財産分野関係」
- 原価低減活動と成果のシェア:経済産業省「自動車産業適正取引ガイドライン」(令和7年12月最終改訂)
- 価格転嫁率:経済産業省「価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査の結果を公表します」
- 相談窓口:公正取引委員会「相談・申告・情報提供・手続等窓口」、中小企業庁 適正取引支援サイト「相談窓口」
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