力率とは|有効・無効・皮相電力の関係と低いと困ること

工場の電気室に並ぶ高圧受電盤

力率(りきりつ)は、電源から送られた電気のうち、実際に仕事に使われた割合を表す数字です。式で書くと「有効電力÷皮相電力」で、1(100%)に近いほど電気を無駄なく受け取れています。

工場では、モーターや変圧器が多いほど力率が下がりやすく、電流・電力損失・電気料金の基本料金に影響します。

この記事を読むと、電気料金の明細や受電設備の計器で見る「力率」が何を意味し、低いと何が困るのかが分かります。

目次

力率とは|電気のうち仕事に使われた割合

三相誘導モーターの端子箱につながる電源ケーブル

力率とは、皮相電力(電圧×電流)に対する有効電力の比です。中小機構のJ-Net21では「力率cosθ=有効電力[kW]÷皮相電力[kVA]」と説明されています。

θ(シータ)は、交流の電圧と電流の波の山がずれる角度で、タイミングがそろっていればθは0度でcosθ=1、ずれるほどcosθは小さくなります。

この「力率=cosθ」の関係は、電圧と電流がともにきれいな正弦波(ひずみのない交流)であることが前提です。インバータなどで電流の波形がひずむと、位相のずれだけでは力率を説明しきれなくなります。

図1:電圧と電流の山のずれ(遅れ力率)

モーターのような負荷では、電流の山が電圧の山より遅れて来ます。このずれの角度θが力率を決めます。

θ位相のずれθが大きいほどcosθ(力率)は小さい電圧電流

※電圧・電流とも正弦波の場合。実線が電圧、点線が電流です。電流の山が遅れる状態を「遅れ力率」と呼びます。

電力の計算式にも力率が入ります。単相交流なら「有効電力P=電圧V×電流I×cosθ」、工場で一般的な三相交流なら「P=√3×V×I×cosθ」です(Vは線間電圧、Iは線電流)。

同じ電圧で同じ仕事(kW)をさせるなら、力率が低いほど大きな電流が必要になり、この「電流が増える」ことが後で見る損失や料金の話につながります。

有効電力・無効電力・皮相電力の関係

交流の電気は、仕事をする分と、電源と機器の間を行き来するだけの分に分けて考えます。この2つと、その合計の3つの電力が、直角三角形の関係になります。

図2:電力の三角形(100kWを力率0.8で使う例)

有効電力を底辺、無効電力を高さとすると、斜辺が皮相電力になります。底辺と斜辺の間の角θのcosが力率です。

有効電力P 100kWθ無効電力Q75kvar皮相電力S125kVAcosθ=P÷S=100÷125=0.8

※三平方の定理で S²=P²+Q²(125²=100²+75²)。電圧・電流とも正弦波であることが前提の計算例です。

有効電力(kW)

有効電力は、モーターを回す、ヒーターで温める、照明を点けるといった実際の仕事や熱に変わる電力です。単位はkW(キロワット)で、電力量料金のkWhもこの有効電力を時間で積み上げたものです。

無効電力(kvar)

無効電力は、モーターや変圧器が鉄心に磁界をつくるために、電源と機器の間を往復する電力です。J-Net21は「負荷と電源の間を往復するだけで消費されない電力」と説明しています。

消費はされませんが、往復する分の電流は電線や変圧器を実際に流れます。単位はkvar(キロバール)で、「無駄に使われる電気」ではなく「設備の通り道を占める電気」と考えると分かりやすくなります。

皮相電力(kVA)

皮相電力は、電圧と電流をそのまま掛けた見かけの電力で、単位はkVA(キロボルトアンペア)です。有効電力と無効電力の合成で、「皮相電力²=有効電力²+無効電力²」の関係があります。

変圧器やケーブルは、流れる電流と電圧で容量が決まるため、設備の大きさはkWではなくkVAで選びます。変圧器の銘板がkVA表示なのはこのためです。

図3:3つの電力の単位と、現場でどこに効くか

同じ「電力」でも、料金に効くもの、設備容量に効くものが違います。

有効電力
無効電力
皮相電力
単位
kW
kvar
kVA
中身
仕事・熱に変わる分
磁界をつくるため電源と往復する分
電圧×電流の見かけの合計
現場で効く所
電力量料金(kWh)、デマンド
電流を増やし、損失・電圧降下の原因に
変圧器・ケーブル・遮断器の容量選定
減らし方
省エネ(運転の見直し、高効率機器)
進相コンデンサで打ち消す
力率改善で有効電力に近づける

※デマンドは30分平均の有効電力の最大値で、契約電力の決定に使われます。

力率が下がる原因|モーターと変圧器の磁界

ポンプ室に並んで設置された誘導モーター駆動のポンプ

力率を下げる主な原因は、コイル(巻線)で磁界をつくって動く機器です。誘導電動機、変圧器、溶接機などがこれにあたり、「誘導性負荷」と呼ばれます。

農林水産省の電気設備計画設計技術指針では、電熱器などの純抵抗に近い負荷は力率がほぼ100%、誘導電動機などの誘導負荷は力率が50〜80%程度とされています。受電設備全体では70〜80%程度になる、とも書かれています。

図4:工場の負荷と力率の目安

磁界を使う機器ほど無効電力が多く、力率が下がります。

電熱器純抵抗に近く、力率はほぼ100%
誘導電動機力率50〜80%程度。軽い負荷ほど下がる
変圧器鉄心の励磁に無効電力を使う
受電設備全体まとめると70〜80%程度

※農林水産省「電気設備計画設計技術指針」の記述による目安です。実際の値は機器の種類・容量・負荷率で変わるため、個別の設備は銘板や計測値で確認します。

軽い負荷で回るモーターほど力率が悪い

同指針によると、誘導電動機は負荷が軽いときほど力率が悪く、全負荷に近づくほど良くなります。仕事の量(有効電力)は負荷で変わる一方、磁界をつくる無効電力はほぼ一定だからです。

余裕を見て大きめのモーターを選び、軽い負荷で長く回している設備は、力率の面では不利になります。モーターの種類ごとの特徴は産業用モーターの種類と選び方で整理しています。

変圧器も、鉄心を磁化する励磁電流の分だけ無効電力を使うため、夜間や休日に負荷が減っても変圧器はつながったままで、その時間帯は受電点の力率が下がりやすくなります。

力率が低いと工場で何が困るか

力率が低いと困ることの出発点は、同じ仕事に対して流れる電流が増えることです。電流が増えると、次の順に影響が広がります。

  • 電線や変圧器の抵抗で失われる電力(損失)が増える
  • 電線での電圧降下が大きくなり、末端の電圧が下がる
  • 変圧器やケーブルに、より大きな容量(kVA)が必要になる
  • 高圧受電の契約では、基本料金の割増しにつながる

図5:力率0.8と1.0で比べる(同じ100kW・三相6.6kVの例)

同じ仕事をさせても、力率0.8では電流が1.25倍、電線の損失は約1.56倍になります。

力率0.8のとき皮相電力 125kVA/無効電力 75kvar
電流 約10.9A
電線の損失(I²R)を1.56とすると
力率1.0のとき皮相電力 100kVA/無効電力 0kvar
電流 約8.7A
電線の損失は1.00(約36%減)

※電流=100kW÷(√3×6,600V×力率)で計算。正弦波・電圧一定・電線の抵抗一定とした計算例で、実際の損失は配線や負荷の条件で変わります。

電流が増え、損失と電圧降下が大きくなる

三相の式「P=√3×V×I×cosθ」を電流について解くと、I=P÷(√3×V×cosθ)です。電圧と有効電力が同じなら、電流は力率に反比例します。

電線や変圧器の巻線で熱になる損失は電流の2乗に比例するため、力率0.8では1.0のときの1.56倍になります。J-Net21も、力率が悪いと電流が増え、電力損失と電圧降下が大きくなると説明しています。

変圧器やケーブルが大きくなる

設備容量は皮相電力(kVA)で決まるため、同じ100kWの負荷でも、力率0.8なら125kVA分の変圧器とケーブルが必要です。力率を上げれば、今の変圧器のまま負荷を増やせる余裕が生まれます。

大型の変圧器は納期が長くなっており、増設の前に容量の余裕を見直す意味は大きくなっています。背景は変圧器不足と納期長期化の記事で整理しています。

高圧受電の力率割引|基本料金が1%ずつ変わる

工場の敷地に設置された屋外型キュービクル

工場の多くが結ぶ高圧の電力契約では、力率によって基本料金が割引・割増しされます。電力会社にとって、力率の低い需要家は同じkWでも大きな電流を送る必要があり、設備の負担が大きいからです。東京電力エナジーパートナーの高圧の電気需給約款や、関西電力の「高圧電力AS」料金表では、次のように定めています。

  • 力率は、その月の毎日8時〜22時の平均力率で決める
  • 瞬間的に進み力率になったときは、その瞬間の力率を100%として扱う
  • 電気をまったく使わなかった月は、力率85%とみなす
  • 85%を上回れば1%ごとに基本料金を1%割引、下回れば1%ごとに1%割増し

平均力率は、受電点で計った有効電力量と無効電力量から「有効電力量÷√(有効電力量²+無効電力量²)」で求めます(農林水産省の技術指針、東京電力の例)。

図6:力率と基本料金の係数(高圧・85%基準の場合)

基本料金は「基本料金単価×契約電力×(185−力率)÷100」。力率85%を1.00として、上下1%ごとに1%変わります。

力率80%1.05倍
力率85%1.00倍
力率90%0.95倍
力率95%0.90倍
力率100%0.85倍

※係数の式はJ-Net21「(受電)力率とは?」による。割引・割増しの条件は電力会社・契約メニューごとの約款で確認が必要です。

J-Net21の説明では、力率90%なら5%割引、80%なら5%割増しで、80%から90%に改善すると、基本料金は10%下がります。

仮に基本料金が月50万円の工場なら、85%から95%への改善で月5万円、年60万円の差になる計算です。電力量料金(kWh)は力率では変わらない点に注意します。

基本料金そのものは契約電力で決まり、契約電力はデマンド(30分平均電力の最大値)で決まる契約が一般的です。基本料金を下げるには、力率の改善とあわせてデマンドを抑える対策も効きます。

低圧電力は加重平均で5%の割引・割増し

低圧の動力契約では計り方が異なります。農林水産省の技術指針は東京電力の例として、機器ごとの力率を容量で加重平均する方法を紹介しています。

  • 進相コンデンサを付けた機器は90%、付けていない機器は80%とする
  • 電熱器は100%として計算する
  • 加重平均が85%を上回れば基本料金を5%割引、下回れば5%割増し

低圧は受電点で連続して計測するのではなく、機器の構成で力率を決める点が高圧との大きな違いです。いずれも契約先の約款や料金表で最新の条件を確かめてください。

力率を上げる進相コンデンサ

力率を上げる代表的な方法が、進相コンデンサ(力率改善用コンデンサ)の設置です。コンデンサに流れる電流は電圧より90度進むため、モーターなどの遅れ電流を打ち消して無効電力を減らせます。

図7:進相コンデンサで無効電流を打ち消す

モーターが必要とする遅れの無効電流を、すぐ近くのコンデンサが進みの電流で補います。電力会社から受ける電流が減ります。

電力会社受電設備モーター進相コンデンサ遅れの無効電流受電点打ち消す

※コンデンサの取付け場所は、受電点、電気室の高圧母線、変圧器の二次側、負荷と並列の4通りがあります(J-Net21)。

どこに付けるか

J-Net21によると、力率割引を主な目的にするなら受電点への設置が有利で、設備費が安く済むため最も多く採用されています。

一方、農林水産省の技術指針は、負荷の近くならそこまでの配線の電流も減るため、本来は改善したい負荷の近くに付けるほど効果が大きいとしています。ただし分散配置は台数が増え、費用・設置スペース・保守の負担が増えます。

そこで同指針は、主要なモーターには電動機と並列にコンデンサを付け、変圧器の励磁分などは母線に一括で付ける組み合わせを一般的な方法としています。

直列リアクトルとセットで使う

進相コンデンサには、通常、小容量のリアクトル(コイル)を直列につなぎます。J-Net21は、開閉時の突入電流を抑え、電源の高調波(波形のひずみ成分)を抑えるためと説明しています。

パナソニックの用語解説でも、直列リアクトルはJISや内線規程で原則として設置が定められているとされています。インバータなど電流波形をひずませる機器が多い工場ほど、この組み合わせが重要になります。

省エネ法の判断基準では受電端95%以上が基準

省エネ法にもとづく工場等の判断基準(経済産業省告示)は、受電端の力率を95%以上とすることを基準に、進相コンデンサの設置などで向上させることを求めています。さらに98%以上を目標として検討するよう示しています。

この95%基準と98%目標は、2023年4月施行の改正(非化石燃料の追加など)の後も変わっていません。工場の省エネの全体像は工場の省エネとエネルギー管理の基本で解説しています。

進相コンデンサの注意点|入れすぎ・切り忘れ

盤の中に並ぶ進相コンデンサと直列リアクトル

コンデンサは付ければ付けるほど良いわけではありません。必要な量を超えると、今度は電流が電圧より進む「進み力率」になり、別の問題が起きます。

夜間・休日の進み過ぎ

J-Net21は、夜間などにコンデンサが入ったままだと力率が1を大きく超えて進み、異常電圧のおそれがあると指摘しています。対策は、投入量を自動で切り替える力率自動調整装置です。

判断基準(告示)も、進相コンデンサを設置した設備の稼働・停止に合わせて入り切りするよう管理標準を定めることを求めています。料金の計算でも、瞬間的な進み力率は100%として扱うため、進めすぎても割引は増えません。

モーター直結では容量の取りすぎに注意

農林水産省の技術指針は、モーターに直接つなぐコンデンサの容量を大きく取りすぎると、自己励磁現象でモーターの端子電圧が定格以上に上がる場合があると注意しています。

同指針の目安は、無負荷時の励磁電流に相当する容量以下です。無負荷電流が分からないときは、モーター容量の1/3程度以下が望ましいとされています。

図8:力率改善を検討する流れ

今の力率を数字で押さえ、負荷の変わり方を見てから、容量と入り切りの方法を決めます。

01今の力率を確認電気料金の明細や受電設備の計器で、月ごとの力率を見る
02負荷の変わり方を見る昼夜・休日の負荷差、インバータなど高調波を出す機器の有無
03容量と場所を決める無効電力から必要なkvarを出し、受電点か負荷側かを選ぶ
04入り切りを決める力率自動調整装置や、設備の運転に連動させる方法を選ぶ
05専門家に相談電気主任技術者や電気工事会社と、保護・リアクトルも含めて検討
06運転後に確かめる翌月以降の力率、夜間の進み過ぎがないかを確認する

※J-Net21は、実施にあたって電気主任技術者や電気専門企業に相談するよう勧めています。

J-Net21の試算例では、200kWを力率80%で使う事業所の皮相電力は250kVA、無効電力は150kvarです。この150kvarが、コンデンサ容量を考える出発点になります。

同じ例で、工場稼働時の平均の受電電力を把握すれば、必要な容量は150kvar以下に収まるとされています。最大の負荷ではなく、普段の運転状態で容量を考えるのがポイントです。

受電設備の計測と管理は、工場では電気主任技術者やエネルギー管理の担当者の仕事です。省エネを担う人の役割は製造業のエネルギー管理士の仕事で紹介しています。

まとめ

この記事のまとめ
  • 力率は有効電力÷皮相電力で、正弦波なら電圧と電流のずれθのcosθに等しい
  • 無効電力は消費されないが、電線や変圧器を流れる電流を増やす
  • モーターや変圧器が多い工場ほど、特に軽い負荷のときに力率が下がる
  • 高圧受電では85%を基準に、1%ごとに基本料金が1%割引・割増しされる契約が一般的
  • 進相コンデンサで改善できるが、夜間の進み過ぎや容量の取りすぎに注意する

力率は、受電設備を見る設備保全や、モーター回路・制御盤を設計する電気・電子設計の仕事で必ず出てくる数字です。

電験やエネルギー管理士の試験でも頻出のテーマなので、資格の勉強とあわせてエネルギー管理士の難易度と勉強法も参考にしてください。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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