熱交換器の最大交換熱量は?向流・並流の限界と計算例

工場のプレート式熱交換器と接続配管

熱交換器の最大交換熱量は、相変化がない場合、小さいほうの熱容量流量と、二流体の入口温度差の積で表せます。ここでいう熱容量流量とは、単位時間に流れる流体の温度を1K変えるのに必要な熱流率です。

この理論上限にどこまで近づけるかは向流・並流という流れ方と伝熱面積で決まるため、排熱回収では、回収できる限界をつかんでから設備の大きさと必要な出口温度を選びます。

以下では向流と並流を同じ入口条件で比べ、熱収支から出口温度、必要面積まで計算します。向流では流向が逆になるので、二つの出口温度を比べる場合と、同じ位置の温度差を見る場合を分けて考えます。

動画の「対数平均温度差が取れなくなる」は、端の温度差がゼロに近づく理論極限として読みます。両端差が等しいときの0/0は極限値で計算でき、向流では異なる端にある低温側出口が高温側出口を上回ることもあります。

目次

熱交換器の最大交換熱量

図1:二つの流路と四つの温度を分けて読む

壁を挟んで熱だけを渡す向流の模式図。温度計は各流路の入口と出口を測ります。

高温入口 T₃高温出口 T₄低温出口 T₂低温入口 T₁高温流体 →← 低温流体m₁c₁ と m₂c₂ を比較する伝熱壁

スマートフォンでは横にスクロールできます。T₁〜T₄は以下の式と共通で、装置の上下配置を指定する図ではありません。

高温側から失われた熱を低温側で受け取るので、両側の交換熱量は一致します。ここでは定常運転で外部への放熱や仕事を無視し、二流体とも相変化せず比熱が一定として、次の熱収支を使います。

熱容量流量と交換熱量(単位時間あたり)
Cc = m1c1  Ch = m2c2
Q = Cc(T2 − T1) = Ch(T3 − T4)
m₁・m₂:低温側・高温側の質量流量[kg/s]、c₁・c₂:各流体の比熱[kJ/(kg·K)]、C:熱容量流量[kW/K]、Q:熱流率[kW]。T₁/T₂は低温側の入口/出口、T₃/T₄は高温側の入口/出口[℃]。

同じ熱を受け渡すなら熱容量流量の小さい側ほど温度が大きく変わるので、流量だけで判断せず比熱も掛けることが要点になり、気体と液体のように性質が異なる流体ではその差が大きくなります。

比熱の選び方は定圧比熱と定容比熱の違いにつながります。流体の入口から出口へのエンタルピー差を、温度範囲で一定とみなした比熱と温度差で表したものが、この熱収支です。

有効度の基準にする理論最大交換熱量
Qmax = Cmin(T3 − T1)
Cmin = min(Ch, Cc)
Cmin:二流体の熱容量流量の小さい値。相変化なし・比熱一定の二流体について、理想向流で伝熱能力を限りなく大きくしたときの上限です。有限面積の設計値とは区別します。

この式は、熱容量流量の小さい側が相手の入口温度まで変化しきった極限を考えると得られます。例えば低温側のCが小さければ低温出口が高温入口へ近づき、高温側のCが小さければ高温出口が低温入口へ近づきます。

計算例は、高温入口140℃、低温入口20℃、高温側Cが4kW/K、低温側Cが2kW/Kとします。これらは説明用の仮定値で、特定の水や油の物性を表すものではありません。

二流体の入口条件から理論上限を計算
Cmin = 2[kW/K]
Qmax = 2 × (140 − 20) = 240[kW]
T2,lim = 20 + 2402 = 140[℃]
T4,lim = 140 − 2404 = 80[℃]
低温側の温度変化120Kに対し、高温側は60K。二つの出口が同じ温度になることが向流の限界条件ではありません。

高温側を20℃まで冷やす前提で計算すると、低温側が受け取る熱を大きく見積もってしまいます。この条件では低温側が先に140℃へ近づくので、回収を制限するのは小さいCをもつ低温側です。

向流の場合

向流は二流体を逆向きに流し、高温流体の入口に温まった低温流体の出口を向かい合わせます。反対端では冷えた高温流体の出口と低温流体の入口が向かい合うため、両端で伝熱の温度差を保てます。

低温側出口をx、高温側出口をyと置くと、一方を決めた時点でもう一方は熱収支で決まります。そこで低温側をどこまで温めたいかをxに入れ、得られたyと流向から条件が成立するかを調べます。

出口温度を一つの変数で表す
x = T2  y = T4
y = T3 − m1c1(x − T1)m2c2
温度を一つ指定する式で、装置がその出口温度を実現できるという保証ではありません。次に端の温度差と必要面積を計算します。

向流の温度差は、高温入口と低温出口、高温出口と低温入口の組合せで計算します。高温側と低温側の出口どうしを引くと、装置の違う端を比較することになり、伝熱の駆動力を表せません。

向流の両端差と対数平均温度差
Ta = y − T1  Tb = T3 − x
ΔTLMTD = Ta − Tbln(Ta/Tb)
Ta・Tb・LMTD:温度差[K]、ln:自然対数。正の端差を使います。Ta=Tb=d>0の場合は極限値ΔTLMTD=dで、計算上の0/0を伝熱不能とは扱いません。

回収量を増やすには低温出口xを上げ、その分だけ高温出口yを下げます。ただし、どちらかの端の温度差がゼロへ近づくほど必要面積は増え、端差が負になる出口条件は、この二流体だけの受動的な熱交換では成立しません。

例えば20℃の水だけを冷却源とする熱交換器では、80℃の流体を10℃まで冷却できません。出口近くで冷やす側より冷やされる側が低温になり、そこで必要な熱の移動方向が逆になるためです。

一方、向流で低温出口が高温出口を上回る「温度交差」は成立します。先の条件で回収量を180kWとすると、出口は低温側110℃、高温側95℃ですが、同じ位置では高温流体のほうが高温です。

有限の回収量180kWで四温度を確定
T1 = 20[℃]  T3 = 140[℃]
x = 20 + 1802 = 110[℃]
y = 140 − 1804 = 95[℃]
Ta = 95 − 20 = 75[K]
Tb = 140 − 110 = 30[K]

図2:向流の出口温度は交差しても、局所の温度差は正

低温出口110℃と高温出口95℃は異なる端。縦に比べる同じ位置では30〜75Kの温度差があります。

温度[℃]14011095200180高温入口から渡した累積熱流率 q[kW]T₃=140(入口)T₄=95(出口)T₂=110(出口)T₁=20(入口)高温側 →← 低温側30K75K

横軸は長さでなく累積熱流率なので、比熱一定の温度線は直線になります。温度目盛は20〜140℃、高温線と低温線は同じ位置で比べます。

低温流体は図の右から左へ流れ、110℃になる直前には140℃に近い高温流体と接しています。高温出口の95℃とは隣り合っていないので、出口どうしの大小関係だけで熱力学第二法則に反すると判断しないようにします。

両端の組合せを選ぶ手順と等差の極限値は、対数平均温度差(LMTD)の計算方法でも扱っています。表計算では端差の正負と等差を先に判定すると、対数のエラーの意味を切り分けられます。

並流の場合

並流では二流体が同じ端から入り、同じ向きに流れて出口へ進みます。入口側では高温と低温の温度差が大きく、熱を受け渡すほど両者が近づくため、共通の出口温度に向かう極限が生まれます。

出口温度xとyを結ぶ熱収支の式は向流と共通ですが、端差の組合せは変わります。並流ではxとyが同じ出口の位置にあるため、低温出口が高温出口を追い越す条件は成立しません。

並流でも熱収支は共通、極限でx=y=T*
y = T3 − Cc(x − T1)Ch
Cc(T* − T1) = Ch(T3 − T*)
T* = ChT3 + CcT1Ch + Cc
Qparallel,lim = ChCcCh + Cc(T3 − T1)
T*:並流の無限面積極限で近づく共通温度[℃]。Qparallel,limは並流固有の極限で、有効度の共通基準Qmaxとは区別します。

同じ入口条件なら、共通温度は140℃と20℃の単純平均にはなりません。高温側の熱容量流量が2倍なので高温側に重みを置いた平均となり、両出口は100℃へ近づくと計算できます。

並流の極限を計算
T* = 4 × 140 + 2 × 204 + 2 = 100[℃]
Qparallel,lim = 2 × (100 − 20) = 160[kW]
4 × (140 − 100) = 160[kW]
入口は高温140℃・低温20℃、極限の出口は両側100℃。有限面積では高温出口は100℃より高く、低温出口は100℃より低い値になります。

図3:並流は同じ端の出口温度が一致する極限へ近づく

同じ入口条件で回収の極限は160kW。向流の理論基準240kWより小さくなります。

温度[℃]140100200160入口から渡した累積熱流率 q[kW]高温側 →低温側 →x=y=100℃無限面積の極限有限面積では出口に温度差が残る

横軸は累積熱流率で、装置の長さではありません。右端の白丸は極限を示し、有限長の出口で同温になる描写ではありません。

向流で成立した180kWを並流にそのまま当てはめると、低温出口110℃が高温出口95℃を超えてしまいます。並流では同じ出口でこの温度差になるため成立せず、面積を増やしても160kWの極限は超えられません。

入口温度と熱容量流量に加え、伝熱能力UAもそろえると、相変化のない二流体では向流のほうが並流より回収量を多くできます。この差は、回収した熱の行き先を含めたヒートバランス(熱収支)を組むときの基本になります。

伝熱面積の計算方法

プレート式熱交換器の積層板と締付ボルト
プレート式熱交換器の外観イメージ(生成画像)

実際の装置では、回収したい熱量と、その熱量で決まる温度差を同時に満たす面積が必要です。単純な並流・向流で総括伝熱係数を一定とみなせる場合、交換熱量と面積は次の式で結び付きます。

熱交換量から必要面積を求める
Q = UAΔTLMTD
A = QUΔTLMTD
A:伝熱面積[m²]、U:総括伝熱係数[W/(m²·K)]。この単位を使う場合、QはWにそろえます。多管・多パスなどの配置では、その配置に合う温度差補正や解析を使います。

向流180kWの計算を続け、総括伝熱係数を500W/(m²·K)と仮定すると、温度差は先ほどの75Kと30Kなので、対数平均温度差と面積は次のように求められます。

向流の温度差を平均し、面積まで計算
ΔTLMTD = 75 − 30ln(75/30) ≒ 49.111[K]
A = 180,000500 × 49.111 ≒ 7.33[m²]
入口は高温140℃・低温20℃、出口は高温95℃・低温110℃。U=500は計算用の仮定で、機種の保証値ではありません。

熱収支が合っていても、面積が足りなければ指定した出口温度には届きません。面積から出口を逆算する場合は、同じ熱収支と伝熱式を連立して解き、温度差を更新しながら収束させます。

この順序は、熱交換器の伝熱面積の計算方法にある水の冷却例と共通です。先に理論上限で実現可能な範囲を絞ると、成立しない温度を仮定して反復計算を続ける手戻りを減らせます。

上限に近づくほど必要面積が増える

同じ入口条件とUのまま回収量を増やすと、交換する熱が増える一方で端の温度差は小さくなるため、面積は熱量に比例する分に加えて、伝熱の駆動力が弱くなる分も含めて増えます。

図4:理論上限240kWへ近づけたときの面積

同じ向流・入口140℃/20℃・Ch=4/Cc=2kW/K、U=500W/(m²·K)で比較します。

回収量Q高温出口低温出口両端差LMTD面積
180kW95℃110℃75/30K49.11K7.33m²
220kW85℃130℃65/10K29.38K14.97m²
236kW81℃138℃61/2K17.26K27.34m²

丸め前の値で面積を計算。入口温度と流量・比熱を固定した比較です。上限そのものを有限の面積として見積もりません。

180kWから220kWへの追加回収は40kWですが、必要面積は約2倍に膨らみます。さらに236kWを狙うと追加16kWのために面積が約12.4m²増え、上限に近い回収ほど設備負担が大きくなります。

回収の目標は、加熱先で必要な温度と熱量から決めると整理しやすくなります。温めた流体を使う時間が排熱の発生時間とずれていれば、熱交換器の能力に加えて貯熱や運転計画も検討します。

例えばエコノマイザは排ガスの熱を給水へ戻す設備なので、理論上取り出せる熱だけでなく、給水が受け取れる量と実際の運転負荷をそろえて、役立つ回収量を見積もります。

有効度と実測値で性能を確認する

熱交換器の有効度εは、入口条件から決まる理論最大量に対して実際に何割を交換したかを表す指標です。熱を仕事へ変える熱機関の熱効率とは分母も目的も異なり、回収性能の比較に使います。

有効度と伝熱単位数
ε = QQmax = 180240 = 0.75
NTU = UACmin
ε・NTUは無次元。NTUの式ではUAとCminの単位をW/Kなどにそろえます。並流160kWの極限も、共通基準240kWで割ると有効度2/3です。

出口温度が未知の場合は、流れ方と熱容量流量比に応じた有効度とNTUの関係から交換熱量を求められます。カタログの有効度を使う場合も、その値を得た入口温度と両側流量を合わせて読みます。

運転中の性能を調べるときは、入口出口の四温度と両側流量を同じ運転状態で記録し、高温側の放出熱と低温側の受熱を別々に求めます。差が大きければ、測定条件や外部放熱を調べます。

温度差が小さい運転では、温度計のわずかな誤差が交換熱量の計算に大きく響きます。片側だけの値で性能低下と決めず、計器の取付位置や時刻、流量の質量・体積基準をそろえて比較します。

同じ入口条件でも回収量が下がる場合は、流量の変化や伝熱面の汚れが手掛かりになります。スケールなどの付着物は熱抵抗を増やすため、面積が変わらなくてもUが下がり、交換熱量が減ります。

設計では、許容圧力損失や清掃のしやすさも面積と一緒に扱います。流速を上げて伝熱を良くする案は圧力損失の増加を伴うので、ポンプ動力や運転範囲まで含めて機器の条件を選びます。

相変化を伴う場合

蒸気が凝縮したり液体が沸騰したりする場合は、温度変化だけでは受け渡した熱を数えられません。同じ温度でも相が変わる潜熱を含むので、流量と比エンタルピー差から交換熱量を計算します。

高温流体の凝縮を含む熱収支
Q = mh(hin − hout)
mh:質量流量[kg/s]、h:比エンタルピー[kJ/kg]、Q:熱流率[kW]。圧力、乾き度、過熱・過冷却を含む入口出口の状態からhを選びます。

図5:凝縮を含む流体は、温度一定でも熱を渡す

過熱蒸気から冷たいドレンまでを扱うなら、顕熱・潜熱・顕熱の区間に分けます。

温度飽和温度放出した累積熱流率 →過熱蒸気凝縮:潜熱ドレン冷却顕熱飽和温度のまま潜熱を放出

一定圧力で純物質が凝縮する模式図。熱の移動には相手流体との温度差が必要です。

圧力一定の飽和蒸気が凝縮だけで熱を渡す理想化では、蒸気側の温度を一定として扱えます。この場合は温度が変わる側の熱容量流量が基準となるため、単純な二流体では並流と向流の差がなくなります。

ただし過熱蒸気を飽和まで冷やす区間や、凝縮後のドレンをさらに冷やす区間は温度が変化します。全体を一つの一定比熱の式へ押し込まず、区間ごとの温度差と熱負荷をつなげて計算します。

この区別は、蒸気を冷却水で水へ戻す復水器でも重要です。温度と保有するエネルギーを対応させる物性量については、エンタルピーの意味を押さえると、潜熱を含む熱収支を読みやすくなります。

よくある質問

両側の熱容量流量が等しいと、向流でも熱交換できない?

熱交換でき、向流では高温線と低温線の温度差が位置によらず一定になります。両端差が等しいためLMTDの式を直接計算すると0/0になりますが、共通の正の温度差をそのまま平均値に使えます。

冷却水を増やせば、最大交換熱量はどこまでも増える?

冷却側のCを増やしても、高温側のCが小さい側になれば、入口温度が一定である限り理論上限は頭打ちになります。実際の交換量はUや流量配分でも変わるため、上限の増加と装置性能の改善は分けて考えます。

温度に℃を使っても計算できる?

今回の熱収支は温度の差を使うので、℃で引いた数値はKで引いた数値と同じになります。比熱をkJ/(kg·K)、流量をkg/sでそろえると答えはkJ/s、つまりkWになり、面積式ではWへ換算します。

タンクの水を一度冷やす場合も同じ計算?

タンクに貯めた水を冷却する場合は、運転とともに入口条件が変わるため、時間を含む熱収支が必要です。一定の二流体が流れ続ける本稿の定常条件とは分け、必要な総熱量と瞬間の熱交換能力を計算します。

最大交換熱量の単位はkJではない?

流量を使う熱交換器の計算では毎秒の交換熱量である熱流率を扱うので、単位はkWになります。運転時間を掛ければ総熱量になり、一定180kWを1時間交換すると180kWh、648,000kJです。

まとめ

この記事のまとめ
  • 相変化がない理論最大交換熱量は、Cminと二流体の入口温度差の積
  • 向流では小さいCの側が相手の入口温度に近づく極限がある
  • 並流の極限は両出口が同温となる条件で、共通基準Qmaxと区別する
  • 向流の出口温度交差は異なる端の比較であり、局所温度差の逆転とは異なる
  • 必要面積は熱収支とLMTDで求め、凝縮や沸騰は潜熱を含むエンタルピー差で扱う

表計算では入口条件、熱容量流量、回収量、四温度、両端差、面積の順に列を作ると検算しやすくなります。回収熱の利用先と年間運転時間まで含めた改善の進め方は、工場の省エネとエネルギー管理の基本につながります。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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