生成AIとは?仕組みと基本原理を図解でわかりやすく解説

工場の事務所でノートPCの生成AIを使う技術者

文書作成ソフトやメールの画面に、AIの助手が組み込まれる場面が増えてきました。その中身にあたるのが、文章や画像などを新しくつくり出す「生成AI」です。

生成AIは、学習した大量のデータをもとに、文章・画像・音声などをつくるAIの総称です。これまでのAIは、故障の予兆を見つけるといった「見分ける・当てる」仕事が中心でした。

生成AIは、人が得意としてきた「書く・描く・まとめる」作業を担える点が大きく異なります。

目次
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生成AIとは

チャット画面と図面を並べて作業する設計エンジニア

生成AIとは、学習した大量のデータをもとに、文章・画像・音声などの新しいコンテンツをつくり出すAIです。総務省の情報通信白書では、テキスト、画像、音声などを自律的に生成できるAI技術の総称として紹介されています。

これまでのAIは、大量のデータから故障の予兆を見つけたり、将来の需要を予測したりする「見分ける・当てる」ための道具が中心でした。生成AIは、人が得意としてきた「書く・描く・まとめる」という作業を担える点が大きく異なります。

たとえば「この不具合報告を300字で要約して」「新人向けに手順書をわかりやすく書き直して」と頼めば、数秒で下書きが返ってきます。ゼロから書く手間を減らし、人は確認と仕上げに集中できるのが、生成AIの基本的な価値だと言えます。

生成AIという言葉が指す範囲は広く、対話型のチャットサービスだけでなく、文書作成ソフトやメール、設計ツールなどに組み込まれた支援機能も含まれます。

利用者から見れば、ふだん使っている業務ソフトの中にAIの助手が入ってきた、という形で触れる場面も増えています。

もう一つの特徴は、専門的なプログラミングなしに、ふだんの言葉で指示を出すだけで使えることです。現場の技術者や管理者が、自分の業務に合わせて直接使える道具になったと言えます。

企業での利用も広がっています。令和7年版情報通信白書によると、2024年度の調査で何らかの業務に生成AIを「使用中」と答えた日本企業は55.2%でした。

ただし活用方針を定めている企業は49.7%にとどまり、米国・ドイツ・中国と比べると低い傾向にあります。

図1:従来のAIと生成AIの違い

同じAIでも、得意とする仕事の種類が異なります。

従来のAI(識別・予測型)
生成AI
主な役割
データを分類し、結果を予測する
文章や画像などを新しくつくる
製造業での例
外観検査の良否判定、故障予兆の検知
報告書の下書き、手順書の要約、Q&A
使い方
用途ごとに専用のシステムを組む
自然な言葉で指示を出す
準備するデータ
用途ごとに正解付きのデータを集める
学習済みのモデルをそのまま使える
出力の性質
同じ入力には同じ結果を返す
同じ質問でも表現が変わることがある

※実際のシステムでは、両者を組み合わせて使うことも少なくありません。

生成AIの仕組み

サーバーラックが並ぶデータセンターを点検する技術者

生成AIは、一つのソフトウェアだけで動いているわけではありません。利用者が触れる画面の奥に、いくつかの層が重なって動いています。

図2:生成AIを構成する要素

利用者の指示は、アプリを通じて基盤モデルに届きます。

利用者技術者や管理者が、ふだんの言葉で質問や指示を入力する
指示(プロンプト)
アプリケーションチャット画面や社内ツール。指示を整え、結果を見やすく返す
必要な情報を補う
基盤モデル大量のデータで学習した中核のAI
社内データ規程・報告書・図面などの資料
外部ツール検索や計算、業務システム
計算を実行
計算基盤GPUを積んだサーバーやクラウド。大量の計算を高速に処理する

※社内データや外部ツールとの連携は、使い方によって有無が変わります。

中核にあるのが基盤モデルと呼ばれるAIです。インターネット上の文章など膨大なデータで事前に学習しており、特定の用途に限らず幅広い質問に対応できます。文章を扱うものは大規模言語モデル(LLM)と呼ばれます。

基盤モデルは、学習した時点までの一般的な知識しか持っていません。自社の規程や過去の不具合報告のような社内の情報は知らないため、業務で使うときは社内データを検索して回答に添える仕組みを組み合わせるのが一般的です。

利用者が直接触れるのはアプリケーションの層です。チャット画面のほか、文書管理システムや設計ツールの中に生成AIの機能が組み込まれることも増えています。

そして、これらを支えるのが計算基盤です。生成AIは膨大な計算を必要とするため、画像処理用に開発されたGPUという半導体を大量に使います。多くの企業はクラウドサービスとして利用しますが、機密情報を扱うために自社のサーバーで動かす例もあります。

たとえば社員が「この部品の過去の不具合と対策を教えて」と入力すると、アプリが社内の報告書を検索し、見つかった資料と質問をまとめて基盤モデルに渡します。

基盤モデルはその資料を読んだうえで回答文をつくり、アプリが出典とともに画面に表示する、という流れです。

生成AIの基本原理

ホワイトボードで仕組みを説明する技術者

生成AIが自然な文章を書けるのは、人のように意味を理解しているからではありません。膨大な例から「次に来そうなもの」を学び、それを積み重ねて出力しています。

図3:文章を生成するAIができるまでの流れ

事前学習、調整、利用の3つの段階に分かれます。

事前学習
01データを集める書籍やWebなど大量の文章を用意する
02トークンに分ける文章を細かな単位に区切り、数値に変える
03次の語を予測する続きを当てる練習を膨大に繰り返す
調整
04指示への追加学習質問と模範回答の例で答え方を学ぶ
05人の評価で調整好ましい回答を選ばせ、質を高める
06安全対策不適切な出力を抑えるよう調整する
利用
07指示を受け取る利用者の質問と関連情報を読み込む
08回答を生成する次の語の予測を繰り返して文章にする

※手順や呼び方はモデルの開発元によって異なります。代表的な流れとして示しています。

次に来る言葉を予測する

文章を生成するAIの基本は、ある言葉の並びに続く、最もそれらしい次の言葉を予測することです。「ボルトの締め付けトルクを」と来れば、「確認する」「管理する」などが続きやすい、という具合です。

一語を予測したら、それを文に付け足して、また次の一語を予測します。この作業を何百回も繰り返すことで、まとまった文章ができあがります。スマートフォンの予測変換を、はるかに大規模で賢くしたものと考えるとイメージしやすいでしょう。

大量のデータで事前学習する

次の言葉をうまく予測するには、言葉の使われ方を大量に見ておく必要があります。そこで、書籍やWebページなどの膨大な文章を使い、文の続きを当てる練習を繰り返させます。これを事前学習と呼びます。

この学習の中心にあるのが、トランスフォーマーと呼ばれる仕組みです。文中のどの言葉とどの言葉が強く関係しているかを一度に見渡せるため、長い文脈を踏まえた予測ができるようになりました。

たとえば「3号機のモーターが過熱したため、担当者は冷却ファンを」という文では、「冷却ファン」の次を予測するときに、離れた位置にある「モーター」や「過熱」との関係も手がかりにします。

こうして文全体の流れを踏まえることで、話題に合った続きを選べるようになっています。

予測は「必ずこの言葉」と一つに決まるわけではなく、候補ごとの確からしさとして出てきます。そこから選び方に少し幅を持たせているため、同じ質問でも毎回少しずつ違う答えが返ってくることがあります。

表現の多様さにつながる一方で、結果を再現しにくい理由にもなっています。

指示に沿って答えるよう調整する

事前学習を終えたばかりのモデルは、文の続きを書くことは得意でも、質問に的確に答えるとは限りません。そこで、質問と模範回答の組み合わせを追加で学習させ、人が回答の良し悪しを評価して調整します。

こうした調整を経て、指示の意図をくみ取って答える対話型のAIになります。ChatGPTのようなサービスが使いやすく感じられるのは、この段階の工夫によるところが大きいと言えます。

画像はノイズから描き起こす

画像を生成するAIでは、拡散モデルと呼ばれる方式が広く使われています。学習では、画像に少しずつノイズを加えて砂嵐のようにし、そこから元の画像に戻す手順を覚えさせます。

生成するときは逆に、砂嵐の状態から少しずつノイズを取り除き、指示に合った画像を浮かび上がらせます。ぼやけた下絵を何度も描き直して仕上げていくイメージです。

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生成AIの種類・方式

生成AIで作ったデザイン案を比較するデザイナーと設計者

生成AIは、何をつくるかによっていくつかの種類に分けられます。製造業でよく話題になるのは、次の4つです。

図4:生成AIの主な種類

つくり出すものによって、得意な業務が変わります。

主にできること
製造業での使い道の例
テキスト生成
文章の作成・要約・翻訳・質疑応答
報告書の下書き、規程の検索、議事録の要約
画像・映像生成
指示やラフから画像や映像をつくる
デザイン案の検討、教育用の図や動画
音声生成
文章を自然な音声に変える
作業指示の読み上げ、多言語の案内
マルチモーダル
文章・画像・音声をまとめて扱う
図面や写真を読んだうえでの質疑応答

※プログラムのコードを生成する機能は、テキスト生成の一種として扱われることが一般的です。

テキスト生成

最も広く使われているのが、文章を扱うテキスト生成です。大規模言語モデルを使い、文章の作成や要約、翻訳、質問への回答を行います。製造業でもまず導入されることが多いのがこの分野で、報告書や手順書など文書が多い業務と相性が良いのが特徴です。

プログラムのコードもテキストの一種として扱えるため、生産設備の制御プログラムやデータ分析用のスクリプトの作成を支援する使い方もあります。

ただし、専門的な内容ほど一般的な学習データには含まれていないことが多く、社内の用語や規格の解釈を誤ることもあります。業務に使うときは、社内の資料と組み合わせたり、出力を専門知識のある人が確認したりすることが前提になります。

画像・映像生成

言葉による指示や手描きのラフから、画像や映像をつくる方式です。製品デザインの初期案を大量に出して比較したり、作業教育用のイラストを用意したりする用途が考えられます。

一方で、寸法や形状を正確に指定する設計そのものには向いていません。CADのように厳密な図面を描く道具とは役割が異なる点は押さえておきたいところです。

音声生成

文章を自然な声で読み上げたり、特定の話し方をまねたりする技術です。音声認識と組み合わせると、手がふさがる作業中でも、声で質問して声で答えを受け取る使い方ができます。

海外拠点を持つ工場では、作業手順や安全上の注意を複数の言語で読み上げる用途も考えられます。ただし、安全に関わる内容は、読み上げる前に人が原文と訳文を確認する運用が欠かせません。

マルチモーダルとAIエージェント

マルチモーダルとは、文章・画像・音声など複数の形式をまとめて扱える方式です。設備の写真を見せて異常箇所を尋ねる、図面を読み込ませて部品表を整理するといった使い方ができます。

さらに最近は、AIエージェントと呼ばれる形も広がっています。質問に答えるだけでなく、目的に向けて自ら手順を考え、検索や業務システムの操作まで進める仕組みです。

たとえば設備の故障について尋ねると、AIが保全記録を検索し、設備の図面を確認し、考えられる原因と対策を整理して示す、といった複数の手順を自動でこなします。

人が一つずつ指示しなくても作業が進む反面、途中の判断を人が確かめられる設計にしておくことが大切です。

提供の形でも分けられます。クラウドで提供される汎用のサービスを使う方法と、自社のサーバーでモデルを動かしたり、自社データで追加学習させたりする方法があり、扱う情報の機密性や費用に応じて選ばれます。

生成AIを理解するための基本用語

生成AIの活用勉強会を行う社員たち

生成AIの解説や導入の検討では、特有の用語がよく登場します。まずは次の6つを押さえておくと、話についていきやすくなります。

図5:生成AIの基本用語

導入の検討や社内の説明で、よく使われる言葉です。

プロンプトAIへの指示や質問の文章。書き方で回答の質が変わる
トークンAIが文章を処理する最小単位。料金の計算にも使われる
ハルシネーション事実と異なる内容を、もっともらしく答えてしまう現象
RAG(検索拡張生成)社内文書などを検索し、その内容をもとに回答させる手法
ファインチューニング学習済みのモデルに追加学習させ、特定の用途に合わせる
コンテキストAIが一度に読み込める情報の範囲。長いほど大量の資料を扱える

中でも業務で使う際に必ず意識したいのがハルシネーションです。生成AIは「それらしい次の言葉」を選んで文章をつくるため、根拠のない数値や存在しない規格名を、自信のある口調で書いてしまうことがあります。

これを抑える代表的な方法がRAGです。社内の規程や過去の報告書を検索し、見つかった文書を根拠として回答させるため、回答の出どころを確かめやすくなります。多くの企業の社内向け生成AIは、この仕組みを使っています。

プロンプトは、回答の質を大きく左右します。「要約して」とだけ頼むより、「品質会議の資料用に、原因と対策を箇条書き3点で」のように、目的、読み手、形式を添えると、手直しの少ない答えが返りやすくなります。

ファインチューニングは、モデルそのものに追加学習させる方法です。専門用語や社内の書式に強くできる一方で、費用や手間がかかるため、まずはプロンプトの工夫やRAGから試すのが一般的と言えます。

トークンやコンテキストは、費用と性能に直結する言葉です。多くのサービスは入出力のトークン数に応じて課金されるため、長い資料を毎回読み込ませる使い方では費用も増える点を覚えておくと安心です。

用語の意味がわかると、社内で生成AIを試すときに「どこまでAIに任せ、どこから人が確認するか」を具体的に話し合えるようになります。仕組みと限界の両方を知ったうえで使うことが、生成AIを業務の道具として定着させる近道です。

生成AIのよくある質問

生成AIとChatGPTは同じものですか?

ChatGPTは対話型サービスの代表的な一つで、生成AIは文章や画像、音声などをつくるAI全体の総称です。文書作成ソフトや設計ツールに組み込まれた支援機能も、生成AIに含まれます。

生成AIの回答はどこまで信用できますか?

生成AIはもっともらしい言葉を選んで文章をつくるため、根拠のない数値や存在しない規格名を書いてしまう弱点があります。業務では社内文書を根拠に答えさせるRAGを使い、専門知識のある人が出力を確かめるのが前提です。

社内の機密情報を生成AIで扱っても大丈夫ですか?

機密性の高い情報を扱う場合は、自社のサーバーでモデルを動かす方法も選択肢になります。クラウドの汎用サービスを使うか自社で動かすかは、扱う情報の機密性と費用に応じて決めるのが一般的です。

生成AIの利用料金はどう決まりますか?

多くのサービスは、入力と出力のトークン数に応じて料金が決まる仕組みを採っています。長い資料を毎回読み込ませる使い方では、そのぶん費用も増える点を覚えておくと安心です。

まとめ

この記事のまとめ
  • 生成AIとは、学習したデータをもとに文章・画像・音声などを新しくつくり出すAIの総称
  • 利用者、アプリ、基盤モデル、社内データ、計算基盤が層になって動いている
  • 文章生成の基本は、次に来る言葉の予測を膨大に繰り返すこと
  • テキスト、画像・映像、音声、マルチモーダルなどの種類があり、製造業ではテキストが中心
  • ハルシネーションとRAGなどの基本用語を押さえると、導入の検討が進めやすい

生成AIがなぜ今注目されているのか、従来の技術と何が違うのかは生成AIが注目される背景と従来技術との違いで、製造業での具体的な使い方と企業の事例は生成AIの主な用途と導入事例で解説しています。

画像から良否を判定する従来型のAIについてはAI・画像検査、工場全体のデータ活用についてはスマートファクトリー・IoTの記事も参考になります。

生成AIの最新動向や関連する技術については、生成AIの技術ページから関連記事もあわせてご覧ください。

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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