排ガス量は、燃料の燃焼式から必要な空気量を求め、燃焼生成物と空気由来のガスを足して計算します。水蒸気を含む「湿り」と除いた「乾き」を分け、最後に温度と圧力で実体積へ換算します。
プロパン1molを空気比1.4で完全燃焼させると、湿り排ガスの標準換算体積は約791.5Lです。同じ絶対圧力で300℃になると約1661Lになり、燃料配管より排ガスダクトが大きい理由が見えてきます。
計算は、燃焼式、理論空気量、過剰空気、温度・圧力換算の順で進めます。燃料1molの例を最後まで解き、その結果を燃料流量とダクト内の流速へつなぎます。
動画でも同じ手順を説明しています。動画中の温度比例は、物質量と絶対圧力が一定の条件です。湿りガスの標準換算は、水蒸気も気体として数えた仮想体積で、0℃まで実際に冷却したガスの体積とは区別します。
排ガスとは
ここでいう排ガスは、燃料を燃やしたあとに炉やボイラーから出る気体です。炭化水素燃料を空気で完全燃焼させると、主に二酸化炭素、水蒸気、空気中の窒素、使い切らずに残った酸素で構成されます。
水蒸気を含めて数えるものが湿り排ガスで、水蒸気を除いて数えるものが乾き排ガスです。同じ排ガスでも、どちらを基準にするかで体積と成分濃度の数値が変わります。
図1:煙道の湿り排ガスと、除湿した分析試料
ダクトを流れるガス全体と、分析計に送る少量の試料では、水分の扱いが異なります。
※除湿方式の分析を示す模式図です。高温のまま測る方式や水分補正の設定もあり、測定値の乾湿基準は分析方式と記録に合わせます。
排ガス量は、煙道断面の流速や、熱交換器を通るガスの熱量を求める土台になります。例えばエコノマイザでは、排ガスから給水へ渡せる熱と、ガスが流れる際の圧力損失の両方に関係します。
燃料だけを見てダクトの大きさを決めると、燃焼用空気の量が抜けます。ボイラー設備の構成を流れで追い、燃料と空気が合流して排ガスになる範囲をそろえるのが出発点です。
計算する量と基準をそろえる
燃料の基準量は、気体なら1molや標準状態の1m³、液体・固体なら1kgと決めます。本記事の例は純プロパン1molを基準とし、空気は乾燥した酸素21体積%、窒素相当の不活性分79体積%で近似します。
標準換算の条件には、0℃、絶対圧101.325kPaを使います。Nm³はこの条件へ換算した体積の表記です。モル体積は約22.4L/molとし、途中では丸めずに計算して最後に表示桁をそろえます。
燃焼生成水を気体のまま数えた湿り標準体積は、物質量の比較に使います。実際に冷却して凝縮水を除いた量や、現場の高温ガスが占める体積とは役割が違い、用途に応じて乾湿と温圧条件を組み合わせます。
排ガス量の計算方法

計算の入力は、燃料の組成と使用量、燃焼用空気の条件、空気比、排ガスの温度・圧力です。反応前後の炭素、水素、酸素の数を合わせれば、各成分を足し上げる手順で求められます。
- 燃料の燃焼式を立て、必要な酸素量と生成物量を求める。
- 酸素の体積分率で割り、理論空気量を求める。
- 空気比に応じた過剰空気を足し、乾き・湿りを分ける。
- 排ガス温度と絶対圧力から実体積へ換算する。
燃焼式を立てる
プロパンC₃H₈の炭素をすべてCO₂へ、水素をすべてH₂Oへ変えると、次の完全燃焼式になります。燃料1molあたり酸素5molが必要で、二酸化炭素3molと水4molが生成します。
図2:反応前後で原子の数を照合する
燃焼で原子が消えることはなく、炭素3個、水素8個、酸素10個が生成物へ移ります。
※分子の個数比を示す模式図で、分子の実際の形や大きさは表していません。
同じ温度と圧力の理想気体では、体積比も物質量比と等しくなります。まず必要酸素を標準体積で表すと、5molに22.4L/molを掛けて112Lです。
理論空気量を計算する
完全燃焼に必要な最小限の空気量を、理論空気量A₀といいます。空気を純酸素として扱わず、酸素112Lを空気中の酸素体積分率0.21で割って求めます。
空気比1で完全燃焼すると、供給した酸素は全量が反応に使われます。この条件では、空気から反応酸素を引いた残りが窒素相当分となり、これにCO₂と水蒸気を足せば湿り理論排ガス量です。
空気比mは、実際に供給する空気量Aを理論空気量A₀で割った値です。mが1.4なら、理論量の1.4倍を供給し、理論量に対して40%が余分な空気になります。
過剰空気量を足す
空気比1.4でも、完全燃焼する燃料量が同じならCO₂と水蒸気の生成量は変わりません。増えるのは空気とともに入る窒素相当分と、燃焼に使われずに残る酸素です。
成分ごとに計算すると、酸素は7mol供給して5mol反応し、2molが残ります。窒素相当分は理論時の1.4倍で26.333…molとなり、下図の成分を足しても同じ総量になります。
図3:空気比を上げると、通過する空気成分が増える
燃料1molあたりの標準換算体積。CO₂と水蒸気の量は同じで、窒素相当分と余剰O₂が増えます。
※m=1の余剰O₂は0L。色付き棒の長さは丸め前の値に比例します。湿り総量からH₂Oの89.6Lを除くと乾き総量になります。
理論排ガスに追加するのは、供給空気の全量ではなく過剰分だけです。理論排ガスには、すでに理論空気から来た窒素が含まれているため、実空気全量を足すと二重計上になります。
図4:乾き・湿りと空気比を分けた計算結果
燃料基準はすべてプロパン1mol。乾き・湿りの差は水蒸気89.6Lです。
| 標準換算体積 | 理論空気 m=1 | 実空気 m=1.4 |
|---|---|---|
| 供給空気 | 533.3 L | 746.7 L |
| 乾き排ガス | 488.5 L | 701.9 L |
| 水蒸気相当分 | 89.6 L | 89.6 L |
| 湿り排ガス | 578.1 L | 791.5 L |
| 余剰酸素 | 0 L | 44.8 L |
※0℃・絶対圧101.325kPa、22.4L/molの近似。表示値の足し算には丸めによる0.1L程度の差が出ます。
湿り標準体積を燃料の標準体積22.4Lで割ると、約35.3倍になります。排ガスが多い主因は燃焼用空気であり、さらに高温になると膨張するため、煙道には大きな通路が必要です。
過剰空気が増えると、加熱して煙突へ送るガスも増えます。排ガスが持ち去る熱はボイラー効率の熱損失に関係しますが、本例の空気比1.4は計算条件であり、設備の推奨値を示すものではありません。
温度を考慮して体積を計算
ダクトの流速を求める際は、標準換算体積をその場所の温度・圧力での実体積に戻します。理想気体の状態方程式で、圧力には絶対圧力、温度にはケルビンで表す絶対温度を使います。
排ガス300℃、絶対圧101.325kPaなら、圧力の比は1です。湿り排ガスの約791.5Lを、273.15Kから573.15Kへ換算すると、次の実体積が得られます。
温度比を300÷0で計算したり、圧力比にゲージ圧をそのまま入れたりすると式が成立しません。圧力が大気圧と異なる煙道では、測定地点の絶対圧を使い、標準と実体積の区別はNm³とm³の換算と同じです。
排ガスが空気予熱器などを通って冷えると、同じ物質量でも実体積は小さくなります。さらに水分が凝縮する設備では気体の物質量も変わるため、温度比だけの換算から凝縮水の収支へ進みます。
燃料流量からダクトの流速を求める
ここまでのLは、燃料1molを燃やしたときの量であり、毎時の流量ではありません。同じ組成と空気比で連続運転するなら、燃料流量に排ガスの体積倍率を掛けて、毎時の排ガス流量へ直します。
プロパンを標準状態で10Nm³/h使用する例を考えます。湿り排ガスは燃料体積の35.333…倍なので、標準流量353.3Nm³/h、300℃での実流量は約741.4m³/hです。
図5:ダクト流速には、高温の湿り実流量を使う
353.3Nm³/hをそのまま断面積で割ると、300℃での実流速を小さく見積もります。
※流量と流速の関係を示す模式図で、機器やダクト断面の形状・寸法は設計値を示しません。圧力損失や騒音を含むダクトの最終設計は別途必要です。
流速用の断面積は、ガスが実際に通れる面積を使います。熱交換器内に管群がある区間と何もない直管部では流路面積が違うため、同じ排ガス流量でも局所的な流速は変わります。
重油や固体燃料は元素分析値から計算する
純プロパン以外の燃料では、成分表に合わせて反応式を組み立てます。例えば重油や石炭では、燃料1kg中に含まれる各元素の質量から、必要酸素と生成するガスを求めます。
炭素c、水素h、酸素o、窒素n、硫黄s、水分w、灰分aを、同じ受入基準の質量分率で表します。各値の合計は1とし、質量%で与えられた数値は100で割ってから式へ入れます。
燃料中の酸素は外から供給する必要酸素を減らすので、式では引き算になります。水素と酸素の分析値は水分を除く元素分として扱い、水分wに含まれる水素と酸素をもう一度足さないようにします。
燃料由来の窒素も、全量がN₂になる近似なら標準体積0.8nNm³/kgとして加算します。水蒸気は水素から生じる11.2hと、燃料水分から来る22.4w÷18の合計で、さらに燃焼用空気の湿分があればその分を足します。
乾燥基準の元素分析値と、受入基準の水分をそのまま並べると組成合計が崩れます。分析表の基準をそろえてからCO₂、SO₂、N₂、余剰O₂、水蒸気を集計し、実設備では灰への残留分や未燃分も測定結果と照合します。
排ガスの酸素濃度から空気比を求めるとき
燃料流量と空気流量を直接測れない場合は、排ガスの酸素濃度から空気比を推定します。その際は乾き基準か湿り基準かをそろえ、燃料組成と完全燃焼の前提に合った式を使います。
プロパンの例では、乾き排ガスはCO₂が3mol、窒素相当分が18.8095…m mol、酸素が5(m−1)molです。したがって乾き酸素の体積分率xは、余剰酸素をこれらの合計で割って求められます。
よく使う近似式m≒21÷(21−O₂%)へ6.38%を入れると、約1.44です。この差は丸めだけでなく燃料による乾きガス量の違いを省略したためで、燃焼収支を厳密に合わせる場合は上の成分式からmを逆算します。
測定地点へ外気が漏れ込むと、燃焼器での供給空気が同じでも酸素濃度は上がります。燃焼状態の評価ではCOや燃料流量も合わせて見て、燃焼用空気の増加と煙道での希釈を分けて考えます。
排ガス量の計算でよくある質問
乾き排ガス量を使えばダクトを小さくできますか?
ダクト内に水蒸気が存在するなら、それも含む湿り実流量で流速を求めます。乾き体積は成分濃度の比較などに使う計算基準で、実際の流路から水蒸気の占める量が消えるわけではありません。
燃料使用量がkg/hでも同じ式を使えますか?
質量から物質量へ直すか、燃料1kgあたりの排ガス量を求めて使用量を掛けます。純プロパンとLPG混合物では組成が異なるので、ボンベや供給元の燃料組成を計算条件に反映します。
排ガスのO₂換算と温度換算は同じですか?
温度・圧力換算は、同じ物質量の気体が占める体積を変換する計算です。排ガス濃度のO₂換算は、希釈の影響をそろえて所定の酸素濃度における汚染物質濃度を比較する別の計算です。
法令の排出基準へ適用するときは、対象施設と物質ごとの基準酸素濃度、乾湿、標準温圧の定義を使います。本記事で求めた湿り実体積を、そのまま濃度規制の分母に置くと基準が混ざります。
排ガスを冷やすと水分はすべてなくなりますか?
水蒸気の露点まで冷却すると凝縮が始まりますが、冷却後の気体にもその条件に応じた水蒸気が残ります。燃料に硫黄分がある設備では、水の凝縮だけでなく酸露点による低温腐食も熱回収の条件に関わります。
計算値と測定した排ガス流量が合わない原因は?
燃料の組成・使用量と、測定点の温圧・乾湿を同じ時間帯で照合します。続いて空気漏れ、吹込み蒸気、燃料や空気の水分、凝縮の有無を追うと、収支に足りない入口と出口を見つけやすくなります。
まとめ
- 排ガス量は、燃焼生成物と燃焼用空気に由来するガスの成分収支で求める。
- 理論排ガスへ足すのは、理論空気量に対する過剰空気分だけ。
- プロパン1mol・空気比1.4では、湿り約791.5L、乾き約701.9Lの標準換算体積。
- 同じ絶対圧で300℃に換算すると、湿り実体積は約1661L。
- 燃料基準量、組成基準、乾湿、温度、絶対圧をそろえてから流量と流速を求める。
計算表には結果の数字だけでなく、燃料組成と乾湿・温圧条件を残します。成分ごとの和と過剰空気の加算結果が一致すれば、排ガスダクトや熱回収設備へ渡す流量の根拠を説明できます。
出典
出典・参考資料(6件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 燃焼の元素収支・理論空気・乾湿:環境省「第6章 大気汚染物質発生源概要」p81
- 元素分析による計算・過剰空気の加算:厚生労働科学研究成果データベース公開資料「燃焼における大気汚染の防止技術」印刷p141、スライド43〜48
- 標準状態と温圧補正:オーバル「測定流体が気体の場合の温圧補正」
- 乾き・湿りの定義と濃度の酸素補正の例:環境省「排出ガス中の水銀測定法」第1・第4(水銀測定の規定。各物質・施設へはその適用規定を使う)
- 燃焼ガスの分析と空気の調整:テストー「多成分燃焼排ガス分析計」
- 燃焼設備と空気比:環境省「燃焼設備及び使用する燃料の種類に応じた空気比の適正化」
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