動翼と静翼とは?タービン翼の役割・英語名・衝動式と反動式の違い

分解点検で架台に置かれた蒸気タービンのロータと動翼列

動翼(どうよく)とは、タービンの軸と一緒に回る翼です。静翼(せいよく)は、外側のケーシング(車室)に固定されて回らない翼です。

静翼が蒸気やガスの向きと速さを整え、動翼がその勢いを受けて軸を回します。タービン翼(タービンの羽根)は、この2種類を交互に何列も並べたものです。

この記事では、動翼と静翼の違い、英語名と読み方、静翼が必要な理由、衝動式と反動式の違い、ガスタービンの翼の順に整理します。

目次

動翼と静翼とは

タービンの中には、羽根の付いた回転体が入っていて、蒸気やガスの勢いで羽根が押され、軸が回る仕組みです。

この羽根をタービン翼(ブレード)と呼び、タービン翼には、回転する翼と、固定されている翼があります。それぞれに動翼、静翼という名前が付いています。

動翼は、ロータ(軸と一体で回る部分)に取り付けられた翼で、圧力のかかった蒸気やガスに押されて回るよう、軸の周りに何枚も並んでいます。

ロータという言葉は、軸と翼を合わせた回転体全体を指し、動翼はその一部で、英語では rotor blade(ロータの翼)とも呼ばれます。

一方、静翼はステーター(静止側)の翼で、タービンのケーシングに固定されており、流れる蒸気やガスを整流し、次の動翼へ送るのが役割です。

高温高圧の蒸気やガスが、動翼と静翼を交互に流れることで軸が回り、タービンはその回転エネルギーを、発電機やポンプを回す動力に変えています。

図1:動翼と静翼の違い

回るか回らないかで、付いている場所も役割も分かれます。

動翼(どうよく)
静翼(せいよく)
付いている場所
ロータ(軸と一体で回る部分)
ケーシング(車室)の内側
動くか
軸と一緒に回る
回らない
主な役割
流れの勢いを受け、軸を回す力に変える
流れの向きと速さを整え、次の動翼へ送る
代表的な英語
moving blade、rotating blade、rotor blade
stationary blade、stator blade、vane
別の呼び方
回転翼。GE は蒸気タービンの動翼を bucket とも呼ぶ
固定翼。蒸気タービンでは nozzle(ノズル)とも呼ぶ

※呼び方はメーカーや機械の種類で異なります。英語の資料では前後の文脈で確かめてください。

次の動画は、ガスタービンメーカーの Solar Turbines が公開している作動原理の解説です。圧縮機とタービンの中で、翼がどう並んでいるかが映像で分かります。

動翼と静翼の英語名・読み方

読み方は、動翼が「どうよく」、静翼が「せいよく」で、どちらも国語辞典(デジタル大辞泉)に載っている言葉です。英語では、どちらも blade(翼)を使って次のように書くのが基本です。

  • 動翼:moving blade、rotating blade、rotor blade
  • 静翼:stationary blade、stator blade、vane(ベーン)
  • 蒸気タービンの静翼:nozzle(ノズル)
  • GE の蒸気タービンの動翼:bucket(バケット)

三菱重工系の発表では、最終段の動翼を last stage rotating blade と書いています。GE の特許では、静翼を stationary nozzle、動翼を rotating blades or buckets と表しています。

蒸気タービンの英語資料で nozzle とあれば、静翼を指していることがあります。配管をつなぐノズル(管台)とは別物なので、前後の文脈で見分けます。

蒸気タービンでは、静翼を円周に並べて円板状にまとめた部品を、ダイアフラム(diaphragm)と呼ぶこともあります。

段(段落)とは

静翼1列と動翼1列の組を段(だん)と呼び、メーカーの論文や講義資料では「段落」とも書きます。大きなタービンは、この段を軸の方向に何段も重ねており、蒸気やガスは段を通るたびに圧力が下がり、その分のエネルギーを軸に渡します。

図2:1段の中で起きること

静翼で勢いをつくり、動翼でその勢いを軸に渡す。これを段ごとに繰り返します。

01静翼(ノズル)圧力の一部を速度に変え、流れを動翼に当たりやすい向きにそろえて噴き出す圧力↓ 速度↑ 向きを整える
02動翼高速の流れを受け止めて向きを変え、その力で軸を回す速度↓ 勢いを軸に渡す
03次の段へ圧力が下がり体積が増えた流れが、次の段の静翼に入る圧力↓ 体積↑

※反動式では、動翼の中でも圧力が下がって流れが加速します(後述の「タービン構造の種類」)。

なぜ静翼が必要なのか

風車も風の力で回りますが、羽根は1列(上でいう動翼)しかありません。それでもタービンに回らない静翼が何列もあるのは、エネルギーを何回にも分けて取り出すためです。

タービンの1段目にぶつかった高圧のガスは、動翼を回しながら、圧力の低い出口側へ進もうとします。ただ、動翼を出た流れは、動翼に勢いを渡したぶん遅くなり、向きも変わっています。

そのまま2段目の動翼に進んでも翼をうまく押せず、軸を回す力になりません。そこで、回らない静翼を間に入れ、静翼で圧力を下げて流れを再び速くし、向きを整えてから次の動翼段へ送ります。

回っている動翼から見ると、流れは「静翼を出た流れの速さ」から「自分が回る速さ」を差し引いた向き(相対速度)で当たります。この向きが動翼の入口の角度からずれるほど損失が大きくなるため、翼の角度はこの当たり方に合わせて設計されています。

図3:静翼がない場合とある場合

静翼は、動翼を出た流れを「次の動翼が使える流れ」に戻します。

静翼がない場合
静翼がある場合
動翼を出た流れ
遅くなり、軸の周りを回る向き(旋回)が残る
静翼で向きを直し、圧力を速度に変える
次の動翼への当たり方
角度が合わず、翼を押す力が弱い
動翼に合う角度・速さで当たる
圧力の使い方
1列では使い切れない圧力が残る
段ごとに少しずつ圧力を使う
結果
軸を回す力にならない
何段にも分けてエネルギーを取り出せる

ガスや蒸気は圧力が下がると体積が増えるため、タービンの動翼・静翼は、入口側の翼が短く、出口側の翼が長く設計されています。増えた体積を通すため、出口に近い段ほど流路の高さ(翼の長さ)を大きくしているのです。

出口側の翼は、大型機ではかなりの長さになります。三菱日立パワーシステムズ(現・三菱重工業)は2017年、原子力発電所向けに長さ74インチ(1,880mm)の最終段動翼の回転振動試験を終えたと発表しています。

段ごとに取り出せるエネルギーの大きさは、入口と出口の熱量の差(熱落差)で考えます。詳しくはタービン効率の考え方と熱落差で解説しています。

最終段を出た蒸気は、復水器で冷やされて水に戻ります。

タービン構造の種類

タービンは、エネルギーの使い方で衝動式と反動式の2つに分かれます。

一つ目の衝動式は、速度を持った蒸気やガスが動翼にぶつかり、その衝撃力で回る形式で、圧力が下がるのは静翼(ノズル)だけであり、動翼の部分ではガスの体積膨張は起こりません。1段で大きな熱落差を扱えるので一般に反動式より段数が少なくなり、その分、翼は大きく幅広になります。

二つ目の反動式は、動翼でガスの衝撃を受けながら動翼の中でも体積膨張を伴う形式で、動翼から噴き出す流れの反動でも軸を回します。静翼と動翼の両方で圧力を下げるので1段あたりの熱落差は小さくなり、その分、衝動式よりも段数が多いのが特徴で、翼は小型です。

反動式で動翼と静翼の構造が似ているのは、反動度50%の設計が広く使われているためです。反動度は、段全体の熱落差のうち動翼で下がる割合を指します。

反動度が50%なら静翼と動翼で同じだけ熱落差を受け持つため、静翼と動翼が対称な形になり、この設計はパーソンズ・タービンとも呼ばれます。

図4:衝動式と反動式の違い

圧力をどこで下げるかの違いが、段数や翼の形の違いになります。

衝動式
反動式
圧力が下がる場所
静翼(ノズル)だけ
静翼と動翼の両方
動翼を回す力
高速の流れがぶつかる衝撃力
衝撃力+動翼から噴き出す反動力
1段の熱落差
大きい
小さい
段数
少ない
多い
翼の形
大型で幅広
小型。反動度50%では静翼と動翼が対称
開発者の例
ド・ラバル(1882年)、カーチス(1895年)
パーソンズ(1884年、多段の反動式)

※両方を組み合わせた混式タービンもあります。年は筑波大学の講義資料によります。

世界大百科事典は、同じ回転数・同じ直径で比べると衝動式のほうが1段で大きな圧力差をこなせ、同じ出力なら小型にできると説明していますが、効率については、反動式が優れているとしています。

ただ、実際の効率は形式だけでは決まりません。日立製作所の技術論文では、段落数と反動度の組み合わせごとに効率を計算し、最も高くなる組み合わせを選んで翼を設計しています。

タービンの種類も、動翼・静翼の役割を知っていると理解しやすくなります。軸の方向に流れる形式の特徴は、軸流タービンとは何かで詳しく扱っています。

ガスタービンの動翼と静翼

ガスタービンは、圧縮機で空気を圧縮し、燃焼器で燃料を燃やし、その高温ガスでタービンを回す機械です。圧縮機とタービンの両方に、動翼と静翼があります。

圧縮機では動翼が空気に勢いを与え、NASA の解説では、圧縮機の静翼は旋回する流れを軸方向に戻しながら、圧力を上げる役割とされています。圧縮機は空気を押し縮めるので、タービンとは逆に、入口側の翼が長く、出口側の翼が短くなります。

図5:ガスタービンの中の動翼と静翼

同じ動翼・静翼でも、圧縮機とタービンでは働きが逆向きです。

圧縮機動翼が空気に勢いを与え、静翼が流れを軸方向に戻しながら圧力を上げる。入口側の翼が長い
タービン静翼が高温ガスの向きと速さを整え、動翼が回って圧縮機と発電機を回す。出口側の翼が長い
間に燃焼器(燃料を燃やして高温ガスをつくる)
高温側の翼を守る工夫中空にして冷却用の空気を通す/遮熱コーティング/ニッケル基の超耐熱合金・単結晶の動翼

※圧縮機とタービンは同じ軸でつながり、タービンの動力の一部で圧縮機を回します。

タービン側の1段目の静翼・動翼は、燃焼器を出たばかりの高温ガスにさらされ、三菱重工の JAC 形では、タービン入口温度(タービンに入る燃焼ガスの温度)が1,650℃級です。

翼の材料がそのまま耐えられる温度ではないため、高温側の翼は中を空洞にして、冷却用の空気を通します。JAC は「J-series Air-Cooled」の略で、三菱重工のカタログでは燃焼器を「強制空気冷却方式」としています。

表面には遮熱コーティング(TBC)を施し、三菱重工は J 形より厚くして遮熱性を高めたとしており、材料にはニッケル基の超耐熱合金を使います。

物質・材料研究機構(NIMS)によると、結晶の向きがそろった単結晶の動翼は亀裂が入りにくく、高温で大きな遠心力がかかる場所で使われています。

こうした翼の技術は、発電用ガスタービンを手がける重工メーカーの強みでもあります。主な会社はプラント業界の主要企業と勢力図で紹介しており、ガスタービンの理論サイクルはブレイトンサイクルで解説しています。

動翼と静翼のよくある質問

タービン翼と、風車やプロペラの羽根は何が違う?

風車は、ほぼ大気圧の風から1列の羽根でエネルギーを受け取りますが、蒸気タービンやガスタービンは、高い圧力の流れを扱います。

そのため、静翼と動翼を何段も重ねて、圧力を少しずつ使います。翼の断面が流れから力を受ける形(翼形)である点は共通です。

動翼が1列だけのタービンはある?

あります。ノズルから噴き出した蒸気を1列の動翼で受ける単式衝動タービンで、ド・ラバルが開発した形式であり、ド・ラバル・タービンとも呼ばれて小型のタービンに使われます。

構造は単純ですが、1段で扱える熱落差には限りがあります。大きな圧力差を使う発電用タービンは、静翼と動翼の段を何段も重ねた多段式が中心です。

まとめ

この記事のまとめ
  • タービンには動くブレード(動翼)と動かないブレード(静翼)がある
  • 静翼が流れの向きと速さを整え、動翼がその勢いを受けて軸を回す。交互に並べることで効果的に軸を動かせる
  • 英語では動翼が moving blade・rotor blade、静翼が stationary blade・stator blade。蒸気タービンでは静翼を nozzle とも呼ぶ
  • 衝動式は静翼だけで圧力を下げ、段数が少ない。反動式は動翼でも膨張し、段数が多い
  • ガスタービンは圧縮機にもタービンにも動翼・静翼があり、高温側の翼は冷却と遮熱コーティングで守られている

動翼と静翼は、エネルギーを生み出す発電の根幹を担うタービンの基本部品です。蒸気タービンのサイクル全体は、ランキンサイクルで整理しています。

点検の周期の決め方は設備保全のTBMとCBMの違いが参考になります。タービンに関わる仕事は、プラントエンジニアの仕事や製造業のエネルギー管理士の仕事で紹介しています。

出典

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MONOSCOPEの運営者

プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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