サイフォン管(サイホン管)とは?圧力計に付ける理由と原理・種類・水の入れ方

保温された蒸気配管に元弁と渦巻き形のサイフォン管を介して付いた圧力計

サイフォン管(サイホン管)とは、蒸気など高温の配管と圧力計の間に取り付ける、ループ状やU字状に曲げた細い管で、中にたまった水が高温の蒸気を圧力計まで届かせません。

圧力計には使える温度の上限があり、値は機種ごとに仕様書で決まっています。蒸気の温度はその上限を大きく超えるため、蒸気の圧力を測るときはサイフォン管がほぼ欠かせません。

この記事では、サイフォン管の役割と原理、何℃から必要かの目安、本式・O型・U型の種類、水の入れ方と取り付けの注意の順に整理します。

目次

サイフォン管の役割

サイフォン管の役割は、蒸気など高温流体の圧力を測るときに、圧力計やセンサーへ耐熱温度以上の熱をかけないことです。

圧力計や圧力センサーには、超えると壊れたり指示が狂ったりする温度の上限があり、蒸気配管にそのまま付けると熱で内部の部品を傷めてしまいます。

上限の一例として、TLV が扱うブルドン管圧力計 BU形(大東計器製作所製)の使用温度は−5〜80℃で、仕様書には「80℃以上のときはサイフォン管を使用」と書かれています。

電子式の圧力センサーも考え方は同じで、アズビルの圧力センサ PY7100A は、蒸気を測るときはサイホン管などで測定温度を70℃以下にするよう求めています。

規格にも定めがあり、JIS B 7505-1(ブルドン管圧力計)の使用上の注意(箇条16)は、高温の測定媒体にはサイホンなどで温度の影響を少なくするという記載があります。ブルドン管の仕組みや目盛の読み方は、連成計と圧力計の違いの記事で整理しています。

図1:圧力計まわりの「温度の数字」とその意味

同じ「℃」でも、規格・計器・センサーで数字の意味が違います。

温度の数字
その数字の意味
JIS B 7505-1
(ブルドン管圧力計)
周囲温度・圧力媒体温度 −5〜+45℃
精度などを決める「定格条件」。使える上限そのものではない
ブルドン管圧力計
TLV BU形の例
使用温度 −5〜80℃
この機種で使える範囲。80℃以上はサイフォン管を使うよう指定
圧力センサ
アズビル PY7100A の例
蒸気では測定温度70℃以下
サイホン管や接続配管を長くして、検出部の温度を下げる指定
蒸気配管
大気圧で100℃、加圧するとさらに高い
計器の上限を超えるので、直接は付けない

※上限は機種ごとに違います。必ず使う圧力計・センサーの仕様書で確かめてください。出典:JIS B 7505-1:2017 8.1・16、TLV BU形仕様書、アズビル AI-4539。

サイフォン管を付けると、熱は次のように伝わります。

サイフォン管で蒸気140℃が水と空気を挟んで圧力計側30℃まで下がる模式図

サイフォン管は、圧力計の手前に凝縮水がたまるよう管をループ状に曲げてあるため、熱の伝わり方は蒸気→水→空気の順になり、高温の蒸気でも圧力計にはあまり熱が届きません。管の中の水や空気は流れがなく、蒸気のように凝縮して熱を運ぶこともないため、熱抵抗(熱の伝わりにくさ)が大きくなります。

図2:サイフォン管の中で熱が伝わる順番

配管側から圧力計側へ、熱を通しにくい層が重なります。

蒸気配管(例:約140℃)高温の蒸気がサイフォン管の入口まで来る
冷えて凝縮
ループにたまった水流れのない水。蒸気はここより奥へ入れない
熱が伝わりにくい
計器側の空気動かない空気。熱伝導率は水の20分の1以下
わずかな熱だけ
圧力計(例:約30℃)使用温度の上限より低く保たれる

※温度は一例です。実際の下がり方は、パイプの径・肉厚・長さ、室温、湿度などで変わります(旭計器「サイフォンパイプ」カタログ)。

サイフォン管を使っても圧力計の耐熱温度まで下がらない流体もあります。その場合はループが二重になった二重巻サイフォンを使ったり、接続配管を長くしたりします(アズビルの取扱説明書)。

温度の下がり方の目安は、旭計器のカタログのグラフが参考になります。蒸気圧を測る一例(室温17℃・24℃)で、サイフォンパイプの温度は配管側の約140℃から計器側で20〜30℃程度まで下がっています。

⇒ 旭計器工業「サイフォンパイプ」カタログ(外部リンク)

このグラフは条件を決めた一例で、性能の保証値ではありません。冷却効果はパイプの径・肉厚・長さ、室温、湿度で変わる、とカタログにも注記があります。

サイフォン管の仕様には、最高使用圧力と使用流体温度の上限が書かれています。仕様の範囲を超えて使わないのが原則で、長野計器も範囲外で使うと破損やけがの原因になるとしています。

条件が仕様に収まらないときは、自己判断で使わずメーカーに相談します。旭計器の二重巻のように、特別仕様で対応できる場合もあります。

【参考】熱伝導率常温付近の目安
水約0.61 W/(m·K)
空気約0.026 W/(m·K)

水も熱を通しにくい物質ですが、動かない空気は水の20分の1以下しか熱を通しません。圧力計のすぐ手前にこの空気の層があるため、残った熱も圧力計まで届きにくくなります。

熱の伝わりやすさの考え方は熱伝導率と熱伝達率の違い、電子式センサーの仕組みは圧力センサーの測定原理で解説しています。

サイフォン管の原理(なぜ温度が下がるのか)

サイフォン管で温度が下がる理由は、次の3つに分けられます。

図3:サイフォン管で温度が下がる3つの理由

蒸気を止め、熱を通しにくくし、管の外へ逃がします。

01蒸気が水に変わって止まる管の中で冷えた蒸気は凝縮水になってループにたまる。高温の蒸気はそれより奥に入れない
02動かない水と空気が熱を通しにくい流れがないので熱を運ばない。計器側の空気は水よりさらに熱を通しにくい
03管の表面から放熱する細い管の表面から周りの空気へ熱が逃げる。巻いた分だけ放熱する長さが増える
圧力は止まらない:たまった水が配管の圧力を受け、そのまま圧力計へ伝える

※出典:WIKA データシート AC 09.06(凝縮水が高温の媒体の侵入を防ぐ)、旭計器「サイフォンパイプ」カタログ(通過させて放熱させる)。

1つ目が中心の働きで、WIKA のデータシートにも、サイフォン管の中に凝縮水がたまり、高温の媒体が計器に入るのを防ぐと書かれています。

温度は下がっても圧力はそのまま伝わり、液体は受けた圧力を同じ大きさで伝えるので、ループの水を挟んでも圧力計は配管の圧力を指します。名前は同じでも液体を高い所越しに移す「サイフォンの原理」とは仕組みが違い、サイフォン管の水は流れずにたまったまま熱を遮ります。

脈動(圧力の細かな揺れ)を和らげる働きもあり、旭計器や WIKA のカタログには、高温に加えて脈動や急な圧力変動から計器を守る用途が書かれています。

サイフォン管の種類

サイフォン管には次のような種類があり、熱を下げる考え方はどれも同じで、主に取り出しの向きや設置場所で使い分けます。

ただし最高使用圧力は製品で大きく違います。販売サイトの商品仕様では、右下精器製造の本式サイホン管が20MPa、O型・U型メートルパイプは1MPa、第一計器の U型メートルパイプは0.5MPaです。

形だけで決めず、圧力の取り出しの向き、取付け姿勢、設置スペース、圧力計の仕様と照らし合わせて選びます。呼び名もメーカーで違い、サイフォンパイプ(旭計器工業)、パイプサイホン(長野計器)、メートルパイプ(右下精器製造)などの名前で売られています。

図4:サイフォン管の形と、向いている取り出し方

WIKA は、ドイツの規格 DIN 16282 の形を取り出しの向きで使い分けるとしています。

U形水平の取り出し向け。垂直配管の側面から横に出し、U字で折り返して上の圧力計へ
ラッパ形(巻き形)垂直の取り出し向け。水平配管の上から立ち上げ、輪のように巻いてから圧力計へ
コンパクト形長さを抑えた形。振動の影響を小さくしたい場所や、高さに余裕がない場所に

※出典:WIKA データシート AC 09.06(Model 910.15)。図は形の模式で、寸法は製品ごとに違います。国内の「本式・O型・U型」は商品名で、形の細部はメーカーのカタログで確かめてください。

本式サイフォン

よく使われる構造で、圧力計とセットで用意されている例もあります(TLV の BU形圧力計のオプション「セット品」など)。

右下精器製造の本式サイホン管はステンレス製で最高使用圧力20MPaと、同社の O型・U型メートルパイプより高い圧力に使える仕様です。形の細部はメーカーで違うので、カタログの外形図と仕様で確かめて選びます。

O型サイフォン

配管を一周回したタイプで、右下精器製造は O型メートルパイプを「放熱用タテ型パイプ」としています。輪のように巻いた形は WIKA も垂直に取り出す場所向けとしており、水平配管の上向きの取り出し口にまっすぐ立てて付けられます。

U型サイフォン

U字構造になっており、垂直配管に付けると見栄えがよくなります。

第一計器は U型メートルパイプを「放熱用ヨコ型パイプ」とし、WIKA も U形を水平の取り出し向けとしており、垂直配管の側面から横に出した取り出し口に合わせやすい形です。

二重巻と材質・仕様の確認

二重巻はループを2重にして、冷やす距離を長くしたタイプで、旭計器工業では、一重巻に対する特別仕様として扱っています。

どの形でも、選ぶ前に仕様書で次の項目を照らし合わせます。

  • 流体の最高温度と最高圧力が、サイフォン管の使用温度・最高使用圧力に収まるか
  • 材質(ステンレス・鉄など)が流体と設置環境に合うか
  • 圧力計側・配管側の接続ねじの種類と大きさ
  • コック(弁)付きか、コックなしか
  • サイフォン管を通したあとの温度が、圧力計・センサーの使用温度に収まるか

数値の例を挙げると、旭計器工業のサイフォンパイプはステンレス製で、最高使用圧力20MPa・使用流体温度350℃以下です。

アズビルのステンレス製サイホン管は、コックなしが350℃以下・20MPa、コック付きは200℃以下・3MPaです。保守に便利なコック付きは、使える温度・圧力が下がる例があります。

配管計装図(P&ID)では、圧力計の取り出しと元弁の位置が記号で描かれます。図面からの読み取り方はP&IDの読み方で整理しています。

サイフォン管の水張りと取り付けの注意

サイフォン管は、買ってすぐの状態では中に水が入っていないため、次の手順で水を入れてから使います。手順は一般的な例で、機器の取扱説明書と現場の作業手順を優先してください。

  1. 取り付ける前、または元弁を閉じて圧力が抜け、管が冷えたことを確かめてから、サイフォン管のループ部分に水を入れておく
  2. 圧力計を取り付け、元弁をゆっくり開ける(急に開けると、水が入っていない場合に蒸気が圧力計まで届くおそれがある)
  3. 長く止めていた後や、点検で圧力計を外した後は、水が抜けていることがあるので入れ直す

水を入れ忘れても、運転中に蒸気が冷えて水がたまれば同じ働きになります。ただ、それまでの間は圧力計に高温がかかるため、最初に水を入れておくのが安全です。

メーカーも同じ考えで、WIKA のデータシートは、使用開始前にサイフォン管を冷却用の液で満たすよう勧めています。

図5:サイフォン管の水の入れ方

水は圧力計を付ける側の口から入れ、ループを満たしてから圧力をかけます。

01元弁を閉じる配管の取り出し口の元弁(コック)を閉じ、圧力が抜けて管が冷えたことを確かめる
02ループに水を入れる圧力計を付ける側の口から水を注ぎ、ループ部分を満たす
03圧力計を取り付ける接続ねじを締め、漏れがないようにする
04元弁をゆっくり開ける急に開けず、圧力計の針がゆっくり上がるのを確かめる
長く止めた後・圧力計を外した後は、水が抜けていることがあるので入れ直す

※設備や弁の構成によって安全な手順は変わります。機器の取扱説明書と現場の作業手順を優先してください。

取り付けでは、次の点にも気をつけます。

  • サイフォン管は垂直に取り付ける(アズビルの取扱説明書)
  • サイフォン管には保温材を巻かない。表面から放熱して温度を下げる部品なので、アズビルも「絶対に保温しない」としている
  • 振動がある場所では、サイフォン管に無理な力がかからないよう支持する
  • 運転中は管が高温になるので、素手で触らない
  • 取り出し口に元弁(ストップバルブ)を設ける(アズビル)。圧力計とサイフォン管の間にもバルブかコックがあると、点検や校正で圧力計を外しやすい(長野計器のパイプサイホン取扱説明書)
  • 屋外や冬場は、中の水の凍結に気をつける(TLV の仕様書にも「凍結なきこと」とある)

圧力計を外すときは、必ず元弁を閉じてから作業します。配管の圧力を抜いて作業する考え方は、ロックアウト・タグアウト(LOTO)の手順が参考になります。

圧力計は点検や校正で外す機会があり、そのたびに水の入れ直しが必要です。点検の間隔の決め方は計測器の校正周期の記事を参考にしてください。

サイフォン管のよくある質問

サイフォン管は何℃から必要ですか?

決め手は、使う圧力計・センサーの仕様書にある使用温度です。TLV の BU形のように「80℃以上はサイフォン管」と指定する圧力計があり、80℃はひとつの目安になります。

JIS B 7505-1 の−5〜+45℃は精度などを決める定格条件であり、使える温度の上限とは意味が違うので混同しないようにします。

サイフォン管に入れるのは水でよいですか?

蒸気配管では水を入れるのが一般的で、運転中にループにたまるのも蒸気が冷えてできた水です。WIKA は「冷却用の液」と書いており、凍結のおそれがある場所などでは、入れる液をメーカーに相談します。

電子式の圧力センサー(圧力伝送器)にも必要ですか?

必要です。アズビルの PY7100A は、蒸気を測るときにサイホン管などで測定温度を70℃以下にするよう求めています。

電子式は 4-20mA の電流信号で圧力を送る機種が多く、検出部が熱で傷むと信号そのものが狂います。

冷水の配管にもサイフォン管を使いますか?

使う例があります。アズビルは、冷水やブラインの配管にセンサーを直接付けると、検出部が結露して故障の原因になるとしています。

そのためサイホン管を挟んでセンサーを周囲の温度に近づけるよう指定しており、高温を下げる蒸気の場合とは逆向きの使い方です。

まとめ

この記事のまとめ
  • サイフォン管(サイホン管)は、高温流体の圧力を測るときに圧力計と配管の間に付ける、曲げた細い管
  • ループにたまった水と計器側の空気が熱を通しにくくし、管の表面からも放熱する
  • 必要かどうかは圧力計の使用温度で決まり、「80℃以上はサイフォン管」と指定する機種がある
  • 本式・O型・U型などの種類があり、取り出しの向き・設置スペース・最高使用圧力で選ぶ
  • 購入直後は水が入っていないので、使う前に水を入れ、元弁はゆっくり開ける

購入直後のサイフォン管には水が入っていないため、最初に水を入れ、運用を間違えて圧力計を故障させないよう注意しましょう。

圧力計まわりでは、グリセリン入り圧力計を使う理由もあわせて読むと理解が深まります。温度の計測は温度計の種類と測定原理や熱電対と測温抵抗体の違いで整理しています。

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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