ブレイトンサイクルとは、ガスタービンやジェットエンジンの動きを、理想気体の4つの過程で表した理論サイクルです。燃料を燃やしてできたガスで、推進力や回転力を得る流れを式で扱えるようにしたモデルです。
理論熱効率は η=1−(1/φ)(κ−1)/κ で表され、圧力比φと比熱比κで決まります。空気を高い圧力まで圧縮するガスタービンほど効率がよい理由も、この式から読み取れます。
この記事では、基本サイクル、P-v線図とT-s線図、熱効率の式と導出、ほかのサイクルとの違い、仕事・再生サイクル・逆ブレイトンサイクルの順に整理し、この記事の内容は、動画でも解説しています。
ブレイトンサイクルとは?
ブレイトンサイクルは、2つの断熱変化と2つの等圧変化でできた理論サイクルです。断熱圧縮で空気を圧縮し、燃料を吹き込んで燃やし、断熱膨張で仕事を取り出します。
名前は、アメリカの技術者ジョージ・ブレイトンに由来し、ブレイトンは1872年に、圧縮した混合気を貯気槽から送り、炎を絶やさずに燃やし続けるエンジンの特許を取りました。
熱を受け取るときも捨てるときも圧力が一定なのが特徴で、教科書では「ジュールサイクル」とも呼ばれます。ブレイトンサイクルは、ガスタービンやジェットエンジンといった内燃機関の動きを理想化したもので、ガスタービンの理論サイクルは、このブレイトンサイクルです。
ブレイトンサイクルを理解すると、空気の圧力比を上げることが熱効率の向上につながることが分かります。
圧力比とは、圧縮機の入口の圧力に対する出口の圧力の比で、空気を送る機械の種類と圧力の違いは、ファンとブロアとコンプレッサーの違いで整理しています。
ブレイトンサイクルの基本サイクル
ブレイトンサイクルの基本は、次の4つの工程で表せます。ガスタービンでは、それぞれの工程を別々の機器が受け持ちます。
- 断熱圧縮:空気を圧縮機で圧縮する
- 等圧加熱:燃焼器で燃料と混ぜて燃やす
- 断熱膨張:タービンで仕事に変える
- 等圧放熱:排気する
空気は圧縮機→燃焼器→タービンと流れながら、状態1〜4を順に通ります。
※実機は空気を吸って排気する開放サイクルです。理論では、同じ作動ガスが回り続ける閉じたサイクルとみなし、大気への排気を「圧力一定で熱を捨てる過程」に置き換えます。
断熱圧縮
断熱圧縮の工程では、空気が圧縮機で圧縮されて高圧になり、その過程で温度も上がります。外との熱のやり取りはなく、圧縮機が加えた仕事がそのまま空気の内部エネルギーになり、次の燃焼に必要な高圧・高温の状態がここで整います。
圧縮機を回すには大きな動力が要るため、この工程はエンジン全体の効率に大きく影響します。
等圧加熱
等圧加熱の工程では、圧縮された空気が燃焼器に送られ、燃料と混ざって燃えます。ここで大量の熱エネルギーが生まれ、燃焼ガスは、圧力が一定のまま温度が上がり、体積が増えます。この熱が、次の膨張で仕事に変わるエネルギーの元になり、出力の大きさを左右します。
断熱膨張
断熱膨張の工程では、燃焼ガスがタービンに流れ込み、膨張しながら仕事をし、タービンはガスのエネルギーを回転運動に変えます。
この工程も外との熱交換はなく、ガスの温度と圧力は大きく下がります。タービンの翼の役割は、動翼と静翼の違いで詳しく扱っています。
ガスタービンでは、タービンが生んだ仕事の一部を、同じ軸につながった圧縮機を回すのに使います。残りが発電機を回す正味の出力です。
等圧放熱
等圧放熱の工程では、膨張後のガスが排気口から大気へ出ていき、理論サイクルでは、ガスが圧力一定のまま熱を捨てて、最初の状態に戻ると考えます。
サイクルを閉じるための最後の工程ですが、排気はまだ高温なので、その熱を回収すれば効率をさらに上げられます。圧縮空気の予熱に使う方法(再生サイクル)は、よくある質問で説明します。
ジェットエンジンは、大量の排気を進む向きとは逆に噴き出し、その反力で推力を得ます。航空機エンジンをつくる産業の全体像は、航空宇宙・造船業界の企業と仕事の流れで紹介しています。
一方、ガスタービンは燃焼ガスのエネルギーで軸を回し、発電機から電力を得ます。動きは、メーカーのEverllence(旧MAN Energy Solutions)が公開しているアニメーションで確認できます。
発電所では、ガスタービンの排気で蒸気をつくり、蒸気タービンでも発電するコンバインドサイクルが広く使われます。電気と熱の両方を使うコージェネとの違いは、コージェネレーションとコンバインドサイクルの違いで解説しています。
燃料をエンジンの外で燃やす蒸気機関との違いは、外燃機関と内燃機関の違いで整理しています。
ブレイトンサイクルのP-v線図、T-s線図
ブレイトンサイクルのP-v線図とT-s線図は、次のようになり、エネルギー管理士試験でもよく出題されます。
どちらの線図も、同じ状態点1〜4を同じ順番で回ります。1は圧縮機の入口、2は圧縮機の出口、3は燃焼器の出口(最高温度)、4はタービンの出口です。
圧力は、1と4が低い側、2と3が高い側でそろっています(P1=P4、P2=P3)。このため、圧力比は P2/P1=P3/P4 と、どちらの組で数えても同じになります。
P-v線図
ブレイトンサイクルのP-v線図(圧力-体積線図)は、縦軸に圧力P、横軸に作動ガスの体積vをとり、サイクル内のガスの状態変化を示す図です。

- 1→2 断熱圧縮:ガスの体積が減り、圧力が急に上がる
- 2→3 等圧加熱:燃焼で加熱され、圧力は一定のまま体積が増える。熱量Q1を受け取る
- 3→4 断熱膨張:ガスが膨張しながら仕事をし、圧力が下がって体積が増える
- 4→1 等圧放熱:排気として熱量Q2を捨て、圧力は一定のまま体積が減る
オットーサイクルと違い、熱を受け取る線と捨てる線が水平(圧力一定)になるのが特徴で、2→3で受け取ったQ1から、4→1で捨てたQ2を引いた分が動力に変わります。線図の4本の線で囲まれた面積が、1サイクルの正味の仕事 W=Q1−Q2です。
熱が出入りするのは等圧の2過程だけ。仕事が出入りするのは断熱の2過程だけです。
※ガスタービンのように流れながら仕事をする機械で考えた場合です。燃焼器と排気には仕事をする機械がないので、仕事の出入りはありません。P3=P2、P4=P1です。
T-s線図
ブレイトンサイクルのT-s線図(温度-エントロピー線図)は、縦軸に温度T、横軸にエントロピーsをとった図で、熱の出入りを読むのに向いています。

- 1→2 断熱圧縮:エントロピーは変わらず、温度が上がる(縦の直線)
- 2→3 等圧加熱:燃焼で温度とエントロピーがともに増える(右上がりの曲線)
- 3→4 断熱膨張:エントロピーは一定のまま、温度が下がる(縦の直線)
- 4→1 等圧放熱:温度とエントロピーがともに減って1に戻る
2→3と4→1の曲線は、それぞれ圧力P2とP1の等圧線です。高い圧力の等圧線ほど上側にあり、その間に断熱の縦線が2本入る形になります。
理想サイクルは可逆変化を仮定するので、T-s線図の面積を熱量として読め、2→3の曲線の下の面積がQ1、4→1の曲線の下の面積がQ2です。
その差である、4本の線で囲まれた面積が正味の仕事Wです。2つの断熱変化と2つの等圧変化があることを覚えておきましょう。面積で見た熱と仕事の関係を、式で表したものが次の熱効率です。
ブレイトンサイクルの熱効率
ほかの熱機関と同じく、熱効率はどれだけの熱を取り込み、どれだけの熱を捨てたかで決まります。熱効率は次の式で表せます。
この式をもとに、熱効率を高めるにはどうすればよいかを考えます。入熱も出熱も圧力一定の変化なので、Q1とQ2は次の式に置き換えられます。
オットーサイクルでは定容比熱cvを使いましたが、ここでは圧力一定なので定圧比熱cpを使います。2つの比熱の関係は、定圧比熱と定積比熱の違いを参考にしてください。この2式を最初の式に当てはめると、mとcpが消えて温度だけの式になります。
1→2が断熱圧縮、3→4が断熱膨張なので、温度と圧力の関係は次のようになります。
ここで、圧力比を P2/P1=P3/P4=φ とすると、T1〜T4は次の関係で表せます。
この式を代入して整理すると、最終的に熱効率は次の式で表せます。
この式から、ブレイトンサイクルの熱効率は圧力比φが大きいほど高くなることが分かります。途中の η=1−T1/T2 は、圧縮機の出口温度が高いほど効率がよいことも表しています。
熱量を温度に、温度の比を圧力比に置き換えると、圧力比と比熱比だけが残ります。
圧力比と熱効率の早見表(κ=1.4)
式に数値を入れると、空気(κ=1.4)での圧力比と理論熱効率の関係は次のようになります。
圧力比を上げるほど効率は上がりますが、伸び方はだんだん小さくなります。
※η=1−(1/φ)0.4/1.4 で計算した理論値です。効率が最大になる条件と、取り出せる仕事が最大になる条件は別です(よくある質問を参照)。
実際のガスタービンでは、圧縮機・タービンの効率や圧力損失があるため、熱効率はこれより低くなりますが、実機の数字は、よくある質問で紹介します。
オットー・ディーゼル・ブレイトンサイクルの違い
エネルギー管理士試験でよく出る3つの熱サイクルを比べると、いずれも圧縮と膨張は断熱変化で、熱を加える・捨てるときの変化の種類が違います。
ブレイトンサイクルだけが、熱を捨てるときも圧力一定です。
※いずれも比熱比κも効率に効きます。表は理論サイクルどうしの比較です。
ピストンで動くレシプロエンジンのモデルがオットーとディーゼル、回転する機械で連続して動くガスタービンのモデルがブレイトンです。それぞれの式の導出は、オットーサイクルとディーゼルサイクルの記事で解説しています。
ブレイトンサイクルのよくある質問
ブレイトンサイクルの仕事はどう求める?
正味の仕事は、タービンの仕事から圧縮機の仕事を引いて求め、式で書くと W=Q1−Q2 と同じ値になります。
空気(cp=1.005 kJ/(kg·K)、κ=1.4)で、T1=300 K、T3=1,500 K、φ=10 の場合を計算してみます。
この例では、タービンが生んだ仕事の約4割を圧縮機が使っています。実機では機器の損失が加わるため、この割合はさらに大きい値です。
圧力比は高ければ高いほどよい?
効率だけを見れば、理論上は圧力比が高いほど上がりますが、1 kgあたりに取り出せる仕事は、ある圧力比で最大になります。
タービン入口温度T3には、翼の材料が耐えられる上限があり、T3を固定したまま圧力比を上げると、圧縮機の出口温度T2がT3に近づき、加えられる熱も仕事も小さくなります。
この値は温度条件で変わり、タービン入口温度を上げられるほど、仕事が最大になる圧力比も、そのときの効率も上がります。
再生ブレイトンサイクル(ブレイトン再生サイクル)とは?
再生ブレイトンサイクルは、タービンの排気の熱で、燃焼器に入る前の圧縮空気を温めるサイクルで、熱を受け渡す熱交換器を再生器と呼びます。
燃焼器で加える燃料の熱が減るので、同じ仕事を少ない入熱で得られ、再生のない単純なサイクルが等圧放熱で捨てていた熱の一部を、使い直す形です。
タービンの排気(T4)で、圧縮機を出た空気(T2)を温めてから燃焼器へ送ります。
※図の温度は、排気の熱をすべて予熱に使える理想再生器を仮定した場合です。実際の再生器の温度効率は7割程度までが一般的です。
理想再生器を仮定すると、熱効率は次の式になります。圧力比だけでなく、最低温度T1と最高温度T3の比も効いてくるのが特徴です。
再生なしの式とは逆に、再生サイクルでは圧力比が低いほど効率が高くなります。圧力比が低いと T4 と T2 の差が大きく、回収できる熱が増えるためです。
この条件では、T2=T4 となるφ≒16.7 を超えると再生の効果がなくなり、仕事が最大になる圧力比と同じ値です。
逆ブレイトンサイクルとは?
逆ブレイトンサイクルは、ブレイトンサイクルを冷凍に使う向きで回すサイクルで、空気などのガスを圧縮して冷やし、膨張機で膨らませて低温をつくります。
日本冷凍空調学会は、空気冷凍サイクルを「ブレイトンサイクルの一種」とし、圧縮・放熱・断熱膨張・吸熱の4つの過程で説明しています。冷媒を蒸発・凝縮させず、ガスの温度変化(顕熱)だけで熱を運ぶ点が特徴です。
- 圧縮機:ガスを圧縮する(温度が上がる)
- 放熱器:圧力一定のまま、外へ熱を捨てて冷やす
- 膨張機:断熱膨張させ、温度を大きく下げる
- 吸熱器:圧力一定のまま、冷やしたい場所から熱を吸う
成績係数(COP)は蒸気圧縮式の冷凍機より劣りますが、−60℃以下の低温域では実用上の差がなくなり、コスト面で有利とされます。
実際のガスタービンの熱効率は?
発電用の大型ガスタービンでは、圧力比24程度の機種があります。たとえばシーメンス・エナジーのSGT5-9000HLは、圧力比24.0で単純サイクルの効率が43%超です(ISO条件・発電端の公表値)。
三菱重工のM501JAC、GE Vernovaの9HA.02も、単純サイクルの効率は44.0%と公表されており、同じ圧力比の理論熱効率は、κ=1.4で約60%です。実機が理論値を下回るのは、理想サイクルの仮定と実機が違うためです。
- 断熱で損失のない圧縮・膨張 → 実機の圧縮機・タービンには効率(損失)がある
- 圧力一定の加熱・放熱 → 実機では燃焼器や吸排気のダクトで圧力が下がる
- 作動ガスはすべて仕事をする → 実機では翼を冷やすために圧縮空気の一部を使う
- 比熱は一定 → 実機の燃焼ガスは高温ほど比熱が変わる
一方、ガスタービンの排気は600℃台と高温で、この排熱で蒸気タービンも回すのがコンバインドサイクルです。三菱重工・GE Vernova・シーメンス・エナジーの最新機種は、いずれも64%超の発電効率を公表しています。
大型ガスタービンをつくる重工メーカーの顔ぶれは、プラント業界の主要企業と勢力図で紹介しています。
同じ温度範囲で最も効率が高いのはカルノーサイクルで、T1=300 K、T3=1,500 K なら 1−300/1500=80%になります。ブレイトンサイクルは、熱を受け取る間に温度が変わる分だけ効率が低くなり、詳しくはカルノーサイクルとはで解説しています。
まとめ
- ブレイトンサイクルは、ガスタービンやジェットエンジンの理論サイクル(ジュールサイクルとも呼ぶ)
- 2つの断熱変化と2つの等圧変化から成り立つ
- P-v線図・T-s線図で囲まれた面積が、1サイクルの正味の仕事 W=Q1−Q2
- 理論熱効率は η=1−(1/φ)(κ−1)/κ。圧力比φが大きいほど熱効率が高くなる
- 排気の熱で圧縮空気を温める再生サイクルは、T4>T2のときに効率を上げる
ブレイトンサイクルも、P-v線図やT-s線図の形と意味を理解しておきましょう。試験と仕事の関係は製造業のエネルギー管理士の仕事で紹介しています。
熱サイクル全体の位置づけは熱機関とはで、工場で熱を効率よく使う考え方は工場の省エネとエネルギー管理の基本で整理しています。
出典
出典・参考資料(7件)を開く出典・参考資料を閉じる
- ブレイトンの特許:George B. Brayton「Improvement in Gas-Engines」米国特許 US125166(1872年4月2日)
- 熱効率・正味仕事・最大仕事の条件・別名(Joule cycle):MIT 16.Unified「Thermodynamics 3.7 Brayton Cycle」
- 再生サイクル・再生器の温度効率・圧縮機の動力比:University of Waterloo ME354「Brayton Cycle」講義資料
- 空気冷凍サイクル:日本冷凍空調学会「最近気になる用語 41 空気冷凍サイクル」
- SGT5-9000HL の圧力比・効率:Siemens Energy「HL-class gas turbines」ファクトシート(2021年)
- M501JAC の効率・排気温度:三菱重工「M501J Series」
- 9HA の効率:GE Vernova「9HA gas turbine」
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