計装空気(計装エア)とは?雑用空気との違い・品質基準・使い分け

コンプレッサー室の吸着式エアドライヤーとフィルター、配管

計装空気(計装エア、計装用空気)とは、調節弁や空気式の計器を動かすために、油・水分・ごみを取り除き、圧力を安定させた圧縮空気です。

プラントの圧縮空気は、大きく計装空気と雑用空気の2つに分けて設計し、雑用空気は、掃除や攪拌、冷却などに使う、それ以外の圧縮空気です。

この記事では、計装空気に求められる品質と設備、雑用空気との違いと使い分け、止まったり汚れたりしたときの影響を順に整理します。計装用空気圧縮機(計装コンプレッサー)の選び方は、最後のよくある質問でも答えます。

目次

計装空気とは

計装空気は、制御弁の駆動や流量計などの計装機器に使用される圧縮空気のことで、英語ではinstrument airと呼びます。

どこまできれいにするかは一律ではなく使う機器と設計の基準で決め、計装空気には、次の3つが求められます。

  • 圧力が一定で変動がないこと
  • オイル、水分、ダストなどが混じらないこと
  • 非常時も止めてはいけないこと

計装空気は、弁や計器を動かすための大切な動力であるため、圧力が常に一定で不純物のないクリーンエアであることが求められます。

図1:計装空気が使われる機器

計装空気は、弁を動かしたり計器を働かせたりする「動力」として配られます。

計装空気の配管(ヘッダー)レシーバタンク・ドライヤー・フィルターを通った空気
各計器へ分岐
調節弁ポジショナが4-20mAを受け、空気圧で開度を調節
オンオフ弁電磁弁で空気を切り替え、弁を全開・全閉
測定計器類空気式の計器や、空気を使う測定器

※旧来の空気式の調節計・伝送器では、空気の圧力そのものを信号として使います。

代表的な使い先が調節弁で、ポジショナという部品が4-20mAの電気信号を受け取り、計装空気の圧力に変えて弁を動かします。

例えばSMCの電空ポジショナIP8000シリーズは、入力がDC4〜20mA、供給空気圧が0.14〜0.7MPaです。電気信号の決まりは4-20mAを使う理由の記事で整理しています。

計装空気で制御弁が動く仕組みは、制御弁が動く仕組みの記事をご覧ください。弁の開き方と流量の関係は、イコールパーセント特性とリニア特性の違いで解説しています。

「不純物がない」の中身は、国際規格のISO 8573-1(日本ではJIS B 8392-1)で数字にでき、固形粒子・水分・油分の3つを等級で表し、数字が小さいほどきれいな空気です。

図2:ISO 8573-1(JIS B 8392-1)の清浄度等級

「粒子:水分:油分」の順に等級を並べて、1:2:1のように表します。

等級
粒子(1〜5µm、個/m³)
水分(圧力下露点)
油分(mg/m³)
1
10以下
−70℃以下
0.01以下
2
100以下
−40℃以下
0.1以下
3
1,000以下
−20℃以下
1以下
4
10,000以下
+3℃以下
5以下
5
100,000以下
+7℃以下
―
6
質量で5mg/m³以下
+10℃以下
―

※ISO 8573-1:2010(JIS B 8392-1:2012)。粒子は1〜5µmの個数のみ抜粋しています。等級1〜3は1µm未満の粒子数も決められ、等級6からは粒子を質量濃度で表します。油分はエアロゾル・液体・蒸気の合計です。等級0は、使用者や供給者が等級1より厳しく指定するものです。

計装空気の等級は法律で一律に決まっていないため、使う機器の仕様から逆算して決めます。流れは次のとおりです。

  • 使う計器・ポジショナの仕様書で、求められる空気の質を確かめる
  • 配管が通る場所の最低温度(冬の屋外など)を確かめ、露点を決める
  • 粒子・水分・油分を等級で仕様書に書き、ドライヤーとフィルターを選ぶ

目安になるのが、国際計測制御学会(ISA)の規格ISA-7.0.01-1996です。ライン圧力での露点は配管がさらされる最低温度より10℃以上低くし、粒子は40µmまで、油分は1ppm以下と定めています。

日本のメーカーでは、オリオン機械のカタログが「計装用」を、圧力下露点−40℃・ろ過度0.01µmの低露点クリーンエアーの用途例に挙げています。こうした空気は、コンプレッサーの後ろに複数の機器を並べてつくります。

図3:計装空気をつくる設備の流れ(構成例)

圧縮してから、熱・水・油・ごみを順に取り除いて配ります。

01コンプレッサー空気を圧縮する。オイルフリー式か、給油式+油分フィルター
02アフタークーラー熱くなった空気を冷やし、出てきた水(ドレン)を落とす
03レシーバタンク空気をためて圧力の変動をならし、停止時の余裕もつくる
04ドライヤー(除湿器)水分を取る。低い露点が要る計装空気は吸着式が多い
05フィルターごみ・油の霧を取る。0.01µm級のフィルターを重ねることも
06計装空気ヘッダー減圧弁で圧力を整えて各計器へ配る

※機器の並び順や台数は設備ごとに違います。オリオン機械は、圧力や使用量が変わる系統ではタンクをドライヤーの後ろに置くよう案内しています。

コンプレッサーは、油が空気に混じらないオイルフリー式を使うか、給油式の後ろに油分を取るフィルターを重ねます。オイルフリー式は購入価格が高くなりやすい一方、油を取るフィルターの手間が減ります。

ドライヤーは、冷やして水を落とす冷凍式では0℃より下の露点にできません。−40℃のような低い露点は、乾燥剤で水分を吸わせる吸着式(ヒートレスドライヤーなど)でつくります。

停電などの非常時にプラントが止まるのを防ぐため非常用発電機などを設け、計装空気用のコンプレッサーは、駆動を続けられるようにする場合もあります。

雑用空気とは

一方、雑用空気は、攪拌、冷却、掃除などに使用される計装空気以外の圧縮空気のことを言います。

こちらも圧力を一定にするための制御はありますが、計装空気ほどの精度は求められないので、設備も計装空気に比べ簡易なことが多いです。レシーバタンクや脱湿装置などはあった方が良いですが、雑用空気に求められる質や導入コストで検討するのが一般的です。

プラントの各所に設置されており、バルブを開くだけで使用できるような圧縮空気は全て雑用空気に分類され、ホースをつないで使うエアブローや空気工具が代表例です。

工場では、エアシリンダーなどの空圧機器も圧縮空気で動きます。空圧と油圧・電動の違いは、油圧・空圧・電動アクチュエータの違いで比べています。

計装空気と雑用空気の使い分け

計装空気と雑用空気の違いは次の表のとおりです。

図4:計装空気と雑用空気の比較

違いは「空気の質をどこまで保証するか」と、そのための設備とコストです。

計装空気
雑用空気
用途
制御弁の駆動、オンオフ弁の駆動、測定計器類など
掃除、攪拌、冷却など
コスト
高い
安い
コンプレッサー
オイルフリー式、または給油式+油分フィルター
給油式が多い
脱湿装置
必須(吸着式で低い露点にすることが多い)
どちらでもよい(入れるなら露点+3〜+10℃程度の冷凍式が多い)
レシーバタンク
必須
どちらでもよい
止まったとき
弁や計器が動かず、プラントの制御が止まる
その場の作業が止まる

※露点や油分の数字は設計基準で決めます。図2の等級と、使う機器の仕様書をあわせて確かめます。

計装空気が雑用空気よりも高いのは、設備の導入コストとコンプレッサーの方式によるランニングコストの違いで、ドライヤーやフィルターの電力・交換部品も加わります。

計装空気を雑用空気として利用することはできますが、コストの考え方から両者を分けて設計するのが一般的です。逆に、雑用空気を計装に使うのは、水や油が残った空気が入ると、次の章のようなトラブルにつながるため避けます。

同じコンプレッサーから両方を取る場合は、雑用側で一度に大量に使われたときに計装側の圧力が下がらないかを設計の段階で確かめておきます。

計装空気が止まる・汚れるとどうなるか

計装空気は目に見えないため、悪くなっても気づきにくい設備で、起きやすいトラブルと対策は次の4つです。

図5:計装空気のトラブルと対策

原因は「水・油とごみ・圧力・漏れ」の4つに分けると探しやすくなります。

水分が残る配管の中で水になり、さびや冬場の凍結で計器が動かなくなる。対策は露点の確認とドレンの排出
油・ごみが混じるポジショナの細い空気の通り道が詰まり、弁の動きがずれる。対策はフィルターの差圧確認と交換
圧力が下がる・止まるばね復帰式の調節弁は、設計で決めた安全側の位置(全開か全閉)へ動く。動き方は弁の仕様による
漏れが増える継手やホースから漏れると圧力が落ち、コンプレッサーの電力も無駄になる

※空気がなくなったときに弁が開くか閉じるかは、プロセスの安全を考えて設計で決めています。

水分の目安は露点で、計装空気の系統には露点計を付け、露点の変化を日常的に確かめます。

ドライヤーやフィルターの手前にたまるドレンは、自動排出弁が詰まると配管へ流れ込みます。日常の点検では、次の場所を見ます。

  • 露点計:設計した露点より上がっていないか
  • ドレンの排出弁:タンク・フィルターの水がきちんと抜けているか
  • フィルターの差圧:詰まって圧力損失が増えていないか
  • レシーバタンクの圧力:普段より下がっていないか、コンプレッサーの運転が増えていないか

漏れは、工場の圧縮空気でよく挙がる省エネのテーマでもあります。進め方は工場の省エネの基本で紹介しています。

計装の配管まわりでは、計器を守る部品も大切です。蒸気の流量計の導圧管に付ける部品は、コンデンスポットの役割と取付けの注意点で解説しています。

計装空気のよくある質問

計装エアーと計装空気、計装用空気は同じですか?

同じものですが、会社や図面によって、計装エア、計装エアー、計装用空気と呼び方が変わります。

計装用空気圧縮機(計装コンプレッサー)とは何ですか?

計装空気をつくるための専用のコンプレッサーで、雑用空気とは別に置くか、共用する場合は計装側の圧力を保てるように組みます。

油が混じらないオイルフリー式を使うか、給油式なら油分を取るフィルターを後ろに付け、止められないので、非常用電源につなぐ場合もあります。

圧力下露点と大気圧下露点の違いは何ですか?

圧力下露点は、圧縮された状態のまま冷やしたときに水が出始める温度で、同じ空気でも、大気圧に戻すと露点は下がります。

オリオン機械の資料では、0.69MPaで圧力下露点−40℃の空気は、大気圧下露点で−58℃のため、仕様を比べるときは、どちらの露点かを必ず確かめます。

計装空気の圧力はどのくらいですか?

使う計器の仕様で決まり、調節弁のポジショナでは、SMCのIP8000シリーズのように0.14〜0.7MPaの範囲で使える製品があります。

配管の圧力が高めでも、計器の手前で減圧弁を使って必要な圧力に下げます。空気の量の単位はNm³とm³の違いで整理しています。

まとめ

この記事のまとめ
  • 計装空気は制御弁の駆動や流量計などの計装機器に使用される圧縮空気
  • 雑用空気は攪拌、冷却、掃除などに使用される計装空気以外の圧縮空気
  • 計装空気の質はISO 8573-1(JIS B 8392-1)の等級と露点で指定する
  • ドライヤー・フィルター・タンクが必須で、ランニングコストの違いにより使い分ける
  • 水・油・ごみや圧力低下は、計器の誤作動や弁の停止につながる

両方とも目には見えないので違いが分かりにくいですが、長く使うと細かな不純物によって計器の誤作動や機器の故障につながってきますので、ぜひ、混同させないように注意しましょう。計装の図面の読み方はP&ID(配管計装図)の読み方で解説しています。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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