相当放熱面積(EDR)は、暖房などの熱容量を、決められた標準放熱量で割って面積に換算した指標です。機器表に100m²とあっても、部屋の広さや熱交換器の金属面積を示しているわけではありません。
空調用の放熱器に加え、真空給水ポンプユニットにもEDRが使われます。ポンプ自体が暖房するのではなく、接続する蒸気設備の負荷を共通の物差しで表すためです。熱量の換算と、液体や空気を運ぶ能力を分けると意味がつかめます。
この記事では、相当放熱面積の意味から空調・ボイラー給水・真空ポンプの計算へ進みます。650や450という数値の単位、kWからの換算、ドレン処理量から逆算する例を、機器選定で混同しやすい点とともに整理します。
動画の補足:式の650・450の単位はkcal/(m²・h)です。真空ユニットの空気排出量とドレン処理量は別の仕様で、吸引能力だけからEDRは決まりません。538kcal/kgと密度1000kg/m³は本文の計算例の仮定として扱います。
相当放熱面積とは?
相当放熱面積は、等価放熱面積とも呼ばれる容量の表し方です。英語のEquivalent Direct Radiationを略してEDRと書きます。国内の機器資料では、EDR m²や相当放熱面積m²といった表記が使われています。
出発点は、放熱器が一定の条件で一時間に渡せる熱量です。その熱量を面積一単位あたりの標準放熱量で割り、同等の暖房容量を持つ面積へ置き換えます。形や寸法が異なる機器でも、容量を一つの尺度で読める仕組みです。

例えば、標準放熱量を650kcal/(m²・h)とする蒸気系の換算では、65,000kcal/hが100EDR m²です。100という数値は熱容量の換算結果です。放熱器の外板を広げた面積や、暖房できる床面積100m²という意味にはなりません。
暖房器の形を測る面積と、熱容量を換算する相当放熱面積を分けて読む。
暖房の必要容量は建物の熱損失などから求める。EDRを床面積として代入しない。
650と450は、標準放熱量として使う数値
計算で重要なのは、分母の単位までそろえることです。650の単位はkcal/hだけでなく、kcal/(m²・h)です。暖房負荷kcal/hをこの値で割ると時間と熱量の単位が消え、相当放熱面積m²が残ります。
蒸気系で650を用いる算定は、日本設備設計事務所協会連合会の計算様式にも載っています。温水側の450は、以下の計算例で仮定する換算基準です。650や450は水や蒸気の普遍的な物性値ではなく、容量表示のための基準値です。
放熱器の熱量は、蒸気や温水の温度と、周囲の空気温度で変わります。昭和鉄工のコンベクタ能力表も、蒸気温度と入口空気温度の組合せごとに値を載せています。熱の移動そのものは伝熱の三つの形態で整理できます。
室温18.5℃や蒸気102℃という温度は、従来の能力表示を読む際に登場します。一方、実際のカタログには空気20℃の標準欄もあります。温水の入口温度と平均温度も分け、使用する資料の温度条件と換算基準を合わせます。
基準温度で表示したEDRを、そのまま低温水運転時の実際の放熱量に読み替えると容量を誤ります。設備の運転温度が下がれば、放熱器と室内との温度差も小さくなります。能力表や補正係数を使い、同じ温度条件で比較します。
伝熱面積や機器の定格出力との違い
伝熱面積は、熱が通り抜ける管や板などの幾何学的な面積です。EDRは熱容量から算出した相当値なので、同じ単位m²でも意味が異なります。機器の大きさを知りたいときは寸法図、熱の交換能力は能力表を使います。
ボイラーのカタログでは、定格出力、放熱器容量、相当放熱面積、伝熱面積が別々の欄に並ぶ例があります。各欄の対象と単位を読み分ける必要があります。同じ表の数値というだけで、定格出力と放熱器容量を入れ替えないようにします。
例えば昭和鉄工SADの仕様表には、蒸気仕様の定格出力99kWに対し、放熱器容量73kW、EDR95m²という別の表示があります。ここでは項目が異なることが要点です。熱交換器自体の能力計算は熱交換器の種類と伝熱能力で確認できます。
相当放熱面積の計算
空調機の場合
空調機や放熱器を計算するときは、まず対象の暖房負荷を決めます。部屋から失われる熱、換気で取り込む外気の加熱など、計算対象に含める負荷を整理します。夏の冷房能力を蒸気暖房のEDR式へそのまま入れる計算ではありません。
以下は、蒸気650、温水450kcal/(m²・h)を採用すると仮定した換算です。暖房負荷をQ、相当放熱面積をAとします。分母をq0と書けば、どちらも「熱負荷を標準放熱量で割る」という同じ式になります。
暖房負荷を65,000kcal/hとすると、蒸気の換算は100m²、温水の換算は約144.4m²です。同じ熱量でも分母が小さい温水側の面積が大きくなります。面積が大きい方が消費エネルギーも大きい、という比較ではありません。
熱負荷65,000kcal/hを固定した比較。青い長さは換算面積の比を表す。
棒は実際の放熱器の長さや床面積ではない。数字は表示用に丸めた。
この例を逆算すると、100×650も144.4×450も約65,000kcal/hに戻ります。計算結果が一桁違うときは、kcal/hと千kcal/h、あるいはkWの混在を先に調べます。単位を付けたまま式を書くと誤入力を見つけやすくなります。
熱負荷がkWで示される場合は、kcal/hへ直してから同じ式を使います。換算の目安は1kW≒860kcal/hです。熱量計算の基本と単位と合わせて、熱量kcalと一時間あたりの熱量kcal/hを分けて読みます。
設備更新では、現状のEDRをkWへ戻すと比較しやすくなります。蒸気100EDR m²なら、100×650÷860で約75.6kWです。そのうえで新しい温水温度、空気温度、流量条件に対応する機器の能力を選びます。
コイルを通る空気の流量や入口温度が変われば、必要な加熱量も変わります。EDR換算だけを先に行わず、運転条件から負荷を決める順序が大切です。コイルや熱風設備の仕組みはエアヒーターの構造と用途につながります。
参考資料として、ラジエータ・コンベクタ・ベースボードヒータの選定に関する書籍の該当ページもあります。本文の換算例では、使用する熱負荷と基準値を明示して計算しています。
ボイラー給水ポンプの場合
ボイラー側の容量をEDRへ表すときは、ボイラーの定格出力を基に計算する方法があります。ただし、ここで扱うのは接続する熱源容量の換算です。給水ポンプが送り出す水量を、EDRという面積の単位で直接測っているわけではありません。
日本設備設計事務所協会連合会の様式機18には、真空給水ポンプユニットがボイラーへ給水する場合の式があります。ボイラー定格出力HをkWで入力し、860倍してから650で割ります。対象の機器と給水先が式の前提です。
出力の欄を選ぶ際は、燃料の投入熱量とボイラーから取り出す熱量を区別します。燃料消費量に発熱量を掛けただけの値を定格出力の代わりに入れると、効率の分だけ意味が変わります。ボイラーの種類と仕組みから、熱の入口と出口を押さえます。
仕様書がkcal/hで出力を示していれば、860倍の換算は不要です。一方、蒸発量kg/hしかない場合は、給水から蒸気になるまでのエンタルピー差が必要です。kg/hをそのまま650で割っても、相当放熱面積にはなりません。
EDRを求めたあとも、給水ポンプの流量と吐出圧力を別に決めます。ボイラーが必要とする給水量、入口側の水位と圧力、配管で失う圧力、運転制御が選定に関係します。EDRが一致するだけで流量と圧力の両方が満たされるわけではありません。
ボイラー給水の簡略場面。容量の換算値とは別に、水量と圧力が必要になる。
実設備の付属弁、逆止弁、安全装置などは省略。配管施工や運転の指示図ではない。
ポンプの運転点は、流量と揚程の特性から読み取ります。ポンプのQ-H特性を使うと、必要流量を出したときにどれだけの圧力を作れるかが分かります。電動機のkWも暖房負荷のkWとは別の入力です。
同じ圧力でも液体の密度によって相当する高さが変わるため、圧力を揚程へ換算する際には密度を含めて考えます。資料のmとMPaを整理する段階では、ポンプの揚程と圧力の換算が役立ちます。
また、ポンプ入口の水温が高いと飽和蒸気圧も高くなります。吸込側の圧力余裕が小さくなるため、単にEDRの大きい機器へ替えるだけでは対策になりません。吸込条件とポンプのキャビテーションなどの不具合を切り分けて調べます。
このように、EDRは設備全体の容量区分を読み解く入口です。実際に水を送れるかは、流量・揚程・温度・制御の条件をそろえて判断します。熱源付属機器の算定に関する参考資料を使う場合も、式の対象欄まで読みます。
真空ポンプの場合
真空給水ポンプユニットでは、蒸気設備から出る凝縮水と空気を回収します。国土交通省の令和7年版標準仕様書も、レシーバータンクの真空で両者を抽出し、集めた凝縮水をボイラーか還水タンクへ送る構造を説明しています。
このユニットには、真空を作る部分と、液体を送り出す部分があります。真空ポンプの空気排出量、吸引できるドレン量、吐出する水量は別の仕様です。「吸引能力」という言葉だけで、何の流体をどの状態で扱うかを省略しないことが大切です。
真空ポンプ方式のユニットを簡略化。橙は加熱蒸気、青は凝縮水、紫の点線は空気。
回収先・制御・方式により実構成は異なる。EDRは接続負荷の換算で、空気の体積流量ではない。
還水タンクへ給水するユニットの算定では、接続する放熱器や熱交換器などの負荷からEDRを求めます。設備が必要とする負荷が先にあり、その負荷を処理する機器を選ぶ順序です。空気の排気量だけから熱交換器の能力を一意に決めることはできません。
先の公開計算様式では、この場合に余裕係数K14を掛ける式が示されています。例えば熱負荷100kW、係数1.5を採るなら約198.5EDR m²です。係数を含む値と含まない値を混ぜず、算定書のどの段階の容量かを明らかにします。
ドレン処理量2m³/hからの逆算をどう読むか
ドレン量から、その凝縮に対応する熱負荷を概算することもできます。ここでは液体の体積流量を2m³/h、密度を1000kg/m³と仮定します。質量流量は2000kg/hとなり、空気を2m³/h吸うという意味とは区別されます。
さらに、一kgの蒸気が凝縮するときに渡す潜熱を538kcal/kgと仮定します。2000kg/hが全量凝縮した場合、その潜熱に対応する熱量は1,076,000kcal/hです。これを蒸気基準650で割ると、約1655m² EDRになります。
この1655という値は、置いた仮定に対応する熱負荷の換算結果です。真空ポンプの空気吸引性能や、ユニットの保証容量を計算した値ではありません。実際の凝縮潜熱やドレン密度は温度と圧力に対応する値を使います。
例えば高温のドレンが低圧側へ移ると、一部が再蒸発する場合があります。回収される液体の量だけでなく、フラッシュ蒸気や混入空気の処理も関係します。蒸気系で圧力を下げるときの基本は蒸気を減圧する意味と合わせて捉えます。
TLVの真空用ドレン回収ポンプのカタログでも、相当放熱面積、最大吸引ドレン量、最大吐出ドレン量が別項目で並んでいます。吸引量に付く流入水頭の条件まで対応表で読むと、単純な熱量逆算との差が見えてきます。
熱量の逆算で分かる範囲と、メーカー仕様で照合する項目を分ける早見表。
| 読む項目 | この例で表すこと | 機器選定で照合すること |
|---|---|---|
| 2m³/h | 密度を仮定する前の液体量 | 流入水頭・温度・吸込圧力 |
| 2000kg/h | 密度1000kg/m³で換算した質量 | 実温度での密度・最大負荷 |
| 約1655EDR m² | 潜熱538/基準650を仮定した熱負荷相当 | 製造者が示す対応容量と条件 |
| 空気の排出能力 | 上の熱量計算からは求まらない | 空気流量・圧力・到達真空度 |
| 回収先へ送る能力 | EDRだけでは決まらない | 吐出ドレン量・揚程・運転方式 |
同じm³/hでも液体流量と気体流量は別。気体は吸込状態や換算基準も必要になる。
機器表で取り違えを防ぐ読み方
機器表を読む際は、最初にEDRの単位と対象系統を見ます。次に、負荷として採った熱量、蒸気か温水か、どの基準で換算したかを追います。面積の数字だけを控えるより、元のkWとセットで残す方が更新時に使えます。
ポンプユニットでは回収先も重要です。ボイラーへ直接給水する場合と、いったん還水タンクへ集める場合では、算定式や必要な圧力が違います。系統図で送り先をたどってから、EDR・水量・揚程の各欄を照合します。
複数の熱交換器をまとめる場合は、同時に使う負荷を集計します。余裕係数を掛けた値を再度別の係数で膨らませると、根拠が分からなくなります。合計負荷と、加えた余裕を分けて計算書に残すと後から説明できます。
海外資料には平方フィートを用いるEDRもあります。m²とft²を単純に見落とすと桁が変わるうえ、標準放熱量の条件も違う場合があります。単位だけを変えて同じ容量になると決めず、熱量の共通単位へ戻して照合します。
よくある質問
EDRのm²は、暖房できる部屋の面積ですか?
暖房可能な床面積ではなく、標準放熱量から換算した容量です。必要な暖房負荷は断熱、窓、換気、外気温度などで変わります。まず建物側の熱負荷を求め、機器の温度条件を合わせてEDRやkWと照合します。
EDRをkWへ戻すにはどうすればよいですか?
採用した標準放熱量を掛けてkcal/hへ戻し、約860で割ります。蒸気650の基準で100EDR m²なら約75.6kWです。温水450の基準や別の表示条件では係数が変わるため、元の機器表の基準と対にして計算します。
温水暖房なら必ず450で割るのですか?
一律に450で割るのではなく、機器表に指定された換算基準を使います。本文の450は計算方法を示す仮定で、法定基準を示していません。実際の放熱量を調べる際は、温水の入口・出口・平均温度を区別して能力表を読みます。
真空ポンプが大きければEDRも大きくなりますか?
同じ製品群の対応表では容量区分が大きくなる例がありますが、空気排出量だけでEDRは決まりません。液体の吸引量、吐出量、揚程、温度や真空条件を別に扱います。接続設備の負荷を先に算定し、それに合う仕様を照合します。
相当放熱面積だけでポンプを更新できますか?
更新にはEDRに加えて、水量、圧力、温度、回収先、制御方式が必要です。既設の銘板と系統図を対応させ、計算の元になった熱負荷も残します。蒸気設備を温水へ変更する場合は、新しい温度条件で暖房能力を求め直します。
まとめ
- EDRは熱容量の換算値で、金属の実面積や暖房床面積とは異なる。
- 分母の標準放熱量はkcal/(m²・h)。本文の温水450は仮定した換算例。
- 空調は暖房負荷、ボイラー給水の真空ユニットは対象の算定法が指定する出力から求める。
- 還水タンクへの回収は、放熱器や熱交換器などの負荷を基に算定する。
- 空気排出量とドレン処理量を分け、流量・揚程・温度なども合わせて選定する。
出典
- 日本設備設計事務所協会連合会・空気調和設備の計算様式:PDF61頁、様式機18。H27表記の対象別算定例。
- 国土交通省・公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版:146頁、真空給水ポンプユニットの構成。
- TLV・真空用ドレン回収ポンプCP-Vカタログ:EDR、吸引ドレン量、吐出量などの仕様区分。
- 昭和鉄工・SADボイラーカタログ:定格出力・放熱器容量・EDR・伝熱面積の区別。
- 昭和鉄工・コンベクタカタログ:蒸気温度と入口空気温度別の放熱能力。
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