復水器とは?真空になる理由と役割・構造、種類(水冷式・空冷式)と真空ポンプ

発電所タービン建屋の地下に据えた表面復水器の胴と冷却水管の水室

復水器(ふくすいき、コンデンサ)とは、蒸気タービンで仕事を終えた蒸気を冷やし、水に戻す大型の熱交換器です。

大気圧以下の蒸気は、水に戻ると体積が1,000分の1以下に縮み(復水器の約5kPaなら約2万8千分の1)、密閉された器内でこれが続くため、復水器の中は真空になります。

この記事では、真空になる理由と、わざわざ真空にする理由(役割)を分けて説明し、種類、空気抽出の装置、構造、復水ポンプまで順に整理します。

目次

復水器とは

ボイラー・蒸気タービン・抽気・脱気器・給水加熱器と復水器・冷却塔をつないだ系統図

復水器は、火力発電所などに設置される重要な熱交換器の一つで、タービンで仕事を終えた蒸気を冷却し、凝縮させる役目を持ちます。

凝縮してできた水を「復水(ふくすい)」と呼び、蒸気から水に「復(かえ)った」水という意味で、ボイラーの給水として再び使われます。

復水器はランキンサイクルで発電する設備に使われ、サイクルの4つの機器のうち、熱を外へ捨てる役目を受け持つのが復水器です。

蒸気の凝縮潜熱を奪う冷却水には、海沿いの大型発電所では海水がよく使われ、内陸の発電所や工場の自家発電設備では、冷却塔で冷やした循環水が一般的です。

水源が確保できない場所では、空気で冷やす空冷式を使う場合もあり、英語では condenser、冷却管を介して冷やす一般的な形は surface condenser(表面復水器)と呼ばれます。

復水器の器内をどれだけ高真空にできるかで発電所全体の効率は大きく変わるため、復水器の性能は、発電所の収益性に直結すると言えます。タービンの途中から蒸気を取り出し、残りを復水器へ送る形式は抽気復水タービンで解説しています。

復水器の中が真空になる理由

復水器の中は、真空ポンプで空気を抜いたから真空になっているわけではなく、蒸気が冷やされて水に戻るときに、体積が一気に小さくなることで真空になります。

例えば絶対圧5kPaの飽和蒸気の比体積は約28.2m3/kg、水は約0.001m3/kgで、凝縮すると体積はおよそ2万8千分の1になります。

密閉された容器の中で蒸気がどんどん水に戻るため、器内の圧力は下がり続け、行き着く先は、冷却水で冷やされた温度に対応する飽和圧力の近くです。

図1:圧力と飽和温度、凝縮したときの体積

圧力が低いほど、蒸気はより低い温度で水に戻ります。復水器はこの性質を使います。

絶対圧
飽和温度(蒸気が水に戻る温度)
水に戻ると体積は
4kPa
約29.0℃
約3万5千分の1
5kPa
約32.9℃
約2万8千分の1
7kPa
約39.0℃
約2万分の1
10kPa
約45.8℃
約1万5千分の1
101.3kPa(大気圧)
約100℃
約1,600分の1

※圧力はすべて絶対圧。飽和温度と比体積は NIST Chemistry WebBook(IAPWS-95)の飽和表から求めた値です。

大気圧の蒸気でも、水に戻ると体積は約1,600分の1になり、図1の範囲(大気圧以下)では、どれも1,000分の1以下に縮むので、冷やし続ければ器内の圧力は自然に下がります。

冷却水の温度が低いほど器内の圧力(背圧)を下げられ、冬に冷却水の温度が下がると発電効率が上がるのはこのためで、ここまでが、復水器が真空に「なる」理由です。

一方、真空に「する」理由は、タービンの出口の圧力を下げて、蒸気からより多くの仕事を取り出すためで、こちらは次の「復水器の役割」で説明します。

エゼクターや真空ポンプの役割は、真空を「作る」ことではなく、漏れ込んだ空気など凝縮しないガスを抜き出して、真空を「保つ」ことです(起動時に器内の空気を抜く役割もあります)。

復水器の真空は「絶対圧 5kPa」のように、完全な真空を0とした絶対圧で表すと比べやすくなり、図1の値もすべて絶対圧です。現場の計器では大気圧を0としたゲージ圧(マイナス表示)で示すこともあり、標準大気圧なら絶対圧5kPaはゲージ圧で約−96kPaです。

ゲージ圧の値は、その日の大気圧で変わるので、読んでいる値がどちらの圧力かを確かめてから比べるのが安全です。計器の違いは連成計・真空計の目盛の読み方で整理しています。

図2:復水器まわりの流れ

蒸気は上から入って水になり、底にたまった復水はボイラーへ戻ります。空気だけは別の出口から抜き出します。

蒸気タービン【蒸気】仕事を終えた低圧の蒸気(排気)が復水器へ入る
排気
復水器(胴の中に冷却管が多数)【冷却水】冷却管の中を海水や冷却塔の循環水が流れる。管の外側で蒸気が凝縮して水に戻り、体積が大きく縮むため器内が真空になる
凝縮した水
ホットウェル(復水だめ)【復水】凝縮した水が胴の底にたまる
復水ポンプ
給水加熱器・脱気器 → ボイラーへ復水は再びボイラーの給水として使われる
【空気】空気抽出(エゼクター/真空ポンプ):フランジなどから漏れ込んだ空気は凝縮しないので、復水器から連続的に抜き出して真空度を保つ

復水器の役割

復水器の役割は、主に次の2つです。

発電効率の向上

復水器で蒸気タービンの排気の真空度を高めると、タービンの入口と出口の熱落差を大きくとれます。同じ蒸気でも、より多くの仕事を取り出せるため、発電効率が上がります。

図1のとおり、絶対圧5kPaと10kPaでは飽和温度が約13℃違い、出口の圧力が低いほど、蒸気は低い温度まで膨張して仕事をします。

発電効率が上がれば、同じ出力を得るのに必要な蒸気量が減り、燃料費を下げられます。熱落差の求め方は熱落差とタービン効率の公式で解説しています。

復水の回収

蒸気タービンを回す蒸気には高い清浄度が求められ、薬品などで処理しているため、工業用水と比べてコストがかかっています。

復水器で蒸気を凝縮させて再利用すれば、大気に放出する場合に比べて薬品代や水処理の費用を抑えられます。ボイラーの水処理はボイラー水の水処理で解説しています。

捨てずに戻す熱と水は、工場の省エネでも大きな項目で、考え方は工場の省エネの基本にまとめています。

復水器の種類

復水器には、大きく分けて次の2通りの種類があります。

水冷式

冷却塔の循環水や海水を冷却源とする方式で、冷却塔を使う場合は、水を蒸発させて冷やすので、大量の補給水が必要になります。冷却塔の水の管理は冷却塔の濃縮倍数で解説しています。

空冷式と比べると、必要な伝熱面積を抑えて機器を小さくでき、高い真空度を作り出せるのも水冷式の強みです。

同じ水冷式でも、冷却管を介して間接的に冷やす方法と、冷却水を直接噴霧させる方式があり、前者を表面復水器、後者を混合復水器と呼びます。

表面復水器では、冷却水と復水が混ざらず、冷却管は直径20mm前後の金属管で、材料には黄銅や青銅、海水を使う場合はチタンなどが使われます。

混合復水器は、復水が冷却水と混ざるため、そのままボイラー給水には戻せないので、復水回収の観点から、前者の方式を採用するのが一般的です。混合復水器は、地熱発電所など復水を回収しなくてよい設備で使われることがあります。

空冷式

空冷式は、フィンの付いた伝熱管に蒸気を通し、大気に放熱させて凝縮させる方式で、大型のものは、管の束をA字形に組み、下からファンで空気を送ります。

補給水の水源を確保できない場合などに用いられ、発電所の水の消費量は、冷却塔を使う場合の約10分の1とされます。

ただし機器が大きくなるため設置スペースが広くなり、イニシャルコストも高くなります。米国の特許資料では、50万kW級で敷地約3,700m2・高さ約34mの例が示されています。

空気の温度が高い夏は、空気と蒸気の温度差が小さくなるため、背圧が上がって出力が下がりやすいのが空冷式の弱点です。水冷式と空冷式のどちらが適しているかは、確保できる水などのユーティリティの条件や、土地などにより判断されます。

図3:水冷式と空冷式の違い

冷やす相手が水か空気かで、大きさ・水の使い方・季節の影響が変わります。

水冷式(表面復水器)
空冷式
冷やす相手
海水、冷却塔の循環水
大気(フィン付き管にファンで送風)
水の使用
冷却塔なら蒸発分の補給水が多い
冷却塔式の約10分の1
真空度
高い真空を作りやすい
気温が高いと背圧が上がる
大きさ・費用
伝熱面積が小さく、機器を小さくできる
設置スペースが広く、イニシャルコストが高い
選ぶ条件
海や河川、補給水を確保できる場所
水源が乏しい内陸・乾燥地など

※混合復水器(冷却水を直接噴霧する水冷式)は、復水が冷却水と混ざるため給水に戻せず、地熱発電所などに限られます。

空気抽出機の種類

復水器は器内が常に高真空なので、フランジ面などから少量の外気を吸い込み、空気は蒸気と違って凝縮しないため、器内にたまっていきます。

たまった空気は冷却管の表面を覆って伝熱を妨げ、放っておくと真空度が下がるため、空気を連続的に抜き出す装置が必要です。高い真空度を維持するために、主に次のような方法が取られます。

エゼクター

蒸気エゼクターで復水器の空気を吸い出す模式図

1つ目は、蒸気エゼクターを使う方法で、ノズルから蒸気を高速で噴き出し、その流れで周りの空気を巻き込んで吸い出します。

弁や回転部分を持たない単純な構造で、可動部がないため故障が少ないのが特徴です。複数段を直列につなぐと、高い真空を維持できます。

段の間には中間冷却器を置き、駆動に使った蒸気を水に戻して回収します。米国の原子力発電所(ABWR)の安全解析書では、2段のエゼクターを2組(各100%)持つ例が示されています。

設置スペースは抑えられますが、常に蒸気を使うので、ランニングコストは高くなる傾向があります。

真空ポンプ

真空ポンプで復水器の空気を吸い出す模式図

真空ポンプを使う場合は、エゼクター方式のような吸引用の蒸気は要りませんが、そのぶん設置スペースや電力代がかかります。

復水器の空気抽出には、封水(シール水)を使う水封式の真空ポンプがよく使われ、水分や蒸気を含む気体を吸っても扱いやすい形式です。

国内の火力でも、以前は蒸気エゼクターが主流でしたが、1985年の解説では、水封式の真空ポンプ(空気エゼクターと組み合わせたものを含む)が増えたとされています。

両方を備えて使い分ける設備もあり、前述の安全解析書の例では、起動時は真空ポンプで真空を作り、約7kPa(絶対圧)以下になったらエゼクターに切り替えます。これは、起動の直後は抜く空気の量が多く、エゼクターを動かす蒸気もまだ足りないためです。

国内火力の解説では、タービン起動前に約33kPa(250mmHg abs)まで引くとされています。どちらを採用するかは、設置スペース、イニシャルコスト、ランニングコストで判断します。真空ポンプの形式ごとの特徴は産業分野で使われる真空ポンプの種類で解説しています。

図4:エゼクターと真空ポンプの違い

どちらも空気を抜いて真空を保つ装置です。動かす力が蒸気か電気かで性格が分かれます。

蒸気エゼクター
真空ポンプ(水封式など)
動かす力
駆動用の蒸気
電動機
構造
可動部がなく故障が少ない。多段で高真空
回転部があり、封水の管理が要る
費用
設置スペースは小さいが、蒸気代がかかる
蒸気は不要だが、スペースと電力代がかかる
使われ方の例
通常運転で連続して空気を抜く
起動時に器内の空気を一気に抜く

※使われ方は STP 3・4号機(ABWR)の安全解析書の例です。真空ポンプだけで常時運転する設備もあります。

復水器の構造(胴・冷却管・ホットウェル)

一般的な表面復水器は、タービンの真下か横に置かれる大きな箱形の胴(シェル)です。中を通る4つの流れ(蒸気・冷却水・空気・復水)に沿って見ると、構造がつかみやすくなります。

蒸気はタービンの排気室から胴の上部に入り、冷却管の束の間を下りながら凝縮します。冷却水は管の中、蒸気は管の外を流れ、管の壁を通して熱だけが移ります。

冷却管の両端は管板に差し込まれ、その外側に水室があり、冷却水は入口の水室から管に入って反対側の水室から出ていきます。

凝縮しきれない空気は冷却管の束の奥に集まるので、そこに空気抽出口を設け、エゼクターや真空ポンプにつないでいます。

凝縮した水は胴の底のホットウェルにたまり、ここから復水ポンプで送り出されます。大型の発電所では、胴を複数に分けて圧力を変える多圧式もあります。

図5:表面復水器の主な部分

蒸気・冷却水・空気・復水が、それぞれ別の入口と出口を持っています。

排気室・蒸気入口【蒸気】タービンの排気を受け、胴の上部へ導く
胴(シェル)真空に耐える大きな容器。中で蒸気が凝縮する
冷却管の束【冷却水】管の中を冷却水が流れ、管の外で蒸気が水に戻る
管板・水室【冷却水】管の両端を支え、冷却水を管へ分配・集合する
空気抽出口【空気】管束の奥に集まる空気を、エゼクター・真空ポンプで抜く
ホットウェル【復水】胴の底で復水をため、復水ポンプへ送る

※管の配置や水室の数(冷却水が1回で抜けるか、折り返すか)は設備によって違います。

復水ポンプと復水の流れ

ホットウェルの復水は復水ポンプで送り出され、復水はほぼ飽和の状態で、しかも真空の容器から吸い込むので、ポンプの入口で泡が出やすい条件です。

そのため復水ポンプは、復水器より低い位置に据えて押込みの高さを確保します。キャビテーション(泡の発生と崩壊)を防ぐためで、大型火力では立形のピット・バーレル型が使われてきました。

送り出された復水は、途中で小さな熱交換器の冷却にも使われ、例えばグランドコンデンサやエゼクターの凝縮器は、復水で冷やすことで熱を給水側に戻します。

その後、低圧の給水加熱器で温められ、脱気器で溶けた酸素を除いてからボイラーへ送られます。

図6:復水が給水に戻るまで

復水器を出た水は、温められ、ガスを抜かれてからボイラーへ戻ります。

01ホットウェル復水器の底に復水がたまる
02復水ポンプ低い位置から押込みを取り、復水を送り出す
03補機の冷却グランドコンデンサ・エゼクター凝縮器を冷やし、熱を回収
04低圧給水加熱器タービンの抽気で復水を温める
05脱気器溶けた酸素などのガスを除く
06給水ポンプ → ボイラーボイラーの圧力まで上げて送る

※大型発電所では、復水ポンプの後に復水脱塩装置を置き、不純物を取り除く例もあります。順番や機器の数は設備によって違います。

復水器のよくある質問

復水器の真空度が悪くなる原因は?

大きく分けると、冷やす力が落ちたか、空気がたまったかのどちらかで、次の順に見ていくと、原因を切り分けやすくなります。

  • 冷却条件:冷却水の温度が上がった、流量が減った(夏や冷却塔の不調など)
  • 伝熱面:冷却管の内側の汚れ・付着物で、熱が伝わりにくくなった
  • 空気:フランジやグランドから空気が漏れ込む量が増えた
  • 抽気装置:エゼクターの駆動蒸気や真空ポンプの封水に不具合がある

米国 ABWR の安全解析書では、冷却水32.2℃のときの胴内圧力を約8.9kPa(絶対圧)とする参考値を示しています。国内の事業用火力は、設計の排気圧を38mmHg abs(約5.1kPa)とすることが多いとされます(1985年の解説)。

冷却水が温かいだけでも真空は浅くなるので、季節の差を除いて比べます。判断の基準や警報の値は設備ごとに違うので、メーカーの取扱説明書で確かめます。点検の周期の決め方は設備保全のTBMとCBMの違いが参考になります。

復水器と冷却塔の違いは?

復水器は蒸気を冷やして水に戻す機器で、冷却塔はその復水器で温まった冷却水を冷やす設備であり、熱は蒸気 → 冷却水 → 大気の順に渡っていきます。名前の似た機器も、受け持つものが違います。

  • 復水器:タービンの排気をすべて受け、真空を保って水に戻す
  • 冷却塔:復水器で温まった冷却水を、蒸発と送風で冷やす
  • グランドコンデンサ:軸封部から出る少量の蒸気と空気を受ける小さな熱交換器
  • タービンバイパス弁:タービンを通さずに、蒸気を復水器へ逃がす弁

まとめ

この記事のまとめ
  • 復水器とは、タービンで仕事を終えた蒸気を冷やし、水(復水)に戻す熱交換器
  • 大気圧以下の蒸気は水に戻ると体積が1,000分の1以下に縮むので、器内は自然に真空になる。真空ポンプやエゼクターは空気を抜いて真空を保つ
  • 真空にするのは、排気圧を下げて熱落差を大きくし、発電効率を上げるため。復水を回収して水処理の費用も抑える
  • 水冷式と空冷式があり、水や土地などの条件によりどちらを採用するかが変わる
  • 空気を抽出する方式にはエゼクター式と真空ポンプ式がある。復水はホットウェルから復水ポンプで給水系統へ戻る

復水器は、発電所の中でも特に重要な機器で、各方式のメリット・デメリットを理解しておくと、日々の運転管理で真空度の変化の意味が読めるようになります。

蒸気の流れ全体はヒートバランス(熱収支)で数字としてたどれます。発電設備に関わる仕事は、プラントエンジニアの仕事や製造業のエネルギー管理士の仕事で紹介しています。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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