ボイラーのスケールとスラッジは、どちらも水に含まれる不純物が原因ですが、違いは、伝熱面に固着するのがスケール、缶底に沈んでたまるのがスラッジという点にあります。
どちらも放っておくと熱が伝わりにくくなって燃料の無駄や故障につながるため、ボイラーを止めずに動かすには、両方を減らす管理が欠かせません。
この記事では、スケールとは何か、スラッジとは何か、両者を減らす3つの方法の順に整理するので、先に違いをまとめます。
- スケール:カルシウム・マグネシウム・シリカなどが、伝熱管や缶の内面に硬く固着したもの
- スラッジ:不純物や錆などが固まりきらずに、缶底にたまった泥状の沈殿物
- 対策:濃くなった水はブローで抜き、もとは水処理で減らし、付いた分は定期点検で取る
スケールとは
スケールは、水中に含まれるカルシウムやマグネシウムなどの鉱物が化合物となって、機器の側面などに析出したものです。ボイラーでは、伝熱管や缶の内面に石のように硬く付きます。
ボイラーの中では水が蒸気になって出ていき、溶けていた不純物だけが残って少しずつ濃くなり、温度が上がると溶けていられる量も減ります。
溶けきれなくなった分は固形物になり、その一部が管の内壁に付いてスケールに、一部が缶底に沈んでスラッジになります。水処理メーカーの栗田工業は、こうした仕組みを説明しています。
とくに伝熱面は水が激しく蒸発して不純物が濃くなりやすい場所なので、スケールは熱を受ける面ほど付きやすくなります。
同じ不純物でも、伝熱管に付けばスケール、缶底に沈めばスラッジになります。
※丸は伝熱管の断面で、外側の淡い層がスケールのイメージです。炉筒煙管ボイラーでは管の内側を燃焼ガスが通り、管の外側(水側)にスケールが付きます。
スケールのもとになる成分は、主に次のとおりです。
- カルシウム・マグネシウム(硬度成分)。濃くなって溶けきれなくなった分が析出する
- シリカ(SiO2)。シリカスケールになる。軟水器の対象は硬度成分で、シリカは脱塩処理や濃縮管理で抑える
- 鉄や銅の酸化物。給水配管や戻ってきた復水(ドレン)から持ち込まれる
スケールが発生すると、次のような問題が起きます。
- 伝熱効率が低下する
- バルブなどが固着する
- 過加熱となり、伝熱面に穴が開く
熱を通しにくい層が、燃料・操作・安全の3つの面に響きます。
3つの中でも根っこにあるのは、スケールが熱を通しにくいことです。米国エネルギー省(DOE)の資料では、スケールの熱伝導率は一般にむき出しの鋼より1桁小さいとされています。栗田工業も、鋼などに比べて熱伝導率が極端に低いと説明しています。
薄い層でも断熱材のように働くため、燃焼ガスの熱が水に移りきらずに煙突へ出ていきます。排ガスの温度が上がるぶん、ボイラー効率が下がり燃料が増えます。
管の金属も水で冷やされにくくなって温度が上がり、三菱重工マリンマシナリは、この過熱で伝熱面が傷み、管に穴が開いて漏れる可能性があると説明しています。
燃料がどれくらい増えるかは、スケールの厚さと成分で変わり、DOE は、米国国立標準技術研究所(NIST)のハンドブックから次の目安を引いています。
目安として、0.8mmほどの層でも燃料の損失は2%前後です。鉄やシリカを含む組成では、さらに大きくなります。
※燃料使用量に対する損失の割合。厚さはインチ表記(1/64・1/32・3/64・1/16インチ)をmmに換算。「普通」は低圧のボイラーで多い組成、「鉄分が多い」「鉄+シリカ」は高圧で運転するボイラーで生じる組成です。エコノマイザや空気予熱器のない炉筒煙管ボイラーの値で、自社のボイラーの損失率そのものではありません。出典:米国エネルギー省 Steam Tip Sheet #7(NIST Handbook 115 Supplement 1 より)
この表は、排熱を回収する装置のないボイラーの値です。エコノマイザなどがあれば、排ガスの熱の一部を取り戻せるため、損失は表より小さくなります。それでも DOE は、スケールは少しでも付けないのが基本としています。
仮に年間の燃料費が3,000万円のボイラーで2%の損失なら、年60万円になります(仮定の数字です)。燃料だけでなく、過熱による管の損傷という修理の費用も加わります。
スケールは鉄錆とは異なりますが、起きる問題が似ているため見分けにくく、スケールと断定するには、配管の開放点検や成分分析が必要です。
スラッジとは
スラッジとは、配管の錆や有機的な化合物、機械油などが底部に集まった汚泥の総称です。スケールは表面に張り付くもの、スラッジは液体の中にあって底に沈むもの、と分けて考えます。
スラッジが指すものは業界ごとに違い、たとえば排水処理で出る汚泥は、廃棄物処理法で廃棄物の一つとされ、脱水して減らす処理が大きな課題です。
ボイラーの場合は、給水中に含まれる不純物が蒸発によって濃縮され、缶内の底部にたまる汚泥のことを言います。この記事でも、ボイラーの缶内に沈んでたまる泥状の固形物をスラッジと呼びます。
スケールとの違いは、できたあとの居場所で、前述のとおり、もとは同じ不純物ですが、管に固着すればスケール、固着せずに沈めばスラッジになります。
ボイラーの水処理では、清缶剤や分散剤(ボイラー水に入れる薬品)で不純物を管に付かせず、水中に散らしたままブローで外へ出す考え方もとられます。スラッジが発生すると、スケールと同様に機器の故障や寿命の低下につながります。
もとは同じ不純物でも、状態とたまる場所、取り除き方が違います。
※成分や呼び方は業界・設備によって幅があります。表はボイラーでの一般的な整理です。
ボイラー以外の現場でも、スラッジは身近な問題です。金属を削る工場では、加工液(クーラント)にたまる細かな切りくずもスラッジと呼ばれ、回収装置が使われます。鉄系・アルミのスラッジを回収する様子は、株式会社ニクニの公式チャンネルの動画で見られます。
スケールやスラッジを低減する方法
ボイラーなどの重要な機器では、スケールやスラッジは連続運転を妨げる大きな要因なので、発生するリスクを下げる方法には、次の3つがあります。
ブロー・水処理・定期メンテナンスは、抑えるものがそれぞれ違います。
※3つは互いの代わりになりません。持ち込まない・濃くしない・付いたら取る、を組み合わせて管理します。
ブローを行う
定期的にブローすると、不純物をボイラーの外へ出せます。ブローには、底部から抜く缶底ブローと、少量を水面付近から排出し続ける連続ブローがあります。
連続ブローは、水面近くの濃くなった缶水を抜いて、スケールのもとが濃くなりすぎるのを防ぎます。缶底ブローは、底に沈んだスラッジを運転前や低負荷時などに短時間でまとめて抜きます。
役割が違うので、連続ブローで缶底ブローの代わりはできません。ブローは温まった水を捨てる操作でもあり、多く抜くほどよいわけではありません。量の決め方はボイラーのブローの記事で整理しています。
水処理をする
スケールの原因となる鉱物を取り除く軟水処理や、腐食を防ぐアルカリ処理などをすると、不純物の発生そのものを減らせます。軟水処理は、カルシウムやマグネシウムを取り除いた水をボイラーに送る方法です。
シリカは軟水器では取れないため、脱塩処理や、缶水を濃くしすぎない管理で抑え、軟水器から硬度成分が漏れていないかを、定期的に確かめることも欠かせません。
鉄の酸化物もスケールやスラッジのもとになり、給水に溶けた酸素は腐食を進めるため、脱気器で酸素を抜く対策も、結果としてスケール・スラッジを減らします。
清缶剤などの薬品は適量を守ることが前提で、入れすぎると泡立ちの原因になり、缶水が蒸気と一緒に持ち出されるプライミングやフォーミングにつながります。
水質の管理値は、JIS B 8223(ボイラの給水、ボイラ水及び蒸気の質)で、ボイラーの形式や圧力、水処理の方式ごとに分かれています。どの処理を選ぶかは、給水の水質を測ってから決めます。
水処理の基本は、ボイラー水の水処理とは?しないとどうなる?にまとめています。
定期メンテナンスをする
一度発生したスケールやスラッジは排出するのが難しいため、定期的な開放点検などのメンテナンスが必要です。いまでは、ボイラーの販売と合わせてメンテナンス契約を結ぶことが多くなっています。
運転中の兆候は排ガスの温度に出て、DOE は、同じ負荷・同じ空気比なのに排ガスの温度が少しずつ上がっていくなら、スケールが付いている可能性があるとしています。
ただし、排ガスの温度は負荷や空気比の変化でも動くため、温度の上昇だけで断定せず、停止したときの点検や成分の分析で確かめます。
兆候をつかみ、止めて確かめ、成分を見てから取り除きます。
※取り除いたあとは、給水の水質やブローの量を見直し、再び付かないようにします。
付いてしまったスケールは、酸で溶かす化学洗浄か、機械的な方法で取り除きます。栗田工業は、厚さに合わせたスケール除去剤や酸洗浄剤のほか、スケール除去機能を持つ清缶剤も挙げています。
点検の周期を決めるときは、設備保全のTBMとCBMの考え方が使えます。決まった周期で開ける点検に、排ガス温度の記録を組み合わせると、開放の時期を判断しやすくなります。
スケールとスラッジのよくある質問
溶接のスラグとは違うものですか?
別のものです。溶接スラグは、溶接のときに溶接ビード(溶けて固まった部分)の表面を覆う酸化物などのかすで、溶けた金属を大気から守る役目があります。
塗装の前などには取り除き、溶接の方法ごとの違いは、溶接の種類と違いで整理しています。
配管や冷却塔にもスケールは付きますか?
付きます。冷却塔の水も蒸発で濃くなるため、炭酸カルシウム系のスケールが付きやすくなります。厚生労働省の資料でも、ブローで濃縮を抑え、薬品でスケールを防ぐ方法が示されています。
水道水にもカルシウムやマグネシウムは含まれ、湯を沸かす機器や熱交換器に白い付着物が出るのは、同じ仕組みです。
スラッジは連続ブローで抜けますか?
抜けません。連続ブローは水面近くの缶水を抜く装置で、連続ブローがあっても缶底ブローは省けないので、底に沈んだスラッジは缶底ブローで抜きます。
まとめ
- スケールは、カルシウム・マグネシウムなどの鉱物やシリカが化合物となって析出し、伝熱面に固着したもの
- スラッジは、不純物や錆などが集まって缶底にたまった汚泥
- もとは同じ不純物で、管に付けばスケール、沈めばスラッジになる
- スケールは熱を通しにくく、0.8mmほどの層でも燃料の損失は2%前後(DOE の目安)
- 低減する方法は、ブロー、水処理、定期メンテナンスの組み合わせ
スケールやスラッジは、ボイラーを管理する人にとって頭の痛い問題ですので、普段から水質とブローを管理し、定期的なメンテナンスでトラブルを防ぎましょう。
燃料の無駄を減らす取り組みは、工場の省エネの基本でもあります。保全の仕事全体は設備保全とはで、ボイラーの全体像はボイラーとは何かで整理しています。
出典
出典・参考資料(9件)を開く出典・参考資料を閉じる
- スケールとスラッジのでき方・成分・熱伝導率・対策:栗田工業 水処理教室「ボイラで発生する『スケール障害』とは」
- ボイラーの障害と水処理(硬度成分・シリカ・軟水器・清缶剤):栗田工業 水処理教室「ボイラの水処理を行う必要性」
- 排水処理の汚泥:栗田工業 水処理教室「汚泥処理とは?」
- スケールの熱伝導率・厚さと燃料損失・排ガス温度による兆候:U.S. Department of Energy「Steam Tip Sheet #7: Clean Firetube Boiler Waterside Heat Transfer Surfaces」(2012年)
- スケールによる過熱と伝熱管の損傷:三菱重工マリンマシナリ「ボイラの内面(水側伝熱面)の化学洗浄の推奨」(2024年10月)
- スケールの付着・スラッジの沈殿と水質管理:環境省 温室効果ガス排出削減等指針「ボイラー給水の水質の適切な管理」
- 水質の規格:日本規格協会 JIS B 8223:2021「ボイラの給水,ボイラ水及び蒸気の質」(プレビュー)
- 冷却水の炭酸カルシウム系スケール:厚生労働省 レジオネラ症防止指針関連資料(冷却塔の水処理)
- 溶接スラグ:大同特殊鋼「スラグを低減した溶接ワイヤによる溶接部の電着塗装性および架橋性」(電気製鋼 第95巻第1号、2024年)
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