乾燥剤の選び方|酸性・中性・塩基性の組み合わせ表と工場での使い方

コンプレッサー室に並ぶ2塔式の吸着式エアドライヤー

気体の乾燥剤は、乾かしたい気体と反応せず水だけを取り込むものを選ぶのが原則で、酸性の気体には酸性か中性、塩基性の気体には塩基性か中性の乾燥剤を使います。たとえばアンモニアは塩基性なので、酸性の濃硫酸では中和して吸い取られてしまい、酸化カルシウムやソーダ石灰で乾かします。

ただし酸と塩基の組み合わせだけでは決まらず、中性の塩化カルシウムはアンモニアと結び付き、酸性の濃硫酸は硫化水素を酸化してしまいます。工場でも塩素は濃硫酸で、液化天然ガスの原料ガスはモレキュラーシーブで乾かすなど、気体の性質と求める乾きの度合いで乾燥剤を使い分けています。

目次

気体の乾燥剤の選び方:酸と塩基の組み合わせで考える

乾燥剤は、気体や液体に混じった水を取り除くための物質です。取り除きたいのは水だけなので、目的の気体まで吸い込んだり、別の物質に変えたりする乾燥剤は使えません。

そこで最初の目安になるのが、酸と塩基の組み合わせです。酸性の乾燥剤に塩基性の気体を通すと中和が起こり、塩基性の乾燥剤に酸性の気体を通しても同じように中和が起こるため、性質が逆どうしの組み合わせを避けます。

使えない組み合わせの例:濃硫酸でアンモニアを乾かそうとすると中和する
H2SO4 + 2NH3 → (NH4)2SO4
アンモニアは硫酸アンモニウムになって乾燥剤の側に残り、乾いたアンモニアは出てきません。検算:Nは左右とも2、Hは左右とも8、Sは1、Oは4です。

中性の乾燥剤は酸とも塩基とも中和しないので、多くの気体に使える便利な存在です。乾燥剤を性質で3つのグループに分けると、乾かせる気体と避けたい気体は次の図のようになります。

図1:乾燥剤の3つのグループと乾かせる気体

性質が逆どうしの組み合わせを避けるのが目安です。ただし中性の塩化カルシウムのように、グループの中にも例外があります。

酸性の乾燥剤中性の乾燥剤塩基性の乾燥剤濃硫酸・十酸化四リン塩化カルシウム・シリカゲル酸化カルシウム・ソーダ石灰○ 中性・酸性の気体O₂・N₂・CO₂・Cl₂など○ ほとんどの気体H₂・O₂・HCl・CO₂など○ 中性・塩基性の気体NH₃・H₂・O₂など× NH₃(中和)× H₂S(濃硫酸が酸化)× NH₃(塩化カルシウム)CaCl₂・8NH₃になる× CO₂・HCl・SO₂× Cl₂・H₂S・NO₂

※○は乾燥に使える気体、×は反応してしまう気体の例です。どのグループでも、最後は乾かしたい気体と乾燥剤の個別の反応を確かめます。

気体と乾燥剤の組み合わせ表

代表的な6つの乾燥剤について、化学式と性質、乾燥に使える気体と使えない気体を表にまとめます。使えない気体の欄には、中和以外の理由で外れるものも含めています。

乾燥剤化学式性質乾燥に使える気体使えない気体(理由)
濃硫酸H2SO4酸性中性・酸性の気体(O2、N2、Cl2、HCl、CO2、SO2など)NH3(中和)、H2S(酸化される)
十酸化四リンP4O10酸性中性・酸性の気体NH3(中和)
塩化カルシウムCaCl2中性ほとんどの気体NH3(CaCl2・8NH3をつくる)
シリカゲルSiO2・nH2O中性ほとんどの気体とくになし(吸着で水を取る)
酸化カルシウム(生石灰)CaO塩基性中性・塩基性の気体(NH3、H2、O2など)酸性の気体(CO2、HCl、SO2、H2S、NO2、Cl2)
ソーダ石灰CaOとNaOHの混合物(製品はCa(OH)2が主成分)塩基性中性・塩基性の気体酸性の気体(同上)
乾燥剤の適・不適の原則(日本大百科全書・世界大百科事典「乾燥剤」)と、塩化カルシウムのアンモニア付加物(化学辞典 第2版)をもとに作成

表の「性質」の列は、候補を絞るための目安です。使えない理由は大きく中和・付加化合物・酸化還元の3つに分かれ、初めて見る組み合わせでも、この3つに当てはまらないかを確かめれば判断できます。

図2:酸・塩基だけでは決まらない、使えない理由の3つの型

乾燥剤と気体が中和する、くっついて化合物になる、酸化還元が起こる、のどれかに当たると、その組み合わせは使えません。

① 中和する酸性の乾燥剤と塩基性の気体、塩基性の乾燥剤と酸性の気体。例:濃硫酸とNH₃、ソーダ石灰とCO₂表の「性質」で分かる
② 付加化合物をつくる中性でも気体の分子を取り込んで結び付く。例:塩化カルシウムとNH₃(CaCl₂・8NH₃)、エタノール(CaCl₂・4C₂H₅OH)中性でも起こる
③ 酸化還元が起こる酸化作用のある乾燥剤が、還元性の強い気体を別の物質に変える。例:濃硫酸がH₂Sを硫黄に酸化酸性どうしでも起こる
どれにも当たらなければ候補そのうえで、必要な乾きの度合い・量・再生・安全で絞り込む(後の「選定のポイント」)次のステップへ

※付加化合物の式は化学辞典 第2版・世界大百科事典の「塩化カルシウム」による。

塩基性の乾燥剤が塩素を乾かせないのも、塩素が水酸化カルシウムなどの塩基と反応するからです。消石灰に塩素を吸わせるとさらし粉ができるように、塩素は水に溶けると酸の性質を示すので、塩基性の乾燥剤には吸い込まれてしまいます。

代表的な6つの乾燥剤の性質と仕組み

乾燥剤は、水を取り込むしくみで2つに分けられます。水と反応して化合物になる化学的乾燥剤(濃硫酸、十酸化四リン、塩化カルシウム、酸化カルシウムなど)と、表面に水を吸着する物理的乾燥剤(シリカゲル、アルミナなど)です(日本大百科全書)。

乾燥剤の能力は、乾かした後にどれだけ水が残るか(残存水分量)、どれだけ速く吸うか(吸湿速度)、どれだけ多く吸えるか(吸湿容量)の3つで比べます。吸湿容量は化学的乾燥剤のほうが一般に大きく、加熱などで元に戻す再生は物理的乾燥剤のほうが簡単です。

酸性乾燥剤

濃硫酸

市販の濃硫酸は濃度約96%、密度1.84 g/cm3の液体で、水と強く結び付く性質をもちます。濃硫酸の上の水蒸気の圧力はきわめて低いため、気体を濃硫酸にくぐらせると水だけが吸い取られ、乾燥剤や脱水剤として使われています(世界大百科事典)。

液体なので、実験では気体を洗気びんの濃硫酸に泡としてくぐらせて乾かします。工場では、接触法の硫酸工場が、硫黄を燃やす空気を自分でつくった濃硫酸で乾かしており、酸性の気体の乾燥にも濃硫酸の塔が使われています。

塩基性のアンモニアは中和するので使えず、もう1つの例外が硫化水素です。濃硫酸には酸化作用があり、還元性の強い硫化水素を硫黄にまで酸化して、自らは二酸化硫黄に変わります。

濃硫酸と硫化水素の酸化還元反応
H2SO4 + H2S → S + SO2 + 2H2O
硫化水素のS(酸化数−2)は単体のS(0)に酸化され、硫酸のS(+6)はSO2のS(+4)に還元されます。やりとりする電子はどちらも2個で釣り合います。検算:Hは左右とも4、Sは2、Oは4です。

熱濃硫酸ほど強くなくても、相手の還元性が強ければ反応は進みます。酸性どうしの組み合わせでも安心できない例なので、硫化水素は十酸化四リンや塩化カルシウムなど、酸化作用のない乾燥剤で乾かします。

十酸化四リン(P4O10)

十酸化四リンは、リンを十分な空気中で燃やしてできる白色の粉末です。五酸化二リンとも呼ばれますが、分子はリン原子4個の正四面体の各辺に酸素が入った形なので、P4O10と書くのが正しいとされています(世界大百科事典)。

水との親和力が強く、乾燥剤として最も有効なものの一つに数えられています。水には発熱しながら溶け、P–O–Pのつながりが水で切れて、最終的にリン酸(オルトリン酸)になります(化学辞典 第2版)。

十酸化四リンが水を取り込む反応
P4O10 + 6H2O → 4H3PO4
リン酸とアンモニアの中和(塩基性の気体に使えない理由)
H3PO4 + 3NH3 → (NH4)3PO4
1分子のP4O10(式量284)が水6分子(108)と反応するので、十酸化四リン1 gで水を約0.38 g取り込める計算です。検算:1本目はPが4、Oが16、Hが12、2本目はNが3、Hが12で釣り合います。

粉末のまま乾燥管やデシケーターに入れて使い、酸性なのでアンモニアなどの塩基性の気体には使えません。乾燥剤のほか、有機合成の脱水剤や縮合剤、リン酸化剤、医薬品や農薬の合成にも使われ、粘膜を強く刺激するので目に入れないように扱います。

中性乾燥剤

塩化カルシウム(CaCl2)

塩化カルシウムは水によく溶ける塩で、空気中の水蒸気まで吸い込んで自らその水に溶けていく潮解性をもちます。中性なので酸性の気体にも塩基性の気体にも使いやすく、粒状の無水物や二水和物を乾燥管に詰めて使います。

水を吸うと六水和物などの結晶になり、さらに吸うと溶けて液体になります。押し入れ用の除湿剤で容器の底に水がたまるのはこの潮解のためで、固体のまま水和物として取り込める量を超えても、溶けながら水を吸い続けます。

中性なのにアンモニアに使えないのは、塩化カルシウムがアンモニア分子を8個も取り込んで結び付くからです。エタノールとも同じように付加化合物をつくるため、アルコール類の乾燥にも使いません(化学辞典 第2版)。

塩化カルシウムが水を取り込む(六水和物になる)
CaCl2 + 6H2O → CaCl2・6H2O
アンモニアとは付加化合物をつくる
CaCl2 + 8NH3 → CaCl2・8NH3
「・」は分子がそのまま結び付いた化合物を表します。中和ではないので酸と塩基の分類では見つけられず、個別に覚えておく例外です。

工業用の塩化カルシウムには、ソルベー法(アンモニアソーダ法)でソーダ灰をつくるときの副産物から得られるものがあります。乾燥剤のほか、道路の凍結防止剤や防じん剤、冷凍機のブライン、豆腐の凝固剤などにも使われます。

シリカゲル

シリカゲルは、水ガラス(主にケイ酸ナトリウムの濃い水溶液)に酸を加えてできるケイ酸のゲルを、乾かして固めたものです。組成はSiO2・nH2Oと書かれ、内部に細かい孔が無数にあいた多孔質の固体になっています。

孔の表面にはケイ素に付いた–OH(シラノール基)が並んでおり、ここに水分子が水素結合で吸着します。水と反応して別の物質になるわけではないので、加熱すれば水を放して何度でも使えます。

指示薬入りのシリカゲルは、乾いているときは青く、水を吸うとピンクに変わる塩化コバルトを含んでいます。ただしコバルトは皮膚や呼吸器の感作性をもつため、英国は2000年から有害物としての表示と廃棄を求めています。

そのため、有機系の指示薬を使ったオレンジ色のシリカゲルへの切り替えが勧められています。オレンジ色の品は約6%の水を吸うと透明に変わり、指示薬の量は塩化コバルト入りの5〜10分の1です(米国国立公園局の資料)。

酸にも塩基にも反応しにくく、食品・医薬品・精密部品の包装や、工場の圧縮空気の乾燥まで幅広く使われています。ただし液体の水が直接かかると傷むことがあるため、水滴が混じりやすい場所では、ほかの吸着剤と層を重ねて使います(Atlas Copco)。

塩基性乾燥剤

酸化カルシウム(生石灰)

酸化カルシウムは生石灰とも呼ばれ、石灰石を焼いてつくります。水と反応して水酸化カルシウム(消石灰)になるので水を取り込み、強い発熱をともなうのが特徴です。

生石灰が水を取り込む反応(発熱反応)
CaO + H2O → Ca(OH)2
取り込める水 = 1 g × 1856 = 約0.32 g
式量はCaO=56、H2O=18。生石灰1 gが水と1対1で反応したときの量で、純粋な酸化カルシウムとした計算です。

塩基性なので、アンモニアの乾燥に向いた代表的な乾燥剤です。吸湿力が強いので、せんべいやのりなどの食品の乾燥剤にも使われていますが、水を吸うと1.5〜2倍に膨らむので袋が破れやすくなります(新宿区保健所)。

二酸化炭素や塩化水素などの酸性の気体には使えません。CO2と出会うと炭酸カルシウムに戻ってしまうので、空気中で保管するときも口を閉じておく必要があります。

ソーダ石灰

ソーダ石灰は、酸化カルシウムと水酸化ナトリウムを合わせた粒状の塩基性乾燥剤として教科書に登場します。水酸化ナトリウムは吸湿性が強いものの、それだけでは潮解してべたべたになるので、カルシウム分と組み合わせて粒の形を保っています。

市販品の中身は、水酸化カルシウムが主成分で水酸化ナトリウムは数%で、水分量や添加物は製品ごとに違います。

麻酔器に使う新品1銘柄の分析例では、水酸化カルシウム約97%、水酸化ナトリウム約2.5%、水分0.89%でした(Rogalewiczら、2020年)。乾燥剤というより、二酸化炭素の吸収剤として使われる場面が多い物質です。

ソーダ石灰が二酸化炭素を吸収する反応
2NaOH + CO2 → Na2CO3 + H2O
Na2CO3 + Ca(OH)2 → CaCO3 + 2NaOH
2つを足すと
Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O
水酸化ナトリウムはCO2を速く取り込み、水酸化カルシウムが炭酸塩を引き取って水酸化ナトリウムを再生します。NaOHは反応を速める役で、最後に残るのは炭酸カルシウムです。

この性質を生かして、全身麻酔の呼吸回路や潜水用の再呼吸装置など、外の空気と遮断された回路で吐いた息のCO2を除くのに使われます。水酸化ナトリウムはイオン交換膜法で食塩水からつくる基礎化学品で、酸性の気体を除く役は工場でも水酸化ナトリウム水溶液が担っています。

関連して知っておきたいこと:気体を洗う・乾かす順番と元素分析

気体をつくって集めるときは、発生させる、不純物を洗い流す、乾かす、集める、の順に装置をつなぎます。水で洗うと気体はまた湿るので、乾燥はいつも最後に置きます。

たとえば酸化マンガン(Ⅳ)と濃塩酸で塩素をつくると、塩素には塩化水素と水蒸気が混じります。そこで水を入れた洗気びんで塩化水素を除き、次に濃硫酸の洗気びんで水を除いてから集め、乾燥剤には塩素と反応しない酸性の濃硫酸を選びます。

同じ考え方が、有機化合物の成分を調べる元素分析にも出てきます。試料を燃やしてできた水と二酸化炭素を、塩化カルシウム管、ソーダ石灰管の順に通し、それぞれの重さの増え方から水素と炭素の量を求めます。

順番を逆にすると、ソーダ石灰が水と二酸化炭素の両方を吸ってしまい、2つを分けて量れません。中性の塩化カルシウムは二酸化炭素を吸わないという性質の違いを、測定の順番に使っているわけです。

乾燥剤の選定のポイント

実験室の乾燥剤選びは気体との相性でほぼ決まりますが、工場ではさらに、どこまで乾かすか、どれだけの量を流し続けるか、使った乾燥剤をどう戻すか、を考えます。選び方を4つのステップに整理すると次のようになります。

図3:乾燥剤を選ぶ4つのステップ

相性で候補を絞ってから、必要な乾きの度合いと運転のしかたで方式を決め、最後に安全と後始末を確かめます。

STEP 1気体との相性中和・付加化合物・酸化還元が起こらないか。図1・表・図2で確かめる
STEP 2必要な乾きの度合い露点や残る水分の目標。+3℃で足りるか、−40℃・−70℃や0.1 ppm級が要るか
STEP 3量と再生使い捨てか、加熱や圧力差で再生して連続で回すか。流す量と入口の水分で決まる
STEP 4安全と廃棄発熱・腐食・誤食のおそれ、使用済み品の処理や返却まで含めて選ぶ

※露点は、それ以下に冷やすと水が結露しはじめる温度で、低いほど乾いています。圧縮空気では加圧した状態の露点(圧力下露点)で表します。

2つ目のステップの「乾きの度合い」が、実験室と工場のいちばん大きな違いです。計装空気なら配管の中で結露しない程度、液化天然ガスの原料なら極低温で凍らない程度と、用途ごとに目標の露点や水分が数字で決まっています。

3つ目の再生も重要で、化学的乾燥剤は水を吸うと別の物質になり、取り替えが前提になります。大量の気体を連続して乾かす工場では、加熱や圧力の切り替えで水を追い出せる物理的乾燥剤(吸着剤)を、塔に詰めて交互に使う方式が主流です。

実際の工場では:圧縮空気とプロセスガスの乾燥

工場の乾燥は、乾燥剤の種類だけでなく、目標の露点と、再生しながら止めずに運転するしくみまで含めて設計します。代表的なのが、どの工場にもある圧縮空気と、化学プラントで扱う原料・製品のガス(プロセスガス)です。

圧縮空気のドライヤー:冷凍式と吸着式

圧縮空気は、工場のユーティリティ(用役)の代表です。空気を圧縮すると含んでいた水蒸気が濃くなり、配管で冷えると結露するので、空気圧縮機の後ろにドライヤーを置いて乾かします。

乾きの度合いの目安は、国際規格ISO 8573-1が圧力下露点でクラス分けしており、クラス4は+3℃以下、クラス2は−40℃以下、クラス1は−70℃以下にあたります。

メーカーの解説では、冷凍式ドライヤーは露点約+3℃(クラス4)までを受け持ち、それより乾いた−40℃(クラス2)や−70℃(クラス1)が要るときは吸着式を使うとされています(Atlas Copco)。

吸着式で多いのが、乾燥剤を詰めた2本の塔を交互に使う方式です。一方の塔で空気を乾かしている間に、もう一方の塔へ乾いた空気の一部を大気圧まで減圧して流し、吸着した水を追い出して再生します。

図4:2塔式の吸着式ドライヤー(加熱なし再生)

塔Aが湿った空気を乾かす間に、乾いた空気の一部を塔Bへ流して水を追い出し、一定時間ごとに役割を入れ替えます。

塔A塔B湿った圧縮空気乾いた空気(工場へ)水を含んで大気へ吸着中一部を減圧して流す再生中

※加熱なしで再生する方式では、再生に使う空気(パージ)が定格流量の最大16〜20%に達します(Atlas Copco)。ヒーターや送風機で再生する方式はこの損失を減らせます。

加熱なしの方式は構造が簡単な一方、つくった圧縮空気の一部を捨てることになります。

ヒーターと送風機で外気を温めて再生する方式もあります。Atlas Copcoは10年間の総費用で約40%有利になるとしていて(前提条件は示されていないので目安です)、工場の省エネでもドライヤーの再生方式は見直しの対象です。

プロセスガスの乾燥:塩素・硫酸工場・天然ガス

化学プラントでは、原料や製品のガスそのものを乾かします。ここでも乾燥剤選びの原則は同じで、酸性の塩素は酸性の濃硫酸で、反応しやすい炭化水素は吸着剤で乾かしています。

図5:工場で乾かしているガスと乾燥剤の例

酸性のガスには濃硫酸、極低温で扱うガスや樹脂には吸着剤と、学校で習う原則がそのまま工場の設計に表れています。

塩素(食塩電解)濃硫酸96〜98%の塔を2〜6段通し、水分20 mg/m³未満に。液化用はさらに乾かす酸性ガス×酸性の乾燥剤
燃焼用の空気(硫酸工場)硫黄を燃やす空気を93〜99%の硫酸で乾かし、つくった硫酸を自分で使う自社製品で乾燥
天然ガス(LNGの原料)モレキュラーシーブで水を0.1 ppmv未満に。極低温部での凍結・固化を防ぐ吸着剤・加熱再生
樹脂ペレット(成形前)露点−40℃以下の除湿乾燥空気を送り、ペレットの水分を除く吸着ローター

※塩素はEUの技術資料(BREF 食塩電解、2014年)、硫酸工場は米国環境保護庁 AP-42 第8.10節、天然ガスはLNG前処理の技術論文(2019年)、樹脂は松井製作所の発表(2022年)による例です。

食塩電解の陽極から出る塩素は水蒸気をほぼ飽和まで含み、冷やした後でも水分は1〜3体積%あります。湿ったままでは下流の配管が腐食し水和物もできるため、EUの技術資料は、ほぼ例外なく96〜98%の濃硫酸を2〜6段の向流の塔に流して水分を20 mg/m3未満にするとしています。

水を吸った硫酸は薄くなり、段数を増やすほど出口の酸は薄くなって、3段で50〜65%、6段で30〜40%です。この使用済み硫酸は真空で加熱して96%に戻して再び使うか、供給元に返して濃縮し直すことが多く、化学的乾燥剤でも大量に使う工場では再生の仕組みを持っています。

液化天然ガス(LNG)のプラントでは、ガスを極低温まで冷やして液にする前に、水を0.1 ppmv未満まで除きます。水が少しでも残ると、液化する極低温部で凍って固まってしまうからです(Mokhatabら、2019年)。

この乾燥には固定床のモレキュラーシーブが使われ、より安定で吸水量が多く、280℃までの再生温度に耐える4Aが好まれます。こうした前処理設備は、日揮などのエンジニアリング会社が設計するLNGプラントの一部です。

樹脂の成形工場でも乾燥は欠かせず、ナイロンなどの吸水しやすい樹脂は射出成形の前に除湿乾燥機で乾かします。松井製作所は露点−40℃以下の乾燥空気を送る機種で、吸着剤を交換しなくてよいハニカム状のローターを採用しています。

モレキュラーシーブ・活性アルミナ・シリカゲルの使い分け

工場で使う吸着剤は、主にシリカゲル、活性アルミナ、モレキュラーシーブの3つです。水をどこまで取りたいか、ほかに何が混じっているかで選び分け、1つの塔の中に層を重ねて組み合わせることもよくあります。

比べる点シリカゲル活性アルミナモレキュラーシーブ(合成ゼオライト)
中身多孔質の非晶質シリカ多孔質の酸化アルミニウム結晶性のアルミノケイ酸塩。孔の大きさがそろう
得意なこと重さあたりに吸う水の量が多い丈夫で持ち込みに強く、アンモニアなどの塩基性成分にも安定水との親和力が最も強く、ごく低い水分まで取れる
圧縮空気での目安入口側の層で水をまとめて取る露点−40℃までの汎用(加熱再生で−50℃)出口側の層で−70℃以下
弱み液体の水がかかると傷むことがある高温で液体の水にさらされると一部が再水和して傷む3つの中で価格が高く、再生に高い温度が要る
加熱再生の温度の目安銘柄で異なる200〜250℃240〜290℃
主なプロセスでの例包装用乾燥剤、空気の乾燥空気・ガスの乾燥天然ガス・LNG、分解ガス、冷媒、複層ガラス
出典:Atlas Copco「Absorption vs adsorption」、ZEOCHEM「Adsorbents Brochure」(2024年)、Vityuk・Goertz「Hydrocarbon Engineering」2023年5月号(BASF)をもとに作成

モレキュラーシーブは孔の大きさで種類が分かれ、3Aは約3 Å、4Aは約4 Å、5Aは約5 Å、13Xは約10 Åです(ZEOCHEM)。3Aは水以外のほとんどの分子を締め出せるので、エチレンなどのオレフィンや反応しやすい単量体を、炭化水素ごと吸わずに乾かせます。

4Aは汎用の乾燥剤で、水のほかアンモニアやメタノール、CO2も吸います。モレキュラーシーブはハーバーボッシュ法に送るアンモニア合成ガスの処理にも使われ、5Aや13XはCO2や硫黄化合物の除去、空気から酸素を分ける装置にも使われています。

再生のしかた:加熱と圧力の切り替え

吸着剤は、温度が高いほど、また圧力が低いほど水を手放しやすくなります。そこで再生には、塔を加熱して水を追い出す方法と、圧力を下げて乾いたガスを流す方法があり、図4の加熱なしのドライヤーは後者にあたります。

加熱再生は再生に使うガスが少なく済む代わりに熱が要り、圧力の切り替えは設備が簡単な代わりに乾いたガスを消費します。どちらも塔を2本以上並べて切り替えるので、弁の切り替えの不具合や吸着剤の劣化が、露点の悪化として現れる点を見ておくのが日々の管理になります。

包装用乾燥剤と取り扱いの安全

防湿フィルムで包む機械部品と包装用乾燥剤の袋(輸出用木箱)

包装用乾燥剤:JIS Z 0701とJIS Z 0301

製品や部品を湿気から守る包装用の乾燥剤にも、日本産業規格があります。JIS Z 0701:1977「包装用シリカゲル乾燥剤」は1950年に制定され、1977年に改正された規格で、2025年10月の確認でも有効とされています(日本規格協会)。

乾燥剤だけを入れても、袋や箱から湿気が入り続ければすぐに飽和します。そのためJIS Z 0301:1989「防湿包装方法」は、防湿包装材料で包んで封をし、そのうえで包装用乾燥剤を入れて中を乾いた状態に保つ方法を定めています。

金属部品などを長く保管・輸送するときに防湿包装材料で包んで乾燥剤を入れるのも、この考え方によるもので、包みの中の湿気によるさびや変質を防ぐのが目的です。食品向けはシリカゲルや生石灰、衣類や押し入れ用は塩化カルシウムと、中身や使い方で乾燥剤が使い分けられています。

生石灰・濃硫酸・指示薬の安全

乾燥剤は水と強く結び付く物質なので、扱い方を誤るとけがや火災につながります。リスクアセスメントで洗い出しておきたい代表的な注意点を、次の図にまとめます。

図6:乾燥剤を扱うときの主な注意点

水と出会ったときの発熱と、皮膚・目・粘膜への刺激が共通の注意点です。

生石灰の発熱雨水などで発熱し、可燃物に着火した火災例がある。水と分けて保管
濃硫酸の希釈水に濃硫酸を少しずつかき混ぜながら加える。逆は突沸のおそれ
目と粘膜生石灰・十酸化四リン・ソーダ石灰は強い刺激。保護めがねと手袋
誤食と廃棄食品の袋の乾燥剤は口に入れない。指示薬のコバルトは粉じんと廃棄に注意

※東京消防庁「令和4年版 火災の実態」、新宿区保健所、世界大百科事典「硫酸」、化学辞典 第2版、米国国立公園局の資料をもとに作成。

東京消防庁は、工事現場に置いた生石灰が雨水と発熱反応を起こし、上にあった防音シートに着火した火災を報告しています。生石灰は水や空気中の湿気で発熱する禁水性の物質で、酸化カルシウムを80%以上含むものは数量によって消防署への届出が必要です。

食品の袋に入った生石灰の乾燥剤を口に入れると、だ液と反応して熱と水酸化カルシウムができ、粘膜をやけどするおそれがあります。新宿区保健所は、なめた程度なら水か牛乳を飲ませて吐かせず、症状があれば受診するよう案内しています。

濃硫酸は、水で薄めるときに大きな熱が出ます。水に濃硫酸を少しずつかき混ぜながら加えるのが原則で、安全衛生の教育でも繰り返し扱われる基本動作です。

乾燥剤のよくある質問

アンモニアの乾燥には何を使えばよいですか?

酸化カルシウム(生石灰)かソーダ石灰などの塩基性の乾燥剤を使います。濃硫酸と十酸化四リンは中和し、中性の塩化カルシウムもCaCl2・8NH3をつくるため使えません。

二酸化炭素を乾かすのに使える乾燥剤はどれですか?

濃硫酸、十酸化四リン、塩化カルシウム、シリカゲルが使えます。酸化カルシウムやソーダ石灰はCO2と反応して炭酸カルシウムになり、水と一緒にCO2も吸ってしまうので使えません。

シリカゲルと生石灰の乾燥剤は何が違いますか?

シリカゲルは表面に水を吸着するだけで、加熱すれば再び使え、水にぬれても生石灰のような激しい発熱はありません。生石灰は水と反応して消石灰に変わる化学的乾燥剤で、吸湿力は強い一方、反応のときに発熱し、元には戻りません。

塩化カルシウムの除湿剤に水がたまるのはなぜですか?

塩化カルシウムが空気中の水蒸気を吸い、その水に自ら溶けていく潮解性をもつからです。たまった液は濃い塩化カルシウム水溶液で、塩化物を含むため金属に付くとさびの原因になります。

工場の圧縮空気には、冷凍式と吸着式のどちらのドライヤーが向いていますか?

露点が+3℃程度で足りる一般の用途なら冷凍式で十分です。配管が0℃を下回る場所を通る場合や、より乾いた−40℃・−70℃の空気が要る用途では吸着式を選び、再生に使う空気の損失も比べて方式を決めます。

まとめ

この記事のまとめ
  • 気体の乾燥剤は、乾かしたい気体と反応しないものを選ぶ。酸性の気体には酸性か中性、塩基性の気体には塩基性か中性が目安
  • 使えない理由は中和・付加化合物(CaCl2・8NH3)・酸化還元(濃硫酸とH2S)の3つの型で考える
  • 濃硫酸・十酸化四リン・塩化カルシウム・生石灰は水と反応する化学的乾燥剤、シリカゲルは吸着する物理的乾燥剤で再生しやすい
  • 工場では塩素を濃硫酸で、LNGの原料ガスをモレキュラーシーブで乾かし、圧縮空気は冷凍式と吸着式を露点で使い分ける
  • 包装では防湿包装材料と乾燥剤を組み合わせ、生石灰の発熱や濃硫酸の希釈など取り扱いの安全にも注意する

乾燥剤の選び方は、中和・付加化合物・酸化還元という化学の基本が、そのまま工場の設備選びにつながる分野です。濃硫酸をつくる接触法や、塩化カルシウムを副生するソルベー法も、乾燥剤と深く関わる基礎化学品の工場です。

こうした基礎化学品の位置づけは、化学業界のサプライチェーンや化学メーカーの勢力図とあわせて読むと、乾燥剤が工場のどこで使われているかまで見えてきます。

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MONOSCOPEの運営者

プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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