比率制御とは、基準になる流量に合わせ、もう一方の流量を一定の比率に保つ制御です。基準側が増えれば追従側も増やし、二つの供給量の関係をそろえます。
ボイラーでは燃料と燃焼用空気、混合設備では主原料と添加液の組合せに使います。流量計で測り、比率器で目標を計算し、調節計と弁で実際の流量を合わせる仕組みです。
仕組みを読む鍵は、測定値と設定値、実流量の比率と電気信号の倍率を分けることです。以下では二液の例で信号を追い、計算方法から燃焼制御での使い方へ進みます。
動画の燃料と空気の説明は、定常時の関係として捉えてください。負荷を増す際は空気先行、減らす際は燃料先行となる制御が必要で、失火の保護は別の安全機能が担います。用途は燃焼のほか薬液添加にも広がります。
比率制御とは?
比率制御では、Aの実測流量に比率を掛け、Bの流量設定値をつくります。Aを基準側、Bを追従側と呼ぶことにし、Bの調節計が設定値と測定値の差を小さくするように弁を動かします。
Aの流量が生産量や別の制御で変わると、それに応じてBの目標も変化します。Bを一定流量に固定する制御と異なり、生産量が変わっても配合の関係を保てる点が利点です。
基準側と追従側の信号を読む
Aの流量からBの目標を計算し、Bの実測値を戻して流量を合わせます。
横にスクロールすると右端まで読めます。
比率器・調節計はDCS内の演算機能として実装することもあります。図の弁はB側だけを描いています。
検出器は流量を測り、伝送器がその値を制御装置へ送ります。比率器は受け取ったA流量に倍率を掛ける機能で、Bの実流量を測ったり、弁を直接駆動したりする役割とは分かれています。
Bの調節計には、目標のSPと現在値のPVが入り、操作量MVが出ます。SPは設定値、PVは測定値、MVは弁への指令を意味し、比率器の出力はこのうちSPへ入ります。
弁は流路を絞って流量を変える操作端であり、弁開度と流量は別の量です。差圧や流体の条件でも流量が変わるため、同じ開度比にするだけでは流量比を一定にできません。
弁の通しやすさはCv値と調節弁の容量選定に関係します。弁軸を指令位置へ動かすポジショナの機能と、流量をSPに合わせる調節計の機能も区別して読みます。

図1では、Aの設定値ではなく実測値を比率器へ送っています。Aの流量が予定より減ったときにも、実際に来ている量に合わせてBの目標を減らせる構成です。
一方、共通の生産要求からAとBそれぞれのSPをつくる方式もあります。その場合は両流量が要求へ追従する構成になり、片側の流れが遅れたときの比率は、実測値を使う方式と同じにはなりません。
図面では配管と信号線を分け、どの測定値がどのSPに入るかを追います。実際の計器記号は案件の凡例と照合し、読み方の基本はP&IDの計器と信号線で整理しています。
比率と単位を決める
比率は、追従側Bを基準側Aで割った値として定義します。同じ単位の体積流量を使うなら比率は無次元ですが、質量流量や異なる体積基準を混ぜると、換算も計算に含める必要があります。
説明用に、Aが60m³/h、BをAの20%とする条件を考えます。比率rは0.20で、Aが80m³/hに増えればBの設定も16m³/hへ上がります。
ここでB/Aが20%でも、混合後の全量に占めるBは20%になりません。体積を加算できる例なら全量は72m³/hで、Bの割合は12/72、約16.7%です。
比率器には、倍率に加えて一定量を足すバイアスの機能を持つものがあります。MGの技術資料でも、出力は入力にレシオを掛け、バイアスを加える一次式で説明されています。
バイアスは直線を上へずらします。一定比率は原点を通る直線です。
例は流量の工学値での演算です。信号の%でバイアスを指定する機器では、レンジを使って流量へ換算します。
Aが止まってもBを供給する設計なのかは、ゼロ点での動作に現れます。最低流量を確保する下限制限も同様にゼロから離れるため、停止条件と通常運転の演算を分けて設計します。
kg/hの原料へL/hの液を添加するなら、rの単位はL/kgになります。比率の数字だけでなく、B/Aの向き、時間単位、密度をどこで換算するかを仕様に書くと設定の食い違いを防げます。
4-20mAのレンジが違うとき
流量の比率と信号の倍率が一致するのは、両者のレンジ条件も対応するときです。4-20mAは測定範囲を信号へ割り当てるため、AとBで上限が違えば、同じ電流でも表す流量が違います。
Aを0〜100m³/h、Bを0〜40m³/hとして、先ほどと同じr=0.20を考えます。Aが60m³/hならA信号は60%、B目標12m³/hはBレンジの30%です。
流量比0.20を実現する信号倍率は、このレンジでは0.50になります。
| 比較する値 | A 基準側 | B 追従側の目標 |
|---|---|---|
| 4-20mAの割当て | 0〜100m³/h | 0〜40m³/h |
| 例の流量 | 60m³/h | 12m³/h |
| レンジに対する割合 | 60% | 30% |
| 電流 | 13.6mA | 8.8mA |
| 対応関係 | 工学値ではB=0.20×A / 正規化信号ではB=0.50×A | |
ゼロからの流量レンジ、流量に比例した信号、バイアスなしという仮定です。
正規化とは、レンジ下限を0、上限を1として値を表すことです。AとBの上限をそれぞれSA、SBとすると、信号へ掛けるゲインKは次のように求められます。
4mAがゼロ流量を表すので、電流そのものを0.20倍する計算も誤りです。まず4mAのオフセットを引いて信号幅を扱い、演算後に4mAを戻すと、下の結果になります。
工学値に換算してから比率を掛ける調節計なら、この例の入力はr=0.20です。信号の0〜100%へ演算する比率変換器ではK=0.50となるため、取扱説明書の演算対象を見て設定します。
流量レンジ下限がゼロ以外なら、下限値を含む換算が必要です。電流信号と測定範囲の基本は4-20mAの仕組み、入出力の向きはAI・AOなど信号の種類と方向で説明しています。
ボイラーの燃料と空気を組み合わせる
ボイラーでは、蒸気の使用量に応じて燃焼量を変え、蒸気圧力を保ちます。燃料には燃焼用の空気を対応させる必要があり、二つの流量の関係を決める部分に比率制御を使います。
図4は圧力・燃料・空気の役割を定常時の関係で整理した図で、実機の負荷変化は続く図5の制限も組み合わせて扱います。燃料側に圧力と流量の二重ループ、空気側に燃料流量を基準とするループがあります。
圧力調節計は燃料の目標を変え、実測燃料から空気の目標を計算します。
燃料弁の操作信号と空気ダンパの操作信号は、各流量調節計から出ます。
蒸気を多く使って圧力が下がると、圧力調節計が燃焼量の要求を増やします。燃料流量調節計がその要求へ追従する構成は、上位の出力を下位のSPにするカスケード制御です。
空気側は、燃料流量に必要な空気量を対応させて目標をつくります。理論空気量に対して実際に送った空気量の割合が空気比で、単純な空気体積/燃料体積という流量比とは定義が異なります。
燃料の組成や空気・燃料の流量基準によって、必要な倍率も変わります。ガスの実体積と基準状態への換算体積を混ぜず、温度や圧力の補正を含めた同じ基準で演算します。
空気が過剰になると排ガスとして持ち去る熱が増え、空気不足は不完全燃焼につながります。排ガスの酸素濃度などを使う補正もあり、比率設定は負荷ごとの燃焼状態と合わせて決めます。
このため、一定の倍率を全負荷に当てはめるだけでは最適化できない場合があります。熱損失との関係はボイラー効率の考え方、機器全体の構成はボイラーの仕組みで確認できます。
負荷が変わるときはクロスリミットを使う
燃料弁と空気ダンパは、同時に指令しても同じ速さでは動きません。増負荷で燃料だけが先に増えると一時的な空気不足になるため、実測流量による相互制限を組み合わせます。
これがクロスリミットで、横河の燃焼制御資料では増負荷は空気を先に増やし、減負荷は燃料を先に減らす関係を示しています。反対側の実測値を使い、許される燃料増加や空気減少を制限します。
空気不足側へのずれを抑えるため、増やすときと減らすときで順序を変えます。
順序を示す模式図で、応答時間や空燃比の数値は示していません。空気・燃料を同じ燃焼負荷相当に換算した比較です。
燃料側では、燃焼要求と空気流量から求めた許容燃料量を比べ、小さい方を選びます。空気側では、燃焼要求と燃料流量から求めた必要空気量を比べ、大きい方を選ぶ構成が代表例です。
比較する前には、空気と燃料を同じ負荷相当の信号に換算します。m³/hとkg/hをそのまま大小比較する機能ではなく、比率やレンジの演算と選択器を組み合わせた制御です。
クロスリミットと燃焼安全装置も役割が分かれます。失火時の燃料遮断、点火前のパージ、異常時のインターロックは安全機能であり、流量比が合っているだけで燃焼の安全は保証されません。
アズビルの技術資料でも、燃焼の制御系と、火炎監視や燃料遮断を担う安全系を区別しています。実設備ではメーカーの設計と安全シーケンスに従い、比率を変える際も安全設定を独立して扱います。
薬液添加での使い方と点検の順番
比率制御は、流れてくる原料や処理水に応じて添加量を変える場面にも使います。横河のpH技術資料では、廃液流量の変化に応じて薬剤流量を変える方式が示されています。
処理後のpHが変わってから薬剤を増減する制御に対し、流入量の変化を先に取り込めます。負荷の情報から操作を先回りするフィードフォワードの要素を、追従側の流量制御へ加えた形です。
ただし、同じ流入量でも廃液の成分が変われば必要な薬剤量は変わります。流量比は投入量の関係を整える機能なので、pHなど品質の測定値で比率を補正する構成と組み合わせます。
設備で比率が合わないときは、最初にBのSPが計算どおりかを見ます。SPが違うなら演算やレンジ、SPは正しくPVだけが届かないなら流量ループ側へと調査範囲を分けられます。
- AとBの流量単位・基準状態・B/Aの向きをそろえる。
- Aの実測値からBの目標を手計算し、表示SPと比べる。
- BのPVとSPの差、弁指令と実開度、供給圧力を順に見る。
- 追従が崩れた時刻の流量変化と、各機器の応答を照合する。
上限制限に達すると、比率器の計算値をそのまま実現できなくなります。例えばBの供給能力が15m³/h、r=0.20なら、Aが75m³/hを超えたところからBの不足が生じます。
弁指令が上限に張り付き、流量PVがSPより小さいときは、この能力制限が候補になります。計器の数値を調整して見かけの比率を合わせず、必要流量と供給側の能力を照合するのが順序です。
低流量では測定誤差が比率へ大きく効き、基準流量がゼロに近いとB/Aの表示も不安定になります。最小流量、入力異常時の扱い、追従側停止の条件を制御仕様に含めると、運転可能な範囲が明確になります。
- 実測基準流量から、追従側の流量設定値をつくる。
- 比率器は計算、調節計はSPとPVの比較、弁は実流量の操作を担う。
- 比率の向き・流量単位・計器レンジをそろえて設定する。
- バイアスや上下限が加わると、純粋な一定比率から外れる。
- 燃焼では過渡の相互制限と、独立した安全機能を組み合わせる。
比率制御のよくある質問
比率制御とカスケード制御は何が違う?
比率制御は二つの流量の関係を保ち、カスケード制御は上位調節計の出力を下位調節計の設定値にします。ボイラーの例のように、同じ設備の中で両方を組み合わせて使えます。
比率器だけあれば制御できる?
比率器だけでは、計算した値と実際の流量が合ったかを判断できません。図1の構成では、追従側の流量計と調節計、流量を変える弁までそろって、流量のずれを戻すループが成立します。
比率0.2は混合濃度20%という意味?
B/A=0.2という定義なら、混合後のB割合は約16.7%です。割合の分母がAだけなのか、AとBの合計なのかを先に決め、質量濃度なら原料の濃度も含めて収支を計算します。
AとBの流量計は同じレンジにする?
必要な流量域を測れるレンジをそれぞれ選び、演算側で対応を取ります。異なるレンジでも比率制御はでき、工学値へ換算して演算する方式と、正規化した信号へ倍率を掛ける方式で設定値を変えます。
燃料と空気を同じ割合で動かせば安全?
流量の応答差や失火は一定比率だけでは扱えません。負荷増減に応じたクロスリミットと、火炎監視・燃料遮断などの安全機能を備え、通常の流量調節とは分けて成立させます。
出典
- 流量比率の基本構成・工学値演算・燃焼制御:横河電機「US1000 Application Notes」AP1008、AP2013
- レシオとバイアスの関係:MG「Application Note 比率変換器」(2000年12月)
- 負荷増減の先行関係・流量計測と選択器:横河電機「YS1700 Boiler Combustion Control」
- 薬剤流量と廃液流量の比率・成分補正:横河電機「FLEXAシリーズ プロセス用pH計」7章、図7.3
- 調節弁の操作端としての役割:アズビル「次世代調節弁6000シリーズの開発」(2026年)
- 燃焼安全系・制御系の役割、パージと火炎消失時遮断:アズビル「IoT時代の熱源コントロール・ソリューションの紹介」3章(2018年)
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