抽気とは?意味と抽気復水タービンの仕組み・メリット・制御方法

工場の自家発電設備の蒸気タービンと保温された蒸気配管

抽気(ちゅうき)とは、蒸気タービンの途中の段から、仕事を終える前の蒸気の一部を抜き出すことです。抜き出した蒸気は、ボイラー給水の加熱や工場のプロセスの加熱に使います。

抽気をしながら、残りの蒸気を最後まで膨張させて復水器で水に戻すのが抽気復水タービンで、工場の自家発電設備や火力発電所でよく使われています。

この記事では、抽気復水タービンの仕組み、抽気で全体の効率が上がる理由、制御方法の順に整理します。最後に、背圧タービン・復水タービン・再生タービンとの違いにも短く答えます。

目次

抽気復水タービンとは

抽気復水タービンの系統図(ボイラー・第1抽気・第2抽気・復水器・発電機)

抽気復水タービンとは、蒸気タービンの中段から低圧の抽気蒸気を取り出すことができるタービンで、最終段の排気は、復水器で冷やされて復水(水)に戻ります。

ボイラーから入った蒸気は、抽気口で二手に分かれます。一部は抽気蒸気として外へ出て、残りは後ろの段で仕事をしてから復水器へ流れます。

主蒸気を全量復水器に送る復水タービンと比べると、電力として取り出せる仕事は減ります。それでも抽気蒸気を給水の加熱やプロセスに使えば、プラント全体のエネルギー効率は上がります。

工場の自家発電設備など、発電と同時にプロセス用の蒸気が必要なプラントでよく用いられています。火力発電所の大型の復水タービンでも、給水を温めるために途中の段から蒸気を抜き出す(再生抽気)のが一般的です。

図1:抽気復水タービンの蒸気の流れ

蒸気は抽気口で二手に分かれ、抜かれなかった分だけが最後まで仕事をします。

ボイラー高温・高圧の主蒸気をつくる
主蒸気
タービンの前段(高圧側)入った蒸気の全量がここで仕事をする
抽気口で分かれる
抽気蒸気外へ出て、工場のプロセスの加熱や給水の加熱に使う
タービンの後段(低圧側)残りの蒸気がさらに膨張して仕事をする
排気
復水器排気を冷やして水に戻し、給水としてボイラーへ

※抽気をプロセスに送るか、給水の加熱に使うか、その両方かは設備によって異なります。

抽気とは

抽気(ちゅうき)とは、タービンの中で仕事をしている途中の蒸気の一部を、中間の段から抜き出すことです。抜き出した蒸気を「抽気蒸気」、蒸気を取り出す口を「抽気口」と呼びます。

抽気した蒸気は、後ろの段では仕事をせず、抽気を増やすほど発電に回る蒸気は減るので、熱の使い道があるときに抜く、というのが抽気の考え方です。

抽気には、使い方によって次の2種類があります。

図2:制御抽気と再生抽気の違い

同じ「抽気」でも、圧力を一定にするかどうかで扱いが分かれます。

制御抽気(自動抽気)
再生抽気
目的
工場に一定の圧力の蒸気を送る
ボイラーへ戻る給水を温め、燃料を減らす
主な使い道
工場のプロセス用の加熱蒸気
給水加熱器・脱気器での給水の加熱
抽気圧力
タービン内部や外部の制御弁で一定に保つ
制御しない(負荷に応じて変わる)
主な採用先
工場の自家発電・コージェネレーション
火力発電所などの復水タービン

工場向けの抽気復水タービンでは、発電量が変わってもプロセスに送る蒸気の圧力が変わらないように、抽気圧力を自動で一定に制御するのが特徴です。

抽気をするタービンには、排気の行き先によっていくつかの型式があります。排気を全量工場に送る背圧タービンとの違いも、次の図で押さえておくと整理しやすくなります。

図3:蒸気タービンの4つの型式

排気を復水器へ送るか工場へ送るか、途中で抽気するかの組み合わせです。

復水タービン排気を復水器で水に戻し、高真空まで膨張させる。発電量を最も多く取れる。発電所の主力
背圧タービン排気を大気圧以上で全量工場へ送る。発電量は工場の蒸気の使用量で決まる
抽気復水タービン途中で抽気し、残りを復水器へ。蒸気と電力の需要がどちらも変わる工場に向く
抽気背圧タービン途中で抽気し、排気も工場へ。圧力の違う2種類の蒸気を工場に送れる

※産業用の蒸気タービンのメーカーは、復水・抽気復水・抽気背圧・混圧などの型式をそろえています(三菱重工のラインアップなど)。

抽気復水タービンのメリット

抽気をすると、タービンの発電出力は減りますが、それでも採用されるのは、蒸気の熱まで含めたプラント全体の効率が上がるからです。燃料を燃やして発電する発電プラントの、再生サイクルのフローを示します。

抽気復水タービンを使った再生サイクルの系統図(給水加熱器・脱気器・復水器・冷却塔)

ボイラーから出た蒸気は抽気復水タービンに入り、3か所の抽気口から次のように送られます。

  • 第1抽気:高圧(水側)の給水加熱器
  • 第2抽気:脱気器の加熱
  • 第3抽気:低圧(水側)の給水加熱器

抽気されずに残った蒸気は、最終段を出て復水器に送られます。給水加熱器や復水器で凝縮した復水は、最終的に脱気器へ集め、再びボイラーに送ります。純水や熱の損失を最小限に抑えたサイクルです。

図4:再生サイクルで給水が温まる順番

給水は、圧力の低い抽気から順に温められてボイラーへ戻ります。

01復水器タービンの排気を冷やして水に戻す
02低圧給水加熱器第3抽気(いちばん圧力の低い抽気)で温める
03脱気器第2抽気と混ぜて温め、溶けた酸素などを抜く
04給水ポンプボイラーの圧力まで給水を押し上げる
05高圧給水加熱器第1抽気(いちばん圧力の高い抽気)で温める
06ボイラー温まった給水を蒸気にする。燃料が少なくて済む

※脱気器は蒸気と給水を直接混ぜる加熱器、給水加熱器は管の壁ごしに熱だけを渡す加熱器です。大型の発電所では加熱器の段数がさらに多くなります。

抽気復水タービンで熱効率を高められる理由は、動力としての利用価値が小さい低圧の抽気蒸気で給水を温めるからです。その分、復水器で冷却水(冷却塔の循環水や海水)に捨てる排熱を減らせます。

図5:抽気で全体の効率が上がる理由

発電は少し減っても、捨てていた熱を使えるので差し引きで得になります。

01低圧の蒸気は動力の価値が小さい膨張の終わりに近い蒸気は、残りの段で生む仕事が少ない。抜いても発電の減り方は小さい
02復水器で捨てる熱が減る抽気した蒸気の凝縮熱は給水やプロセスに渡る。冷却水に捨てる熱が減る
03ボイラーの燃料が減る給水が温まった状態でボイラーに入るので、同じ蒸気をつくる燃料が少なくて済む

再生サイクルで効率が上がる理屈は、ランキンサイクルの再生サイクルの説明とも重なります。ボイラーで熱を受け取る給水の温度が上がるほど、サイクルの効率は高くなります。

抽気蒸気は工場などでプロセスの加熱源として利用することもでき、工場の蒸気系統と接続すれば、蒸気圧力の安定化にも役立ちます。

発電と熱の両方を使うこの形は、蒸気タービンを使ったコージェネレーションにあたります。熱の使い道が多い工場ほど、抽気の効果が大きくなります。

運転では、抽気圧力を必要以上に高くしないことも大切です。環境省の指針は、抽気圧力の許容される最低値を管理標準として決め、下限に近い圧力で運用することを勧めています。

タービンの入口と出口の圧力差が大きいほど、回収できるエネルギーが増えるからです。ただし下限値は、プロセス側が必要とする圧力を基に決めます。

同じ資料には、背圧タービンの背圧を下げて熱回収率を5%から6%に上げると、エネルギー消費量などが4%減る試算例があります。これは背圧タービンでの個別条件の試算で、抽気タービン全般の効果を示す数字ではありません。

抽気復水タービンの制御方法

抽気復水タービンの制御方法は、主に発電出力一定制御、回転速度制御、一次圧力制御に分けられます。どれを選ぶかで、何を一定に保ち、何が成り行きになるかが変わります。

図6:抽気復水タービンの3つの制御

ガバナ(調速装置)が蒸気加減弁を動かし、タービンに入る蒸気の量を調整します。一定にする値が制御ごとに違います。

発電出力一定制御一定:発電機の出力成り行き:加減弁の後ろの圧力など。売電や、決まった電力を受け持つ運転で使う
回転速度制御一定:回転速度(周波数)成り行き:発電出力(所内の負荷で決まる)。系統から切り離した自立運転で使う
一次圧力制御一定:加減弁の手前の圧力成り行き:発電出力。ボイラーの運転を安定させたいときに使う

※抽気復水タービンでは、どの制御でも抽気圧力は抽気側の弁で別に一定に保つのが一般的です(日立評論 1972年2月 表1)。実際の設備では、運転状況に合わせて制御を切り替えたり組み合わせたりします。

発電出力一定制御は、発電機の出力が設定値になるように加減弁を開け閉めする方式で、発電用の蒸気タービンで最も多く使われます。

回転速度制御は、発電機を電力系統から切り離して工場の中だけで電気をまかなう自立運転のときに使います。このときは発電機の回転数が所内の周波数になるので、回転速度を一定に保ちます。

一次圧力制御は、ボイラーの出口圧力を一定にする方式です。ボイラーで発生した蒸気と同じ量をタービンに送るので、燃料の性状が不安定なときなどにボイラーを安定させられます。各制御の詳しい動きは、蒸気タービンの制御方法まとめで整理しています。

抽気蒸気の圧力を制御する方法には、外部抽気圧力制御と内部抽気圧力制御の2パターンがあります。

内部抽気圧力制御は、タービンの中の抽気段の後ろに制御弁を持ち、抽気圧力を一定に保てる方式です。一定の圧力のプロセス蒸気を取り出したいときに使いますが、コストは高くなります。

外部抽気圧力制御は、タービンの外の抽気配管に制御弁を置く方式です。蒸気量が減ると必要な圧力に届かないため、別の蒸気系統から補給できる構成で使います。

2つの方式の違いは、内部抽気圧力制御と外部抽気圧力制御の違いで詳しく比べています。

抽気・抽気タービンのよくある質問

背圧タービンとは?

背圧タービンとは、排気の圧力を大気圧以上にして、排気の全量を工場などの熱源に使う蒸気タービンで、復水器を持たず、タービンが蒸気の減圧弁の役も兼ねます。

発電量は工場が使う蒸気の量で決まるため、蒸気の需要が安定した工場に向きます。仕組みと制御は背圧タービンとは?メリットや制御方法で解説しています。

復水タービンとは?

復水タービンとは、排気を復水器で水に戻し、排気側を高真空にして蒸気を最後まで膨張させるタービンで、同じ蒸気から取り出せる電力が最も多く、発電所の主力です。

高真空の後段に空気が入らないよう、軸の貫通部をグランド蒸気でふさぎ、この蒸気を回収するのがグランドコンデンサです。

再生タービンとは?

再生タービンとは、効率を上げるために途中の段から蒸気を抽気し、ボイラーへ送る給水を温めるタービンで、この記事の再生抽気をするタービンにあたります。

途中で蒸気を再び加熱してから後段に戻す「再熱タービン」とは別物で、発電所では、再生と再熱を組み合わせることが多くあります。

抽気タービンと抽気復水タービンは同じ?

「抽気タービン」は、途中で抽気する蒸気タービンを広く指す言葉として使われます。メーカーの型式では、排気を復水器に送るものが抽気復水タービン、排気も工場に送るものが抽気背圧タービンです。

日本大百科全書のように、「抽気タービン」を残りの蒸気を復水器に導くもの(抽気復水タービン)として説明する資料もあり、仕様書では排気の行き先まで確かめると確実です。

抽気の読み方と英語は?

抽気の読み方は「ちゅうき」で、英語では extraction(抽気復水タービンは extraction condensing turbine)と呼びます。

給水加熱用の抽気は bleed steam(ブリード蒸気)とも書かれ、圧力を制御しないので uncontrolled extraction と呼ばれます。圧力を一定にする制御抽気は controlled extraction です。

まとめ

この記事のまとめ
  • 抽気(ちゅうき)とは、タービンの途中の段から仕事途中の蒸気の一部を抜き出すこと
  • 抽気復水タービンは抽気蒸気を取り出せ、残りの排気を復水器で復水へ戻すタービン
  • 抽気で発電は減るが、給水加熱やプロセスに熱を使えるので全体の効率が上がる
  • 発電プラントの再生サイクルや、工場の自家発電(コージェネ)で利用される
  • 制御方法は発電出力一定制御、回転速度制御、一次圧力制御に分かれる

蒸気タービンの中でも、発電プラントなどでよく使われるタービンです。自分の設備では抽気がどこへ送られ、抽気圧力の管理値はいくつか、どの制御で動いているかを確かめておくと、運転の理解が深まります。

タービンの中で蒸気を受ける翼の並びは動翼と静翼の違いで、蒸気の熱をむだなく使う考え方は工場の省エネとエネルギー管理の基本でまとめています。資格を生かした働き方は製造業のエネルギー管理士の仕事もあわせてご覧ください。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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