グランドコンデンサ(グランドコンデンサー、グランド蒸気復水器)とは、蒸気タービンの軸封部(グランド)から出る蒸気を吸い込み、水に戻す小さな熱交換器です。
蒸気タービンを設置するときは、セットで設置するのが一般的で、目的は、グランドからの漏れ蒸気を回収することと、復水器の真空を守ることの2つです。
この記事では、グランドとグランド蒸気の意味、設置する目的、背圧タービンと復水タービンでの違い、蒸気の流れ、付属機器の順に整理します。
グランドコンデンサとは
グランドコンデンサとは、タービンの軸封部から出る漏れ蒸気と、空気の吸い込みを防ぐシール蒸気を凝縮させる機器です。
排風機(ファン)やエゼクターが軸封部から蒸気と空気を吸い出し、グランドコンデンサで蒸気だけを水に戻して、水は復水器へ戻し、空気は外へ出します。
発電機を回すにせよポンプを回すにせよ、蒸気でタービンを回すなら、車室(ケーシング)を貫くロータ(翼の付いた回転軸)が必ずあります。ロータは常に回っているので、貫通部を完全にふさぐことはできず、一部の蒸気が漏れ出します。この漏れを回収する機器がグランドコンデンサです。
名前に「コンデンサ(復水器)」と付きますが、タービンの排気を受ける主復水器とは別の機器で、受けるのは軸封部の少量の蒸気だけで中の真空もわずかです。
グランドコンデンサを設置する目的は、主に次の2つです。
- グランド部からの漏れ蒸気を回収する
- タービン内への空気の混入を防ぎ、復水器の真空度を保つ
グランド・グランド蒸気とは
グランド(gland)は、タービンの軸が車室を貫くところにある軸封部のことで、「タービングランド」とも呼びます。
軸封部には、軸の周りの細いすき間を迷路のように重ね、蒸気の漏れや空気の入り込みを減らすラビリンスパッキンなどが付いています。ただ、回る軸に触れずにふさぐので漏れをゼロにはできず、そこで軸封部には、役目の違う内側と外側の室が設けられています。
グランド蒸気は、軸封部に送るシール蒸気と、そこから漏れ出る蒸気をまとめた呼び名で、シール蒸気は「封じ蒸気」とも呼ばれます。
内側の室でシール蒸気が空気をふさぎ、外側の室から蒸気と空気を吸い出します。
※U.S. EPR(AREVA)の安全解析書の説明をもとにした模式です。室の数や配置はタービンの形式で異なります。
背圧タービンの場合
例えば、背圧タービンで、排気の圧力が大気圧以上の場合を考えます。

このとき、タービンの内部は常に大気圧以上のため、グランド部からは蒸気が漏れ出します。グランドコンデンサを使わず、漏れ蒸気を集めて屋外へ排気する場合もありますが、熱も水も捨てるので、エネルギーとしてはロスになります。
復水タービンの場合
次に、排気を復水器に送る復水タービンで、排気の圧力が高真空の場合を考えます。

後ろの段(低圧側)は、絶対圧で大気圧の5%程度(約5kPa)の高真空のため、グランド部から外の空気を吸い込みます。
空気は蒸気と違って冷やしても凝縮せず、復水器にたまると真空度を悪くし、タービンの効率を下げるおそれがあります。真空が浅くなると、タービン出口の圧力が上がり、蒸気が膨張しきれなくなるためです。復水器と真空の関係はランキンサイクルで整理しています。
グランドコンデンサを設置した場合
この2つの問題を防ぐのがグランドコンデンサで、設置した場合の系統は次のようになります。

空気の吸い込みを防ぐには、グランド部に大気圧をわずかに上回る蒸気を吹き込み、空気の通り道をふさぎます。
圧力は機種によって違い、富士電機の特許にある375MWの蒸気タービンの例では、軸封母管を1.2〜1.3ata(絶対圧、ゲージ圧で約16〜26kPa)に保っています。
米国の原子力発電所の計画(ABWR、STP 3・4号機)の安全解析書では、シール蒸気ヘッダを約27.6kPa(ゲージ圧)に保つとしています。
そして、漏れ蒸気とシール蒸気をあわせてグランドコンデンサに集め、凝縮させます。グランドコンデンサの中はわずかな負圧で、空気も一緒に入ってくるので、ファン(排風機)やエゼクターで外へ排出します。
IHI の特許では、グランド部の最も外側を−300mmAq(約−3kPa)ほどに吸い、グランドコンデンサで水に戻すのが一般的と説明されています。
冷やすための水には、発電所の例では復水(復水器で水に戻り、ボイラーの給水になる水)を使い、蒸気から受け取った熱が給水側に戻るので、熱を捨てずに済みます。
中が負圧なので、凝縮水を大気へそのまま流すことはできないため、U字配管で水封したり、真空の復水器の系統へ回収したりする工夫が要ります。船の発電機用などの小型の復水タービンでは、グランドコンデンサを置かず、グランド蒸気を復水器へ導く例もあります(IHI の特許)。
車室の中の圧力で、グランドで起きることが逆になります。
※復水タービンでも、高圧側のグランドからは蒸気が漏れ出します。1台のタービンの中で、両方が起きています。
グランド蒸気の流れ(起動時と通常運転時)
グランド蒸気は、供給、軸封部、グランドコンデンサ、排出の順に流れ、シール蒸気の出どころは、運転の状態で変わります。
蒸気はヘッダから軸封部へ入り、空気と一緒にグランドコンデンサへ吸い出されます。
※U.S. EPR(AREVA)と STP 3・4号機(ABWR)の安全解析書の説明をもとに作成。弁や機器の構成は設備で異なります。
起動時・低負荷のとき
起動時や低負荷のときは、タービンの中の圧力が低くシールに使える漏れ蒸気が足りないため、補助蒸気(補助ボイラーの蒸気や、主蒸気から分けた蒸気)を供給弁から送ります。三菱重工業の特許でも、補助蒸気を供給弁・グランドシール蒸気レシーバを経て送る構成が説明されています。
通常運転のとき
負荷が上がると、高圧側のグランドから漏れる蒸気だけで、低圧側のシールをまかなえるようになり、タービンが自分の漏れ蒸気で自分をシールする形になります。
火力発電所向けの東芝の特許でも、起動して負荷が上がると、グランド蒸気は補助蒸気の供給から逃がしへ切り替わっていくと説明されています。富士電機の特許では、高圧側の漏れ蒸気を軸封母管に集め、一部をグランド蒸気復水器で回収し、残りを低圧側の封じ蒸気にする構成が説明されています。
さらに負荷が上がって余った蒸気は、逃がし弁から復水器へ送ります。三菱重工業の特許では、この余剰分をタービンの低圧段に戻し、エネルギーを無駄にしない工夫も示されています。
足りないときは足し、余るときは逃がして、ヘッダの圧力を保ちます。
※供給元が切り替わる負荷や、弁の構成は設備によって異なります。
グランドコンデンサの構造と付属機器
本体は、胴の中に細い管を束ねたシェル&チューブ式の熱交換器が一般的です。管の中を復水が流れ、胴の側にグランド蒸気と空気が入ります。
本体・排風機・冷却側・ドレンの4つで、蒸気と空気と水を分けて扱います。
※機器の構成は設備で異なります。本体の故障に備え、蒸気側をバイパスできる配管を持つ例もあります(U.S. EPR)。
排風機(ファン)とエゼクター
胴の中の負圧は、排風機(ブロワ)、蒸気エゼクター、真空ポンプのいずれかでつくり、どれを使うかは設備によって違います。
大型の発電所では、1台で全量を吸える排風機を2台設けた例があります(米国 STP 3・4号機の計画)。1台が止まっても、もう1台で吸い続けられる構成です。
冷却水(復水)
冷却には、復水器から送り出された復水を使います。米国の ABWR の計画では、復水は脱塩装置を出たあと、グランドコンデンサなどを通ってから低圧給水加熱器へ進みます。
火力発電所や工場の自家発では、給水はさらに脱気器などを経てボイラーへ送られます。グランド蒸気の熱は、給水の予熱として戻ります。少ない熱でも捨てずに回収する考え方は、工場の省エネの基本と同じです。
ドレン(凝縮水)の戻し方
胴の中は負圧なので、凝縮水は自然には外へ出ていかないため、U字に曲げた配管(ドリップレッグ)で水封し、蒸気トラップを通して、真空のより深い主復水器へ戻します。
運転で見る項目
U.S. EPR の安全解析書では、運転中に次の項目を監視するとしており、それぞれ何の状態を見るためかを添えます。
- シール蒸気ヘッダの圧力・温度:シール蒸気が足りているか、余っていないか
- 排風機の真空:外側の室と本体の負圧を保てているか
- グランドコンデンサの出口温度:冷却が効いているか
- グランドコンデンサの圧力:本体の中が負圧になっているか
判断の基準になる値は設備ごとに違うので、メーカーの取扱説明書で確かめます。点検の周期の決め方は設備保全のTBMとCBMの違いが参考になります。
グランドコンデンサのよくある質問
グランドコンデンサと復水器(主復水器)は何が違う?
どちらも蒸気を冷やして水に戻す機器ですが、扱う蒸気の量と真空の深さが違います。主復水器はタービンの排気をすべて受け、高真空を保ちます。
グランドコンデンサが受けるのは、軸封部から出る少量の蒸気と空気だけです。復水器そのものの仕組みは復水器とはで解説しています。
名前は似ていますが、受ける蒸気も中の圧力も別物です。
※主復水器の冷却に冷却塔の水や空気を使う設備もあります。
グランドコンデンサーとグランド蒸気復水器は同じもの?
同じ機器を指す呼び方です。「コンデンサ」と「コンデンサー」は表記の違いで、富士電機の特許などでは「グランド蒸気復水器」と書かれています。
英語では gland steam condenser や gland condenser と書き、図面の略号は会社ごとに違うので、凡例で確かめてください。
まとめ
- グランドコンデンサ(グランド蒸気復水器)は、軸封部(グランド)から出る蒸気と空気を吸い、蒸気を水に戻す熱交換器
- 目的は、グランド部からの漏れ蒸気を回収することと、タービン内への空気の混入を防ぎ、復水器の真空度を保つこと
- 背圧タービンでは蒸気が漏れ出し、復水タービンの低圧側では空気を吸い込む。シール蒸気と吸い出しで両方を防ぐ
- 起動時は補助蒸気でシールし、負荷が上がると高圧側の漏れ蒸気で低圧側をシールする。余りは復水器へ逃がす
- 排風機やエゼクターが負圧をつくり、復水で冷やし、凝縮水は水封とトラップを通して主復水器へ戻す。主復水器とは別の小さな機器
見た目はシンプルな熱交換器ですが、あるかないかでタービン全体の効率を左右する重要な機器です。設置してある目的を押さえておくと、タービンまわりの系統図も読みやすくなります。
蒸気を途中から取り出すタービンは抽気復水タービンで解説しています。タービンに関わる仕事は、プラントエンジニアの仕事や製造業のエネルギー管理士の仕事で紹介しています。
出典
出典・参考資料(10件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 軸封部のラビリンスパッキン、復水器で高真空にする理由:日本大百科全書「蒸気タービン」(コトバンク)
- 主復水器の冷却水・不凝縮ガスの抽出、復水器の真空の標準(絶対圧0.05atm):世界大百科事典・日本大百科全書「復水器」(コトバンク)
- グランドシール系統の目的、内側・外側の室、自己シールと余剰蒸気、復水で冷やすグランドコンデンサ、ドレンの戻し方、監視項目:U.S. EPR Final Safety Analysis Report 10.4.3 Turbine Gland Sealing System(AREVA、米国原子力規制委員会)
- シール蒸気ヘッダの圧力 約27.6kPaG、排風機2台、復水の流れ:STP 3 & 4 Final Safety Analysis Report 10.4(ABWR、米国原子力規制委員会)
- 375MWタービンの軸封母管の圧力 1.2〜1.3ata、補助ボイラーからの補助蒸気:特開昭59-176403「蒸気タービン列への軸封用蒸気供給装置」(富士電機)
- 起動時は補助蒸気、負荷上昇で逃がしへ切り替わるグランド蒸気(火力発電所):特許第3324899号「タービングランド蒸気圧力制御装置」(東芝)
- 高圧側の漏れ蒸気を軸封母管・グランド蒸気復水器・低圧側の封じ蒸気へ送る構成:特開昭61-218704「蒸気タービンのグランド蒸気管装置」(富士電機)
- 補助蒸気によるグランドシール、空気の進入による真空度の低下、余剰蒸気の扱い:特開平11-93611「復水式蒸気タービンのグランドシール装置」(三菱重工業)
- シーリング蒸気を大気圧より少し高く保つこと、エゼクター・排風機で約−300mmAqに吸いグランドコンデンサで復水すること、小型タービンでグランド復水器を省く例、供給側・排出側の圧力調整弁による制御:特開昭59-28001「蒸気タービンのグランド蒸気制御装置」(石川島播磨重工業)
- 排風機・蒸気エゼクター・真空ポンプによる吸引、シェル&チューブ式:API Heat Transfer「Gland Steam Condensers」
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