パルス信号は一定の時間だけONになる短い信号、ステータス信号はONの間ずっと機器の状態を示す信号です。
どちらも機械の操作や運転状態の監視に使うON/OFFで扱うデジタル信号ですが、違いは、ONになった瞬間に意味があるか、ONが続いていることに意味があるかにあります。
この記事では、2つの信号の中身と使い分け、レベル信号との関係、流量計などのパルスカウント、DCSと機器で種類を合わせる注意点を順に整理します。
ポンプを遠隔で動かして止める場面です。指令は短いパルス、運転中はステータス信号で、ONの長さがまったく違います。
※上の2段がパルス信号、下の段がステータス信号です。パルスの長さ(ここでは1秒)は説明用の例で、実際は相手の機器やDCSの設定で決めます。
パルス信号
パルス信号は一定の時間だけ存在する短い信号です。例えば「1秒パルス」という場合、信号は一度ONになると1秒間だけ電圧信号が送られ、その後OFFに戻ります。パルス信号の使い方は、大きく次の2つです。
- 運転・停止などの動作を始めるきっかけ(指令)
- 流量や電力量など、積算した量を数える
1つ目の指令の使い方では、短い信号を運転指令や停止指令のトリガーにするため、押して離すスタートボタンと同じ役割です。
運転指令などのトリガーを受け取った機械が運転を維持するには、パルス信号が消えた後も機械が動き続けるように、電源回路に自己保持回路が必要です。
自己保持は、動いたリレーや電磁接触器が自分のa接点で自分のコイルに電気を流し続け、指令が消えても動作を保つ回路です。書き方は自己保持回路とは何かで整理しています。
短い指令を、制御盤の自己保持回路が「運転を続ける状態」に置き換えます。
※停止もパルスで指令する場合の例です。回路の組み方は設備ごとに異なります。
停電などで電源が切れたときもコイルに電気が来なくなって保持は外れるため、パルスと自己保持で組んだ回路なら、復電しても次の運転指令が来るまで機械は動き出しません。
ただし、瞬停の間だけ投入を保つ遅延釈放形や、停電中も投入を保つ機械ラッチ式の電磁接触器もあり、運転指令を保持で送る回路も復電で動き出すことがあるので、設備ごとに確かめます。
自己保持に、条件がそろわなければ動かさない回路を組み合わせる方法は、インターロック回路の作り方で整理しています。
2つ目の使い方として、流量計や電力量計では、流量や電力量の積算値を数えるときにパルス信号を使い、1パルスが表す量をパラメータで設定して、その量に達するたびに発信器からパルスを送ります。
同じパルスでも、運転指令のパルスはON/OFF信号(DI/DO)の出し方の一つで、積算のパルスは数を数えるPI/POとして扱います。
信号の種類と方向の呼び方は、DI/DO・AI/AO・PI/POの違いで整理しています。4-20mAなどの電流信号とパルス信号の比較は、電流信号とパルス信号の違いにまとめています。
ステータス信号
ステータス信号は、機器の現在の状態を示すために使用される信号で、例えば、レベルスイッチの接点や、機械が運転中であることを示す接点信号がこれにあたります。
特定の条件が成り立っている間はONのまま出力され続けるため、機器が動いているか、プロセスが正常に進んでいるかを監視するのに向きます。条件が崩れれば信号もOFFに戻るので、状態の変化をそのまま追えます。ステータス信号の代表例は次のとおりです。
- 運転中・停止中
- 故障(異常)
- レベルスイッチの上限・下限
- 自動弁の開・閉(リミットスイッチ)
- 現場操作・遠方操作の切替
自動弁の開閉を接点で返す仕組みは、自動弁のリミットスイッチの記事で詳しく説明しています。
この記事では、ONかOFFかという信号のレベル(状態)そのもので意味を伝える信号をステータス信号と呼んでおり、同じものはレベル信号とも呼ばれます。現場では保持信号、状態信号とも呼び、言い方は会社や業界で揺れるため、名前だけで判断せず、取り合い先とは中身で確かめます。
パルス信号とステータス信号(レベル信号)の違い
2つの違いは、信号がどの時点で意味を持つかです。パルス信号はOFFからONに変わる瞬間に、ステータス信号はONが続いている間ずっと意味を持ちます。
受け側が「変わった瞬間」を見るか、「いまの状態」を見るかで分かれます。
※故障信号を「故障で開く」b接点で返す設計もあります。どちらの接点で返すかは信号リストに書いて合わせます。
PLCの中でも、この2つの見方を使い分けます。三菱電機の命令一覧では、入力がONの間ずっと実行する「ON時実行」と、OFFからONに変わったときだけ実行する「立上がり実行」を分けています。
立上がりでパルスを作るPLS命令は、プログラム1周分だけONになるパルスを発生させます。PLCが入力を読んで出力を決める流れは、PLCとシーケンス制御の仕組みで紹介しています。
使い分けの目安は、一度だけ起こしたい動作はパルス、いまどうなっているかはステータスです。運転の状態をパルスで返すと、途中から監視を始めた側には今の状態が分かりません。
パルスカウント(積算パルス)の仕組みと注意点
パルスカウントとは、届いたパルスの数を数え、1パルスあたりの量を掛けて積算値を出すことです。流量計の積算流量、電力量計の積算電力量、ガスメーターや水道メーターの検針などで使います。
1パルス=0.1m³の流量計から1時間に1,200パルス届けば、その1時間の流量は120m³です。
※1パルス=0.1m³は説明用の仮の値です。実際の重みは、流量計の仕様と設定で決まります。
受け側の重みを1m³と1桁まちがえると、同じ1,200パルスが1,200m³と10倍に表示されます。積算値は後から気づきにくいので、試運転で発信器の表示と受け側の値を突き合わせます。
パルスにはゆっくりしたものと速いものがあり、数える側の機器はその速さに合わせて選びます。
同じパルスカウントでも、1秒に1つ程度から1秒に何十万までと幅があります。
※数値は各社の製品仕様の例です。受けられるパルスの速さと幅は、型式と設定で変わります。
受け側が読み取る間隔より短いパルスは、数え落としの原因になります。PLCは入力をスキャンのたびに読むので、その合間に始まって終わったパルスは見えないためです。
パナソニックのセンサの解説では、短い出力にオフディレイをかけ、PLCのスキャンタイムより長く延ばして取り込む方法を紹介しています。速いパルスを数えるときは、高速カウンタで受けます。
パルスは「どれだけ流れたか」を数えるのに向き、「いま何m³/hか」を見るのは苦手です。瞬間の値は4-20mAのアナログ信号で受け、積算はパルスで受ける組み合わせがよく使われます。
通信機能のない古いメーターや設備から、後付けで信号を取り出す方法は古い設備のIoT後付けの手順で紹介しています。
DCSと機器で信号の種類を合わせる
DCSなどで機械を遠隔で操作するときは、送る側と受ける側で信号の種類を合わせる必要があります。信号の名前だけでなく、受け側がONの間に動くのか、立上がりで動くのかまで確かめます。
信号ごとに、向き・種類と受け側の動きを1行にして、取り合い先とすり合わせます。
※説明用の例です。保持で指令する場合は、運転指令のONで運転、OFFで停止となり、停止指令の線を使わないこともあります。
食い違ったときに起きることは、回路の作りから見当がつきます。
- 保持で受ける回路にパルスを送る:パルスが切れた時点で止まる(1秒パルスなら1秒で止まる)
- 自己保持で受ける回路に保持を送る:停止パルスが終わると、ONのままの運転指令でまた動き出すことがある
- パルス幅が短すぎる:受け側が読み取れず、指令が届かないことがある
取り合いを決めるときは、次の順で確かめると漏れが減ります。
- 何を伝える信号か(一度だけの指令か、いまの状態か)
- 受け側はONの間に動くか、立上がりで動くか
- パルス幅、積算なら1パルスの重みと最高の速さ
- 線が切れた・通信が止まったときに、止めたいか動かし続けたいか
決めた内容は、信号リストに「保持かパルスか」とパルス幅まで書き残し、前述のDI/DOの記事で紹介した信号リストの記入例でも、同じ項目を確かめています。
自己保持の接点を図面でたどる方法はラダー図の読み方で、DCSそのものの仕組みはDCSとは何かで整理しています。
パルス信号とステータス信号のよくある質問
レベル信号とパルス信号の違いは何ですか?
レベル信号は、ONかOFFかという状態そのもので意味を伝える信号で、この記事のステータス信号と同じものです。パルス信号は、OFFからONに変わった瞬間に意味を持つ短い信号です。
「運転中」のように続いている事実はレベル信号、「運転せよ」のように一度だけの合図はパルス信号で送ります。
パルスカウントとは何ですか?
パルスの数を数え、1パルスあたりの量を掛けて積算値を出すことで、流量計の積算流量や、電力量計の積算電力量でよく使います。正しく数えるには、送る側と受ける側で重みとパルス幅をそろえ、受け側がパルスの速さに追いつくことを確かめます。
運転指令はパルスと保持のどちらがよいですか?
どちらも使われ、決まった正解はありませんが、違いが出るのは、指令が途切れたときの振る舞いです。
保持で送ると、指令が途切れた時点で機械は止まります。パルスと自己保持で組むと、機械は動き続け、止めるには停止の指令が要ります。どちらにするかは、本文の「DCSと機器で信号の種類を合わせる」の確認の順番で決めます。
パルスを取りこぼすのはなぜですか?
主な原因の一つは、パルスの幅が受け側の読み取る間隔より短いことで、PLCは入力をスキャンごとに読むため、その合間に終わったパルスは見えません。対策は次のいずれかです。
- パルス幅を延ばす(センサのオフディレイなど)
- 高速カウンタで受ける
- 1パルスの重みを大きくして、パルスの数を減らす
まとめ
- パルス信号:短時間のみ存在し、特定の動作をトリガーするために使われる
- ステータス信号:システムの状態を長期にわたって示すために用いられる(レベル信号とも呼ぶ)
- パルスの指令で運転を続けるには、自己保持回路が要る
- パルスカウントは、パルスの数×1パルスの重みで積算値を出す。重み・パルス幅・速さを送受で合わせる
- DCSと機器の取り合いでは、保持かパルスか、受け側がどこで動くかを信号リストに書く
DCSなどを利用して機械を遠隔で操作する場合には、INとOUTの両方で想定している信号種別を合わせる必要があります。
機器の動作シーケンスを考えるときは、信号リストで種類とパルス幅を確かめ、間違えないように注意しましょう。制御盤の設計全体の流れは、制御盤設計の進め方で紹介しています。
出典
出典・参考資料(5件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 命令の実行条件(ON時実行・立上がり実行)とPLS命令:三菱電機 FA機器eラーニング「Qシリーズシーケンサ 命令一覧」
- 高速カウンタユニットの速度:三菱電機 MELSEC iQ-R シリーズ ユニット一覧
- メーターのパルスの受け方(パルス幅・入力周波数・パルスレート):アズビル金門「パルスカウンタ KDC-812 製品仕様書」
- センサ出力のオフディレイ・ワンショットとPLCのスキャンタイム:パナソニック センサ用語集「タイマ機能とは?」
- 停電時に投入を保つ電磁接触器(機械ラッチ式・遅延釈放形):三菱電機 電磁接触器 製品ページ
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