ワット(W)は1秒あたりのエネルギー量、カロリー(cal)は熱量を表す単位です。熱化学カロリーでは1 kW≒860 kcal/h、1 W≒0.86 kcal/hに換算できます。
カロリーとワットの換算には熱を加える時間が必要で、calやkcalだけではWに直せず、cal/sやkcal/hのように時間あたりの量にそろえます。
単位の意味から換算式を導き、早見表と水の加熱例で確かめます。本文の表と計算例は、特記しない限り1 cal=4.184 Jの熱化学カロリーを使います。
ワット
エネルギーの総量を時間で割ると、加熱や冷却の能力になります。
ワットは仕事率、つまり単位時間あたりにエネルギーを使う、または伝える速さの単位で、1 Wは1秒あたり1 Jに相当します。
熱を扱う設備では、ヒーターの加熱能力や熱交換器の交換熱量を時間あたりで表せ、ポンプの軸出力や発電機の出力にも使われる単位です。
ジュール(J)は仕事や熱量など、エネルギーの単位です。1 Nの力で、力の向きに物体を1 m動かしたときの仕事が1 Jになります。
JとWを使い分ければ、熱量と能力を同じ体系で計算できます。1948年の国際度量衡総会でも、熱量の単位をジュールとし、熱量測定の結果をできる限りJで表すよう求めています。
電力量のkWhも総量の単位で、1 kWを1時間使った量が1 kWhであり、1 kWそのものとは区別します。
カロリー
カロリーは、もともと水1 gを1℃温める熱量を基にした単位ですが、水の比熱は温度などの条件で変わるため、この説明だけでは厳密な換算係数を決められません。
現在の換算ではどの定義のカロリーかを確認する必要があり、熱化学カロリーと国際蒸気表カロリーは、ともにJとの関係を定めた単位です。
定義の違いにより、860という概算値の手前の数字が少し変わります。
| 定義 | 1 cal | 1 kW | 1 W |
|---|---|---|---|
| 熱化学カロリー | 4.184 J | 約860.421 kcal/h | 約0.860421 kcal/h |
| 国際蒸気表カロリー | 4.1868 J | 約859.845 kcal/h | 約0.859845 kcal/h |
※Jへの係数は定義値。時間あたりの換算値は小数第6位または第3位まで丸めています。どちらでも概算は1 kW≒860 kcal/h、1 W≒0.86 kcal/hです。
1 kcalは1,000 calです。熱化学カロリーでは1 kcal=4.184 kJとなり、旧資料を読み替える際も、この係数を明記して計算します。
燃料の発熱量を換算するときは、単位に加えて測定値の意味もそろえます。水蒸気の潜熱を含むかどうかは、高位発熱量と低位発熱量の違いで確認できます。
日本の計量法第8条は、取引・証明に使える計量単位を制限しています。カロリーは第5条第2項の「特殊の計量」用の単位で、第8条第2項によりその用途の取引・証明に限って使えます。
計量単位令の別表第6は、人や動物が摂取する物の熱量、または代謝で消費する熱量の計量にカロリーを認めています。食品の栄養表示は、この用途に当たる例外です。
同表での定義は1 cal=4.184 Jで、工業設備の取引・性能証明では、熱量はJやWh、能力はWなどの法定計量単位を基本にします。
第8条の制限は取引・証明が対象で、社内管理や学習まで一律にcalを禁じるものではありません。経済産業省は、法定単位を主表示とし、非法定単位を参考値として併記する扱いも示しています。
ワットとカロリーの変換は?
Wとcalの関係は、Jへの換算と時間の換算を分けると理解しやすくなり、熱化学カロリーでは、次の2つの関係を使います。
cal/sをkcal/hに直すには、1時間の3,600秒を掛け、calをkcalにするため1,000で割り、1 kWの計算では、最初に1,000 Wを代入します。
逆向きの換算では、kcal/hを860.421で割るとkWになり、概算なら「kcal/h ÷ 860 ≒ kW」で計算できます。
同じ行の左右が同じ加熱・冷却能力です。
| kcal/h | kW |
|---|---|
| 100 | 約0.116222 |
| 500 | 約0.581111 |
| 1,000 | 約1.16222 |
| 5,000 | 約5.81111 |
| 10,000 | 約11.6222 |
| 約860.421 | 1 |
| 約8,604.21 | 10 |
| 約86,042.1 | 100 |
※熱化学カロリー(1 cal=4.184 J)。kW→kcal/hは3,600÷4.184を掛け、kcal/h→kWは4.184÷3,600を掛けます。表示値は丸めています。
総熱量を扱う場合は、kcalからkJへ直し、必要ならkWhへ換算します。1 kWh=3,600 kJなので、熱化学カロリーでは1 kWh≒860.421 kcalです。
この表はエネルギーの総量を比べます。能力のkWへ直すには時間で割ります。
| kcal | kJ | kWh |
|---|---|---|
| 1 | 4.184 | 約0.00116222 |
| 100 | 418.4 | 約0.116222 |
| 1,000 | 4,184 | 約1.16222 |
| 9,000 | 37,656 | 10.46 |
| 10,000 | 41,840 | 約11.6222 |
| 約860.421 | 3,600 | 1 |
※熱化学カロリー(1 cal=4.184 J)。kcal→kJは4.184倍、kJ→kWhは3,600で割ります。逆向きはそれぞれ逆の操作です。
ボイラーの蒸気量はkg/h、熱出力はkWという別の量です。両者の関係は、蒸気と給水の熱量差を使う相当蒸発量の計算方法で確認できます。
実際に計算してみよう
旧記事と同じ条件で、必要な加熱能力を求めます。20℃の水300 kgを10分で50℃にするには、最低何kWの電気ヒーターが必要でしょうか。
水の比熱を1 kcal/(kg・℃)で一定と近似し、容器の加熱と外へ逃げる熱を無視するため、以下の62.76 kWは、熱化学カロリーを使ったこの仮定での理論値です。
必要な熱量→J系への換算→加熱時間で割る、の順に計算します。
=9,000 kcal
=37,656 kJ
=62.76 kJ/s=62.76 kW
※比熱一定・損失なしの近似計算。実際のヒーター選定では、容器や熱損失などを加味します。
熱量の式はQ=mcΔTで、Qは必要熱量、mは水の質量、cは比熱、ΔTは温度上昇を表し、この例の温度差は30℃になります。
早見表を使う場合は、9,000 kcalを10分で加えるので54,000 kcal/hで、これを概算係数860で割ると約62.8 kWとなり、直接計算した結果と丸めの範囲で一致します。
kWhからも確かめられ、必要な熱量は10.46 kWh、加熱時間は1/6時間なので、10.46÷(1/6)=62.76 kWです。現実の設備では、ヒーターから水へ届く熱と、容器や周囲へ流れる熱を分けて見積もります。その整理には、ヒートバランス(熱収支)の計算方法が役立ちます。
ワットとカロリーの換算でよくある質問
1 calは何Wですか?
時間を指定しないと答えは決まらず、熱化学カロリーの1 calを1秒で供給するなら4.184 W、同じ1 calを2秒で供給するなら2.092 Wです。
1 kcalは何Wですか?
1 kcalだけではWへ変換できず、熱化学カロリーでは1 kcal=4,184 Jなので、1秒で供給すると4,184 W、1時間で供給すると約1.16222 Wです。
なぜ1 W≒0.86 kcal/hなのですか?
1 W=1 J/sを1時間あたりにすると3,600 J/hで、熱化学カロリーでは1 kcal=4,184 Jなので、3,600÷4,184≒0.860421 kcal/hとなります。
ジュール・カロリー・ワットはどの順で換算しますか?
calをJへ換算し、秒で割ればWです。熱化学カロリーなら「cal × 4.184 ÷ 秒」、kcalと時間で計算するなら「kcal × 4.184 ÷ 3,600 ÷ 時間」でkWを求めます。
860を使えば、いつでも正確ですか?
860は概算用の係数です。精度が必要な計算では、カロリーの定義を選び、熱化学なら3,600÷4.184、国際蒸気表なら3,600÷4.1868を途中で丸めずに使います。
まとめ
- Wは時間あたりのエネルギー、calは熱量。calからWへの変換には時間が必要
- 1 W=1 J/s≒0.239 cal/s(熱化学カロリー)
- 熱化学カロリーは1 cal=4.184 J、国際蒸気表カロリーは1 cal=4.1868 J
- 熱化学カロリーで1 kW≒860 kcal/h、1 W≒0.86 kcal/h。860と0.86は近似値
- 計量法でcalを取引・証明に使えるのは食品・栄養などの熱量だけ。工業の取引・証明はJ・Wh・Wを使う
単位をそろえると、熱や電力の量を比較できます。エネルギーをどれだけ仕事に使えるかという別の視点は、エクセルギーとアネルギーの違いで整理しています。
熱力学の基礎は、エンタルピーと内部エネルギー・エントロピーの違いやワットとジュールの変換方法で確認できます。
状態量とは何か、水が何度で沸騰するかもあわせて読めます。
出典
出典・参考資料(6件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 単位と換算係数:NIST「Guide for the Use of the International System of Units(SP 811、2008)」表4・表6・付録B
- 熱量単位の決議:BIPM「第9回国際度量衡総会 決議3(1948)」
- 取引・証明の制限:e-Gov「計量法」第5条・第8条、経済産業省「取引又は証明における規制」
- 用途とcalの定義:e-Gov「計量単位令」第5条・別表第6第13項、経済産業省「用途を限定する非SI単位」
- 社内管理と参考併記:経済産業省「取引又は証明/計量単位に関するよくある質問と回答」1のQ3・2.BのQ12
- 栄養表示の用途:文部科学省「食品成分データベース:エネルギー」
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