ボイラーのブローとは、ボイラー内の水(缶水)の一部を外へ抜き、不純物の濃縮や底にたまった沈殿物を取り除く操作で、「吹出し」とも呼ばれ、ボイラーの運転に欠かせない作業の一つです。
ブローには、運転中ずっと少しずつ抜く連続ブローと、底から短時間にまとめて抜く缶底ブロー(間欠ブロー、管底ブローとも書かれます)の2種類があります。
この記事では、連続ブローの役割と必要な量、連続ブロー装置の仕組み、缶底ブローとの違いを順に見ます。そのうえで、ブロー量と逃げる熱の計算、ブローをしないとどうなるかを整理します。
連続ブローとは
連続ブローとは、缶水の中で不純物が濃くなるのを防ぐため、缶水の一部を連続的に外へ排出することです。
一般的には、電磁弁や電動弁などの自動弁を一定の周期で開閉させて、ブロー量を制御します。負荷がいつも一定の大型ボイラーでは、手動弁の開度を固定して連続ブロー量を調整することもあります。
ボイラーは水を蒸発させて蒸気をつくるため、蒸気として出ていくのは水だけです。給水に含まれる微量の不純物は缶水の中に残り、ブローをしなければ少しずつ濃くなっていきます。
濃縮するのは、カルシウムやマグネシウム(硬度成分)、シリカ(SiO2)などの不純物で、これらは伝熱面にスケールとして付き、伝熱の低下や、過熱による焼損のリスクを高めます。
缶水の濃縮は、伝熱面と蒸気側の両方に影響します。
※どれがどの程度起きるかは、給水の水質・水処理の方法・ボイラーの形式で変わります。
連続ブローで抜く水は、ボイラーと同じ圧力の飽和水(沸点の熱水)です。熱をたくさん持っているため、ブロー水の熱回収はボイラー周りの省エネ対策としてよく話題に上がります。
連続ブローが足りないと、フォーミング(泡立ち)などで缶水が蒸気配管へ持ち出されるキャリーオーバーのリスクも増えます。泡立ちの仕組みはプライミングとフォーミングの違いで整理しています。
連続ブローの必要量
どの程度連続ブローをするかは、缶水の導電率(電気の通しやすさ)とpHで決めます。溶けている不純物が多いほど導電率は高くなるため、濃縮の度合いを見る目安になります。
管理値の基準は、JIS B 8223「ボイラの給水,ボイラ水及び蒸気の質」(最新は2021年改正)に決められており、ボイラーの形式、圧力、補給水の種類ごとに別々の表になっています。
たとえば、工場でよく使われる多管式の小型貫流ボイラー(JIS では多管式特殊循環ボイラ)で軟化水を使う場合の管理値は、次のとおりです。
圧力が高いほど、導電率の上限は低くなります。
※JIS B 8223:2021 の多管式特殊循環ボイラの表(環境省の資料に掲載)から抜粋。丸ボイラー(炉筒煙管ボイラーなど)や水管ボイラー、イオン交換水を使う場合は別の表で、丸ボイラーは伝熱面蒸発率(伝熱面1m²あたりの蒸発量)でも区分されます。
実際の管理値は、ボイラーの種類・圧力・水処理の方法で変わるため、まずはメーカーの取扱説明書の値に従ってください。
pHは基準の範囲に収めることで配管や缶体の金属が溶け出すのを防ぎ、導電率は基準より低く抑えて不純物の濃縮を防ぎます。測定値が管理値を外れたときは、ブロー量だけでなく給水側の水質(硬度など)もあわせて確かめ、原因の切り分けはメーカーや水処理の担当と相談するのが確実です。
ブローの量はブロー率で表し、この記事ではブロー量を蒸発量で割った値をブロー率とします。
ただし、資料によっては給水量(=蒸発量+ブロー量)を分母にするものもあります。環境省の試算、中小機構の省エネQ&A、米国エネルギー省の資料は給水量を基準にしているので、数字を比べるときは分母を確かめてください。
適正なブロー量は、給水の水質と水処理の方法、缶水の管理値で大きく変わるため、決まった「標準のブロー率」はありません。給水が純水に近い(不純物が少ない)ほど、必要なブロー量は小さくなります。
公的資料では、給水量に対して4〜8%(米国エネルギー省)、5〜10%程度(中小機構)が目安として示されています。環境省の試算例でも、8%や11%といった値が使われています。
メーカーごとに、ボイラーの型式によって適正なブロー率の目安を決めていることが多くあります。自分のボイラーの値は、取扱説明書と日々の水質記録で確かめます。
連続ブロー装置とは(仕組み)
連続ブローの水質測定とブロー量の調整は、ユニットになった「連続ブロー装置」で行うのが一般的です。缶水はボイラーと同じ圧力・温度でそのままでは測定センサーの耐熱温度を超えてしまうため、ブロー水の一部を取り出し、熱交換器で冷やしてから測る機構になっているものが多いです。
測る、調整する、熱を取り戻す、を1つのユニットで行います。
※構成はメーカー・機種で異なります。熱回収の機器を持たない簡易なものもあります。
複数のメーカーが製品を出しているので、更新や増設の際はカタログで構成を比べます。センサーの測定原理は、導電率計の原理と注意点とpH計の原理と注意点で詳しく解説しています。
連続ブローと缶底ブローの違い
ボイラーのブローには、連続ブローのほかに缶底ブローがあります。2つの違いは次のとおりです。
- 連続ブロー:運転中に常時排出するもの
- 缶底ブロー(間欠ブロー):運転前や低負荷時、停止時などに、缶底にたまったスラッジ(沈殿物)を短時間で排出するもの
目的も、抜く場所も、タイミングも違います。
缶底ブローは、連続ブローでは排出できない、缶底にたまったスラッジ(沈殿物)を取り除く作業です。連続ブローは水面近くの水を抜くため、底に沈んだ泥状の物までは出せません。
上から順に、蒸気・水面・缶水・缶底と並びます。
缶底ブローは、運転前・停止時・負荷が低いときに行うのが基本です。中小機構の資料でも、間欠(缶底)ブローは停止時に行う操作として説明されており、回数や1回の時間はボイラーと水質で違うので、取扱説明書と現場の手順書に従います。
連続的に行うわけではありませんが、1回に排出する量が多いため、缶底ブローをするとボイラー室の周りに多量の湯気が上がります。
ブロー量の計算例と、ブローで逃げる熱
例として、蒸発量2,000kg/h、ブロー率3%のボイラーを考えます。ブロー量は次のとおりです。
ブロー水はボイラー圧力の飽和水なので、熱を持ったまま捨てることになります。比エンタルピーは、水1kgが持つ熱量を表す値です。
圧力0.8MPaG(飽和水の比エンタルピー約743kJ/kg)、給水温度20℃(約84kJ/kg)とすると、ブローで失う熱は次のとおりです。
一方、蒸気をつくる熱は次のとおりです(0.8MPaGの飽和蒸気は約2,773kJ/kg)。
ブロー率が高いほど、この損失は比例して増えます。同じ条件でブロー率だけを変えると、次のようになります。
ブロー率10%では、蒸気をつくる熱の約2.5%を捨てる計算です。
※0.8MPaG・給水20℃、ブロー率は蒸発量に対する割合、熱回収なしとして蒸気表(IAPWS-IF97)の値で計算。割合はブローで逃げる熱÷蒸気をつくる熱です。
そこで、連続ブロー水はフラッシュタンクで低圧蒸気として回収したり、熱交換器で給水を予熱したりして、熱を取り戻します。
フラッシュタンクは、高圧の熱水を減圧して一部を蒸気に変える容器です。0.8MPaGの飽和水を0.1MPaGまで下げると、蒸気表の計算では約1割が低圧蒸気になります。
環境省の資料では、ブロー率10%のブロー水を補給水と熱交換(熱交換効率50%)すると、投入した燃料の熱の約1%を回収できる試算が示されています。
給水を温めて燃料を減らす考え方は、排ガスの熱を使うエコノマイザ(節炭器)と同じです。回収した低圧蒸気は、給水の脱気に使われることもあります。脱気の仕組みは脱気器(デアレーター)とはで整理しています。
ボイラーの能力を比べるときは、圧力や給水温度をそろえた相当蒸発量(換算蒸発量)を使います。ブローの熱を含めた工場全体の熱の流れは、工場の省エネとエネルギー管理の基本もあわせて読むとつかみやすくなります。
よくある質問
ボイラーのブローをしないとどうなる?
缶水の不純物が濃くなって伝熱面にスケールが付き、スケールは熱を通しにくいため、燃料が余計にかかります。
さらに、管や胴の金属が過熱して膨らんだり破れたりする原因になります。泡立ち(フォーミング)や水滴の持ち出し(キャリーオーバー)も起きやすくなり、蒸気配管・過熱器・タービンや製品側を汚します。
ブローは多いほど安全?
多すぎると、上の計算のとおり熱・水・水処理薬品をそのまま捨てることになります。導電率やpHが管理値に収まる最小のブロー量にするのが基本です。
環境省の資料でも、水質を管理してブローの割合を8%から4%に下げると、燃料を約4%減らせる試算が示されています。
間欠ブローとは?
缶底ブローのことで、連続ではなく決まったタイミングで吹出し弁を開けて短時間に排出するため、間欠ブロー(間欠吹出し)とも呼ばれます。「管底ブロー」と書かれることもあります。
缶底ブローはいつ行う?
運転前、停止時、負荷が低いときに行うのが基本で、回数や時間は取扱説明書と現場の手順書に従います。
連続ブローと缶底ブローは両方必要?
役割が違うため互いの代わりにはならず、連続ブローは水面近くの濃くなった缶水を抜き、缶底ブローは底に沈んだスラッジを抜きます。
ただし、どちらを中心にするかはボイラーの容量と運転のしかたで違い、中小機構の資料では、連続ブローは中容量以上や連続運転のボイラーで行うと整理されています。間欠ブローは、小型貫流ボイラーや炉筒煙管ボイラーなど小容量のボイラーで行う操作です。
まとめ
- ボイラーのブローとは、缶水の一部を抜いて不純物の濃縮や沈殿物を取り除く操作
- 連続ブローは、運転中に水面の少し下から缶水を抜き、濃縮を防ぐ
- 必要量は導電率とpHで決まる。管理値は JIS B 8223 とメーカーの取扱説明書で確かめる
- 缶底ブローは、缶底にたまったスラッジ(沈殿物)を運転前・低負荷時などに短時間で抜く
- ブロー水は熱を持った飽和水。管理値に収まる最小の量にし、フラッシュタンクや熱交換器で熱を回収する
高温の缶水をそのまま捨てるのは無駄に見えますが、適正なブローをしなければ弊害が多く、補修のコストもかかります。適正な連続ブローは必須です。
ボイラーの周りに行く機会があれば、どれが連続ブローの配管なのか確かめてみてください。P&ID(配管計装図)の読み方を知っておくと、図面と現場の表示、取扱説明書を突き合わせて見つけやすくなります。
ボイラーの全体像はボイラーとは何かで解説しています。ボイラーの省エネを担う仕事については、製造業のエネルギー管理士の仕事もあわせてご覧ください。
出典
出典・参考資料(6件)を開く出典・参考資料を閉じる
- JIS B 8223:2021 の名称・改正日:日本規格協会「JIS B 8223:2021 ボイラの給水,ボイラ水及び蒸気の質」プレビュー
- 管理値の表・ブロー割合の試算:環境省「ボイラー給水の水質の適切な管理」(温室効果ガス排出削減等指針 対策メニュー)
- ブローの熱損失・ブロー量の適正化:環境省「熱源機のブロー量の適正化」
- ブロー水の熱回収:環境省「蒸気ドレン等の熱回収装置の導入」
- ブローダウン比(給水量基準)・連続/間欠ブローの使い分け:中小機構 J-Net21「実運転でのボイラー熱効率を求める方法を教えてください」
- ブロー率の目安(給水量基準):U.S. Department of Energy「Minimize Boiler Blowdown」(Steam Tip Sheet #9)
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