物流効率化法の特定荷主|製造業の判定基準とCLO・中長期計画の手順

工場の出荷バースに接車した大型トラックとパレットを運ぶフォークリフト

年度の取扱貨物が9万トン以上の荷主は、2026年4月1日から、物流効率化法の「特定荷主」に指定されるようになりました。荷物を出す側・受け取る側であるメーカーも、この荷主に含まれます。

特定荷主には、物流統括管理者(CLO、社内の物流を取りまとめる責任者)の選任、中長期計画の提出、定期報告が義務付けられます。初年度の中長期計画の提出期限は、2026年10月末です。

この記事では、制度の全体像、荷主の区分、9万トンの数え方、手続きと期限、CLOの選び方、計画と報告の作り方を順に整理します。

条文と所管官庁の手引きに沿って書いていますが、自社が該当するかどうかの最終判断は、手引きの原文と所管官庁の窓口で確認してください。

目次

物流効率化法でメーカーに課されること

物流効率化法の正式名称は「物資の流通の効率化に関する法律」(平成17年法律第85号)です。以前は「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」という名称でした。

2024年5月15日に公布された改正法(令和6年法律第23号)によって名称が変わり、荷主と物流事業者への規制が加わりました。

背景にあるのは、2024年4月からトラックドライバーの労働時間規制が強化されたことによる輸送力不足の懸念、いわゆる物流の2024年問題です。

長い荷待ちや低い積載率は、運送会社の努力だけでは解消できません。出荷や納品の日時を決めている荷主にも取り組みを求める、というのが改正の考え方です。

規制は2段階で施行されました。2025年4月1日に、すべての荷主と物流事業者に努力義務が課されました。

続いて2026年4月1日に、一定規模以上の事業者を「特定事業者」に指定して計画や報告を義務付ける規定が施行されています。荷主のうち指定を受けたものが特定荷主です。

図1:すべての荷主と特定荷主で求められることの違い

努力義務はすべての荷主に、届出や計画などの義務は特定荷主にかかります。

すべての荷主
特定荷主
対象
トラック事業者に運送を委託する事業者、ドライバーと貨物を受け渡す事業者
年度の取扱貨物が9万トン以上の荷主(第一種・第二種の区分ごとに判定)
施行日
2025年4月1日
2026年4月1日
根拠条文
法第42条〜第44条
法第45条〜第50条
求められること
積載効率の向上等、荷待ち時間の短縮、荷役等時間の短縮に努める(努力義務)
指定の届出、物流統括管理者の選任、中長期計画の提出、定期報告
国の関与
判断基準に基づく指導・助言
勧告、公表、命令、報告徴収・立入検査
罰則
なし
100万円以下または50万円以下の罰金、20万円以下の過料

※特定荷主になっても努力義務がなくなるわけではなく、努力義務の上に手続きの義務が重なります。

特定荷主として指定された事業者の名簿は、国土交通省とポータルサイトで公表されています。

2026年8月27日時点の名簿を編集部で数えたところ、特定第一種荷主は約1,790事業者で、このうち名簿の業種名が製造業の事業者は1,000を超えていました。

特定第二種荷主は約1,450事業者で、製造業は800を超えます。両方に指定された会社はそれぞれの名簿に載るため、2つの数を足しても特定荷主の総数にはなりません。

公式の集計値ではなく編集部による概数ですが、どちらの区分でも6割近くを製造業が占めています。

国が公表している数字としては、届出の件数があります。荷主と連鎖化事業者を合わせて3,299社でした(2026年7月9日時点)。

9万トンに届かないメーカーも無関係ではありません。努力義務はすべての荷主にかかり、所管大臣は判断基準をもとに指導や助言ができます。取引先が特定荷主であれば、納品時間やリードタイムの見直しを持ちかけられる立場にもなります。

自社は第一種荷主か第二種荷主か

物流効率化法の荷主は、発荷主・着荷主という一般的な呼び方ではなく、運送契約を結んでいるかどうかで2つに分かれます(法第30条第8号・第9号)。特定荷主の判定も届出も、この区分ごとに行います。

第一種荷主は、自らの事業に関して継続してトラック事業者や貨物利用運送事業者と運送契約を結ぶ者です。製品の出荷を自社で手配しているメーカーは、出荷について第一種荷主になります。

第二種荷主は、運送契約は結ばないものの、他社に雇用されたドライバーから貨物を受け取る、またはドライバーに貨物を引き渡す者です。

仕入先が手配したトラックで原材料や部品が届くメーカーは、入荷について第二種荷主になります。所管官庁の資料でも、製造業や卸売業は第一種と第二種の両方に当たるケースとして挙げられています。

図2:荷主の区分と特定荷主の判定の流れ

運送契約を結ぶのが誰かで区分が決まり、区分ごとに重量を合算します。

自社以外のトラックで貨物を運ぶ・受け渡す自社トラックと自社の従業員だけで運んでいる分は、自社の第一種荷主としての貨物に当たらない
運送契約を結ぶのは誰か
自社が結ぶ第一種荷主。製品の出荷、引取りの調達など
取引先が結ぶ第二種荷主。仕入先手配の入荷、顧客手配の引取りなど
両方ある第一種かつ第二種。メーカーに多い
年度(4月〜翌3月)の重量を区分ごとに合算
9万トン以上の区分で特定荷主に指定第一種で超えれば特定第一種荷主、第二種で超えれば特定第二種荷主。両方で超えれば両方

※国の「物流パターンごとの荷主の考え方」にある判定の流れを、メーカー向けに要約したものです。

メーカーで迷いやすいケース

区分で迷うのは、発荷主と着荷主の関係が逆転する場面や、物流を外部に任せている場面です。国が公開している「物流パターンごとの荷主の考え方」から、メーカーに関係の深いものを整理します。

図3:メーカーの物流パターン別に見た荷主の扱い

自社がどの立場になるかは、運送契約と受渡しの実態で決まります。

引取物流(ミルクランなど)
自社が第一種自社が運送契約を結んで仕入先を回る場合、受け取る側の自社が第一種荷主。引き渡す仕入先が第二種荷主になる
工場間・倉庫への社内輸送
自社が第一種送り手も受け手も自社なら第一種のみ。引渡しか受取のどちらかだけを計上し、拠点を経由するたびに計上する
物流子会社・3PLへの委託
委託元が荷主物流子会社や3PL事業者は荷主に当たらない。物流業務を委託したメーカーが荷主になる
寄託倉庫の利用
重量は計上営業倉庫に預けた貨物も重量に含める。荷待ち時間等の計測対象からは除外できる
自社トラックでの配送
第一種に当たらない自社の従業員が運ぶ場合、自社は第一種荷主にならない。届け先は第二種荷主になる
輸出入に伴う国内輸送
国内のトラック分が対象輸出で国内の港湾・空港まで運ばせる分、輸入で自社が手配して引き取る分は第一種として計上する

※出典の「物流パターンごとの荷主の考え方」(令和8年5月版)をもとに作成。契約の形によって扱いが変わるため、個別のケースは原文で確認してください。

商社を通す取引にも注意が必要です。商社が運送契約を結ばず、仕入元と販売先の間で直送させているだけなら、商社は荷主に当たりません。この場合は、運送契約を結んだ側(仕入元のメーカーなど)が第一種荷主になります。

なお、荷主の定義にある「継続して」は回数や頻度で決まるものではありません。国のQ&Aは、事業に通常必要と見込まれ、単発・突発でないものと説明しています。事務所の引っ越しや、生産設備を導入するときの輸送は対象から外れます。

入荷側の条件は、納入時刻や荷姿を仕入先と決めている購買・調達部門が握っていることが多いものです。第二種荷主としての対応は、物流部門だけでは完結しません。

特定荷主の基準「9万トン」の数え方

特定荷主の基準重量は、施行令で9万トンと定められています(第一種は施行令第6条第3項、第二種は第7条第3項)。前年度、つまり4月1日から翌年3月31日までの1年間に取り扱った貨物の合計重量で判定します。

ここで間違えやすいのが、合算の単位です。会社全体の物量ではなく、第一種荷主としての重量と第二種荷主としての重量を別々に合算します。片方だけが9万トンを超えれば、その区分だけで指定を受けます。

なお、第二種荷主としての重量からは、受渡しの日時を運転者に指示できない貨物が除かれます(施行令第7条第2項)。国のQ&Aによると、これは法令などにより恒常的に指示できない場合を指します。

取引上の力関係で調整が難しいというだけでは該当しません。

対象になるのは主力製品だけではありません。手引きは、原則としてすべての事業のすべての商品や資材が対象になるとしています。一方で、次のものは重量に含めなくてよいとされています。

  • 郵便物、信書便物
  • いわゆる宅配便(1個30kg以内で、同時に受け渡す貨物との合計が150kg未満のもの。第二種荷主は150kg未満に限らず除外できる)
  • 軽量な資材や事務用品(対象貨物の合計重量の1%程度まで)
  • パレットやコンテナなど、商品の一部ではなく輸送用器具とみなせるもの

重量の算定方法は8つから選べる

すべての貨物を実際に量る必要はありません。届出省令(第1条・第5条)は次の8つの方法を挙げており、複数の方法を組み合わせて合算できます。

  • 実測する
  • 単位数量あたりの重量に、個数などの数量を掛ける
  • 容積を重量に換算する(手引きは1立方メートルあたり280kgという換算例を挙げている)
  • トラックの最大積載量または平均積載量に、台数を掛ける
  • 売上額または仕入額を、単位重量あたりの金額で割る
  • もう一方の区分の重量とおおむね一致する場合に、その重量を用いる
  • 売買契約や運送契約で定められた重量を用いる
  • 上記で算定が難しい場合に、重量を適確に算定できると認められる方法を用いる

メーカーで現実的なのは、品目マスタの単位重量に出荷数量を掛ける方法です。出荷実績は生産管理の出荷工程で日々記録されており、ERPなどの基幹システムから年度分を抜き出せます。

単位重量が登録されていない品目は、サンプル調査で単位重量を決めることも認められています。

入荷側は仕入先の出荷データが手元にないことが多いため、仕入額を重量あたり単価で割る方法や、契約上の重量を使う方法が候補になります。

想定例:部品メーカーA社の集計

集計のイメージをつかむために、架空の金属部品メーカーA社で考えます。3つの工場と自社倉庫を持ち、営業倉庫も1か所利用している、という想定です。数値はすべて説明用の仮の値で、実在の企業のものではありません。

図4:想定例 A社の年度の取扱貨物重量

運送契約を結ぶ主体で仕分けると、同じ会社でも区分ごとに結果が変わります。

第一種荷主として(自社が運送契約)
第二種荷主として(取引先が運送契約)
製品の出荷
工場から顧客への直送 56,000トン
顧客手配の引取り便への引渡し 6,000トン
社内輸送
工場から自社倉庫・営業倉庫へ 12,000トン
該当なし(自社契約のため第一種に計上)
倉庫からの出荷
自社倉庫・営業倉庫から顧客へ 12,000トン
該当なし
原材料・部品の入荷
自社手配の引取り 13,000トン
仕入先手配のトラックからの受取 58,000トン
合計
93,000トン
64,000トン
判定
9万トン以上。届出が必要
9万トン未満。届出は不要(努力義務は残る)

※架空の想定例です。倉庫を経由する12,000トンは、工場から倉庫、倉庫から顧客と受渡しのたびに計上しています。宅配便で送るサンプルや事務用品、パレットの重量は除いています。

この想定例では、顧客への出荷だけなら9万トンに届きません。工場と倉庫の間の社内輸送と、自社手配の引取りを足したことで基準を超えています。販売物流だけを見て「うちは対象外」と判断すると、数え漏れが起きやすいことがわかります。

届出書の重量欄は任意項目で、9万トン以上であることが確実な場合にまで精密な算定を求めるものではない、と手引きに書かれています。

反対に、基準の前後で判断に迷う会社ほど、算定方法と根拠を記録に残しておくことが大切です。手引きでは、日本ロジスティクスシステム協会が公開している売上規模の目安も参考情報として紹介されています。

それでも判断がつかない場合は、所管官庁の窓口に確認してください。

特定荷主の手続き5ステップと期限

特定荷主に求められる手続きは、指定の届出、物流統括管理者の選任、中長期計画の提出、定期報告の4つです。前段の重量把握を加えると、流れは5つのステップになります。

図5:特定荷主の手続き5ステップ

重量を確認する年度、指定を受ける年度、その翌年度以降で、やることが分かれます。

前年度
01重量の把握4月〜翌3月の取扱貨物重量を、第一種・第二種に分けて集計する
指定を受ける年度
02指定の届出9万トン以上なら5月末までに届出書(様式第1)を提出。その後、国が指定する
03物流統括管理者の選任指定後速やかに選任し、届出書(様式第4)を提出する
04中長期計画の提出7月末までに計画書(様式第3)を提出。2026年度のみ10月末まで
翌年度以降
05定期報告毎年度7月末までに、前年度の取組と荷待ち時間等の状況を報告書(様式第5)で提出

※一度指定を受ければ、翌年度以降の届出は不要です。

ステップ1・2 重量を把握して届け出る

前年度の重量が9万トン以上だった区分があれば、翌年度の5月末日までに「貨物の運送の委託及び受渡しの状況届出書」を提出します。根拠は法第45条第2項・第6項と届出省令第2条です。

国が自動的に調べて指定してくれる仕組みではなく、荷主が自分で算定して届け出る制度です。

届出は一度で済みます。指定を受けたあとは、取消しが行われるまで指定が続きます。荷主に当たらなくなったとき、または重量が基準を下回り、再び基準以上になることがないと明らかなときは、指定取消しの申出(様式第2)ができます。

ステップ3・4 責任者を決めて計画を出す

指定を受けたら、速やかに物流統括管理者を選任して届け出ます。手引きは、遅くとも中長期計画を提出するまでを目安としています。

中長期計画の提出期限は、指定を受けた年度の7月末日です。ただし届出省令の附則により、2026年度に限って2026年10月末日までとされています。2025年度の実績で届け出て指定を受けた会社にとっては、これが直近の期限です。

ステップ5 翌年度から毎年報告する

定期報告は、指定を受けた年度の翌年度から始まります。2026年度に指定を受けた会社は、2026年度の状況を2027年7月末日までに報告します。以後は毎年度7月末日が期限です。

図6:手続きごとの期限と、怠った場合の罰則

2026年度に指定を受けた特定荷主の場合で整理しています。

期限
怠った場合
指定の届出(様式第1)
2026年5月末日。2025年度の重量が9万トン以上だった場合
届出をしない、虚偽の届出をした場合は50万円以下の罰金(法第76条)
物流統括管理者の選任・届出(様式第4)
指定後速やかに。遅くとも中長期計画の提出までが目安
選任しない場合は100万円以下の罰金(法第75条)。届出をしない、虚偽の届出は20万円以下の過料(法第80条)
中長期計画(様式第3)
2026年10月末日。2027年度以降に指定を受ける場合は、その年度の7月末日
提出しない場合は50万円以下の罰金(法第76条)
定期報告(様式第5)
初回は2027年7月末日。以後、毎年度7月末日
報告をしない、虚偽の報告をした場合は50万円以下の罰金(法第76条)
勧告後の命令
取組が著しく不十分として勧告を受け、正当な理由なく措置をとらない場合に出される。勧告に従わないと公表されることがある
命令に違反した場合は100万円以下の罰金(法第75条)

※罰金は行為者のほか法人にも科されます(法第78条)。災害などやむを得ない事由があるときは、所管大臣が定める期限までの提出となります。

提出は電子申請、提出先は事業で決まる

4つの手続きは、いずれも原則としてe-Govの電子申請で行います。申請にはGビズIDが必要です。手引きによると、アカウントの種別はエントリーでもプライムでも申請できますが、ほかの申請にも使えるプライムが勧められています。

提出先は、自社の事業を所管する大臣です。経済産業大臣が所管する事業であれば、主たる事務所の所在地を管轄する経済産業局長あてに提出します。

飲食料品(酒類を除く)の製造は農林水産大臣、医薬品の製造は厚生労働大臣というように、製品によって所管が分かれます。複数の事業を営んでいる場合は、原則として所管する大臣すべてに提出します。

直接排出量を自社で算定して届け出るGX-ETSの届出と同じく、対象かどうかの判定から書類の作成までを事業者の側で進める制度です。担当部門と年間の予定を早めに決めておく必要があります。

物流統括管理者(CLO)の選び方

物流統括管理者は、特定荷主が1名選任する責任者です。法第47条第2項は、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者をもって充てなければならないと定めています。

ポータルサイトは、重要な経営判断を行う役員などの経営幹部から選ぶ必要があると説明しています。

物流部長をそのまま充てればよい、という制度ではありません。手引きは、単なる物流部門の長ではなく、生産、在庫管理、販売など経営全体を見たうえで調整と判断を行う立場だとしています。

CLOはChief Logistics Officerの略で、経営の視点から物流を統括する役割が期待されています。

法令上の業務は次の7つです(法第47条第1項、届出省令第8条)。

  • 中長期計画の作成
  • ドライバーの負荷を減らし、トラックへの過度の集中を是正するための運営方針の作成と管理体制の整備
  • 定期報告の作成
  • 開発、生産、流通、販売、調達、在庫管理などの部門間の連携体制づくりと、従業員の意識向上
  • 施設の情報システムなどの設備の整備、物流の器具・設備・データの標準化に関する計画の作成、実施、評価
  • 取引先など関係者との連携と調整
  • 国からの報告徴収への対応

選任にあたっての細かなルールも押さえておきます。特定第一種荷主と特定第二種荷主の両方に指定された会社は、同じ人を選任します。

グループ内の複数の会社で同じ人が兼任することもできますが、それぞれの会社に籍を置いていることが条件です。社内での役職名が「物流統括管理者」である必要はありません。

図7:想定例 物流統括管理者を中心にした社内体制

計画と報告の実務は事務局が担い、各部門は自部門で決めている条件を持ち寄ります。

物流統括管理者(役員)計画と報告を統括し、部門をまたぐ判断と取引先との調整を担う
方針の指示・進捗の報告
事務局(物流部門・経営企画)重量と時間のデータ集計、計画書・報告書の作成、電子申請
データと施策の持ち寄り
生産管理・工場出荷計画、荷姿、バースと荷役の体制
営業納期と納品頻度、顧客との納品条件
購買・調達発注ロット、納入時刻、仕入先との受入条件

※架空の想定例です。体制の作り方に法令上の決まりはなく、会社の規模や組織に合わせて設計します。

体制づくりで大事なのは、物流の条件を実際に決めている部門を巻き込むことです。納品日や納品頻度は営業が、発注ロットや納入時刻は購買が顧客や仕入先と決めています。物流部門だけで計画を書いても、実行の段階で動かせない項目が残ります。

中長期計画書の書き方

中長期計画書(様式第3)は、物流効率化の取組を最長5年間の計画として示す書類です。計画期間は提出する年度を初年度とします。

2026年度に初めて提出する場合、最長で「2026年度〜2030年度」となり、内容に変更がなければ次の提出は2031年7月末日です。

毎年出す書類ではない点は、定期報告との違いです。ただし計画の内容を変えた場合は、変更があった年度の翌年度7月末日までに改訂版を提出します。

書く内容は、積載効率の向上等、荷待ち時間の短縮、荷役等時間の短縮という3つの領域です。領域ごとに「実施する措置」「具体的な措置の内容・目標等」「実施時期」を記載し、任意で参考事項を添えます。

第一種と第二種で欄が分かれており、指定を受けた区分だけを記入します。

図8:中長期計画に書く3つの領域と取組の例

判断基準の省令(第2条〜第4条)が挙げる取組を、領域ごとにまとめました。

01積載効率の向上等リードタイムの確保、出荷量の平準化と納品日の集約、配車・運行計画の最適化、開発・生産・販売・調達など部門間の連携
02荷待ち時間の短縮受渡し日時の分散、トラック予約受付システムの導入と活用、寄託倉庫への入出庫の早めの発注
03荷役等時間の短縮パレットなど輸送用器具の導入、標準仕様パレット(縦1.1m×横1.1m)の使用、事前出荷情報と検品の効率化、バースの確保、フォークリフトや人員の配置
国の基本方針:令和10年度までに、1運行あたりの荷待ち・荷役等の時間を全国平均で合計2時間以内に、積載効率を全体で44%にする目標。荷主は1回の受渡しごとに原則1時間以内を目標とし、やむを得ない場合を除き2時間を超えないようにする。

目標は数字で、範囲は絞ってよい

手引きが繰り返し求めているのは具体性です。「効率化に努める」といった抽象的な表現ではなく、「荷待ち時間を平均何分以内に短縮」のように、可能な範囲で数値の目標を示すことが望ましいとされています。対象とする工場や製品、実施する年度も明示します。

すべての拠点や貨物を網羅する必要はありません。手引きのQ&Aは、主要な貨物や課題のある施設に重点を置いた記載でよいとしています。

すでに十分に効率化できている領域は、その状態を続ける旨を書けば足ります。3つの領域のどれかを空欄にするのではなく、現状維持であってもその旨を記載します。

積載効率の領域でまず挙がるのは、運送を委託してから貨物を受け渡すまでの時間、いわゆるリードタイムの確保です。運送会社が積合せや帰り荷を組む時間を取るには、出荷の確定を早める必要があります。

そのためには製造リードタイムの短縮や、生産計画の確定時期の見直しといった工場側の打ち手も関わってきます。

書く前にそろえておくもの

手引きは、記載前の準備として次のものを挙げています。計画書そのものより、現状データの収集に時間がかかります。

  • 指定通知(特定荷主の番号、指定区分、通知の発出者)
  • 提出済みの届出書の控え(主たる事業と細分類番号を一致させる)
  • 物流統括管理者と作成担当者の情報
  • 現状のデータ(リードタイム、輸送量と輸送回数、積載率、荷待ち時間、荷役等時間)
  • 課題の洗い出しと、改善施策の候補
  • 判断基準と、その解説書・事例集

経済産業省は、製造業向けの中長期計画書の記載事例を公開しています。「取組が進んでいる企業向け」と「これから取組を深める企業向け」の2種類の記載例があり、自社の状況に近いほうを参考にできます。

なお、計画した内容を達成できなかったこと自体に罰則はありません。罰則の対象は計画書を提出しないことです。

定期報告に向けて今から測っておくこと

定期報告の初回は2027年7月末日ですが、報告するのは2026年度の状況です。荷待ち時間と荷役等時間は、いま進んでいる年度のうちに計測しておく必要があります。計画書を出して一息つく、というわけにはいきません。

定期報告書(様式第5)に書くのは、大きく3つです。判断基準の遵守状況、それ以外に実施した措置、荷待ち時間等の状況です。

遵守状況はチェック形式で、「ほぼ全てで実施(90%以上)」「大半で実施(50%以上90%未満)」「一部で実施(0%超50%未満)」「実施していない」から選びます。実施していない項目は、その理由を書きます。

荷待ち時間と荷役等時間の測り方

荷待ち時間は、ドライバーが荷主や施設側の都合で、貨物の受渡しのために待機した時間です。到着時刻の指示がない場合は、到着から荷役の開始までを数えます。

指示した時刻より早く着いた場合は、指示時刻から荷役の開始までが荷待ち時間です。運送会社側の事情による到着の遅れで追加的に生じた待ち時間は、除外できます。

荷役等時間は、ドライバーが運転以外の作業に従事した時間です。荷積みや荷卸しのほか、検品、荷造り、仕分け、ラベル貼り、荷主が行う荷役への立会いも含まれます。

荷主が把握するのは、1運行の合計ではなく1回の受渡しごとの時間です。自社の工場で積み込むときの時間は自社が、納品先で卸すときの時間は納品先が把握します。報告は施設ごと・月ごとの平均を分単位で記載します。

全拠点を測れない場合の扱い

すべての施設、すべての運行を計測するのが難しい場合は、サンプリングが認められています。

手引き(第1.1版)が示す目安は、自社が管理する施設のうち、年度の取扱貨物重量の半分程度以上を把握できるように施設を選ぶことです。

重量の多い施設だけでなく、滞留や苦情の多い施設を優先して選んでもかまいません。期間を絞る場合は、四半期ごとに連続した5営業日以上を選びます。

各四半期で売上が最も低いと見込まれる月は避けます。

営業倉庫などの寄託先は、計測の対象から外せます。その代わり、寄託先との連携の状況を報告書に記載します。

計測結果の報告を省略できる扱いも設けられています。手引きによると、1回の受渡しにかかる荷待ち時間等が、施設ごとの平均で1時間未満であれば報告を省略できます。

特殊車両を使う、危険物や重量物を扱うといった事情で荷役等時間の短縮が難しい場合は、荷役等時間の報告を省略できます。

ポータルサイトの定期報告のページには、サンプリングと報告省略について「検討されています」という表現が残っており、省略の基準も「1時間以内」と書かれています。

手引きの「1時間未満」とは表現が異なるため、境目に当たる施設は最新の手引きと様式で確認してください。

計測の方法は、受付簿からの集計、ストップウォッチ、システムのログなどが例示されています。入退場の時刻を記録する仕組みがない工場は、まず守衛所やバースの受付で到着時刻と荷役の開始・終了時刻を残すところから始めることになります。

取組が不十分な場合の勧告・公表・命令

特定荷主の取組が判断基準に照らして著しく不十分と認められると、所管大臣は根拠を示して勧告できます(法第49条)。勧告に従わなければ、所管大臣はその旨を公表できます。

正当な理由なく勧告に係る措置をとらなければ、審議会等の意見を聴いたうえで、措置をとるよう命令できます。

ポータルサイトには、定期報告の内容をもとに取組状況をランクで評価し、見える化する仕組みを検討しているという記載もあります(2025年4月時点の検討状況)。

報告書は提出して終わりではなく、取組の中身が外から見られる前提で作る書類だと考えておくほうが安全です。

よくあるつまずきと相談先

手引きには、届出や計画書の作成で担当者が陥りやすいミスがまとめられています。メーカーで起きやすいものを挙げます。

  • 第一種と第二種の両方で9万トンを超えているのに、片方だけにチェックを入れて届け出る
  • 指定通知が複数の省庁の連名なのに、1か所にしか提出しない
  • e-Govで別の省庁向けや連鎖化事業者向けの手続きを選び、差し戻される
  • 計画期間を6年以上にする、または提出年度を含めずに設定する
  • 計画の内容が「検討する」「努める」にとどまり、何をいつ実施するかがわからない
  • 計画書に実績を書く、報告書に今後の計画を書くなど、2つの書類を混同する

e-Govの初期設定では、差し戻しがあってもメールで通知されません。気付かないまま期限を過ぎることがないよう、通知の設定を変更しておくよう手引きが注意を促しています。

9万トン未満のメーカーが準備しておくこと

特定荷主でなくても、積載効率の向上等、荷待ち時間の短縮、荷役等時間の短縮に努める義務はあります。判断基準の省令は、責任者の選任や、荷待ち時間等の状況の把握も求めています。

実務で影響が大きいのは、取引先からの働きかけです。第二種荷主は、第一種荷主から受渡しの日時について協議の申出があれば、応じて協力するよう努めることとされています(法第42条第4項)。

納品先が特定荷主であれば、納品時間帯の変更、納品頻度の集約、パレットでの納品といった相談が来ることが考えられます。

物流の条件を見直すと、運賃や荷役の費用を誰が負担するかという話に行き着きます。判断基準の省令も、運送の内容に応じた価格設定によって費用を把握できるようにすることを挙げています。

取引価格の協議の進め方は、取適法に沿った価格転嫁の考え方と重なる部分があります。

判断に迷ったら所管官庁の窓口へ

荷主に当たるかどうか、どの貨物を重量に含めるかは、契約と受渡しの実態によって変わります。この記事は制度の骨格を整理したもので、個別の該当性を判断するものではありません。

判断に迷う場合は、手引き、Q&A、「物流パターンごとの荷主の考え方」の原文を確認したうえで、自社の事業を所管する省庁の窓口に問い合わせてください。

経済産業省所管の事業であれば地方の経済産業局が窓口です。問合せ先は「荷主事業所管大臣一覧」に掲載されています。

手引きは、問合せの際に会社名、所在地、対象となる手続きを伝えるとスムーズだとしています。

まとめ

この記事のまとめ
  • 物流効率化法は荷主であるメーカーにも努力義務を課し、2026年4月からは特定荷主に届出・CLO選任・中長期計画・定期報告を義務付けている
  • 特定荷主の基準は年度9万トン以上。第一種荷主(運送契約を結ぶ)と第二種荷主(受渡しをする)の区分ごとに合算して判定する
  • 届出は5月末、中長期計画は7月末(2026年度のみ10月末)、定期報告は指定の翌年度から毎年度7月末が期限
  • 物流統括管理者は、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者から1名を選ぶ
  • 該当性や算定で迷う点は、手引きの原文と所管官庁の窓口で確認する

物流効率化法への対応は、書類をそろえる作業に見えて、実際には出荷の確定時期、納品条件、荷姿といった日々の決めごとを見直す取り組みです。関わる職種としては生産管理、購買・調達、工場長・マネジメントが中心になります。

制度の運用は始まったばかりで、手引きやQ&Aは改訂が続いています。提出の前には、ポータルサイトで最新版を確認するようにしてください。

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MONOSCOPEの運営者

プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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