構造解析(FEM)の手順7ステップ|メッシュと境界条件で失敗しない基本

机の上に置かれた鋼製L字ブラケットとノギス、方眼紙のスケッチ

3D CADに付属する解析機能が身近になり、形状を選んで荷重を入れれば、数分で色のついた応力図が表示されるようになりました。構造解析は、専任の解析担当者だけの仕事ではなくなっています。

ただ、結果が表示されることと、その結果が正しいことは別の話です。日本機械学会も計算力学技術者の資格案内のなかで、ある危険を指摘しています。

境界条件の設定間違いや不適切な要素分割によって、もっともらしく見えても見当違いの結果を得ている危険です。

この記事では、有限要素法(FEM)による構造解析のうち、最初に取り組むことが多い線形静解析を対象にします。7つの手順、メッシュと境界条件でつまずきやすい点、結果を検証する方法を順に整理します。

目次

FEMの構造解析は何を計算しているのか

手順に入る前に、ソフトの中で何が行われているかを押さえておきます。ここを知っておくと、あとで出てくるメッシュや拘束の注意点を「なぜそうなるのか」まで含めて理解できます。

要素と節点に分けて連立方程式を解く

有限要素法(FEM:Finite Element Method)は、複雑な形状を「要素」と呼ぶ小さな領域に分割して計算する方法です。要素ごとの単純な計算を積み上げて、全体の挙動を求めます。

要素の頂点などに置かれる点を節点、要素に分割した状態をメッシュと呼びます。

各要素には、節点にかかる力と節点の変位を結びつける剛性マトリクスが割り当てられます。ばねの「力=ばね定数×伸び」を、多数の節点について同時に扱えるようにしたものと考えると分かりやすいでしょう。

全要素の剛性マトリクスを組み立てると、{F}=[K]{u}(荷重=剛性×変位)という連立方程式になります。

図1:有限要素法による構造解析の計算の流れ

先に変位を求め、そこからひずみと応力を計算します。

形状を要素に分割する部品を四面体などの要素に分け、頂点などに節点を置く(メッシュ)
要素ごとに剛性を計算
連立方程式 {F}=[K]{u} を解く荷重 {F} と全体の剛性 [K] から、各節点の変位 {u} を求める
変位から計算
変位節点がどれだけ動いたか
ひずみ要素がどれだけ伸び縮みしたか
応力ひずみと材料特性から求める

※拘束した節点には、荷重と釣り合う反力も計算されます。

ソルバー(計算を行う部分)はこの方程式を解いてまず節点の変位を求め、そこからひずみ、応力の順に計算します。応力は変位から導かれる量であるため、変位に比べてメッシュの粗さの影響を受けやすいという性質があります。

立体の要素を使う構造解析では、1つの節点がX・Y・Zの3方向の変位を未知数として持ちます。節点が10万個あれば未知数はおよそ30万個で、人の手で解ける規模ではありません。

形状の分割から結果表示までのソフトの構成は、CAD・CAEの仕組みと基本原理の記事で整理しています。

線形静解析の3つの前提

構造解析にはいくつも種類がありますが、最初に使うのは線形静解析です。計算が速く扱いやすい一方で、次の前提が成り立つ範囲でしか使えません。

図2:線形静解析の3つの前提

どれかが崩れると、線形静解析の結果はそのまま使えません。

前提1静的である荷重はゆっくりかかり、その後は一定。慣性力や減衰力は無視できる
前提2材料が線形弾性である応力とひずみが比例する(フックの法則)。降伏後の挙動は扱わない
前提3変形が微小である変位が十分小さく、変形による剛性の変化を無視できる
3つが成り立つとき、荷重を2倍にすれば、変位・ひずみ・応力もすべて2倍になる。

※荷重をかけている間に拘束や接触の状態が変わらないことも前提です。SOLIDWORKSヘルプ「線形静解析」をもとに作成。

裏を返すと、次の場合は線形静解析の結果をそのまま設計に使うことはできません。計算された応力が材料の降伏点を超えている場合、部品が大きくたわむ場合、途中で部品同士が接触したり離れたりする場合です。

衝撃や振動のように荷重が時間とともに変化する場合も、動解析など別の手法が必要です。

構造解析の手順は7ステップ

線形静解析の進め方は、使うソフトが変わってもほぼ共通です。次の7ステップに分けて考えると、抜けが出にくくなります。

図3:構造解析(線形静解析)の7ステップ

準備、モデル化、計算と確認の3つの段階に分かれます。

準備
01目的と評価基準を決める何を判断するか、合否の基準、結果の見込み値
02モデルを簡略化する評価に影響しない細部を省く。見たい箇所のRは残す
03材料特性を入力するヤング率、ポアソン比。値の出所を記録する
モデル化
04メッシュを切る要素の種類と大きさを選び、収束を確認する
05境界条件を与える拘束と荷重。単位系をそろえる
計算と確認
06解析を実行するソルバーが連立方程式を解く
07結果を確認・検証する変形図、反力、手計算、実験との比較

※結果がおかしければ、ステップ2〜5に戻って条件を見直します。

このうち、計算そのもの(ステップ6)はソフトが自動で行います。解析する人の判断が結果を左右するのは、計算の前に条件を決めるステップ1〜5と、計算の後に結果を疑うステップ7です。

日本計算工学会の学会標準「工学シミュレーションの標準手順」(HQC002)も、解析の計画から結果の検証、データの保管までを一連の工程として扱っています。計算の前後に時間を割くのは、解析業務の標準的な考え方といえます。

ステップ1〜3:解析の前に決めること

机に並べた金属ブラケットと平鋼、はりの手描きスケッチの俯瞰

最初の3ステップは、ソフトを開く前に紙の上でも進められる作業です。ここを飛ばして計算を始めると、結果が出ても良し悪しを判断できません。

ステップ1:目的と評価基準を決める

最初に決めるのは「この解析で何を判断したいのか」です。目的の例は、先端のたわみが許容値に収まるか、どこに高い応力が出るか、形状案AとBのどちらが有利か、などです。どれを判断したいかで、必要なモデルの細かさが変わります。

あわせて、合否を判断する基準(許容たわみ、許容応力、安全率)と、結果の見込み値を先に書き出しておきます。見込み値を持たずに計算すると、出てきた数字が妥当かどうかを判断できません。

解析は、機械設計の仕事の流れのうち、構想設計や詳細設計で形状を決める場面で使われることが多い作業です。

ステップ2:モデルを簡略化する

CADの形状をそのまま解析にかけると、小さな面取りや刻印、ねじ穴まで細かい要素で埋めることになり、計算時間が延びます。評価に影響しない細部は削除し、形状と荷重が左右対称なら半分だけをモデル化する、といった簡略化を行います。

ただし、評価したい箇所のフィレット(角のR)は消してはいけません。Rを消して鋭い角(ピン角)にすると、後で説明する応力特異点になり、その位置の応力を評価できなくなります。簡略化は「どこを見たいか」を決めたあとで行う作業です。

ステップ3:材料特性を入力する

線形静解析で計算に使われる材料特性は、主にヤング率(縦弾性係数)とポアソン比です。自重や遠心力を考える場合は、密度も必要になります。

一方、降伏点や引張強さは応力の計算には使われず、結果を評価するときの比較対象です。SOLIDWORKSのヘルプにも、これらの値は応力を計算するためには使用されないと書かれています。

降伏点を入力していても、線形静解析では降伏後の塑性変形は計算されません。

  • ヤング率:変位の大きさを左右する値。ミスミの技術データでは、軟鋼が205,800 N/mm²、SUS304が193,060 N/mm²、アルミ合金のA7075が70,560 N/mm²
  • ポアソン比:SOLIDWORKS Simulationでは、定義しないと0として扱われるため、入力漏れに注意する
  • 降伏点・耐力:評価の基準にする値。JIS G 3101のSS400は、厚さ16 mm以下で245 N/mm²以上、16 mmを超え40 mm以下で235 N/mm²以上、40 mmを超え100 mm以下で215 N/mm²以上と、厚さによって規格値が変わる。いずれも規格が保証する下限値であり、使う鋼種と寸法の区分を規格表で確認する

ソフトの材料ライブラリは便利ですが、登録されているのは代表的な値です。

実際に使う材料の規格、鋼材検査証明書(ミルシート)、材料メーカーのデータシートと照らし合わせます。どの資料から取った値かを記録しておくと、後から結果を見直すときの手がかりになります。

降伏点や硬さは、焼入れ・焼戻しなどの熱処理によっても変わります。図面で指定した状態の値を使うことが前提です。樹脂やゴムのように、温度や変形の大きさで性質が変わりやすい材料は、線形弾性の前提から外れやすい点にも注意が要ります。

ステップ4:メッシュは要素の種類と細かさで決まる

メッシュは、形状を要素に分割する作業です。自動メッシュのボタンひとつで作れますが、要素の種類と大きさの選び方で結果が変わります。

四面体と六面体、1次要素と2次要素

立体を分割する要素には、主に四面体と六面体があります。四面体は複雑な形状でも自動で分割しやすく、3D CAD付属の解析機能で広く使われています。

六面体は分割に手間がかかる反面、Abaqusのドキュメントでは、良質な六面体メッシュは同等の精度をより少ない計算コストで得られることが多いとされています。

もうひとつの分類が、1次要素と2次要素です。1次要素は頂点だけに節点を持ち、2次要素は辺の中間にも節点を持ちます。四面体であれば、1次要素が4節点、2次要素が10節点です。

図4:四面体の1次要素と2次要素の違い

同じ四面体でも、節点の数によって精度と計算の負荷が変わります。

1次要素(4節点)
2次要素(10節点)
節点の位置
4つの頂点のみ
4つの頂点と、6本の辺の中間
形状の再現
辺は直線。曲面は多角形で近似する
辺を曲線にでき、曲面に沿いやすい
曲げの計算
実際より硬く計算されやすい(たわみが小さく出る)
少ない要素数でも精度を得やすい
計算の負荷
小さい
大きい
使いどころ
条件設定の確認、試し計算
評価に使う最終的な計算

※SOLIDWORKS Simulationでは、1次要素が「ドラフト精度メッシュ」、2次要素が「高精度メッシュ」にあたります。SOLIDWORKSヘルプ、Abaqusドキュメント、構造計画研究所の解説をもとに作成。

注意したいのは1次の四面体要素です。要素の中の曲げ変形をうまく表現できず、実際よりも硬く計算される傾向があります。

構造計画研究所の解説はこれを「せん断ロッキング」として説明し、変形を実際より小さく見積もるため、構造計算を危険側で評価することになると注意を促しています。

Abaqusのドキュメントでも、応力解析では1次の三角形要素・四面体要素をできるだけ避けるべきとされます。SOLIDWORKSのヘルプは、最終段階の計算には2次要素を使うことを推奨しています。

条件設定の確認は1次要素で素早く回し、評価に使う計算は2次要素で行う、という使い分けが考えられます。

メッシュ収束を確認する

要素をどこまで細かくすればよいかに、一律の答えはありません。「板厚方向に何層」「要素サイズは何mm以下」といった目安を見かけることがありますが、必要な細かさは形状、荷重、要素の種類によって変わります。

そこで行うのが、メッシュ収束の確認です。要素サイズを段階的に小さくして同じ解析を繰り返し、注目している変位や応力の変化が小さくなったところで、「これ以上細かくしても結果は変わらない」と判断します。

全体を細かくすると計算時間が大きく増えるため、応力を評価したい箇所だけを局所的に細かくするのが現実的です。ソフトによっては、誤差の大きい領域の要素を自動で小さくするアダプティブ法(h法)も使えます。

変位は粗いメッシュでも比較的早く落ち着きますが、応力、とくに最大値が落ち着くまでには、より細かいメッシュが必要になります。

ステップ5:境界条件は拘束と荷重の両方を疑う

機械フレームに六角ボルト2本で固定された鋼製ブラケットの接写

境界条件とは、部品がどこで支えられ(拘束)、どこにどんな力がかかるか(荷重)を指定することです。冒頭で触れた日本機械学会の資格案内が、誤りの原因として最初に挙げているのも境界条件の設定間違いです。

拘束は不足しても過剰でも結果が狂う

立体の部品は、X・Y・Zの3方向の並進と、3つの軸まわりの回転、合わせて6つの動き方(剛体モード)を持っています。拘束が足りないと、部品は変形しないまま移動や回転ができてしまい、計算がエラーで止まったり、正しい解が得られなかったりします。

SOLIDWORKSのヘルプには立方体の例があり、頂点1つ、頂点2つ、辺1本を固定しただけでは回転が残って安定しないと説明されています。

不足を補う「ソフトスプリング」の機能もありますが、検討の初期段階向けで、最終的な解析では使わないことが推奨されています。

反対に、固定しすぎも問題です。実際の取付部は、ボルトや相手部品のたわみによってわずかに動きます。

一方、解析の「固定」は変位が完全にゼロという、現実にはない状態です。広い面をまるごと固定すると実物より硬いモデルになり、たわみを小さく見積もるおそれがあります。

図5:拘束の不足・適切・過剰

足りなくても、止めすぎても、結果は実物から離れます。

拘束が不足
計算できない並進や回転のどれかが止まっていない。計算がエラーで止まる、または部品が変形せずに動いた結果になる
適切な拘束
目標6つの剛体モードをすべて止めたうえで、実際の支え方に近い範囲と方向だけを拘束している
拘束が過剰
硬すぎる実物では動く方向や範囲まで止めている。実物より硬くなり、固定した面の境界に高い応力が出る

※判断に迷うときは、硬めの条件と柔らかめの条件の両方で計算し、結果の幅を見る方法があります。

NAFEMS(解析技術者の国際的な団体)の講習資料も、実際の構造物に完全な剛結合や点支持は存在しないとして、上限と下限の両方の条件を考えることを勧めています。

拘束は「正解を1つ選ぶ」ものではなく、実物をどこまで理想化したかを自覚して使うものです。

荷重は大きさ・向き・かけ方を確認する

荷重で多いのは、入力した値の意味の取り違えです。複数の面を選んで力を入力したとき、その値が合計なのか、面ごとにかかるのかは、ソフトや設定によって異なります。向き(符号)の間違いも、変形図を見るまで気づきにくい誤りです。

かけ方にも注意が要ります。1つの点や1本の辺に力を集中させると、力を受ける面積がゼロに近づくため、その位置の応力は理論上、無限大になります。実際にボルトや相手部品から力を受ける範囲を面として選び、その面に荷重を与えるようにします。

単位系をそろえる

単位の取り違えは、桁違いの誤差につながります。Abaqusのようにソフト側に単位系がなく、利用者が一貫した単位で入力することを前提にしたソルバーもあります。

単位を選べるソフトでも、材料データを手入力するときや、別のソフトとデータをやり取りするときに間違いが入り込みます。

機械設計でよく使われるのは、長さmm・力N・応力MPa(N/mm²)の組み合わせです。

この場合、質量の単位はトン、密度はトン/mm³になります。比重7.85の鋼(7,850 kg/m³)の密度は7.85×10⁻⁹ トン/mm³と入力します(時間の単位は秒)。

長さをmでそろえる場合は、力がN、質量がkg、応力がPa、密度がkg/m³の組み合わせになります。

ヤング率をGPaの数値(たとえば206)のまま入力すると、本来の値(206,000 MPa)の1,000分の1になり、変位は1,000倍に計算されます。

ところが、材料が1種類で、力を荷重として与える線形静解析では、応力の値はヤング率が違ってもほとんど変わりません。応力図だけを見ていると、ヤング率の桁間違いに気づけないわけです。

変位の大きさも必ず確認する理由のひとつです。なお、0以外の強制変位や温度変化(熱荷重)を与える場合、複数の材料やばねを含む場合は、ヤング率が違えば応力の値も変わります。

ステップ6〜7:結果を確認し、検証する

計算が終わると、色分けされた応力図が表示されます。ここで最大応力の数字だけを読んで終わりにせず、決まった順番で結果を疑っていきます。

NAFEMSの講習資料には、有限要素解析は無実が証明されるまで有罪として扱う、という趣旨の言い回しが出てきます。

図6:結果を確認する順番

応力の数値を読む前に、変形と反力から確かめます。

01変形図を見る変形の向きと形が直感に合うか。固定した面が動いていないか
02反力の合計を見る拘束面の反力の合計が、与えた荷重と釣り合っているか
03最大値の位置を見る最大応力が鋭い角、拘束の境界、荷重点に出ていないか
04手計算と比べる材料力学の公式で求めた概算と桁が合うか
05メッシュを変えて比べる要素を細かくしても結果が変わらないか
06実験や実績と比べる試験結果や、過去の類似品の解析と矛盾しないか

※NAFEMSの講習資料に挙げられている結果のチェック項目をもとに作成。

変形図と反力から見る

最初に見るのは変形図です。変形は見やすいように拡大して表示されることが多いため、形と向きが想定どおりかを確認し、変位の数値は別に読みます。押したはずの方向と逆に動いている、固定したはずの面が動いている、といった異常はここで見つかります。

次に反力です。拘束した面に生じる反力の合計は、与えた荷重の合計と釣り合うはずです。100 Nをかけたつもりなのに反力の合計が400 Nであれば、選択した面の数だけ荷重が重複している可能性があります。

応力集中と特異点を見分ける

最大応力が表示された位置が、鋭い内角(ピン角)、拘束した面の境界、点や辺に荷重をかけた位置であれば、応力特異点を疑います。特異点では理論上の応力が無限大になるため、メッシュを細かくするほど値が上がり続け、収束しません。

図7:応力集中と応力特異点の違い

どちらも赤く表示されますが、数値の扱いがまったく異なります。

応力集中
応力特異点
起こる場所
穴、段差、フィレット(R)など、形状が変わる部分
ピン角(R=0)、拘束の境界、点や辺への荷重
メッシュを細かくすると
ある値に落ち着く(収束する)
上がり続けて収束しない
数値の扱い
収束を確認すれば評価に使える
そのままでは評価に使えない
対処
周辺のメッシュを細かくして収束を確認する
少し離れた位置で評価する。重要な角には実物どおりのRを付ける

※サイバネットシステム「CAE用語辞典」、構造計算テクノロジー、ファソテックの解説をもとに作成。

穴や段差で応力が高くなる応力集中は、実物でも起こる現象で、メッシュを細かくすれば値は落ち着きます。両者を見分けるには、その部分のメッシュを細かくして計算し直します。値が落ち着けば応力集中、上がり続ければ特異点と判断できます。

特異点の値は評価に使わず、少し離れた位置の応力で評価します。その角そのものを評価したい場合は、実物と同じRをモデルに付けて計算し直します。「いちばん赤い点の数字」をそのまま報告書に書かないことが、最初に身につけたい習慣です。

手計算と比べる(想定例)

手計算との比較は、手軽で効果の大きい確認方法です。ここでは架空の部品を使った想定例で流れを示します。数値は説明用に設定したもので、実在の製品のものではありません。

鋼製の平板ブラケットが壁から100 mm突き出し、先端に50 Nの荷重がかかるとします。断面は幅20 mm、板厚5 mm、ヤング率は206,000 N/mm²と想定します。

これは材料力学の「片持ちはり」にあたり、先端のたわみはδ=PL³/(3EI)、固定端の曲げ応力はσ=M/Zで求められます。

図8:想定例の手計算(片持ちはり)

L=100 mm、P=50 N、幅b=20 mm、板厚h=5 mm、E=206,000 N/mm²の場合です。

断面二次モーメント II=bh³/12=20×5³/12≒208 mm⁴
先端のたわみ δδ=PL³/(3EI)=50×100³/(3×206,000×208)≒0.39 mm
固定端の曲げ応力 σM=PL=5,000 N·mm、Z=bh²/6≒83.3 mm³、σ=M/Z=60 N/mm²
固定端の反力荷重と逆向きに50 N。モーメントは5,000 N·mm

※架空のブラケットを片持ちはりに置き換えた想定例です。実際の設計値ではありません。

解析で得られた先端の変位が0.4 mm前後、固定端付近の応力が60 N/mm²前後であれば、荷重・拘束・材料値の桁を取り違えている可能性は低いと考えられます。

変位が約390 mmと出たなら、先ほどのヤング率の桁間違いを疑います。

ただし、手計算と合うことは条件設定の大きな誤りを見つけるための確認であり、解析結果が実物の挙動と合っていることまで示すものではありません。

解析値と手計算は完全には一致しません。はりの公式はせん断による変形を考慮していませんし、解析では固定端の角が特異点になり、その点の応力は60 N/mm²より高く表示されます。

見るべきは、桁が合っているかどうかと、差の理由を説明できるかどうかです。

実際の部品は単純なはりではありませんが、主要な部分をはりや板に置き換えて概算することはできます。この習慣が、解析の誤りを見つける力になります。

V&V(検証と妥当性確認)という考え方

ここまでの確認作業は、解析の分野でV&V(Verification and Validation、検証と妥当性確認)と呼ばれる考え方に沿ったものです。

米国機械学会の規格ASME V&V 10は、初版が2006年、現行はV&V 10-2019です。固体力学の計算モデルを対象に、V&Vの共通の用語と枠組みを示しています。

日本原子力学会誌の解説(2015年)によれば、この規格は検証と妥当性確認を次のように定義しています。検証は、計算モデルが基礎となる数学モデルとその解を正確に表していることを示すプロセスです。

妥当性確認は、モデルが意図した用途に照らして実現象をどの程度正確に表しているかを示すプロセスです。

平たく言えば、検証は「方程式を正しく解けているか」、妥当性確認は「現実を正しく表せているか」です。

この記事の確認項目に当てはめると、反力の確認やメッシュ収束は前者、実験との比較は後者に近い作業と整理できます。これは筆者による整理で、規格が個々の確認項目を振り分けているわけではありません。

日本では、日本計算工学会が2011年に「工学シミュレーションの品質マネジメント」(HQC001)と「工学シミュレーションの標準手順」(HQC002)という学会標準を発行しています(現行はHQC001が2017年の第3版、HQC002が2015年の第2版)。

同じ解説によれば、HQC002は妥当性確認として、解析結果を「独立した方法による解」と比べることを重視しています。独立した方法とは、手計算、確認済みの類似解析、別の解析モデルによる計算、実験などです。

解析結果を設計判断に使う前に

万能試験機に取り付けた試験片の負荷試験の様子

手順どおりに進め、検証も済ませた結果であっても、解析結果だけで製品の安全性が保証されるわけではありません。解析は、前提と入力が正しい範囲でのみ意味を持つ近似計算です。

線形静解析で分かるのは、静かにかかる荷重に対する、弾性範囲の変位と応力です。次のような現象は、別の種類の解析や試験で確認する必要があります。

  • 降伏点を超えたあとの塑性変形や破断
  • 大きなたわみ、部品同士の接触や離れ
  • 細長い部材や薄い板の座屈
  • 繰り返し荷重による疲労
  • 樹脂やゴムなど、応力とひずみが比例しない材料の挙動や、時間とともに進むクリープ
  • 衝撃や振動など、時間とともに変化する荷重

入力した荷重そのものが想定である点も忘れてはいけません。実際の使用条件では、想定していない方向からの力、組立時のこじれ、材料や寸法のばらつきが加わります。

そのため設計では、安全率、適用される規格や法規、試作品での試験、社内の設計基準を組み合わせて判断します。

解析結果を設計判断の根拠にするときは、拘束、荷重、材料値、メッシュ、検証の結果といった前提条件を記録し、経験のある技術者や有資格者のレビューを受けてください。

デザインレビューの場に、応力図だけでなく前提と検証結果をセットで出すことが、解析を設計に生かすうえで欠かせません。

この記事の手順や想定例の数値は、考え方を示すための一般的な説明で、個別の製品の強度や安全性を保証するものではありません。実際の設計では、社内の設計基準と、その製品に適用される規格・法規に従い、安全に関わる部位は試験でも確認してください。

体系的に学ぶなら計算力学技術者の資格

解析の知識を体系的に身につけたい場合は、日本機械学会の「計算力学技術者(CAE技術者)」資格認定が目安になります。

2003年度に始まった制度で、固体力学、熱流体力学、振動の3分野があり、2025年までに上級・1級・2級・初級を合わせて14,151名が合格しています。

固体力学分野の2級は、線形弾性の範囲で解析問題を正しく設定でき、結果の信頼性を自分で検証できるレベルと位置づけられています。

この記事で扱った内容と重なる範囲で、出題分野にも「境界条件の使い方の基礎」「結果の検証の基礎」が含まれます。

1級は非線形解析や破壊力学まで扱い、受験するには2級の資格を持っているか、同じ年度に2級も受験する必要があります。

2級の認定には、公認CAE技能講習会の受講などによる、ソフトウェア使用経験の認定も求められます。2025年度の固体力学分野2級は538名が受験し、合格率は29.9%でした。

2026年度は1級が11月27日、固体力学分野の2級が12月4日に実施される予定です。設計者向けの資格全般は、機械設計に必要なスキル・資格の記事でまとめています。

まとめ

この記事のまとめ
  • FEMは形状を要素に分割して連立方程式を解き、変位、ひずみ、応力の順に求める近似計算である
  • 線形静解析は、静的・線形弾性・微小変形の前提が成り立つ範囲でしか使えない
  • 手順は7ステップ。結果を左右するのは計算前の条件設定と計算後の検証である
  • 1次の四面体要素、拘束の過不足、単位の不整合、応力特異点が、つまずきやすい点である
  • 変形図、反力、手計算、メッシュ収束、実験で検証し、安全性は安全率・規格・試験と合わせて判断する

構造解析は、条件を決める人の理解がそのまま結果の質になる道具です。手計算で見込みを立て、結果を疑い、前提を記録するという進め方は、ソフトが変わっても通用します。

入力する材料値の背景を知りたい場合は、材料技術の基礎もあわせて読むと理解が深まります。

関連する職種は機械設計、技術テーマはCAD・CAEのページに記事をまとめています。あわせてご覧ください。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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