AQR制御とは?発電機の無効電力を調整する原理・目的とAPFR・AVRの違い

工場の発電機室に並ぶ発電機と励磁装置・配電盤

AQR(自動無効電力調整器)とは、同期発電機の界磁電流を調整し、無効電力を設定した値に保つ制御です。主に系統と並列運転しているときに使い、力率を一定にするAPFR、電圧を一定にするAVRとは運転モードとして切り替えます。

この記事では、AQRの役割、V特性曲線を使った原理、力率を整える目的の順に整理し、APFR・AVRとの使い分けはよくある質問でも補います。

目次

AQRとは

AQRとは、自動無効電力調整装置のことで、発電機の無効電力出力が設定した値(var)になるように界磁電流を制御します。例えば、受電端のAQR制御とは、受電端の無効電力を設定した値に調整することを意味します。

発電機の制御にはAQRの他にもAPFR(自動力率調整装置)やAVR(自動電圧調整器)などがあり、状況に応じて切り替えて運用されます。3つの違いは、何を一定に保つかで見分けます。

  • AVR:発電機の端子電圧を一定にする
  • AQR:発電機の無効電力を一定にする
  • APFR:発電機の力率を一定にする

明電舎の励磁装置の資料では、AQRとAPFRは発電機の並列運転中に、無効電力または力率を一定にする機能とされています。系統から切り離した自立運転では、電圧を支える相手がいないため、発電機自身がAVRで電圧を保ちます。

図1:励磁の制御モードの比較

どれも界磁電流を動かす制御です。違いは、何を一定に保つかと、使う場面です。

一定に保つ量
主に使う場面
AVR
自動電圧調整
発電機の端子電圧
自立運転、起動から系統につなぐまで。AQR・APFRがAVRの目標電圧を動かす組み方では、連系中もAVRが働く
AQR
自動無効電力調整
発電機(または受電点)の無効電力
系統と並列運転中
APFR
自動力率調整
発電機(または受電点)の力率
系統と並列運転中。出力に合わせて無効電力も増減させたいとき
AIFR
自動界磁電流制御
界磁電流そのもの
界磁電流を直接決めて運転したいとき(明電舎の呼び方。使い方は機種による)

※名称や持っている機能はメーカー・機種によって違います。明電舎のデジタル式励磁装置の資料をもとに作成。

実際の製品では、AQR・APFRは独立した箱ではなく、AVR(励磁制御装置)の機能の一つとして入っていることが多いです。明電舎や第一エレクトロニクスのAVRの資料でも、電圧制御と並んで無効電力制御・力率制御が載っています。

AQR制御の原理

AQRの動きは、次の3段の繰り返しです。

  • 発電機の電圧と電流から、無効電力を測る
  • 設定値と比べて、差を出す
  • 差がなくなる向きに、界磁電流(励磁電流)を増減する

AQRによって無効電力が制御できる原理は同期発電機の特性にあり、具体的には励磁電流を強めると電機子から遅れ電流が流れ、弱めると進み電流が流れます。この特性(V特性曲線)を使い、励磁電流を調整して無効電力を調整します。

図2:同期発電機のV特性曲線

出力(有効電力)を一定にして励磁電流を変えると、電機子電流はV字に変わります。

力率1進み電流遅れ電流不足励磁電流が最小過励磁励磁電流電機子電流

※発電機から見た向きです。過励磁では遅れ無効電力を系統へ送り、不足励磁では系統から受け取る側に回ります。

曲線の底が無効電力ゼロで力率1の点で、そこから励磁を強める(過励磁)と、発電機は遅れ無効電力を系統へ送ります。逆に弱める(不足励磁)と進み電流が流れ、無効電力を受け取る側に回ります。

日本電機工業会の解説でも、進相運転では励磁電流が少ない低励磁状態になるとされています。電流の位相がずれるとはどういうことかは、遅れ電流と進み電流の違いで詳しく扱っています。

このため、励磁電流で無効電力を制御できる同期機は、進相コンデンサや分路リアクトルと同様に、受電端の力率を調整する同期調相機としても利用されます。静止機器で力率を整える方法は、進相コンデンサの仕組みと役割で解説しています。

系統につないでいる間、発電機の2つの出力は別々の操作で決まります。有効電力はガバナ(調速機)が蒸気量で、無効電力は励磁装置が界磁電流で決めます。

図3:系統と並列運転中の調整役

同じ発電機でも、有効電力と無効電力は別の装置が受け持ちます。

ガバナ励磁装置同期発電機有効電力無効電力蒸気量界磁電流(AVR・AQR)kvarkW

※自立運転では、ガバナが周波数を、AVRが電圧を受け持ちます。

連系中は電圧もほぼ系統で決まるため、励磁を強めても電圧はわずかしか動かず、変わるのは主に無効電力です。これは、周波数を系統が決めるのでガバナがドループ制御で出力の分担だけを受け持つのと同じ関係です。

タービン側の制御は蒸気タービンの制御方法にまとめています。目標値の決め方はメーカーによって違い、明電舎のデジタル式AVR(YNEX06D)の資料では、目標の無効電力を次の式で決めています。

Q = A + B × P
Q:目標の無効電力 P:発電機の有効電力 A・B:設定値(明電舎の仕様では A は −1.0〜1.0PU、B は −0.7〜0.7 の範囲で設定)

Bを0にすれば、出力にかかわらず無効電力が一定になります(AQR)。Aを0にすれば無効電力が出力に比例し、Q/P(=tanφ)が一定、つまり力率が一定になります(APFR)。

同じ資料の仕様では、無効電力の制御精度は±2%以内、力率は±2°以内です。装置によっては、AQR・APFRが無効電力や力率の差に応じて、AVRの目標電圧をずらす形で組まれ(日立製作所・三菱重工業の特許の例)、この形では、連系中もAVRが働き続けます。

AQR制御の目的

AQR制御の目的は、同期発電機の無効電力を制御することで、発電所の送電端の力率を1に近づけることです。発電所内では、ポンプやファンなどの誘導性負荷により無効電力が消費されます。

これに対して、発電機が生み出す無効電力を釣り合わせることで、送電端の力率を1に近づけられます。力率が1に近づけば、負荷で消費されない無効電流が減るため、電力損失を抑えられます。

図4:所内の無効電力の釣り合い

ポンプやファンが使う遅れ無効電力を発電機が出せば、系統との境目では無効電力がほぼゼロになります。

系統受電点発電機ポンプファンQ≈0供給消費AQRで調整遅れ無効電力

※自家発のある工場では、系統との受電点がこの境目になります。発電所では送電端です。

自家発のある工場なら、同じ考え方を系統との受電点に当てはめ、これが前述の「受電端のAQR」ですが、力率は進み側に行きすぎてもいけません。

電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドラインでは、高圧連系の受電点の力率を85%以上とし、系統側から見て進み力率にしないことを求めています(令和6年12月版。特別高圧も高圧に準じます)。

具体的な条件は逆潮流の有無などで変わり、蓄電設備の充電時などの例外もあるため、連系先の電力会社の系統連系技術要件で確かめます。

もう一つの目的は、発電機を無理な運転から守ることです。系統に比べて小さな発電機が電圧を一定に保とうとすると、必要な無効電力が大きくなり、過電流になることがあります。三菱重工業の特許の説明でも、このため力率を一定にするAPFRが設けられることが多いとされています。

設定値どおりに無効電力を出せない場面もあるのは、界磁や電機子の発熱、不足励磁での安定性に限界があるためです。明電舎のAVRでは、こうした限界を過励磁限定・不足励磁限定・過電流限定の3つで守っています。

図5:無効電力の制限(無効電力限定)

AQRの設定値より、発電機を守る制限が優先されます。

OEL過励磁限定励磁の強めすぎを抑え、遅れ無効電力を出しすぎないようにする
UEL不足励磁限定励磁の弱めすぎを抑え、進み側で運転できる範囲を守る
OCL過電流限定電機子電流が上限を超えないよう、無効電力を抑える

※明電舎の資料では、目標の無効電力が制限を超えると、制限の動作線上で運転します。名称は明電舎 YNEX06D の例です。

AQRのよくある質問

AQRとAPFRはどちらを使いますか?

何を一定にしたいかで選びます。出力が変わっても無効電力の量を決めておきたいならAQRで、出力に合わせて無効電力も増減させ、力率をそろえたいならAPFRです。どちらにするかは受電点の力率の条件や発電機の容量で決まり、設備ごとに運用が違います。

AVRとは?発電機のAVRはどんな仕組みですか?

AVR(自動電圧調整器)は、発電機の端子電圧を設定値に保つ制御です。明電舎の資料では、計器用変圧器(VT)で発電機電圧を測り、設定値との差をPID制御で計算し、その結果でサイリスタを動かして界磁電流を調整します。

負荷が増えて電圧が下がれば励磁を強め、上がれば弱めるほか、系統につなぐ前は電圧を系統に合わせる必要があり、ここでもAVRが働きます。系統につなぐ操作の条件は、同期投入に必要な条件で解説しています。

系統から切り離されたらAQRはどうなりますか?

AQRのままでは運転できないので、AVRに切り替えます。自立運転では、所内の負荷が必要な無効電力を決め、発電機は電圧を保つ役に回るためです。切り替えの条件や方法(自動か手動か)は装置ごとに決まっているので、取扱説明書で確かめます。

自立運転の考え方はプラントの自立運転とはで、停止の手順でAVRを力率1の運転にする例は発電機のモータリングで紹介しています。

まとめ

この記事のまとめ
  • 発電機のAQRとは、界磁電流を調整して無効電力を設定値に保つ装置
  • AVRは電圧、AQRは無効電力、APFRは力率を一定にし、運転状態で切り替える
  • 同期発電機の励磁電流を調整することで無効電力を制御できる(V特性曲線)
  • AQRにより無効電力を調整することで、送電端や受電点の力率を1に近づけられる
  • 力率は進み側にしすぎず、過励磁・不足励磁の制限の範囲で運転する

発電機の制御は感覚的に理解しにくいものも多いですが、目的を理解して状況に応じた制御方式を選択しましょう。

自家発の全体像はコージェネレーションとコンバインドサイクル発電の違いで、基本料金と力率改善の関係は工場のデマンド電力を下げる方法で整理しています。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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