排ガスのO2換算とは?NOx濃度の計算式・計算方法と標準酸素濃度

ボイラー煙道の測定口に差し込まれた排ガス分析計の採取プローブと煙突

排ガスのO2換算とは、実測した窒素酸化物(NOx)やばいじんの濃度を、決められた酸素濃度のときの値にそろえ直す計算です。排出基準に「O2 6%換算」などと書かれているのは、この換算後の値で比べるという意味です。

そろえ直す理由は、排ガスを空気で薄めるだけで濃度の数字が下がってしまうからで、換算すれば、薄めても値は変わりません。

この記事では、換算式 C=Cs×(21−On)/(21−Os) の意味と「21」の理由を先に説明します。続いて空気で薄めた場合の計算例、ボイラーなど施設ごとの標準酸素濃度の値を整理します。

O2換算の意味と計算方法は、動画でも解説しています。

目次

O2換算とは

O2換算は、大気汚染防止法施行規則の別表に、ばいじんと窒素酸化物の量を求める式として定められている次の式で計算します。

C = Cs × 21 − On21 − Os
C:換算後の窒素酸化物の濃度[ppm] Cs:窒素酸化物の実測濃度[ppm] On:標準酸素濃度[%] Os:排ガス中の酸素濃度(実測)[%]

NOxの濃度は、0℃・1気圧に換算した排ガス1m3の中に何cm3あるかで表します。1m3中の1cm3は1ppmなので、ppmのまま式に入れて構いません。

ばいじんも同じ式で、単位が排ガス1m3あたりのg(グラム)になるだけで、どちらも、基準値と同じ条件(0℃・1気圧換算)で測った値を使います。

式の「21」は、空気中の酸素濃度21%のことで、乾燥空気の酸素は体積で約20.95%であり、それを丸めた値です。

「O2」は酸素分子の化学式で、排ガスの分野では「排ガス中の酸素濃度」の意味で使います。「O2 6%換算」は、酸素濃度が6%だったとしたらいくらになるか、という意味です。

図1:O2換算の式に入れる4つの値

測る値が2つ、法令で決まる値が1つ、計算で出す値が1つです。

Cs 実測濃度分析計で測ったNOxやばいじんの値
Os 実測の酸素同じ排ガスで測った酸素濃度。20%を超えたら20%
On 標準酸素濃度施設の種類と対象物質ごとに別表で決まる
C 換算後の濃度この値を排出基準と比べる

※Osを20%で打ち切る扱いは、ばいじん・NOxの規定(大気汚染防止法施行規則 別表第二・第三の二の備考)によります。

Onは自分で選ぶ値ではなく、施設の種類と対象物質(NOxかばいじんか)で決まります。たとえばガスだけを燃やすボイラーは5%で、主な施設の値は、この記事の後半の表にまとめました。

計算そのものは掛け算と割り算だけですが、なぜこの形なのかを知っておくと、分母と分子を取り違えなくなります。

O2換算を使う理由

O2換算を使う理由は、規制の基準を一律にするためです。ボイラーや焼却炉で物を燃やすには酸素が必要で、炉の中で空気中の酸素が燃料と結びついて燃焼が起き、使われなかった酸素は排ガスとして煙突から出ていきます。

そのため、大気の酸素濃度は21%ですが、排ガスの酸素濃度はそれよりも低くなります。

図2:燃焼で酸素が減る流れ

空気の酸素は燃焼で使われ、残った分だけが排ガスに出ていきます。

空気燃料燃焼排ガス 酸素21%重油・ガスなど酸素を使う酸素は数%

※排ガスの酸素濃度は、燃料に対してどれだけ多めに空気を入れて燃やすか(空気比)で変わります。

この濃度は、どの程度の空気比で運転するかで大きく変わり、空気比が大きければ酸素濃度は高くなり、小さければ酸素濃度は低くなります。

空気比は、燃料を完全に燃やすのに必要な空気の量に対して、実際に何倍の空気を入れたかを表す値です。求め方は空気比の計算式と適正値で整理しています。

酸素濃度が運転のしかたで変わるので、そのままでは施設どうしの濃度を同じ物差しで比べられません。そこで、酸素濃度を決まった値にそろえるO2換算が必要になります。

具体的な数字で見てみると、燃料を燃やして、酸素濃度3%の排ガスが100Nm3/min出ているとします。

Nm3(ノルマル立方メートル)は0℃・1気圧に換算した体積です。くわしくはNm3とm3の違いと換算式を参照してください。

この排ガスに窒素酸化物が200ppm含まれていれば、NOxの量は100×200×10−6=0.02Nm3/minで、酸素は3%なので3Nm3/min出ています。

ただ、ppmはあくまで濃度なので、大気の空気を混ぜて出せば、いくらでも下げられます。たとえば新鮮な空気を100Nm3/min混ぜると、排ガスは合計200Nm3/minです。空気100Nm3/minには酸素が21Nm3/min含まれるので、酸素は合計24Nm3/min(12%)になります。

一方、NOxの量は0.02Nm3/minのままなので、濃度は0.02÷200=100ppmに半減し、出ているNOxの量は同じなのに、数字だけが下がるわけです。

酸素3%の排ガス100Nm3/minに空気100Nm3/minを混ぜると酸素12%・NOx100ppmになる図

これでは規制の意味がありません。そこで、酸素濃度を6%にそろえたらどの程度の濃度になるかを換算するのが、O2換算の目的です。環境省も、排ガスを空気で薄めて排出基準に適合させることを防ぐために、この標準酸素濃度補正を取り入れていると説明しています。

O2換算で実際に計算してみる

O2換算の計算を実際にやってみます。前の章の2つの状態を、どちらもO2 6%換算にし、1つ目が基本の換算、2つ目は空気で薄めた場合の確認です。

最初の状態

まず、酸素濃度3%、窒素酸化物200ppmの排ガスをO2 6%換算にするため、Os=3、On=6を式に入れると、次のとおり167ppmになります。

200 × 21 − 621 − 3 = 200 × 1518 ≒ 167[ppm]

実測の酸素(3%)が標準(6%)より低いので、換算後の値は実測の200ppmより小さくなります。

空気を過剰に混ぜた場合

次に、新鮮な空気を100Nm3/min混ぜた、酸素濃度12%・窒素酸化物100ppmの排ガスをO2 6%換算にすると、結果は同じく167ppmです。

100 × 21 − 621 − 12 = 100 × 159 ≒ 167[ppm]

これにより、空気を混ぜて排ガスの総量を増やすことで濃度規制を免れるという不正ができなくなりました。

図3:空気で薄めても換算後の値は同じ

実測の濃度は半分になりますが、O2 6%換算ではどちらも167ppmです。

最初の状態
空気を100Nm3/min混ぜた後
排ガス量
最初:100Nm3/min
混ぜた後:200Nm3/min
酸素濃度 Os
最初:3%(3Nm3/min)
混ぜた後:12%(24Nm3/min)
NOxの量
最初:0.02Nm3/min
混ぜた後:0.02Nm3/min(変わらない)
NOx実測濃度 Cs
最初:200ppm
混ぜた後:100ppm
O2 6%換算 C
最初:約167ppm
混ぜた後:約167ppm

※換算後が一致するのは、増えた酸素がすべて混ぜた空気から来ているためです。

同じ値になる理由は、(21−Os)/21 という割合にあります。これは、排ガスのうち空気で薄まっていない燃焼ガスが占める割合です。

酸素3%なら18/21、12%なら9/21で、実測値をこの割合で割ると、空気で薄める前の濃度(O2 0%相当)に戻せます。

計算すると、200÷(18/21)と100÷(9/21)はどちらも約233ppmです。O2換算は、この値に標準の割合 15/21(On=6のとき)を掛け直す計算で、233×15/21≒167ppmになります。

分母と分子の覚え方は、分子が標準(On)、分母が実測(Os)です。実測の酸素が標準より高い(薄まっている)ほど、換算後の値は実測より大きくなります。

施設ごとの標準酸素濃度(On)

標準酸素濃度Onは、大気汚染防止法施行規則の別表で、施設の種類ごとに決められています。NOxは別表第三の二、ばいじんは別表第二の備考に表があります。

主な施設の値を、e-Govの法令本文で確かめて表にしており、ボイラーは燃料によって5%・4%・6%と分かれます。

図4:主な施設の標準酸素濃度On

ボイラーは燃料で3つに分かれます。ディーゼル機関やガスタービンは高めで、ガス機関・ガソリン機関は0%です。

施設
NOx(別表第三の二)
ばいじん(別表第二)
ボイラー(ガス専焼)
NOx:5%
ばいじん:5%
ボイラー(重油などの液体燃料)
NOx:4%
ばいじん:4%(ガスとの混焼も含む)
ボイラー(石炭などの固体燃料)
NOx:6%
ばいじん:6%
金属の加熱炉
NOx:11%
ばいじん:11%
セメント焼成炉
NOx:10%
ばいじん:10%
廃棄物焼却炉
NOx:12%
ばいじん:12%
ディーゼル機関
NOx:13%
ばいじん:13%
ガスタービン
NOx:16%
ばいじん:16%
ガス機関・ガソリン機関
NOx:0%
ばいじん:0%

※大気汚染防止法施行規則(e-Gov、2026年7月1日施行の版)の別表第二・第三の二の備考から抜き出しました。NOxでは伝熱面積10m2未満の小型ボイラー(固体燃料6%・液体燃料4%)を別の区分にしています。ばいじんでは黒液を燃やすボイラーや電気を熱源にする施設などは「C=Cs」とされ、換算しません。

表のとおり、主な施設ではNOxとばいじんで同じ値が多くなっています。ただし施設の区分の分け方は2つの表で違うので、対象物質ごとに自分の施設がどの項に当たるかを確かめてください。

計算例を1つ挙げると、ガス専焼ボイラー(On=5)で、酸素濃度8%、NOx 80ppmと測れたとします。

80 × 21 − 521 − 8 = 80 × 1613 ≒ 98[ppm]

この約98ppmを、別表第三の二の排出基準と比べます。たとえばガス専焼ボイラーで排出ガス量が4万m3以上50万m3未満なら、基準は100cm3(100ppm)です。この排出ガス量は、0℃・1気圧に換算した1時間あたりの最大量です。

逆に、基準値から「実測でいくらまでなら収まるか」を求めることもできます。式を変形した Cs=C×(21−Os)/(21−On) を使います。

Cs = 100 × 21 − 821 − 5 = 100 × 1316 ≒ 81[ppm]
酸素8%で運転しているなら、実測で約81ppmが基準100ppmに当たる目安です。

この逆算は、運転中の分析計の値を見るときの目安なので、適合するかどうかは、その施設に当てはまる基準値と条件を確かめたうえで判断します。

図5:換算した値を排出基準と比べる流れ

先に施設の区分を決めてから、測った値を換算して比べます。

STEP 01施設の区分を確かめる種類・燃料・規模(排出ガス量)で、別表のどの項に当たるかを決める
STEP 02Onと基準値を確かめるNOxとばいじんで別の表。設置時期の経過措置や自治体の上乗せ基準も見る
STEP 03OsとCsを測る同じ排ガスで酸素と対象物質を測る。0℃・1気圧換算、Osは20%で打ち切り
STEP 04換算して基準と比べる例:80ppm・O2 8% → 約98ppm(On 5%)。基準100ppmと比べる

※排出基準の数値は施設の種類・規模ごとに決まり、地域によっては都道府県の条例でより厳しい基準が上乗せされます。

分析計の値を報告に使うなら、計器が正しく校正されていることも前提です。校正の考え方は計測器の校正周期の決め方にまとめています。

燃焼用の空気を空気予熱器で温めると、省エネになる一方で、NOxの濃度が上がらないかの確認が必要になります。換算後の値で見ておくと、運転条件を変えたときの比較がしやすくなります。

O2換算のよくある質問

酸素濃度が20%を超えたらどう計算する?

ばいじんとNOxの規定では、Osが20%を超えるときは20%として計算するので、20.5%と測れても、式には20を入れます。

Osが21%に近づくと分母の21−Osが0に近づき、換算後の値が極端に大きくなるためです。OnとOsを同じ値とする施設や「C=Cs」の施設は、換算そのものをしません。

O2 0%換算とは?

On=0として換算することで、式は C=Cs×21/(21−Os) になり、空気で薄める前の濃度を表します。

法令では、ガス機関とガソリン機関のOnが0%と決められています。たとえばガス機関でOs 10%、NOx 300ppmなら、300×21/11≒573ppmを基準値と比べます。

0%換算の値は、空気で薄める前の濃度なので、同じ排ガスでもO2 6%換算などより大きな数字になります。報告書の値を比べるときは、何%換算の値かをそろえてから見てください。

硫黄酸化物(SOx)もO2換算する?

硫黄酸化物は、O2換算の式を使いません。排出口の高さと地域ごとの定数Kで、1時間あたりに出してよい量を決めるK値規制です。

式は q=K×10−3×He2(He は補正した排出口の高さ)で、指定地域では、総量規制や燃料使用基準もかかります。燃料の硫黄分は、ボイラーの低温腐食の原因にもなります。

空気比とはどう関係する?

空気比mは、排ガスの酸素濃度からおおよそ m≒21/(21−O2) で求められます。これを使うと、O2換算の (21−On)/(21−Os) は「実測時の空気比÷標準の空気比」と読めます。

ただし空気比の式は近似なので、O2換算の係数と完全には一致せず、換算は規制のための計算で、空気比は燃焼の管理に使う値と分けて考えます。

空気比を下げすぎない範囲で小さくすると、排ガスが持ち去る熱が減ります。その効果はボイラー効率の計算や工場の省エネの基本で確かめられます。

まとめ

この記事のまとめ
  • O2換算は、排ガス中の酸素濃度と大気中の酸素濃度(21%)で計算できる:C=Cs×(21−On)/(21−Os)
  • O2換算は、排ガスの基準を一定にするためのもの
  • O2換算により、空気を混ぜて濃度を下げるという不正ができなくなる
  • 分子が標準(On)、分母が実測(Os)。Osが20%を超えたら20%で計算する
  • Onは施設と対象物質ごとに法令で決まる(ボイラーはガス5%・液体4%・固体6%など)

どちらが分母でどちらが分子かは、「薄まった実測値を標準の酸素濃度に戻す」と考えれば迷いません。排ガスの熱を回収するエコノマイザや、排ガス処理の除害装置の仕組みもあわせて読むと、煙突までの流れがつながります。

工場の燃焼設備を管理する仕事については、製造業のエネルギー管理士の仕事で紹介しています。排ガスの量そのものの求め方は排ガス量の計算方法が参考になります。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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