3D CAD(コンピューター上で部品を立体で設計するソフト)選びは、何を設計するかで答えが変わります。量産品の部品が得意なソフト、部品点数の多い生産設備が得意なソフトと、製品ごとに得意な設計対象が違うためです。
取引先とのデータのやり取りや、5年、10年と払い続ける費用も、選ぶときの大事な判断材料です。一度入れると長く使う道具なので、導入前に比べておく項目は多くあります。
この記事では、機械設計でよく比較されるSOLIDWORKS、iCAD SX、CATIA、Autodesk Fusionの4製品を取り上げます。一覧での比較、各製品の成り立ち、選ぶときの4つの判断基準、導入前の確認手順という順で整理します。
この記事の内容は、動画でも解説しています。
4つの3D CADを一覧で比較する
得意な設計対象、動作の形態、買い方がそれぞれ異なります。
※SOLIDWORKSの価格は販売代理店・大塚商会の掲載価格(2025年12月時点、スタンドアロン)。Fusionはオートデスク公式サイトの表示価格(税込、2026年9月確認)。
4製品はいずれも、部品を立体で形づくり、組み合わせて製品や装置を組み上げる機械系の3D CADです。違いが出るのは、どの規模・どの種類の設計を主な相手にしてきたかという成り立ちの部分で、それが機能の厚みや価格帯、買い方にまで表れています。
CADそのものの定義やソリッドモデリングの考え方、2D CADとの違いといった基礎は、CAD・CAEの仕組みと基本原理で整理しています。本記事では、そうした前提を踏まえたうえで、製品ごとの違いと選び方に絞って見ていきます。
なお、機械系の3D CADにはこのほかにもCreo、NX、Inventor、Solid Edgeなど有力な製品があります。今回の4製品は、中小メーカーの導入検討で名前が挙がりやすく、性格の違いが分かりやすい組み合わせとして選んでいます。

4製品の成り立ちと得意分野

CADの性格は、生まれた時期と最初に想定した利用者で大きく決まります。4製品の成り立ちを順に見ると、それぞれがなぜ今の立ち位置にいるのかが分かります。
SOLIDWORKS
SOLIDWORKSは1995年11月に発売された製品で、最初のWindowsネイティブの3D CADとして登場しました。
それまで3D CADは高価なUNIXワークステーションで動かすのが一般的でした。普通のWindowsパソコンで使え、価格も4,000ドルと競合より大幅に安かったことで、設計者一人ひとりに3D CADが行き渡るきっかけになりました。
1997年にダッソー・システムズが買収し、同社にとって最初の大型買収となりました。販売代理店や講習会、解説書、アドオンソフトが多く、情報を探しやすいのが実務上の強みです。
量産品の部品設計から中規模の装置まで、機械設計の幅広い用途に対応します。
iCAD SX
iCAD SXは、1980年代に富士通が自社開発したCADを源流とする国産の3D CADです。開発元のiCAD株式会社は2010年に設立され、現在はキヤノンITソリューションズなどが販売しています。
特徴は、生産設備や機械装置のように部品点数の多い設計に特化している点です。開発元は、他の3次元CADに比べて約1/50の軽いデータ構造で、300万部品を0.2秒で扱えるとしています。
メカ・電気・制御の設計情報を1つのCADデータで扱い、構想段階で動作シミュレーションや干渉チェックができます。このように、装置メーカーの仕事の進め方に合わせた機能がそろっています。
CATIA
CATIAは1981年にダッソー・システムズが最初の製品として発売したCADです。
同社は航空機メーカーのダッソー・アビアシオンの技術者が立ち上げた会社で、CATIAは航空宇宙の設計を出発点にしています。ボーイングやエアバスの航空機開発を支える3Dの基盤として使われてきました。
航空機や自動車のように、数多くの部署と取引先が同じ製品データを扱う大規模な開発を前提としており、デザイン・スタイリングの分野向けの機能も備えています。
従来のCATIA V5はオンプレミス型です。後継の3DEXPERIENCE CATIAは、同社の3DEXPERIENCEプラットフォーム上で、データ管理やシミュレーションと一体で動きます。このプラットフォームは2012年に発表されました。
Autodesk Fusion
Autodesk Fusion(旧Fusion 360)は、オートデスクが提供するクラウドベースの製品開発ツールです。
CAD、CAM(加工プログラムの作成)、CAE(解析)、電子回路基板の設計、データ管理を1つの作業環境にまとめているのが最大の特徴です。
設計したモデルからそのまま工作機械の加工データを作れるため、試作や小ロット生産、設計と加工を少人数でこなす会社と相性がよい製品です。年額制で始めやすく、自宅で非商用に使う個人向けには機能限定の無償版も用意されています。
設計する対象と、使う組織の規模で見ると、主戦場の違いが分かります。
※公開情報をもとに編集部が整理した目安です。どの製品も、図の範囲の外の用途で使われている例があります。
判断基準1 何を設計するか

CAD選びで最初に決めるべきなのは、自社が主に何を設計するかです。ここがずれていると、どれだけ評判のよいCADでも、日々の作業で小さな不便が積み重なっていきます。
機械設計の仕事は、自動車部品や家電のように同じものを大量につくる量産品と、顧客ごとに仕様が異なる生産設備や装置とで、進め方が大きく違います。
この違いは機械設計の仕事内容と設計プロセスで詳しく扱っていますが、CAD選びにもそのまま効いてきます。
量産品・部品の設計
量産品の設計では、1つの部品の形状を細かく詰め、公差や材料、金型での作りやすさまで検討します。部品の数はそれほど多くない一方、形状の修正を何度も繰り返すのが特徴です。
こうした設計では、部品単位のモデリングから中規模の組立まで幅広く使われ、情報も探しやすいSOLIDWORKSが候補になりやすいでしょう。試作品を自社の工作機械で削るところまで一貫して行うなら、CAMを内蔵したFusionも有力です。
装置・生産設備の設計
生産設備や専用機の設計では、フレーム、シリンダー、センサー、配線、配管まで含めて、数千から数万点の部品を1つの装置にまとめます。部品点数が増えたときにも動作が重くならないことが、何より効いてきます。
iCAD SXはまさにこの用途に特化した製品で、構想段階では2Dの線で大まかな配置を決め、固まった部分から3Dにしていく進め方にも対応します。
装置の動きを確かめながら設計を進める考え方は、製造業のデジタルツインの設計段階での活用にも通じるものです。
SOLIDWORKSも装置設計に広く使われていますが、大規模なアセンブリでは、PCの性能やデータの分け方に工夫が必要になる場面があります。
外観・曲面の多い製品
自動車の外板や航空機の翼、デザイン性の高い家電の外装のように、複雑な曲面を高い精度で作る必要がある場合があります。その場合は、大規模開発とデザイン分野の実績を持つCATIAが候補になります。
大手の自動車メーカーや航空機メーカーと直接取引する部品メーカーでは、発注元の指定でCATIAを使うケースも少なくありません。
まず主な設計対象で分け、そのあと取引先の指定と費用で絞り込みます。
※候補は代表例です。実際には既存データの資産や、社内の設計者の経験も判断材料になります。

判断基準2 取引先とのデータのやり取り
同じCADで渡すほど情報が多く残り、手間もかかりません。
2つめの判断基準は、取引先と設計データをどうやり取りするかです。自社だけで設計が完結する会社は少なく、発注元から3Dデータを受け取ったり、協力会社へ部品の設計を依頼したりする場面が日常的にあります。
発注元のCADに合わせる
取引先と同じCADを使えば、形状だけでなく、寸法の関係や形をつくった手順まで含めたデータをそのまま受け渡せます。発注元から特定のCADでの納品を求められている場合は、それが最優先の条件になります。
大手の自動車メーカーや航空機メーカーのサプライチェーンでは、発注元が使うCADに合わせる慣行が根強くあります。
受注を広げたい分野が決まっているなら、その分野の主要な発注元が何を使っているかを営業担当や取引先に確認しておくと、後からの入れ替えを避けられます。
中間ファイルでやり取りする
CADが異なる相手とは、STEPなどの中間ファイル形式で形状を受け渡すのが一般的です。どのCADでも読み込めるものの、形状をつくった履歴が失われ、受け取った側では修正しにくいという弱点があります。
変換の際に面が欠けたり、細かな隙間ができたりすることもあります。そのため、中間ファイル中心の取引が多い会社では、候補のCADで実際の取引先データを読み込めるかを導入前に試しておくと安心です。
2D図面は残る
3D CADを入れても、加工や検査の現場への指示は2D図面で行う会社がまだ多くあります。どのCADでも3Dモデルから図面を作れますが、社内の図面ルールに沿った体裁に整えやすいかどうかは製品ごとに差があります。
三面図や寸法補助記号、公差の書き方など、図面側で押さえておくべき点は機械図面の読み方でつまずく疑問にまとめています。体験版では、自社の典型的な図面を1枚仕上げるところまで試すのが実務的な確かめ方です。
判断基準3 費用とライセンス形態
初年度の価格だけでなく、使い続けた場合の総額で比べることが大切です。
※SOLIDWORKSは大塚商会掲載の税別価格(2025年12月時点、スタンドアロン)で、期間ライセンス528,216円×5年、永久ライセンス1,035,000円+年間保守255,816円×5年として試算。Fusionはオートデスク公式サイトの表示価格116,600円(税込)を税別に換算した106,000円×5年。価格改定や値引き、機能差は考慮していません。
3つめの判断基準は費用です。3D CADの費用は、ソフトの価格に加えて保守、教育、PCの入れ替えまで含めて考える必要があります。ここではソフト自体の買い方と、公開されている価格の読み方を整理します。
永久ライセンスと期間ライセンス
SOLIDWORKSは、一度買えば使い続けられる永久ライセンスと、3か月・1年単位で使う期間ライセンスの両方を用意しています。
販売代理店の大塚商会の掲載価格では、Standardの永久ライセンスが1,035,000円です。1年の期間ライセンスは528,216円となっています(いずれも税別、2025年12月時点)。
図5のように、4年以上使うなら永久ライセンスのほうが総額は抑えられる計算になります。一方、期間ライセンスは機能が永久ライセンスと同じで、新人研修や繁忙期だけ台数を増やしたいときに向いています。
短期の案件のために永久ライセンスを買い足す必要がない点は、設計の人員が増減しやすい会社にとって大きな利点です。
Fusionは月額・年額のサブスクリプションで、公式サイトの表示価格は年額116,600円、月額14,300円です(いずれも税込)。年額で払うと、月額で12か月払うより55,000円安くなります。
加工機能を強化したFusion for Manufacturing(年額350,900円、税込)という上位プランもあります。解析・データ管理を強化したFusion for Design(年額377,300円、税込)も用意されています。
「サブスクリプション」という言葉の注意
SOLIDWORKSでは、年間保守契約のことを「サブスクリプションサービス」と呼びます。バージョンアップの権利やサポートが含まれる保守契約で、動画配信サービスのような「払っている間だけ使える契約」とは意味が異なります。
見積書を比べるときは、その「サブスクリプション」が利用権そのものなのか、永久ライセンスに付ける保守なのかを確認してください。保守を止めても永久ライセンスは使い続けられますが、新しいバージョンへの更新やサポートは受けられなくなります。
価格が公開されていない製品
iCAD SXとCATIAは、公式サイトに一般向けの定価が掲載されておらず、必要なモジュールの組み合わせに応じて販売代理店が見積もる形です。iCAD SXは次の4段階の構成に、用途に応じたオプションモジュールを組み合わせます。
- 2D設計版
- スタンダード版
- プロフェッショナル版
- マイスター版
価格が非公開の製品は、比較の土台をそろえることが大切です。「何人が、どの機能を、何年使うか」を先に決めてから見積もりを依頼すると、製品間の総額を公平に比べやすくなります。
判断基準4 動作環境と社内の運用体制

4つめの判断基準は、社内で無理なく運用できるかどうかです。ソフトの機能が十分でも、PCが対応していなかったり、教えられる人がいなかったりすると、導入後に設計のスピードが上がりません。
機能表には出てこない条件が、導入後の使いやすさを左右します。
※動作環境は各社の公式情報(2026年9月確認)。最新の要件は導入前に公式サイトで確認してください。
OSとPCのスペック
SOLIDWORKSはWindows向けのソフトで、macOSではネイティブに動きません。Windowsでも、Home エディションは動作対象外とされています。
デザイン部門などでMacを使っている会社では、FusionのようにmacOSにも対応する製品かどうかが最初の分かれ目になります。
部品点数の多い装置を扱う場合は、メモリ容量やCAD向けのグラフィックボードが作業速度を大きく左右します。ソフトの見積もりとあわせて、設計者全員分のPCを入れ替える費用も予算に入れておく必要があります。
クラウドとオンプレミス
Fusionや3DEXPERIENCE版のCATIAは、データをクラウド上で管理し、複数人が同じデータに同時にアクセスできる仕組みです。
拠点が離れていても最新の設計データを共有しやすい一方、取引先との秘密保持契約や社内規程で、設計データを社外のサーバーに置けるかを事前に確認する必要があります。
データ管理の仕組みは、CADの中だけで完結しません。設計部品表をどう作り、製造側へどう渡すかはE-BOMとM-BOMの違いで整理したとおり、生産管理システムとの連携まで含めた話になります。
iCAD SXのように部品表を自動で作る機能があるCADでも、その先の受け渡し方は別途決めておく必要があります。
教える人と情報の多さ
中小メーカーでは、CADの専任担当を置けないことが多く、設計者同士で教え合いながら使うのが一般的です。そのため、経験者を採用しやすいか、講習会や解説書、ネット上の情報が見つけやすいかは、機能の差以上に効いてくることがあります。
設計者のキャリアの面でも、どのCADを使えるかは職務経歴書で必ず問われるポイントです。CADの操作に加えて、解析や加工データの作成まで扱えると、設計の幅が広がります。
CAEやCAMを設計の中でどう使うかは、CAD・CAEの主な用途と導入事例を参考にしてください。
導入前に確認したい5つのステップ

ここまでの4つの判断基準を踏まえ、実際に導入を決めるまでの進め方を5つのステップにまとめます。いきなり見積もりを取るのではなく、自社の条件を整理してから候補を比べるのがポイントです。
条件の整理から始め、実データでの確認を経て決めます。
※Fusionは公式サイトから30日間の無償体験版を利用できます。他の製品は販売代理店に体験版や評価版の有無を確認してください。
体験版では実際の仕事を再現する
体験版を使うときは、チュートリアルをなぞるだけでなく、自社でよく設計する部品や装置を1つ、実際に作ってみることが大切です。部品点数の多い装置なら、既存データを読み込んで動作の重さを確かめるだけでも、カタログでは分からない差が見えてきます。
操作を評価するのは、実際に毎日使う設計者です。ベテランと若手の両方に触ってもらい、「慣れれば速くなる不便」と「慣れても解消しない不便」を分けて意見を集めると、判断を誤りにくくなります。
総額と移行の手間で最終判断する
見積もりは、ソフトの価格だけでなく、次の費用まで含めて比べます。
- 保守
- PC
- 講習会
- 既存データの移行にかかる工数
既存の2D図面や別のCADのデータを大量に抱えている場合、移行の手間が導入費用を上回ることもあります。
全社で一斉に切り替えるのではなく、1つのチームや案件から始めると、データ管理のルールや図面の体裁をそこで固めてから広げられます。導入初年度は設計の速度が一時的に落ちる前提で、納期に余裕のある案件を選ぶのが現実的です。
まとめ
- SOLIDWORKSは量産部品から中規模装置まで幅広く、情報を探しやすい
- iCAD SXは部品点数の多い生産設備・機械装置の設計に特化している
- CATIAは航空機・自動車のような大規模開発と複雑な曲面に強い
- Fusionはクラウドで設計から加工までを一貫でき、年額制で始めやすい
- 設計対象、取引先のCAD、5年間の総額、運用体制の4つで比べて決める
3D CADは、一度選ぶと設計データや社内のノウハウが積み上がり、簡単には入れ替えられません。関連する職種としては機械設計の仕事と深く関わり、技術テーマとしてはCAD・CAEの分野にあたります。
CAD・CAEがなぜいま設計の現場で重視されているのかは、CAD・CAEが注目される背景もあわせてご覧ください。
出典
出典・参考資料(10件)を開く出典・参考資料を閉じる
- SOLIDWORKSの価格:大塚商会 CAD Japan.com「SOLIDWORKS 価格」(2025年12月時点・税別)
- SOLIDWORKSの保守契約:大塚商会 CAD Japan.com「SOLIDWORKS 年間保守契約(サブスクリプション)」
- SOLIDWORKSの期間利用ライセンス:キヤノンITソリューションズ「SOLIDWORKS期間利用ライセンス」
- SOLIDWORKSの沿革:SOLIDWORKS Blog「A Trip Through Time with SOLIDWORKS」
- SOLIDWORKSの動作環境:SOLIDWORKS「System Requirements」
- CATIAの発売・SOLIDWORKS買収・3DEXPERIENCEの発表:Dassault Systèmes「The complete history of Dassault Systèmes」
- CATIAの概要:ダッソー・システムズ「CATIA」、株式会社キャパ「3DEXPERIENCE CATIAとはどんなサービス?」
- iCAD SXの特徴・沿革:iCAD株式会社、キヤノンITソリューションズ「iCAD SX」、iCAD株式会社「iCAD SX」(evort)
- Autodesk Fusionの機能・価格・個人用の条件:オートデスク「Autodesk Fusion」(2026年9月確認・税込)、オートデスク「特定商取引法に基づく表記」(表示価格は消費税込み)
- Autodesk Fusionの動作環境:オートデスク「System requirements for Autodesk Fusion」
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