CADは製品の形を決めて図面や立体データにする道具、CAEはその形が壊れないか、熱くなりすぎないかを計算で確かめる道具です。2つを組み合わせると、試作品をつくる前に設計の良し悪しを見極められます。
CADは、製図板で手描きしていた図面を、コンピューター上で描き、直し、共有できるようにしたものです。ただ、2019年の調査では、3次元のCADを使って設計している企業は全体の2割弱で、3次元での設計はまだ広がる途中にあります。
CAD・CAEとは

CADはComputer Aided Designの略で、コンピューターを使って製品の形状を作成し、図面や3次元データとして残すための設計支援ツールです。
かつて製図板の上で手描きしていた図面を、コンピューター上で正確に描き、修正し、共有できるようにしたものです。
CAEはComputer Aided Engineeringの略で、CADでつくった形状に荷重や熱などの条件を与え、強度や温度、流れ方を計算で予測する技術です。「壊れないか」「熱くなりすぎないか」を、実物をつくる前に確かめられます。
CADを主に使うのは機械設計や電気設計の担当者で、CAEは設計者自身が使う場合と、研究開発部門などの解析専任者が担う場合があります。使う人と目的が少しずつ違う点も、両者を区別して理解しておきたい理由です。
周辺には、加工用のプログラムをつくるCAM(Computer Aided Manufacturing)もあります。このほか、設計データを製品のライフサイクル全体で管理するPLMもあります。
これらをまとめて「CAD/CAM/CAE」と呼ぶことも多く、設計から製造までをデータでつなぐ中心にあるのがCADです。
国内の普及状況を見ると、2020年版ものづくり白書で紹介された調査(2019年実施)では、3D CADを活用した設計を行っている企業は全体の2割弱でした。
一方、2D CADのみ、または設計をデータ化していない企業が約4割を占め、3次元での設計はまだ広がる途中の段階と言えます。
矢野経済研究所は、機械系CADやEDA(電子回路の設計ツール)などを合わせた国内のCAD/EDA市場の規模を推計しています。それによると、2024年度は2,308億3,900万円(前年度比105.4%)です。
同調査では、DXの考え方が広がるなかで、ツール選びが部門ごとの部分最適から全社の全体最適へ移りつつあるとの指摘もあります。
どちらも設計を支えるソフトですが、担う役割がはっきり分かれています。
※近年はCADの中に簡易的な解析機能を持つソフトも増え、境目は少しずつ近づいています。
CAD・CAEの仕組み

CAD・CAEは、単独のソフトというより、設計データを中心に複数のソフトがつながる仕組みとして動いています。
中心にあるのは3D CADでつくる形状データです。このデータを解析、加工、図面、データ管理の各ソフトが受け取り、それぞれの目的に合わせて使います。
1つの3Dモデルが、解析・加工・図面へと形を変えて使われます。
※解析結果から形状を修正し、再び解析する往復を何度も繰り返すのが一般的です。
CADの構成:形状をつくる部分と管理する部分
CADソフトの内部には、立体の形を数学的に表して計算する「形状カーネル」と呼ばれる中核部分があります。設計者が「穴をあける」「角を丸める」と操作すると、カーネルが面や辺の関係を計算し直して、矛盾のない立体を保ちます。
形をつくる前段階では、平面上に描いた線に「この2本は平行」「この円の直径は20mm」といった拘束をかけていきます。拘束が足りないと形が定まらず、多すぎると矛盾が生じるため、過不足なく拘束することがモデリングの基本とされます。
つくったモデルは、部品単位のファイルと、部品を組み合わせたアセンブリのファイルで管理されます。部品同士の位置関係まで含めてデータで持つため、組み立てたときの干渉や隙間を画面上で確認できます。
CAEの構成:プリ・ソルバー・ポスト
CAEソフトは、大きく3つの部分に分かれます。解析の準備をする「プリプロセッサー」、実際に計算を行う「ソルバー」、結果を色分けの図などで見せる「ポストプロセッサー」です。
計算そのものはソルバーが担いますが、実務で時間がかかるのはプリの準備であることが少なくありません。形状の簡略化や条件の設定が、解析の精度を大きく左右するためです。
データの受け渡しと管理
CADでつくったデータは、社内の解析担当や生産技術、社外の加工会社など、多くの人に渡されます。同じソフト同士であればそのまま開けますが、異なるソフトの間では中間ファイル形式に変換して受け渡すのが一般的です。
また、設計変更のたびに版が増えていくため、どれが最新かを取り違えないよう、PDMと呼ばれる仕組みで管理します。正しい版のデータを関係者全員が使えることが、CAD・CAEを生かす前提になります。
中間ファイルに変換したデータは、開けたことと、伝えたい情報が残っていることを分けて確かめます。形状は届いても材質や注記、公差が抜け落ちていると、受け取った側は図面と見比べるまで気づけません。
| 確かめる情報 | 変換後に起きやすいこと | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 形状 | 面の抜けやすき間、細かな丸みの欠け | 受け取った側で開き、体積や質量を元と比べる |
| 材質などの属性 | 材質名や部品番号が消える | 部品表や図面と照らし合わせる |
| 寸法・公差・注記 | 3Dモデルに付けた情報が渡らない | 図面も一緒に渡し、どちらを正とするかを決める |
| 版 | 古い版のデータを変換して渡す | ファイル名と図面の版番号をそろえる |
モデルと図面で確かめたことは、デザインレビュー(DR)の進め方の出図前のチェックに持ち込むと、指摘の漏れを減らせます。計画図から製作図、完成図へと図面がどう流れるかは、製作図とはで解説しています。
CAD・CAEの基本原理

CAD・CAEの内部では高度な数学が使われていますが、考え方そのものは身近な例えで理解できます。
準備(プリ)、計算(ソルバー)、評価(ポスト)の3つの段階に分かれます。
※解析の種類やソフトによって、工程の分け方や呼び方は異なります。
CADの原理:特徴を積み重ねて形をつくる
現在の主流である3D CADは、「押し出し」「穴」「面取り」といった加工の単位(フィーチャー)を順に積み重ねて形をつくります。粘土の塊から削り出したり、ブロックを足したりする作業を、手順として記録していくイメージです。
さらに、寸法を変数として持つ「パラメトリック」という方式が一般的です。寸法の数値を1つ変えるだけで、関連する形状がまとめて更新されるため、設計変更に強いのが特長です。
CAEの原理:細かく分けて計算する
複雑な形の部品全体に、力がどう伝わるかを一度に計算するのは困難です。そこでCAEでは、形状を三角形や四面体などの小さな要素(メッシュ)に分割し、要素ごとの簡単な計算を積み上げて全体の挙動を求めます。
これが「有限要素法(FEM)」と呼ばれる代表的な手法です。モザイク画の1枚1枚のタイルを計算し、並べると全体の絵が見えてくるようなもので、要素を細かくするほど精度は上がる一方、計算時間は長くなります。
解析結果の読み方:色の分布で弱点を探す
計算結果は、赤から青への色の変化で表されるのが一般的です。たとえば強度解析では、応力(部材の内部にかかる力の度合い)が高い場所ほど赤く表示されます。
設計者は、赤い部分が材料の許容できる値を超えていないかを確かめ、必要に応じて肉厚を増やしたり、角を丸めたりして形状を見直します。
解析と実験の関係:答え合わせで精度を高める
CAEの結果は、あくまで与えた条件のもとでの予測です。材料の性質のばらつきや、溶接・ボルト締結といった部分の扱い方によって、実物との間に差が生じることがあります。
そのため、最初は試作品での実験結果と解析結果を見比べ、条件の与え方を調整していくのが一般的です。実験との答え合わせを重ねるほど、解析を信頼して使える範囲が広がります。
CAD・CAEの種類・方式

CAD・CAEには、表現する次元や対象とする分野によっていくつかの種類があります。
2D CADと3D CAD
2D CADは、正面図・平面図・側面図といった平面の図面を描くためのCADです。操作が比較的簡単で、既存の図面資産を生かしやすいため、今も多くの現場で使われています。
3D CADは、製品を立体のモデルとしてつくるCADです。形状がひと目で伝わり、そのままCAEやCAMに渡せるため、設計から製造までのデータ連携の起点になります。
どちらが優れているかではなく、目的に応じて使い分けられています。
※3D CADで作成したモデルから2D図面を出力し、加工現場では図面を使う運用も一般的です。
実際の現場では、新規の製品は3D CADで設計し、既存製品の小さな改造や治具の図面は2D CADで済ませるなど、両方を併用している会社も少なくありません。
3D CADは操作の習得に時間がかかるため、教育の計画とセットで移行を進めるのが一般的です。
個人で3D CADの操作を身につけたい場合は、FusionやAutoCADを自宅で学べるCADの通信講座「e-Groove」も選択肢になります。
主な3D CADの違いと選び方は、3D CAD比較で、SOLIDWORKS・iCAD・CATIA・Fusionを並べて比べています。
3D CADのモデリング方式
3Dモデルの表し方には、次の3つがあります。
- ワイヤーフレーム:線だけで骨組みを表す
- サーフェス:表面の形を表す
- ソリッド:中身の詰まった立体として表す
機械部品の設計ではソリッドが主流で、体積や重心も計算できます。一方、自動車の外板や家電の外装のような滑らかな曲面をつくる場面では、サーフェスが得意とされます。
CAEの解析の種類
CAEは、何を計算するかによって分かれます。代表的なのは次の4つです。
- 構造解析:力による変形や応力を求める
- 熱解析:温度の分布を求める
- 流体解析(CFD):空気や水の流れを求める
- 振動解析:揺れやすさを調べる
製造工程を対象にした解析もあります。金型・プレス・機械加工の分野では、次のような解析が使われています。
- 樹脂流動解析:樹脂を金型に流し込むときの流れ方を調べる
- 鋳造解析:溶けた金属が固まる様子を調べる
- プレス成形解析:板金のしわや割れを予測する
1つの製品でも、筐体の強度は構造解析、内部の電子部品の温度は熱解析、冷却ファンの風の流れは流体解析で確かめます。このように、確かめたいことに応じて解析の種類を選び分けるのが基本です。複数の現象を組み合わせて解く「連成解析」もあります。
分野別のCAD
CADは使う分野によっても種類が分かれます。本記事で主に扱う機械系CADのほか、電子回路や基板を設計する電気系CAD(EDA)、建物を設計する建築用CADがあり、それぞれ専用の機能を持っています。
分野ごとに必要な表現や規格が異なるためで、たとえば電気系CADでは回路図の記号や配線の情報を扱います。
製品に電子機器が組み込まれることが増えた現在では、機械系CADと電気系CADのデータを連携させ、基板と筐体の干渉を確かめるといった使い方も広がっています。
CAD・CAEを理解するための基本用語

CAD・CAEの資料や会話でよく出てくる用語を整理しました。初めて触れる方は、まずこの6つを押さえておくと話についていきやすくなります。
現場の会話で頻繁に使われる言葉です。
なかでも境界条件は、解析結果の信頼性を最も左右する設定です。実際の使われ方と違う条件を与えると、計算がどれだけ正確でも意味のない結果になってしまいます。
メッシュについても、力が集中しやすい角や穴の周りは細かく、変化の少ない部分は粗くするなど、場所によって大きさを変える工夫が行われます。精度と計算時間のバランスを取るための、解析担当者の腕の見せどころです。
また、中間ファイル形式は取引先とデータをやり取りするときに欠かせません。IGESは1981年に米国の規格として制定された古くからの形式で、STEPはISOで定められた国際規格です。
なお、MBDは「Model Based Development(モデルベース開発)」と「Model Based Definition(3Dモデルに寸法や公差を持たせる手法)」の2つの意味で使われます。
文脈によってどちらを指すかを確かめるようにしましょう。
CAD・CAEのよくある質問
CADとCAEはどちらから学べばよいですか?
CAEはCADでつくった形状データを使って解析するため、まず3D CADでモデルをつくれるようになるのが一般的な順番です。あわせて力や熱の伝わり方の基礎を学んでおくと、解析の条件設定や結果の読み取りで迷いにくくなります。
CAEの解析結果はどこまで信用できますか?
CAEの結果は、与えた材料や荷重などの条件のもとでの予測であり、実物との間に差が出ることがあります。最初は試作品の実験結果と見比べて条件を調整し、答え合わせを重ねるほど信頼して使える範囲が広がります。
2D CADから3D CADに切り替えるべきですか?
どちらが優れているかではなく目的で使い分けるもので、新規の製品は3D、既存品の小さな改造は2Dと併用する会社も多くあります。3D CADは操作の習得に時間がかかるため、移行するなら教育の計画とセットで進めるのが一般的です。
STEPとIGESはどちらで受け渡せばよいですか?
STEPはISOで定められた国際規格で、IGESは米国の規格として制定された古くからある形式です。どちらを使うかは取引先のソフトや残したい情報で変わるため、事前に形式を決め、変換後に形状や属性が残っているかを確かめます。
CAMとCAEは何が違うのですか?
CAMは設計した形状から工作機械を動かすNCプログラムをつくるソフトで、製造の準備を担います。CAEは同じ形状に荷重や熱の条件を与えて性能を予測するもので、どちらも3D CADのモデルを起点に使われます。
まとめ
- CADは製品の形を決めてデータにする道具、CAEはその性能を計算で予測する技術
- 3Dモデルを起点に、解析・加工・図面へとデータがつながる仕組みになっている
- CAEは形状を細かい要素に分けて計算する有限要素法が代表的な原理
- CADには2D・3D、CAEには構造・熱・流体・成形などの種類がある
- 境界条件の設定が解析の信頼性を左右するため、基本用語の理解が欠かせない
CAD・CAEがなぜ今注目されているのかはCAD・CAEが注目される背景と従来技術との違いで解説しています。実際の使われ方はCAD・CAEの主な用途と導入事例で詳しく紹介しています。
CADを日常的に使う仕事については機械設計とはもあわせて参考にしてください。
CAD・CAEに関する最新の動向や関連記事については、CAD・CAEの技術ページから関連記事もあわせてご覧ください。
出典
出典・参考資料(3件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 3D CADの普及状況:近畿経済産業局「2020年度ものづくり白書(3DCADの普及率)」
- CAD/EDA市場規模:矢野経済研究所「CAD/EDA市場に関する調査を実施(2025年)」
- 中間ファイル形式の制定年:日本ユニシス「日本ユニシスにおけるCAD/CAMシステムの歩み」(UNISYS TECHNOLOGY REVIEW 第130号)
TOOLS & SERVICES
製造業で働く人の、仕事の道具・サービス紹介
これからの働き方、資格の勉強、打合せの記録。MONOSCOPE で紹介している3つです。
CAREER社外の仕事を知りたい転職・キャリアガイド今の会社で続けるか、社外にも目を向けるか。考える視点と転職サービスの紹介。仕事と働き方を考える ›
LICENSE仕事に関わる資格を学びたいSAT電験三種・エネ管・QC検定など。職種から資格を選べる表と受講料の比較。SATの対象資格を見る ›
RECORD打合せを記録したいPLAUD録音から文字起こし・要約まで。3機種の選び方と業務で使う前の確認表。PLAUDの使い方を見る ›
NEWSLETTER
機械設計の記事を、週1回まとめてメールで受け取る
週刊MONOSCOPEは、登録時に選んだ職種・業種に合わせた記事を週1回お届けする無料のメルマガです。
機械設計を選んだ状態で登録へ ›無料・週1回。登録後に届く確認メールのリンクを押すと登録が完了します。配信はメール内のリンクからいつでも停止できます。
WEEKLY NEWS
今週の製造業ニュース10選
メルマガは職種・業種に合わせた記事。LINEとnoteでは、全員共通の10本を毎週土曜の朝にお届けします。
LINEでニュース10選を受け取るnote今週のニュース10選をnoteで読む ›
