COD(化学的酸素要求量、Chemical Oxygen Demand)とは、水中の有機物などを酸化剤で酸化するときに使われる量を、酸素の量に換えた値で、単位は mg/L です。日本の排水基準や湖沼・海域の環境基準では、過マンガン酸カリウムで測る CODMn が使われています。
有機物の多い水では、微生物が有機物を分解するときに水の中の酸素を使い、魚や貝が暮らせなくなります。COD はその「酸素を奪う力」を1つの数字にした指標で、値が大きいほど汚れた水を意味しますが、決められた条件で測った酸素の消費量であって、有機物の重さそのものではありません。
この記事では、COD の意味と有機物が汚れになる理由、過マンガン酸カリウムとシュウ酸ナトリウムによる逆滴定の原理と計算例を順に整理します。後半では CODCr や BOD・TOC との違い、排水基準と総量規制、工場の排水処理と連続測定を扱います。
CODとは何か(化学的酸素要求量)
川や湖がどれくらい汚れているかは、見た目やにおいだけでは比べられません。そこで水の汚れを数字で表す指標がいくつも決められており、COD は水に含まれる有機物などの量を、酸化に必要な酸素の量で表す代表的な指標です。
川が汚れている状態とは
ここでいう「汚れ」は、主に水に溶けたり混ざったりしている有機物の多さを指します。家庭の台所から出る食べ残しや油、食品工場や紙パルプ工場の排水には有機物が多く含まれ、処理をしないまま流れ込むと川や湖の有機物が増えていきます。
COD の測定では、有機物のほかに、亜硝酸イオンや鉄(II)イオン、硫化物のような酸化されやすい無機物も酸化剤を使います。ボイラー水の脱酸素に使う亜硫酸ナトリウムのような還元剤も同じで、COD は正確には「酸化されやすい物質(被酸化性物質)の量」の目安です。
なぜ有機物が川や湖を汚すのか
有機物そのものは炭素を中心とした物質で、すぐに毒になるわけではありません。問題は、川や湖に入った有機物を細菌などの微生物が分解するとき、水に溶けている酸素(溶存酸素)を使って有機物を酸化することにあります。
有機物が少なければ、微生物の分解で水はきれいに保たれ、使われた酸素も空気から少しずつ補われます。ところが有機物が大量に流れ込むと、微生物が酸素を使う速さに補給が追いつかず、水は酸素の少ない状態になって魚が住めなくなり、悪臭も出始めます。
微生物が有機物を分解するときに溶存酸素を使い、量が多いと酸素が足りなくなります。
※湖や内湾のように水の入れ替わりが少ない場所ほど、酸素の補給が追いつかず影響が長く残ります。
CODの定義と単位
微生物が有機物を分解する反応は、有機物を酸化して二酸化炭素と水にする反応です。そこで、水の中の有機物などを酸化するのに必要な酸素の量を測れば有機物の多さが分かる、と考えたのが COD で、試料の水1 Lあたり何 mgの酸素にあたるか(mg/L)で表します。
ただし、実際の測定では酸素ではなく過マンガン酸カリウムなどの酸化剤を使い、酸化剤の種類や温度、時間を決めて測ります。神奈川県の分析テキストも、COD は有機物の絶対量ではなく一定条件での酸素消費量を指標として使っているので、条件を守らないと正しい値が出ないと説明しています。
CODの測定方法(酸化還元滴定で求める)
理屈の上では、水の中の有機物を酸素で酸化して、使われた酸素の量を測れば COD が分かります。しかし、溶けた酸素での酸化はゆっくりで、いつ反応が終わったのかも見分けにくいため、短い時間で同じ条件をそろえて測るのは困難です。
そこで、酸化力の強い酸化剤で一定の条件のもとで有機物を酸化し、使われた酸化剤の量を酸化還元滴定で求めてから、同じ電子の数を受け取る酸素の量に換算します。酸化剤が受け取った電子の数=酸素が受け取るはずだった電子の数と考えるのが、COD の測定の土台です。
日本の公定法は、JIS K 0102 の「100℃における過マンガン酸カリウムによる酸素消費量(CODMn)」です。2021年の分冊後は JIS K 0102-1 の17.2「酸性過マンガン酸カリウムによる酸素消費量(CODMn)」となり、環境基準の測定方法にも指定されています。

過マンガン酸滴定?ヨウ素滴定?(COD は過マンガン酸滴定で測る)
酸化還元滴定には、過マンガン酸カリウムの赤紫色で終点を見る過マンガン酸滴定と、ヨウ素とデンプンの青紫色で終点を見るヨウ素滴定があります。COD の公定法が採っているのは前者で、過マンガン酸カリウムで有機物を酸化し、残りを過マンガン酸カリウムの色で読み取る逆滴定です。
過マンガン酸イオンは還元されると濃い赤紫色からほぼ無色の Mn2+ になり、色そのものが終点の目印になります。ヨウ素滴定に使うデンプンは有機物なので、試料に余計な有機物を持ち込まない点でも過マンガン酸滴定は理にかなった方法です。
一方のヨウ素滴定は、水質分析では溶存酸素の測定(JIS K 0102-1 のよう素滴定法)に使われています。微生物が使った酸素の量から求める BOD は、この溶存酸素の測定を土台にしており、COD と BOD は滴定の種類から見ても役割が分かれています。
CODは酸素の量なのに、なぜ過マンガン酸イオンで測るのか
COD は「酸素の量」なのに、測定で使うのは過マンガン酸カリウムです。つなぎ役になるのは電子の数で、過マンガン酸カリウムで有機物を酸化したときに受け取られた電子の数を求め、同じ数の電子を酸素が受け取ったとしたら酸素は何 mol 必要だったかに置き換えます。
この関係から、公定法で使う濃度の過マンガン酸カリウム溶液1 mLが酸素何 mgにあたるかも計算できます。5 mmol/L の溶液1 mLには過マンガン酸カリウムが5 µmol入っており、受け取る電子は25 µmol なので、酸素にすると6.25 µmol、つまり0.2 mgです。
CODの計算(逆滴定の手順と計算例)
CODMn の測定は、過剰の過マンガン酸カリウムで有機物を酸化し、残りを過剰のシュウ酸ナトリウムで消し、余ったシュウ酸ナトリウムを過マンガン酸カリウムで滴定する2段階の逆滴定です。数字は神奈川県の分析テキストが示す JIS の操作に合わせています。
前半で有機物を酸化し、後半で残った酸化剤の量を色の変化で読み取ります。
※出典:神奈川県「CODMn の分析」。試料の量は、30分加熱した後に過マンガン酸カリウム溶液が4.5〜6.5 mL 残る量にそろえます(多いときは試料を薄める)。
ステップ①:過剰の過マンガン酸カリウムを加えて加熱する
まず試料に硫酸を加えて酸性にし、過マンガン酸カリウムを反応に必要な量より多めに加えて、沸騰水浴で30分加熱します。多めに入れるのは反応の途中で酸化剤が足りなくならないようにするためで、余りを後で測るので逆滴定と呼ばれます。
硝酸銀を加えるのは、塩化物イオンも過マンガン酸カリウムに酸化されて値を押し上げるためで、塩化銀として沈めて反応から外します。海水や河口の水のように塩化物イオンの多い試料では、硝酸銀の量を増やします。
ステップ②:シュウ酸ナトリウムを過剰に加える
加熱が終わったら、還元剤のシュウ酸ナトリウムを、残っている過マンガン酸カリウムをすべて還元できる量より多めに加えます。ここでも量を余らせるので、酸化剤を過剰に入れ、その残りを還元剤で過剰に消すという2段階の逆滴定になり、液はいったん無色に変わります。
公定法の濃度では、12.5 mmol/L のシュウ酸ナトリウム10 mLと5 mmol/L の過マンガン酸カリウム10 mLが、ちょうど同じ数の電子をやり取りします。2つの10 mLが打ち消し合うので、最後の滴定量がそのまま有機物の分になります。
ステップ③:過マンガン酸カリウムで滴定する
次に、余ったシュウ酸ナトリウムを、温かいうちに過マンガン酸カリウムで滴定します。シュウ酸が残っている間は滴下した過マンガン酸カリウムがすぐ還元されて色が消え、シュウ酸がなくなるとわずかに赤い色が消えずに残るので、そこを終点にします。
シュウ酸と過マンガン酸カリウムの反応は、はじめは遅く、反応でできた Mn2+ が触媒のように働いて途中から速くなります。終点の近くでは1滴ずつ加えて色の変化を見極め、同時に水100 mLで同じ操作をした空試験の滴定量も記録しておきます。
ステップ④:有機物が出した電子からCODを求める
ここまでの操作で、加えたシュウ酸ナトリウムの量と、最初と最後に加えた過マンガン酸カリウムの合計量は分かっています。有機物が出した電子は、過マンガン酸カリウムが受け取った電子の合計から、シュウ酸ナトリウムが出した電子を引いた残りです。
過マンガン酸カリウムが受け取った電子は、有機物とシュウ酸ナトリウムのどちらかから来ています。
※シュウ酸イオン1個は電子2個を出し、過マンガン酸イオン1個は電子5個を受け取ります。そのため、両者は物質量の比 2:5 で反応します。公定法の式では、水だけで同じ操作をした空試験の滴定量 b を a から引いて、試薬や水が使った分を除きます。
求めた過マンガン酸カリウムの物質量に 54 を掛ければ酸素の物質量になり、32 g/mol を掛けて試料1 Lあたりに直せば COD です。数字を入れて、実際に計算してみます。
工場排水100 mLに硫酸と硝酸銀、5.00 mmol/L の過マンガン酸カリウム溶液10.0 mLを加え、沸騰水浴で30分加熱した。続いて12.5 mmol/L のシュウ酸ナトリウム溶液10.0 mLを加えた。
これを5.00 mmol/L の過マンガン酸カリウム溶液で滴定すると、4.20 mLでうすい赤色が消えなくなった。この排水の COD(mg/L)を求める(O=16、空試験は考えない)。
公定法では、この計算を(a−b)×f×1000/V×0.2 という1本の式で行います。a は試料の滴定量、b は空試験の滴定量、f は過マンガン酸カリウム溶液の濃度の補正係数(ファクター)、V は試料の量(mL)で、空試験を引くことで、水や試薬そのものが使った分を差し引きます。
残る過マンガン酸カリウムの量まで決められているのは、酸化剤の残り方で有機物の酸化の進み具合が変わるからです。大分県の調査では、この判断基準の幅を変えただけで測定値が数%〜20%程度上がると報告されており、COD は手順どおりに測って初めて比べられる数字だと分かります。
CODMnとCODCr、BOD・TOCの違い
水の中の有機物の量を表す指標は COD だけではなく、酸化剤の種類を変えた COD、微生物を使う BOD、炭素を直接測る TOC があります。どれも「有機物の多さ」を見る指標ですが、測り方が違えば値も意味も変わるので、どの指標のどの方法の値なのかを必ず確かめてから比べます。
日本のCODMnと海外のCODCr
米国などの排水分析で広く使われるのは、二クロム酸カリウムを酸化剤にする CODCr です。米国環境保護庁(EPA)の方法410.4では、硫酸と硫酸銀の触媒を加えて密閉管で150℃・2時間加熱し、塩化物の影響は硫酸水銀で抑えます。
二クロム酸カリウムは酸化力が強く反応時間も長いので、同じ水でも CODCr は CODMn より大きくなりやすく、決まった換算式もありません。厚生労働省の審議会資料も、日本の COD(KMnO4)と諸外国の COD(K2Cr2O7)は比べられないと指摘しています。
2021年の JIS K 0102-1 には、CODMn のほかにアルカリ性法の CODOH と二クロム酸法の CODCr も収められています。海外の工場のデータや顧客の求める値を扱うときは、どの COD かを最初に確かめると行き違いを防げます。
BOD・TOCとの使い分け
BOD(生物化学的酸素要求量)は、好気性の微生物が有機物を分解するときに使う酸素の量で、ふつうは20℃・暗所で5日間培養して測ります。分解されにくい有機物や、微生物を弱らせる物質を含む排水では値が小さく出ます。
TOC(全有機炭素)は、試料を酸化分解して出る炭素の量を直接測る指標で、化合物の種類による差を受けにくいのが特長です。水道の有機物の指標は TOC に切り替わりましたが、環境基準や排水基準では過去のデータとの整合もあって BOD と COD が使われ続けています。
| 指標 | 測り方 | 測る時間 | 主に使われる場面 |
|---|---|---|---|
| CODMn | 過マンガン酸カリウム(硫酸酸性)で100℃・30分酸化し、消費量を酸素に換算 | 1時間ほど | 日本の排水基準(海域・湖沼へ出す排水)、湖沼・海域の環境基準、総量規制 |
| CODCr | 二クロム酸カリウムで150℃・2時間酸化し、消費量を酸素に換算 | 2〜3時間 | 米国など海外の排水分析 |
| BOD | 微生物が有機物を分解するときの酸素消費量(20℃・5日間) | 5日 | 河川の環境基準、日本の排水基準(河川へ出す排水) |
| TOC | 試料を酸化分解して出る炭素の量を直接測る | 数分〜 | 水道の水質基準、連続監視 |
酸化剤で燃やすか、微生物に食べさせるか、炭素を数えるかで指標が分かれます。
※同じ水でも、指標や方法が違えば値は一致しません。比べるときは同じ指標・同じ方法の値どうしで比べます。
工場排水のCOD規制(排水基準・総量規制・環境基準)
工場で COD が問われるのは、水質汚濁防止法にもとづく排水の規制があるからです。規制は大きく3つの層に分かれ、排水口ごとの濃度の上限(排水基準)、湾ごとの汚れの総量(総量規制)、川や湖・海そのものの目標(環境基準)が組み合わさっています。
| 規制 | 何を決めているか | COD に関わる主な中身 |
|---|---|---|
| 排水基準(一律基準) | 工場・事業場の排水口から出す水の濃度の上限 | COD 160 mg/L(日間平均120 mg/L)。1日平均50 m³以上の排水で、海域・湖沼に出すものに適用。都道府県の上乗せ基準もある |
| 総量規制 | 東京湾・伊勢湾・瀬戸内海に入る汚れの量(濃度×水量) | COD・窒素・りんの汚濁負荷量を削減。対象地域の事業場は負荷量を測って記録する |
| 環境基準 | 川・湖・海の水質の目標値 | 湖沼は類型ごとに COD 1〜8 mg/L 以下、海域は2〜8 mg/L 以下。河川は BOD で決める |
一律排水基準と上乗せ基準
環境省の一般排水基準では、COD の許容限度は160 mg/L(日間平均120 mg/L)で、1日の平均排水量が50 m³以上の工場・事業場に適用されます。COD は海域と湖沼に出す排水に、BOD はそれ以外(主に河川)に出す排水に適用され、排水先で見られる指標が変わります。
都道府県は水質汚濁防止法第3条第3項にもとづき、条例でより厳しい上乗せ基準を定められます。
たとえば和歌山県の条例は、紀の川などの第1区水域に排水する既設事業場に、排水量に応じた値を定めています。日平均排水量3万〜10万 m³ なら COD は日間平均25 mg/L・最大40 mg/L で、一律基準の120・160よりずっと厳しい値です。
工場の新設や排水先の変更では、排水先、1日の排水量、上乗せ条例、総量規制の地域かどうかの順に、所在地の自治体の窓口で確かめます。
排水の規制は COD だけでなく、有害物質や pH・窒素・りんなどの項目にも及び、最近はPFAS 規制のように新しい物質への対応も求められています。排ガスを除害装置で処理するのと同じく、排水も工場の外へ出す前に基準まで下げることが前提です。
東京湾・伊勢湾・瀬戸内海の総量規制
閉じた海では、濃度の基準を守っていても流れ込む汚れの総量が多くなります。東京湾・伊勢湾・瀬戸内海では1979年から COD の総量削減が進み、第5次から窒素・りんも対象になり、基本方針は第9次(目標は令和6年度)まで定められています。
対象地域の事業場は、COD・窒素・りんの濃度と排水量から1日の汚濁負荷量を出して記録します。東京湾に排水する横浜市の例では、日平均排水量50 m³以上が対象で、測る頻度は400 m³以上が毎日、200〜400 m³が7日に1回以上、50〜100 m³が30日に1回以上です。
毎日測る規模の事業場では、手分析ではなく COD の自動計測器を使うのが基本で、千葉県は400 m³以上の事業場の COD を水質自動計測法で測ることを原則としています。どの計測器を使うかは、次の章の連続測定とあわせて見ていきます。
湖沼・海域の環境基準と達成状況
環境基準は、水域の使い道(水道・水産・工業用水など)に応じた類型ごとに目標値を決めたものです。COD は湖沼が1 mg/L以下(AA)〜8 mg/L以下(C)、海域が2 mg/L以下(A)〜8 mg/L以下(C)で、測定方法は JIS K 0102-1 の17.2です。
令和5年度の測定結果(環境省、2025年4月公表)では、河川の BOD の達成率93.8%に対し、湖沼の COD は52.5%、海域の COD は78.7%でした。水が入れ替わりにくい湖や内湾では、有機物や、窒素・りんで増えたプランクトンが COD を押し上げやすいためです。
10水域あたりで見ると、湖沼の COD は約5水域しか基準を満たしていません。
河川(BOD)93.8% 2,614水域
湖沼(COD)52.5% 198水域
海域(COD)78.7% 615水域
※出典:環境省 報道発表「令和5年度公共用水域水質測定結果及び地下水質測定結果について」(2025年4月25日)。しずく1つを10%として四捨五入して描いています。川・湖・海そのものの環境基準の達成状況で、工場の排水基準を守れた割合ではありません。
工場でCODを下げる排水処理と測定の実務
食品・医薬品の工場や化学工場、紙パルプ工場の排水には有機物が多く、そのままでは排水基準を超えることがあります。そのため多くの工場が自前の排水処理設備を持ち、微生物で有機物を分解して COD・BOD を下げ、出口で測って記録するところまでを一つの仕事として運用しています。
活性汚泥法と排水処理の流れ
有機物の多い排水でよく使われるのが活性汚泥法で、細菌や原生動物などの微生物の集まり(活性汚泥)に有機物を分解させます。反応槽の散気装置から空気を吹き込んで呼吸に必要な酸素を送り、川で起きる自然の浄化を槽の中で速く進める形です。
反応槽を出た水は沈殿池で活性汚泥と処理水に分け、沈んだ汚泥の一部は反応槽に戻して繰り返し使い、増えた分は取り除きます。食品・医薬品の工場のように排水の量や濃さが日によって変わる工場では、手前の調整槽で量と濃さをならし、pH を整えてから反応槽へ送ります。
分解しにくい有機物が多い排水では活性汚泥だけで COD が下がりきらず、凝集沈殿や活性炭吸着を組み合わせることがあります。BOD が下がっても COD が残るのは、こうした有機物の一部が過マンガン酸カリウムには酸化されるためで、2つの差は処理の弱点を探す手がかりになります。
自主測定と連続測定器の管理
総量規制の対象事業場では、手分析に加えて放流口の自動計測器で COD を連続監視します。
有機物が253.7 nm付近の紫外線を吸収する性質を使う UV 計は、試薬が要らず保守が楽です。HORIBA の技術資料(2006年)では、国内の事業場の約70%で使われているとされます(メーカーの資料の数字)。20年ほど前の同社の資料なので、現在の割合を示す数字ではありません。
UV 計は紫外線の吸収の強さを測る計器なので、COD の値にするには、同じ排水を手分析した COD との相関を取り、換算式を決めておきます。光の吸収で濃度を測る原理はセンサーの仕組みの光学式と同じで、横浜市は UV 計などの相関係数を20検体以上で見直すよう求めています。
計器の値がずれていると、基準を守れているかどうか自体が分からなくなります。ゼロ・スパンの確認や計測器の校正周期を台帳で管理し、手分析との照合を定期的に記録しておくことが、監督官庁への説明の裏付けにもなります。
測った COD が想定と大きく違うときは、処理の異常を疑う前に測り方の条件を確かめます。採水の時刻と場所、希釈倍率と加熱後の残り方、空試験の値、ファクターが前回と同じかを見て、測定の差か排水そのものの変化かを切り分けます。
処理で COD を下げ、放流口で測って記録するまでが一続きの運用です。
※処理の組み合わせは排水の性質で変わります。図は有機物の多い排水を活性汚泥法で処理する場合の一般的な流れです。
排水処理の設備は止まると生産も止めざるを得ないため、散気用のブロワやポンプ、汚泥のかき寄せ機は保全の重要な対象です。時間基準と状態基準の保全を使い分け、COD 計や溶存酸素計の値の変化を故障の予兆の監視と同じように見ていれば、処理の悪化に早く気づけます。
分析室での COD 測定では、劇物の硫酸を使い、硝酸銀や過マンガン酸カリウムは皮膚や衣服につくと落ちにくいので、保護具と安全ピペッターを使って扱います。廃液は専用の容器に分けて回収するなど、職場の安全衛生のルールとして手順を決めておくことが大切です。

CODのよくある質問
なぜ過マンガン酸カリウムを過剰に加えるのですか?
有機物と過マンガン酸カリウムの反応は遅く、試料に直接少しずつ滴下して色が消えなくなる点を探しても、反応しきったのかどうかが分かりにくいからです。先に過剰に加えて決まった条件(沸騰水浴で30分)で反応させきり、残りを後で測るほうが確実に測れます。
なぜシュウ酸ナトリウムも過剰に加えるのですか?
残った過マンガン酸カリウムをシュウ酸ナトリウムで直接滴定すると、赤紫色が消える点が終点になり、一部が黒褐色の二酸化マンガンになると見分けにくくなります。シュウ酸ナトリウムを過剰に入れてから過マンガン酸カリウムで滴定し直せば、色が消えなくなる見やすい点を終点にできます。
CODとBODの値は単純に比べられますか?
測る原理が違うので、どちらが大きいかは含まれる有機物の種類で変わり、同じ数字として比べることはできません。
神奈川県が平成11年度に相模川の12地点で測った例では COD が BOD よりやや高い傾向でしたが、相関は良好でした。分解しにくい有機物が多い排水では、COD のほうが BOD よりかなり大きくなることもあります。
CODの単位 mg/L と ppm は同じですか?
水1 Lはおよそ1 kgなので、薄い水溶液では1 mg/L をほぼ1 ppm(100万分の1)として扱えます。ただし排水基準や環境基準の数値は mg/L で決められているので、報告や記録は mg/L で書くのが基本です。
まとめ
- COD(化学的酸素要求量)は、水の中の有機物などを酸化剤で酸化するときに使われる量を、酸素の量(mg/L)に換えた水の汚れの指標
- 有機物は微生物の分解で溶存酸素を奪うため、COD が高い水ほど魚が住めない状態に近づく
- 日本の公定法は過マンガン酸カリウムを使う CODMn(JIS K 0102-1 17.2)で、シュウ酸ナトリウムとの2段階の逆滴定で測る
- KMnO4 1 mol は O2 54 mol にあたり、5 mmol/L 溶液1 mL は酸素0.2 mg。COD =(a−b)×f×1000/V×0.2
- 海外の CODCr や BOD・TOC とは値が一致せず、排水基準(160 mg/L・日間平均120 mg/L)、総量規制、湖沼・海域の環境基準は CODMn で決められている
COD は、酸化還元の電子のやり取りという化学の基本が、工場の排水管理や湾全体の水質の目標にまでつながっている指標です。
試料を酸性にする硫酸は接触法でつくられ、排水処理や分析を担う仕事は化学業界の構造の中で素材メーカーやプラントの現場を支えています。測定データの信頼性を保つ考え方は、品質保証・品質管理の仕事とも共通しています。
出典
出典・参考資料(12件)を開く出典・参考資料を閉じる
- CODMn の操作・計算式・考え方:神奈川県「CODMn の分析」
- JIS の名称と構成:日本規格協会 JIS K 0102-1:2021 プレビュー(目次)、環境省「JISから引用する箇条の変更(JIS K 0102-1の項目)」
- 試料の適量の判断基準と測定値への影響:大分県衛生環境研究センター年報 第51号(2023年)「CODMn測定方法の変更に伴う測定値への影響に関する調査」
- CODCr の方法:US EPA「Method 410.4: The Determination of Chemical Oxygen Demand by Semi-Automated Colorimetry」(1993年)
- CODMn と CODCr・TOC の比較:厚生労働省 審議会資料「有機物の指標について(TOCの基準値案について)」(2003年2月)
- BOD の定義:国土交通省 関東地方整備局 江戸川河川事務所「BOD」
- 排水基準:環境省「一般排水基準」、上乗せ基準:和歌山県「水質汚濁防止法第3条の規定に基づく排水基準等を定める条例」
- 総量規制:環境省「化学的酸素要求量、窒素含有量及びりん含有量に係る総量削減基本方針(東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海)の策定について」、横浜市「総量規制」、千葉県「化学的酸素要求量に係る汚濁負荷量の測定」
- 環境基準:環境省 別表2(湖沼)、同(海域)、同(河川)
- 達成状況:環境省「令和5年度公共用水域水質測定結果及び地下水質測定結果について」(2025年4月25日)
- 活性汚泥法:愛知県「下水道のしくみ」、鹿児島市「下水処理」
- UV 計による連続測定:HORIBA Readout「有機性汚濁物質測定装置 OPSA-120」
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