取引先に求めるセキュリティ対策(情報システムを攻撃から守る対策)の水準を、★の数でそろえる国の制度の準備が進んでいます。
正式名称は「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」で、サプライチェーンは製品の供給に関わる企業のつながりを指します。
背景には、発注元ごとに様式も項目も違うチェックシートに、受注側が何度も答えている負担があります。制度は2026年9月末の時点でまだ始まっていません。
運営を担うIPA(情報処理推進機構)は2027年3月から申請の受付を始める予定で、準備が遅れた場合は時期を見直すとしています。
この記事では、制度の位置づけと対象範囲、★3・★4・★5の違い、求められる対策の中身、取得までの流れと日程を、公式資料をもとに整理します。後半では、取引先から★を求められたときの考え方と、部品メーカーがいまから準備できることを取り上げます。
セキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)とは
正式名称は「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」で、略称はSCS評価制度です。SCSはSupply Chain Securityの頭文字にあたります。
企業のセキュリティ対策の実施状況を、共通の基準に沿って段階(★)で示す仕組みで、経済産業省と内閣官房国家サイバー統括室が制度の方針を定め、IPAが運営します。
制度の骨格を示す文書が、2026年3月27日に公表された「制度構築方針」です。2025年4月の中間取りまとめ、同年12月26日の方針案と意見募集(93者から569件)を経て確定したもので、検討段階の案ではなく最終版にあたります。
背景にあるのは、取引先を経由したサイバー攻撃の増加です。部品メーカー1社のシステムが止まれば、納入先の生産ラインまで止まりかねません。
方針では、想定するリスクとして製品・サービスの供給途絶、機密情報の漏えい・改ざん、取引先を踏み台にした不正侵入の3つを挙げています。
共通の物差しをつくり、双方の手間を減らすことが制度のねらいです。
※経済産業省「制度構築方針」(2026年3月)の記載をもとに作成。
押さえておきたいのは、この制度が企業の優劣を競わせる格付けではないという点です。方針にも、対策レベルを競わせることを目的としたものではないと明記されています。
★は取得または更新の時点で水準を満たしていることを示すもので、完全な安全を保証するものでもありません。
もう一つ、★の取得は法律上の義務ではなく、任意の制度です。経済産業省と内閣官房国家サイバー統括室は、2026年4月27日に注意喚起を出しました。
「評価を取得していないと商取引が規制される」といった営業トークによる勧誘が報告されているためで、制度そのものが取引を規制するわけではないと説明しています。
対象は会社のIT基盤|工場の制御システムは対象外
製造業の方がまず気になるのは、工場の設備まで評価されるのかという点でしょう。結論として、制度が対象にするのは会社のIT基盤で、製造現場の制御(OT)システムは直接の対象に含まれません。
OTは設備やラインを動かすための制御系のシステムを指します。
IT基盤には、メールサーバやWebサーバ、認証の仕組み、業務で使うパソコンやスマートフォン、クラウドサービスが含まれます。社内と外部をつなぐファイアウォールやルータ、VPN装置も含まれます。
方針にERPという名指しはありません。ただ、受発注や在庫を扱うERPなどの基幹システムも、「全体の業務に共通するIT基盤を構成するサーバ群」にあたると考えられます。この範囲に入ると考えるのが自然です(編集部の解釈)。
実際の線引きは、今後公表される解説書の「適用範囲の考え方」で確認してください。
事務所側のIT基盤と外部との境界が対象で、製造現場の制御システムと製品は別の枠組みで扱います。
※経済産業省「制度構築方針」の適用範囲の考え方をもとに作成。
対象外といっても、工場側を放置してよいわけではありません。PLCなどの制御機器や生産設備のネットワークは、別の指針に沿って対策する想定です。
経済産業省の「工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン」がこれにあたります。自動車業界であれば、2026年4月に公開された自工会・部工会ガイドラインの工場領域版も該当します。
注意したいのは、事務所のネットワークと工場のネットワークがつながっているケースです。スマートファクトリー化で設備のデータを上位システムへ送る構成が増えており、その場合は両者の間の通信を必要なものだけに絞ることが求められます。
申請の単位は原則として法人(または個人事業主)です。ただし範囲の妥当性について専門家や評価機関の確認を受ければ、事業部単位やグループ単位で申請することもできます。
★3・★4・★5の違い
制度で具体化されているのは★3と★4の2段階です。★5は枠だけが示されており、中身は2026年度以降に検討されます。まず★3と★4の違いを表で確認します。
要求事項の数だけでなく、誰が評価するかと有効期間が異なります。
※登録料は2028年3月31日までの申請分・税込(IPA、2026年9月18日公表)。専門家への確認依頼や評価機関の評価にかかる費用は含みません。
★3:専門家の確認を受ける自己評価
★3は、広く知られた脆弱性を突く一般的な攻撃に対処できることを水準としています。要求事項は26件で、自社で評価した結果をセキュリティ専門家に確認してもらう方式です。
有効期間は1年で、毎年あらためて専門家の確認を経た自己評価を提出して更新します。
ここでいう専門家は、社内の情報システム担当者であれば誰でもよいわけではありません。
情報処理安全確保支援士、公認情報セキュリティ監査人、CISSP、CISM、CISA、ISO27001主任審査員のいずれかの資格が必要です。そのうえで、制度が定める研修を受けて登録された人に限られます。
社内に該当者がいなければ、社外の専門家に依頼することになります。
★4:評価機関による第三者評価
★4は、侵入を防ぐだけでなく、侵入された後の被害拡大を抑え、取引先のデータやシステムを守ることまでを水準としています。要求事項は43件で、IPAの指定委員会が指定した評価機関が評価します。
評価は文書確認に加えて、担当者へのヒアリングや規程・操作画面の確認を行う実地審査、そして技術検証の3つで構成されます。
技術検証では、VPN装置やルータなどインターネットに公開している機器に脆弱性検査を行います。
方針では、文書確認・実地審査・技術検証の所要期間をそれぞれ1〜2日程度と想定しています(事前準備と報告書作成は除く)。
なお、上位の段階は下位の内容を含んでいるため、★3を取っていなくても★4を直接取得できます。
★5:要求事項も開始時期もこれから
★5は、未知の攻撃を含む高度なサイバー攻撃への対応を想定した段階です。
まず、ISO/IEC 27001のようなリスクベースのマネジメントの仕組みを整えます。そのうえで、システムには現時点で最良とされる対策を実装する、という方向性が示されています。
評価は第三者評価とする想定ですが、要求事項の数と有効期間は「今後検討」とされ、評価スキームの具体的な中身や開始時期も決まっていません。
★1・★2やISMS、自工会ガイドラインとの関係
★3から始まるのは、★1と★2にあたる制度がすでにあるためです。IPAの「SECURITY ACTION」がそれで、中小企業が情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する仕組みです。
一つ星は「情報セキュリティ6か条」への取り組み、二つ星は自社診断のうえで情報セキュリティ基本方針を定めて公開することが条件になっています。
自己宣言から第三者評価へ、段階を上がるほど確認の厳しさが増します。
※ISMS認証(ISO/IEC 27001)は、★3・★4と「相互補完的な制度」と位置づけられています。
自動車業界では、自工会と部工会が共同で定めたサイバーセキュリティガイドライン(最新はV2.3)がすでに使われています。
自動車のサプライチェーンに連なる会社であれば、チェックシートで自己評価をした経験があるかもしれません。
制度構築方針は、★3・★4がこのガイドラインのLv1・Lv2に対応するとしており、連携の方法は引き続き検討するとしています。
ISMS認証との違いは考え方にあります。ISMSは組織が自らリスクを評価し、必要な管理策を決めて運用する仕組みが回っていることを認証するものです。
一方この制度の★3・★4は、代表的な脅威に効く対策を制度の側であらかじめ決めておく方式(ベースラインアプローチ)です。何をすればよいか迷いにくいのが特徴とされています。
★3・★4で求められる対策|7分類の要求事項
要求事項は7つの大分類に整理されています。米国NISTのサイバーセキュリティフレームワーク(CSF)の6つの機能に、取引先管理を加えた構成です。公表されている一覧表(2026年3月27日版)を編集部で分類ごとに数えると、次のようになります。
件数がもっとも多いのは「攻撃等の防御」で、IDやパスワード、更新、バックアップが並びます。
※「★3・★4要求事項及び評価基準」(2026年3月27日公表版)にもとづく編集部集計。★4の件数は★3の件数を含みます。合計は★3が26件、★4が43件で、制度構築方針の記載と一致します。
★3で求められる主な対策
要求事項1件ごとに、より具体的な評価基準が複数ぶら下がっています。★3の評価基準を読むと、特別な機器を買うことよりも、決めるべきルールを文書にし、台帳を整え、年1回点検することを求める項目が多いのが分かります。代表的なものは次のとおりです。
- セキュリティを統括する役員と担当部署の役割・責任を定め、連絡先リストを用意する
- パソコンとサーバの製造元・OS・台数、ネットワーク機器の製造元・モデル・保守事業者を把握できるようにする
- IDの発行・変更・削除を申請・承認制にし、退職者などの不要なIDを速やかに止める
- 重要な機密情報を扱うクラウドサービスでは、常に多要素認証を使う
- 深刻度の高い脆弱性を直す更新は、公開から14日以内に適用する
- バックアップの対象・頻度・保管期間を決め、復元の手順書を整える
- ファイアウォールやルータの初期パスワードを変更し、不要な通信ルールを削除する
- インシデント対応の手順と社内外の連絡先を定め、年1回以上教育・訓練を行う
数字が入った基準もあります。たとえばパスワードは、多要素認証か試行回数の制限があれば8文字以上、どちらもなければ英大文字・小文字・数字を含む10文字以上とされています。
更新の「14日以内」は、ベンダーが重大または高リスクとした脆弱性や、CVSS(脆弱性の深刻度を示す共通指標)の基本値が7.0以上のものが対象です。
★4で加わる対策
★4では17件の要求事項が加わり、既存の項目にも評価基準が上乗せされます。方向性は大きく3つで、経営層を巻き込んだ管理、侵入後を想定した検知と記録、そして自社の取引先への目配りです。
- 対策の推進計画を年1回以上、セキュリティ担当役員に報告して承認を得る
- 重要な取引先や子会社のセキュリティ対策状況を年1回以上把握する
- 脆弱性情報を集める情報源・頻度・対応手順を定め、対応漏れを月次で点検する
- ファイアウォール、プロキシ、認証サーバのログを6か月保管し、認証ログは月1回以上確認する
- サーバ設置エリアの入退室を記録し、外部記憶媒体などの持込み・持出しルールを定める
- 経営層を含む全員に、年1回以上のセキュリティ教育を行う
- 目標とする時間内にバックアップから復元できることを確認する
取引先の把握が入っている点は、製造業にとって意味が大きいところです。★4を取得する会社は、自社の重要な仕入先や外注先の対策状況も確認する立場になります。
つまり★4を求められた一次サプライヤーから、二次・三次のサプライヤーへと要請が連鎖していくことが想定されます。
一方で、経済産業省は、特定のセキュリティ対策製品の導入が必須とされているものではないと繰り返し説明しています。
EDRのような個別の製品名が要求事項に書かれているわけではなく、基準を満たす手段は各社の規模やシステム構成に応じて選べます。
なお、要求事項・評価基準については、2026年9月11日のIPA運営審議委員会で軽微な修正を加える方針が合意されています。
2026年9月末時点でIPAのサイトに掲載されているのは3月27日版で、解説書も今後公表される予定のため、実際に点検するときは最新版を確認してください。
取得までの流れとスケジュール・費用
★3と★4では、自己評価までは同じで、その後に誰の確認を受けるかが分かれます。どちらも、原則としてすべての評価基準に適合することが合格の基準です。ただし不適合が見つかっても、是正して了承を得られれば取得できます。
適用範囲を決めて自己評価を行い、確認・評価を経てIPAに登録申請します。
※経済産業省「制度構築方針」およびIPA運営審議委員会の資料(2026年9月11日)をもとに作成。詳細な手続きは登録申請の手引で示される予定です。
取得後も点検は続きます。★3は1年ごとに専門家の確認を経た自己評価を出し直し、★4は有効期間の3年間、毎年の自己評価結果を評価機関に提出します。
年に一度、決めたルールが守られているかを確かめるという点では、ISO9001の内部監査を回している会社にはなじみのある運用です。
申請受付は2027年3月開始の予定
開始時期は、資料によって表現が少しずつ異なります。
制度構築方針は令和8年度下期の制度開始を目指すとし、経済産業省のニュースリリースは、2026年度末頃の制度開始(申請受付の開始)を目指すとしていました。
その後、2026年9月11日のIPA運営審議委員会で、「2027年3月よりIPAによる申請受付開始予定」と告知する事務局案が示されました。議事要旨によれば、この案は合意されています。
9月18日の料金のお知らせでも、登録希望組織の受付開始は「2027年3月以降」の予定です。
ただし、ガイド類の公表や評価機関の指定などの計画に遅れが出た場合は、受付開始時期を見直すとされています。
2026年9月末時点で公表済みのものと、今後の予定を分けて示します。
※IPA運営審議委員会の資料(2026年9月11日)による計画。整備に遅れが出た場合は受付開始時期を見直すとされています。
受付開始より前に動ける部分もあります。IPAの資料では、取得を希望する会社はガイド類の公表後に自己評価を進め、2027年1月以降に専門家や評価機関を決める流れが想定されています。★4の第三者評価は2027年2月から始まる想定です。
公表されている費用は登録料だけ
2026年9月18日にIPAが公表した登録料は、★3が10,000円(1年分)、★4が60,000円(3年分)です。いずれも税込で、★3は2028年4月1日以降の申請から20,000円になります。
ただし、これはIPAに台帳登録してもらうための料金です。社外の専門家に確認を依頼する費用、評価機関の第三者評価の費用、対策そのものにかかる費用は、公式には金額が示されていません。
評価機関や専門家が公表される2026年末以降に、各事業者の料金が見えてくると考えられます。
取引先から★を求められたら|義務なのか、費用は誰が持つのか
制度が始まると、発注側が取引先に「★3を取ってほしい」「★4相当の対策をお願いしたい」と伝える場面が出てきます。どちらを求めるかについて、方針は2つの観点を例示しています。
一つは事業継続リスクで、その取引先が止まると自社の重要な業務に許容できない遅れが出るかどうか。もう一つは情報管理リスクで、取引先が自社の重要な機密情報やシステムにアクセスできるかどうかです。
どちらかに当てはまれば★4、当てはまらなければ★3という整理が例として示されています。
部品メーカーに置き換えると、代替の利かない専用部品を納めている会社や、顧客の図面・仕様データを預かって加工している会社は、★4を求められる可能性があります。
逆に、単発の調達や、市販品のように代替しやすい物の調達のうち重要度が高くないものは、この枠組みの対象から外すことも考えられるとされています。
購買部門にとっては、仕入先評価の項目にセキュリティの段階が加わるイメージです。
取得しないと取引できなくなるのか
経済産業省のFAQは、この制度を「任意の制度」とし、制度として何らかの規制を課すものではないと答えています。★の取得を取引の条件にするかどうかは、あくまで当事者間の契約で決まります。
直ちに★を取得するのが難しい取引先に対しては、要求事項・評価基準を共通のチェックリストとして使う方法も示されています。制度の開始は申請受付の開始を意味するもので、その日から一斉に取得が必要になるわけではありません。
対策費用と価格交渉の考え方
受注側が気になるのは、要請に応じるための費用を誰が負担するのかという点です。
これについては、経済産業省と公正取引委員会が考え方を示しています。「サプライチェーン全体のサイバーセキュリティ向上のための取引先とのパートナーシップの構築に向けて」という文書です。
同文書によると、発注側が取引先にセキュリティ対策の実施を要請すること自体が、直ちに独占禁止法上の問題になるわけではありません。
ただし、要請の方法や内容によっては優越的地位の濫用として問題となることがあるとしています。そのうえで、取引上の地位が相手方に優越している事業者について、注意が必要な行為を3つ挙げています。
経済産業省・公正取引委員会の文書が示す、発注側の注意点です。
※個別の取引が法令上問題となるかどうかは、取引の実態に応じて判断されます。
両者は2025年12月26日に、この文書を補足する想定事例と解説も公表しました。
大企業が中堅・中小の取引先に★4相当の対策を要請し、説明会の開催、費用負担の考え方の周知、価格交渉を経て合意し、結果を書面に残すという流れです。
独占禁止法と取適法(中小受託取引適正化法)の観点で「問題とならない」例として示されています。
解説によると、組織としての対策にかかった費用は、労務費や一般管理費といった間接経費として計上されると想定されます。困ったときの相談先として、取引かけこみ寺、公正取引委員会の相談制度があることも紹介しています。
制度構築方針も、発注側は★取得に伴う価格交渉に積極的に対応する必要があるとの立場です。

中小の部品メーカーがいま準備できること
受付開始は2027年3月の予定ですが、要求事項の一覧表はすでに公開されています。ガイド類や評価機関の公表を待たずに進められることを、順に挙げます。
SECURITY ACTIONとIPAのガイドラインから始める
まだ何も手を付けていない会社は、SECURITY ACTIONの宣言が入口になります。IPAはこれを★3・★4取得の準備段階と位置づけています。
あわせて使えるのが、IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版です。
この版はSCS評価制度の考え方を取り込んでおり、付録の情報セキュリティ関連規程のサンプルが★3・★4の要求事項に対応する形で見直されています。
方針や規程を一から書き起こす必要がなく、自社に合わせて直して使えます。
要求事項の一覧表で自己点検する
次に、公開されている「★3・★4要求事項及び評価基準」の表を使って、満たしている項目とそうでない項目を仕分けます。★3欄に印が付いた26件だけを抜き出せば、最初の点検対象が決まります。
ここで、架空の想定例で考えてみます。従業員80名ほどの切削加工会社で、総務課長が情報システムの担当を兼ねているとします。
設計担当が在宅からVPN装置を経由して図面サーバに接続しており、取引先3社から毎年別々のチェックシートが届いている、という設定です。
このような会社が★3の表で点検すると、ウイルス対策ソフトの導入のように済んでいる項目がある一方で、次のようなところで手が止まることが考えられます。
- 退職者や異動者のIDが残っていないか、共有IDを誰が使ったか特定できるか
- VPN装置やルータについて、深刻度の高い脆弱性を直す更新を公開から14日以内に適用する段取りがあるか
- バックアップは取っているが、復元の手順書があり、実際に戻せるか
- 事故が起きたときの社内外の連絡先と報告ルートが決まっているか
- セキュリティ担当の役員と部署の役割が、文書として定められているか
いずれも高額な投資より、決めて書き残す作業が中心です。裏を返せば、兼任の担当者だけで抱えると進みにくい項目でもあります。★3の申請には経営層の自己適合宣言が必要になるため、早い段階で経営者を巻き込んでおくことが大切です。
機器とIDの棚卸しを先に済ませる
点検の土台になるのが台帳です。パソコン、サーバ、ネットワーク機器の製造元・OS・台数、利用しているクラウドサービス、発行済みのIDと管理者権限の持ち主を一覧にします。IPAのガイドラインには資産管理台帳のサンプルも付いています。
特に確認したいのは、インターネットとの境界にある機器です。★4では、VPN装置やルータに深刻度の高い脆弱性が残っていないかを技術検証で確かめることになっています。
保守契約の有無、サポート期限、更新を誰がいつ行うかを、機器ごとに押さえておくと後が楽になります。
主要な取引先と早めに話す
自社に求められるのが★3なのか★4なのかは、取引先の判断によります。主要な納入先の購買担当に、制度をどう使う予定か、いつ頃までに何を求める考えかを早めに尋ねておくと、準備の優先順位を付けやすくなります。
複数の取引先から別々のチェックシートが届いている場合は、この制度の要求事項を共通の回答の軸にできないか相談する余地もあります。
費用が発生する対策については、前の章で見たとおり価格交渉の対象になり得るため、かかった費用を記録しておくことをおすすめします。
支援策を使い、不適切な勧誘に注意する
中小企業向けの支援策として、IPAは「サイバーセキュリティお助け隊サービス(新類型)」の実証事業を進めています。
★取得に向けた課題の診断、ツールの導入、規程整備や教育の支援、申請の支援までをまとめて提供するもので、公募で選ばれた15事業者が参加します。
実証期間は2026年10月から2027年9月までの予定で、中小企業は無償で参加できるとされています。対象エリアや業種は事業者ごとに異なるため、IPAの紹介ページで確認してください。
最後に、制度の名前を使った売り込みには注意が必要です。先に触れた注意喚起のとおり、特定の製品を入れなければ★が取れないということはありません。判断に迷ったら、IPAと経済産業省の公式ページで最新の情報を確かめるのが確実です。
まとめ
- SCS評価制度は、取引先に求めるセキュリティ対策の水準を★で示す任意の制度。2026年3月27日に制度構築方針が公表された
- 2026年9月末時点では未開始で、IPAは2027年3月から★3・★4の申請受付を始める予定としている(準備が遅れた場合は見直し)
- ★3は26件・専門家確認付き自己評価・有効1年、★4は43件・第三者評価・有効3年。★5は今後検討
- 対象は会社のIT基盤で、工場の制御(OT)システムは直接の対象外。特定の製品の導入は必須ではない
- いまできる準備は、要求事項の表での自己点検、機器とIDの棚卸し、取引先との対話、支援策の活用
制度の細かな手続きは、2026年10月以降に公表されるガイド類で固まっていきます。まずは★3の26件を自社に当てはめ、どこに不足があるかを把握しておくと、取引先から話があったときに落ち着いて対応できます。
関連するテーマとして、仕入先との関係づくりは購買・調達、工場のネットワーク化はスマートファクトリー・IoTのページから関連記事をご覧ください。業界ガイドラインが先行する分野の記事は、自動車・輸送機器のページにあります。
出典
出典・参考資料(15件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 制度構築方針の公表、経緯、開始時期の表現:経済産業省 ニュースリリース「『サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度に関する制度構築方針』(SCS評価制度の構築方針)を公表しました」(2026年3月27日)
- 段階の定義、対象範囲、評価スキーム、有効期間、既存制度との関係:サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度に関する制度構築方針(令和8年3月)
- 要求事項・評価基準の一覧:IPA「★3・★4 要求事項・評価基準」
- 制度の概要、お知らせ、FAQ:IPA「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)」、同 よくある質問
- 申請受付の開始予定とスケジュール:IPA 第3回運営審議委員会 事務局説明資料(2026年9月11日)、同 議事要旨
- 登録料:IPA「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度 料金設定のお知らせ」(2026年9月18日)
- 任意の制度であること、FAQ:経済産業省「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)」
- 不適切な勧誘への注意喚起:経済産業省・内閣官房国家サイバー統括室「SCS評価制度に関する注意喚起」(2026年4月27日)
- 取引先への要請と独占禁止法・取適法の考え方:経済産業省・公正取引委員会「サプライチェーン全体のサイバーセキュリティ向上のための取引先とのパートナーシップの構築に向けて」
- SECURITY ACTION:IPA「SECURITY ACTION セキュリティ対策自己宣言」
- 中小企業向けガイドライン:IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」
- お助け隊サービス(新類型)実証事業:IPA「サイバーセキュリティお助け隊サービス(新類型)実証事業」
- 自工会・部工会ガイドライン:日本自動車工業会「自動車産業サイバーセキュリティガイドライン」
- 工場システムのガイドライン:経済産業省「工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン」
- ISMS適合性評価制度:情報マネジメントシステム認定センター「ISMS適合性評価制度」
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