AI向けのサーバーでは、冷却液をチップのすぐそばまで引き込む「液冷」を前提にした設計が広がっています。サーバーを収める棚(ラック)1本で、120kWの冷却能力を求める製品も登場しているためです。
現在も多くのデータセンターは、空調機で部屋ごと空気を冷やす方式です。ただ、AIの計算に使うGPU(画像処理用の半導体)を詰め込んだラックは発熱が大きく、空気だけで冷やすのが難しくなっています。
この記事では、液冷とは何かと関わる国内メーカーの早見表を最初に示します。続いて、液冷が求められる背景、3つの方式、冷却装置を構成する機器、各社の直近の発表、部品メーカーが引き合いを受けたときの確認事項の順で整理します。
- 液冷は、サーバーの熱を空気ではなく水などの液体で運び出す冷却方式の総称。方式はリアドア熱交換器、ダイレクト・ツー・チップ(コールドプレート)、液浸の3つ
- AI向けの高密度ラックでは、1本で120kWの冷却能力を求める製品(NVIDIA GB200 NVL72)も登場。従来の空冷は20kW前後で実用上の限界に近づくとされる
- 液冷配管は、サーバー側のループ(二次側)で冷却液を運ぶ部材の総称。コールドプレート→継手→マニホールド→ホース・配管→CDUの順につながり、建物側の冷却水とは混ざらない
- 配管部材では、流量・圧力損失・使用圧力・温度範囲・ねじの規格に加え、接液材料と冷却液の適合、洗浄(フラッシング)、着脱時の液だれが確認ポイントになる
- 国内では、CDUでニデック・パナソニック・NTTファシリティーズ、継手・配管で日東工器・三桜工業・ニデック、コールドプレートで古河電気工業などが公式に発表している
データセンターの液冷とは
データセンターの液冷とは、サーバーが出す熱を空気ではなく水などの液体で運び出す冷却方式の総称です。液体は空気に比べて熱容量と熱伝導率に優れるため、同じ熱量を小さな流路で運べます。
空冷では、サーバー内のファンがヒートシンクに風を当て、温まった空気を室内の空調機で冷やします。
液冷では、チップに取り付けた金属板の中に冷却液を流す、ラックの背面で排気を冷水に当てる、サーバーごと液体に沈めるといった方法で、熱を早い段階で液体に移します。
ただし、液冷が空冷を完全に置き換えるわけではありません。チップを液体で冷やすサーバーでも、メモリや電源などは空気で冷やす構成が多く、実際の設備は空冷と液冷の併用になるのが一般的です。
熱を運ぶものが変わると、必要な機器と気をつける点も変わります。
※ラックの目安は、Vertivの解説(20kW前後で従来の空冷は実用上の限界に近づく)などをもとにした整理です。実際の境界は設備の設計によって変わります。
液冷設備に関わる機器と、公式発表で動きを確認できる国内企業を先に一覧にしておきます。各社の発表内容と段階は、後半の章で日付とともに説明します。
機器ごとに役割が異なり、関わる企業の出身分野もさまざまです。
※2026年10月1日時点で公式発表を確認できた企業の例であり、網羅的な一覧ではありません。国内で調達できるかどうかは製品ごとに各社への確認が必要です。
AIサーバーで液冷が求められる背景
液冷が注目される直接の理由は、AI向けサーバーの発熱が一般的なサーバーと桁違いになったことです。あわせて、データセンターのエネルギー効率に対する制度上の要求も強まっています。
一般的なラックと高密度AIラックでは冷却の要求が違う
まず押さえたいのは、データセンター全体の平均はそれほど高密度ではないという点です。
Uptime Instituteの2025年の調査では、最も多く使われているラック密度の平均は、高密度の施設を除くと1ラックあたり7.5kWでした。30kWを超える施設は少数にとどまります。
一方、AI向けの製品は別の水準にあります。
Open Compute Project(OCP)は、データセンター機器の設計を公開・共有する団体です。
NVIDIAが2024年10月にOCPへ設計を提供したGB200 NVL72は、ラックに必要な冷却能力が120kWとされています。液冷のマニホールドや継手を前提にした構造です。
空冷の側にも限界の目安があります。冷却機器大手のVertivは、20kW前後で従来の空冷は実用上の限界に近づくと説明しています。
ASHRAE(米国暖房冷凍空調学会)の技術委員会TC 9.9も、2021年の白書で次のように指摘しました。チップ1個あたりの電力が300Wを超えて400Wに向かうと、標準的な1U・2Uサーバーは空冷が難しくなります。
種類の違う数字なので、同じ対象の推移としてではなく、水準の違いとして見てください。
※ダイキン工業は同じ説明会で、2023年頃は15kW、2025年は100kWとの見方も示しています。将来の値は同社の見込みであり、確定した数字ではありません。
空冷のまま密度を上げると、サーバー内のファンが使う電力も無視できなくなります。ASHRAEの白書は、ファン電力がサーバー全体の10〜20%に達しうるとし、50kWのラックなら少なくとも5kWがファンに使われる計算になると述べています。
発熱が増える背景には、演算チップそのものの高性能化があります。GPUとメモリを近接して実装する半導体の後工程と先端パッケージの進展は、狭い面積に熱が集中する要因の一つです。

PUEの目標は背景の一つ
制度面では、PUE(データセンター全体の消費エネルギーをIT機器の消費エネルギーで割った値)が指標になります。1.0に近いほど、冷却などIT機器以外に使うエネルギーが少ないことを示します。
Uptime Instituteの2025年調査では、世界の加重平均は1.54でした。
国内では、省エネ法のベンチマーク制度で、データセンター業の特定事業者に「2030年度までにPUE 1.4以下」の目標が設定されています。
さらに2026年4月に施行された新たな措置により、2029年度以降に新設するデータセンターにはPUE 1.3以下が求められます。適用されるのは、稼働開始から2年が経過した時点の翌年度以降です。
この制度は液冷の導入を義務づけるものではありません。ただ、ASHRAEの白書は、温水で冷やす液冷によってチラー(冷凍機)の運転を減らせる、あるいは不要にできると述べています。冷却に使う電力を下げる手段の一つとして位置づけられます。
国内の実証例として、KDDI、三菱重工業、NECネッツエスアイは2023年3月に成果を発表しました。KDDI小山ネットワークセンターでの液浸冷却の実証で、PUE 1.05を達成しました。
100kVA相当のサーバーを対象にした実証の値であり、商用の大規模設備で同じ値になるとは限りません。
なお、データセンターの増加は冷却だけでなく電力の供給設備にも影響しています。資源エネルギー庁の見通しでは、データセンターや半導体工場の新増設に伴って電力需要の増加が見込まれます。受変電設備の納期については、次の記事で整理しています。

液冷の3つの方式

液冷は、どこで熱を液体に渡すかによって大きく3つに分かれます。ラックの背面で渡すリアドア熱交換器、チップの直上で渡すダイレクト・ツー・チップ、サーバー全体を液体に沈める液浸です。
熱を液体に渡す場所がチップに近いほど、高い発熱密度に対応できます。
リアドア熱交換器
リアドア熱交換器は、ラック背面の扉に冷水コイルを組み込み、サーバーの排気を室内に出る前に冷やす方式です。サーバー自体は空冷のまま使えるため、既存のデータセンターに後付けしやすいのが特徴です。
Vertivの解説によれば、ファンを持たないパッシブ型とファン付きのアクティブ型があり、20〜80kWのラック密度に対応します。同じ冷水の配管を将来ダイレクト・ツー・チップに転用できるため、液冷への足がかりとしても位置づけられています。
ダイレクト・ツー・チップ(コールドプレート)
ダイレクト・ツー・チップは、GPUやCPUの上にコールドプレート(内部に流路を持つ金属板)を密着させ、そこに冷却液を流す方式です。
直接液冷、DLC(Direct Liquid Cooling)とも呼ばれます。AI向けの高密度ラックで採用が広がっている方式で、先に触れたNVIDIAのラックもこの考え方で設計されています。
冷却液に水系の液体を使う単相式が一般的ですが、漏れたときの機器故障を避けるために、絶縁性の冷媒を液体と気体の二相で循環させる二相式もあります。
三菱重工業、NTTコミュニケーションズ、NECネッツエスアイは2024年11月、空冷式のデータセンターで二相式ダイレクトチップ冷却の実証を始めると発表しました。
漏液への別の対策として、配管内を大気圧より低い圧力(負圧)に保つ方式もあります。ダイキン工業が2025年に買収した米チルダインの技術がこれにあたります。
ダイキン工業はこれを「真空式」と呼び、配管が損傷しても液体が外に漏れず内部に引き込まれる構造だと説明しています。
液浸(単相・二相)
液浸は、サーバーを絶縁性の液体で満たした槽に沈める方式です。液体が沸騰しない単相式と、沸騰と凝縮を利用する二相式があります。ASHRAEの白書は、利点として熱の回収率の高さと高密度への対応を挙げています。
一方で同じ白書は、槽から機器を引き上げる保守作業に人手や設備が必要になること、冷却液と機器の材料の適合性、機器の保証への影響を課題として挙げています。そのうえで、導入前の評価を勧めています。
国内ではENEOSが2024年2月、単相式の液浸冷却向けの冷却液「ENEOS IXシリーズ」の販売開始を決定したと発表しました。
ダイレクト・ツー・チップの構成機器と熱の流れ

ここからは、AI向けで採用が進むダイレクト・ツー・チップを例に、冷却装置がどんな機器でできているかを見ていきます。リアドア熱交換器や液浸では構成が異なる点にご注意ください。
ポイントは、冷却液の循環が2つのループに分かれていることです。サーバーの中を回る冷却液と、建物側の冷却水は混ざりません。
両者の間に入って熱だけを受け渡すのがCDU(Coolant Distribution Unit、冷却液分配ユニット)です。
熱は上から下へ移りますが、液体は2つのループの中でそれぞれ循環します。
※構成は設備によって異なります。CDUがラックの中に入る形(In-Rack)と、ラックの列に並べる形(In-Row)があります。
液冷配管とは:サーバー側のループをつなぐ部材
「液冷配管」は、一般にこのサーバー側のループ(二次側)で冷却液を運ぶ配管部材をまとめて指す言い方です。
コールドプレートを出た冷却液は、継手(クイックカップリング)を通ってラック内のマニホールドに集まり、ホースや配管でCDUへ戻ります。
CDUで熱を渡して冷えた冷却液は、同じ経路を逆にたどってサーバーへ送られます。
建物の空調や工場の冷却水の配管と比べると、次の3点が特徴です。
- サーバーの抜き差しのたびに外す継手が、ラックの中に数多くある
- 漏れた液がIT機器にかかると被害が大きいため、分離時の液だれを抑える構造や漏液検知が重視される
- 細い流路を詰まらせないよう、冷却液に触れる材料の適合や施工後の洗浄(フラッシング)まで管理が求められる
個々の部品の役割は後の図6で、継手・配管の各社の製品は「国内メーカーの直近の動き」の章で紹介します。
CDUが担う役割
CDUの中には、熱交換器、ポンプ、制御装置が入っています。サーバー側から戻ってきた温かい冷却液の熱を施設側の冷却水に渡し、冷えた冷却液をポンプで再びサーバーへ送り出します。流量と温度を負荷に合わせて保つことと、異常の監視が主な役割です。
設置の形は大きく2つあります。ラックの中に収めるIn-Rack型と、ラックの列に並べて複数のラックをまとめて受け持つIn-Row型です。
ニデックの製品を例にとると、In-Rack型は4Uの大きさで最大300kW、In-Row型は最大2MWの冷却能力とされています。
施設側の冷却水と温度の考え方
施設側では、CDUから受け取った熱をチラーや冷却塔、ドライクーラー(外気で冷却水を冷やす装置)で屋外へ放出します。ここで効いてくるのが冷却水の温度です。
ASHRAEは施設側の冷却水を供給温度の上限でW17、W27、W32、W40、W45などのクラスに分けています。数字は上限の温度(℃)を表します。
高い温度の冷却水で冷やせれば、チラーに頼らず外気で放熱できる時間が長くなります。
NVIDIAは2025年10月、次世代のVera Rubin NVL72の設計について説明しました。コンピュートトレイを100%液冷とし、ラックは45℃の液冷に対応する設計だとしています。
NTTファシリティーズも2025年4月に開設した検証施設で、チラーを使わない液冷空調システムを検証対象としました。
ただしASHRAEの白書は、チップの発熱がさらに増えれば、必要な冷却水の温度が逆に下がっていく可能性も指摘しています。施設側の設備は、将来の温度条件の変化を見込んで計画する必要があります。
置かれる場所ごとに、求められる技術が異なります。
※ダイレクト・ツー・チップを想定した整理です。液浸では、これに液槽と液浸用の冷却液が加わります。
国内メーカーの直近の動き

ここからは、国内メーカーの公式発表を機器ごとに見ていきます。発売済みの製品、これから量産する計画、実証の段階が混在しているため、発表の時点と段階を区別して読むことが大切です。
同じ「発表」でも、いま買えるものと、これからのものがあります。
※段階は各社の発表時点のものです。その後の進み具合は各社の最新の発表で確認してください。
CDU:ニデック、パナソニック、NTTファシリティーズ
ニデックは2026年6月8日、最大300kWの冷却能力を持つIn-Rack CDUのプロトタイプを開発したと発表しました。
同社のIn-Rack型では最大の能力で、内部と外部の漏水センサー、温度・圧力・流量・液位のリアルタイム監視を備えます。
OCPのORV3規格のラックに適合し、2027年第1四半期の量産開始を目指すとしています。
同社はこれに先立つ2025年6月、In-Row型CDUを使った大規模な液冷装置を千葉県印西市のデータセンターで試験運用すると発表しています。
2026年9月の展示会出展の発表では、4Uの大きさで最大300kWのIn-Rack CDUを紹介し、世界で1万2,000台を超える出荷実績があると説明しました。
この台数がどの機種や期間を対象にした数字かは、発表文には書かれていません。6月の発表では300kWの機種は量産前の段階とされているため、台数と機種の関係は同社への確認が必要です。
パナソニックは2026年3月4日、欧州で生成AIデータセンター向けの液冷システム事業を始めると発表しました。
400kWと800kWのCDU、800kWと1,200kWのフリークーリングチラー(低い外気温を利用して冷却するチラー)の受注を同日から開始しています。対象は欧州市場です。
NTTファシリティーズは2025年4月、東京都武蔵野市に検証施設を開設しました。空冷420kW、液冷360kWの模擬負荷を備え、ドイツの空調メーカーSTULZと共同開発した大容量CDUを設置しています。
コールドプレート・水冷モジュール:古河電気工業
古河電気工業は2026年3月30日、データセンター向けの水冷モジュールと空冷ヒートシンクの生産能力を増強すると発表しました。投資額は約550億円で、このうち水冷モジュールが約510億円を占めます。
フィリピンの工場を拡張し、タイに新工場を設けます。
水冷モジュールの量産開始は、フィリピンが2027年1月、タイが2028年1月の予定です。
同社は水冷モジュールの売上について、2027年度に1,000億円以上、2030年度に4,000億円という計画を示しています。あくまで同社の計画値であり、実現を保証するものではありません。
継手・配管:日東工器、三桜工業
日東工器は2026年8月25日、液冷配管用の継手「コンパクトゼロスピルカプラ 真ちゅう製」を9月1日に発売すると発表しました。
2019年に発売したステンレス製の特長を引き継ぎ、本体を真ちゅうにした製品です。
最高使用圧力は1.0MPaで、分離時の液だれ量はサイズによって0.015mLまたは0.023mLとされています(使用条件によって異なります)。
同社は6月にも、サーバーをラックに挿入するだけで配管がつながるブラインドメイトタイプを発表しています。こうした継手は、機械要素部品のメーカーが既存の技術を新しい用途に展開している例といえます。
三桜工業は2026年3月、検証施設の配管モデルに自社製品を実装したと発表しました。NTTデータと日比谷総合設備が開設した施設で、止水機能付きの継手と樹脂チューブを一体化した製品です。
自動車向けの配管で培った、漏れを防ぐ接続技術を応用しています。
空調・冷却システム:ダイキン工業、三菱重工業
ダイキン工業は2025年11月の事業戦略説明会で、データセンターの冷却を大空間冷却、サーバー冷却、チップ直接冷却の3つに分けました。そのうえで、買収によってすべてをそろえる方針を示しました。
密閉型の冷却キャビネットを持つ米DDCソリューションズと、真空式(負圧式)の液冷技術を持つ米チルダインを2025年に買収しています。
同社は北米のデータセンター冷却事業について、2025年に約1,000億円となる見通しを示し、2030年に3,000億円以上を目指すとしています。
これは空冷を含む冷却事業全体の目標で、買収した2社の売上は2025年の数字に含まれていないとの説明でした。
三菱重工業は、先に触れた二相式ダイレクトチップ冷却の実証や、KDDIなどとの液浸冷却の実証に参加してきました。
2025年12月には、エクシオグループの自社データセンターで、二相式ダイレクトチップ冷却を使ったGPUサーバーの構築と商用利用を始めたと両社で発表しています。両社によれば、これは国内初です。
工作機械受注の資料にもデータセンター関連の言及
冷却に限った話ではありませんが、データセンター関連の投資は工作機械受注の公表資料でも言及されています。
日本工作機械工業会は2026年7月分の受注確報で、内需について「データセンタや半導体製造装置、発電関連ユーザ等、随所に積極的な投資姿勢が窺える」と記しました。
同会の8月分速報では、受注総額は1,978億80百万円で前年同月比64.7%増でした(速報値)。工作機械受注の読み方を踏まえると、これは金属部品を加工する設備への投資が活発であることを示す数字です。
ただし、全業種・全地域を合わせた総額であり、データセンター向けや液冷部品の需要を切り出した統計ではない点は区別しておく必要があります。
引き合いを受けたときに確認したい条件

ここまで見たように、液冷には精密加工、継手、配管、ポンプ、熱交換器といった既存の技術が転用されています。一方で、工場設備や自動車向けとは要求が異なる部分もあります。
部品・加工メーカーが引き合いを受けたときに確認したい条件を、4つの順で整理します。
設備の前提から順に聞いていくと、仕様の抜けを減らせます。
※一般的な整理です。実際の要求仕様は、サーバーメーカーやデータセンター事業者ごとに異なります。
用途・設備条件を最初に聞く
最初に確認したいのは、どの方式の、どの位置に使われる部品かです。リアドア熱交換器とダイレクト・ツー・チップでは、扱う流量も温度も異なります。新設か既設の改修かによっても、配管の取り回しや床の条件が変わります。
三桜工業は先の発表の中で、次の点を指摘しています。データホール内の主配管からラック内のCDUやマニホールドに至る施工方法や部材構成が、施工段階で明確に示されていないケースが多いという点です。
仕様が固まっていない引き合いもありうるため、前提条件を自社から確認していく姿勢が求められます。
接続条件と材料・清浄度
継手や配管では、流量、圧力損失、使用圧力、温度範囲、ねじの規格が基本の仕様になります。
日東工器の継手を例にとると、液冷用途で主流とされるGねじを採用し、シール材にはEPDM(エチレンプロピレンゴム)を使っています。使用温度範囲は−10〜+100℃です。
ラックの規格も確認事項です。ニデックのCDUやNVIDIAのラック設計が示すように、OCPの規格に沿った設計が一つの流れになっています。
ただし、すべての部品に共通する参入条件というわけではなく、対象の機器ごとに適用範囲を確かめる必要があります。
材料については、ASHRAEの白書が、設計段階で冷却液に触れるすべての材料をリスト化し、維持することを勧めています。あわせて、清浄な施工と洗浄(フラッシング)の計画も求めています。
一般に、閉じたループの中で異なる金属が混在すると腐食の原因になり、加工時の切りくずや油分が残ると細い流路の詰まりにつながりうるためです。
表面処理もこの文脈で選ばれます。日東工器の真ちゅう製継手は、本体に無電解ニッケルりんめっきを施しています。めっきの種類と選び方の知識は、接液部品の仕様を読むうえでも役立ちます。
保守のしやすさと供給能力
データセンターは24時間止めずに運用されます。サーバーの交換で継手を外す場面、CDUのポンプを交換する場面など、運転を続けながら保守できるかどうかが部品の評価に直結します。
各社の製品もこの点を訴求しています。日東工器が挙げるのは、ブラインドメイトタイプで手作業の接続を不要にした点です。ニデックのIn-Row CDUは、主要部品の冗長化とホットスワップ(運転中の交換)に対応するとしています。
漏れないことに加えて、交換の手順まで含めた提案が求められる分野です。
供給能力も見られます。古河電気工業の増産投資やダイキン工業の量産体制の構築が示すように、完成品メーカーは生産能力の拡大を進めています。
部品を供給する側にも、数量と納期に応えられる体制が問われると考えられます。ただし、需要の伸び方は各社の計画に基づく見通しであり、確定したものではありません。
まとめ
- 液冷は、サーバーの熱を液体で運び出す冷却方式の総称で、空冷と併用されることが多い
- 背景には、AI向けラックで120kW級の冷却能力が求められるようになったことと、PUEの目標がある
- 方式は、リアドア熱交換器、ダイレクト・ツー・チップ、液浸の3つに大きく分かれる
- 冷却装置は、コールドプレート、継手、マニホールド、CDU、施設側の冷却設備で構成される
- 国内メーカーの発表は、発売、量産準備、実証の段階を区別して読む必要がある
液冷は、空調メーカーだけでなく、モーター、電線、継手、自動車部品といった分野の企業が既存技術を持ち込んでいる領域です。関連する業種としては電機・精密機器や機械要素部品、職種では顧客の仕様を技術面から詰める技術営業・FAEが深く関わります。
各社の量産計画や制度の内容は今後も更新されていきます。検討にあたっては、本記事の出典に挙げた各社・官公庁の最新の発表をあわせてご確認ください。
出典
出典・参考資料(21件)を開く出典・参考資料を閉じる
- PUEの定義、ベンチマーク制度、2026年4月施行の新たな措置:資源エネルギー庁「増加が見込まれるデータセンターの電力需要をどうする?さらなる省エネを進める新たな制度に注目!」(2026年5月20日)
- 新設データセンターのエネルギー効率基準の詳細:資源エネルギー庁「省エネ・非化石転換法に基づくデータセンター業に係る措置」(2026年4月)
- 世界平均PUE、ラック密度の調査値:Uptime Institute Global Data Center Survey 2025
- 空冷の限界、冷却水の温度クラス、接液材料、液浸の課題:ASHRAE TC 9.9 “Emergence and Expansion of Liquid Cooling in Mainstream Data Centers”(2021年)
- リアドア熱交換器の仕組みと対応密度:Vertiv “How rear door heat exchangers (RDHx) support high-density rack cooling”
- GB200 NVL72の冷却能力と液冷の設計:NVIDIA Developer Blog(2024年10月15日)
- Vera Rubin NVL72の液冷:NVIDIA Blog(2025年10月13日)
- 最大300kWのIn-Rack CDU:ニデック 製品ニュース(2026年6月8日)
- In-Row型CDUの試験運用:ニデック 製品ニュース(2025年6月19日)
- In-Rack CDUの出荷実績、In-Row CDU、継手とマニホールド:Nidec “Nidec to Debut Liquid Cooling Solutions at Data Center World Asia”(2026年9月7日)
- 欧州での液冷システム事業:パナソニック プレスリリース(2026年3月4日)
- 水冷モジュールの設備投資:古河電気工業「データセンタ向け放熱・冷却製品の生産に係る設備投資に関するお知らせ」(2026年3月30日)
- 液冷配管用の継手:日東工器「コンパクトゼロスピルカプラ 真ちゅう製」を発売(2026年8月25日)、同 ブラインドメイトタイプ(2026年6月30日)
- DLC配管モデル:三桜工業 トピックス(2026年3月17日)
- データセンター冷却事業の戦略と買収:ダイキン工業「データセンタ市場における事業戦略説明会」(2025年11月27日)
- 二相式ダイレクトチップ冷却の実証:三菱重工業・NTTコミュニケーションズ・NECネッツエスアイ ニュースリリース(2024年11月20日)
- 二相式ダイレクトチップ冷却の商用利用:三菱重工業・エクシオグループ プレスリリース(2025年12月22日)
- 液浸冷却の実証(PUE 1.05):KDDI・三菱重工業・NECネッツエスアイ ニュースリリース(2023年3月6日)
- 液冷の検証施設と大容量CDU:NTTファシリティーズ ニュースリリース(2025年4月15日)
- 液浸冷却液:ENEOS ニュースリリース(2024年2月5日)
- 工作機械受注:日本工作機械工業会「2026年7月分工作機械受注確報及び受注関連状況について」(2026年8月27日)、同「2026年8月分 受注速報」
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