CFRPの成形方法の種類|オートクレーブ・RTM・プレスをコストと量産性で比較

脱型直後の綾織りCFRPパネルと成形型が置かれた作業台

CFRP(炭素繊維強化プラスチック)の成形方法は10種類近くあり、1個をつくる時間も、数時間から約1分までと大きく違います。CFRPは、髪の毛より細い炭素繊維を樹脂で固めた材料です。

どの成形方法を選ぶかで、部品の強度、金型や設備にかかる費用、年間に作れる数が大きく左右されます。1個に時間をかけてよい部品か、短い時間で数多くつくる部品かによって、向いている方法が変わります。

この記事では、成形方法を決める前提となる材料の基礎から入り、主な成形方法の比較早見表を示します。続いて、方式ごとの仕組みと向き不向き、用途別の使い分け、選び方の手順と品質・安全・リサイクルの注意点を整理します。

目次

CFRPの成形方法は「材料の形」と「樹脂の種類」で決まる

CFRPは、髪の毛より細い炭素繊維を樹脂で固めた複合材料です。繊維が荷重を受け持ち、樹脂が繊維どうしをつないで形を保ちます。金属のように溶かして流したり、削り出したりする素材とは考え方が根本から違います。

成形方法の違いは、繊維と樹脂をどんな形で型に入れ、どうやって樹脂を固めるかの違いだといえます。材料一般の分類や強度の考え方は材料技術の基本原理で整理していますので、ここではCFRPの成形に関わる3つの軸に絞って見ていきます。

熱硬化性か熱可塑性か

1つめの軸は樹脂の種類です。エポキシ樹脂に代表される熱硬化性樹脂は、熱を加えると化学反応(架橋)で固まり、一度固まると元に戻りません。航空機や多くの自動車部品のCFRPはこちらで、反応に時間がかかることが成形時間を長くする原因になります。

もう一方の熱可塑性樹脂を使ったものは、CFRTP(炭素繊維強化熱可塑性プラスチック)と呼ばれます。

PA(ポリアミド)、PP(ポリプロピレン)、PPS、PEEKなどが使われ、加熱すると柔らかくなり、冷やせば固まる性質を持ちます。

化学反応を待たずに冷却だけで形が決まるため、短時間で成形しやすいのが特徴です。

連続繊維か短い繊維か

2つめの軸は繊維の長さです。部品の端から端までつながった連続繊維は、荷重の方向に繊維を並べられるため、強度と剛性を最も引き出せます。

一方、数mm〜数十mmに切った短繊維や不連続繊維は、型の中で流れやすく、リブやボスのある複雑な形を作りやすくなります。

東レが2012年9月に公表した事業戦略の説明資料でも、当時の整理として、成形方法と性能の関係が図示されています。

連続繊維を使うオートクレーブ成形やRTM成形は、曲げ弾性率が高い代わりに成形サイクルが長いとされています。

不連続繊維を使うプレス成形(SMCなど)や射出成形は、サイクルが短い代わりに弾性率が低いという関係です。

性能と生産性はトレードオフになりやすいというのが、成形方法を選ぶうえでの出発点です。

中間基材の形

3つめの軸が、繊維と樹脂を成形前にどんな形にしておくかです。これを中間基材と呼びます。

炭素繊維に樹脂をあらかじめ含ませて半硬化させたシート「プリプレグ」や、樹脂を含まない織物や束(ドライ繊維)があります。ほかに、切った繊維と樹脂を混ぜたシート状のSMC、熱可塑性樹脂の板やペレットなどもあります。

図1:中間基材と成形方法の対応

成形前の材料の形によって、選べる成形方法がおおむね決まります。

炭素繊維 + 樹脂(熱硬化性/熱可塑性)繊維の長さ(連続/短繊維)と樹脂の種類を決める
中間基材を選ぶ
プリプレグ(樹脂を含ませたシート・テープ)オートクレーブ成形、オーブン成形・真空圧成形、プリプレグのプレス成形、シートワインディング、自動積層(AFP・ATL)
ドライ繊維(織物・プリフォーム・繊維束)RTM・HP-RTM、VaRTM。繊維束に樹脂を含ませながらならフィラメントワインディング、引抜成形
コンパウンド(SMCなど)切った繊維と樹脂を混ぜたシート。プレス成形で型の中を流して成形
熱可塑性の板・ペレット(CFRTP)板を加熱してプレスするスタンピング成形、短繊維ペレットの射出成形

※代表的な組み合わせを示したもので、同じ基材でも複数の成形方法を組み合わせる例があります(編集部整理)。

なお、樹脂をどの形で供給するかは材料メーカーの領域で、炭素繊維メーカーがプリプレグやSMCまで一貫して手がけるケースが多く見られます。材料メーカーの事業の全体像は化学業界の企業の種類とあわせて読むと、取引の構造がつかみやすくなります。

主な成形方法の比較早見表

まず、代表的な10の成形方法を、成形の速さ、設備・型の初期費用、強度・品質、形状の自由度、向く生産量の5つの観点で並べます。細かい条件は後の章で説明するので、ここでは全体の位置関係をつかんでください。

図2:CFRPの主な成形方法の比較早見表

速さと強度、初期費用と生産量はトレードオフの関係になりやすい。

成形の速さ
初期費用の低さ
強度・品質
形状の自由度
向く生産量
オートクレーブ
△
△
◎
○
少量〜中量
オーブン・真空圧(OoA)
△
○
○
○
少量〜中量
RTM・HP-RTM
○
△
○
○
中量〜量産
VaRTM
△
◎
○
○
少量・大型
プリプレグのプレス
○
△
○
△
中量〜量産
SMCのプレス
◎
△
△
◎
量産
CFRTPスタンピング
◎
△
○
△
量産
フィラメントワインディング
○
○
◎
△
回転体の中量〜量産
引抜成形
◎
○
○
△
一定断面の長尺品
射出成形(短繊維)
◎
△
△
◎
小物の大量生産

※◎○△は一般的な傾向(編集部整理)。「初期費用の低さ」は◎ほど設備・型が安い。実際の評価は材料、部品の大きさ、設備構成によって変わります。スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

表を横に見ると、強度・品質で◎がつく方法ほど成形に時間がかかり、速い方法ほど繊維の強さを引き出しにくい傾向が読み取れます。縦に見ると、金型を使う方法は1個あたりは速い一方で型の費用が重く、数が出ないと元が取れません。

また価格については、成形方法ごとの部品単価を比べた公的な統計は見当たりません。ここでは相対的な傾向にとどめ、以下の章で公表されている設備投資額や成形時間の例を、出所と条件を添えて紹介します。

プリプレグを積んで硬化させる方法(オートクレーブ・OoA・自動積層)

扉を開けたオートクレーブに真空バッグした部材を入れる様子

航空機部品で長く主流になってきたのが、プリプレグを1枚ずつ型に積み重ね、熱と圧力で硬化させる方法です。品質は最も安定しやすい反面、時間と設備費がかかります。

オートクレーブ成形

炭素繊維協会の用語解説によると、オートクレーブ成形では、型にプリプレグを積層してバッグ(フィルム)で覆います。これをオートクレーブと呼ばれる圧力釜の中で、空気や揮発分を真空で除去しながら加熱・加圧して硬化させる方法です。

内部の空洞(ボイド)を減らしやすく、強度の高い成形品が得られるため、航空機の一次構造(主翼や胴体など、壊れると機体の安全に直結する部材)に使われてきました。

ボーイング787では機体構造重量の50%にCFRPが使われ、プリプレグを重ねてオートクレーブで硬化させています。出典は東レの2013年度グリーン・サステイナブルケミストリー賞の受賞資料です。

航空機業界で部品を誰がどう作っているかは航空宇宙・造船業界の企業の種類と仕事の流れで紹介しています。

弱点は時間と設備です。東レ・カーボンマジックは、オートクレーブでは昇温・降温を含めて約1〜8時間が必要で、製造コストが高くつくと説明しています。

東レは2019年4月の発表で、オートクレーブは初期の設備投資額が数十億円以上と高く、CFRP部材の製造コスト増の一因になっていると説明しています。

オーブン成形・真空圧成形(OoA)

そこで進められてきたのが、オートクレーブを使わない成形、いわゆるOoA(アウト・オブ・オートクレーブ)です。真空バッグで大気圧だけをかけ、加圧釜ではなくオーブンで加熱して硬化させます。

東レは2019年4月、真空吸引による大気圧の加圧だけで成形できる航空機一次構造向けプリプレグを開発したと発表しました。

新しいプリプレグは、オートクレーブ成形した一次構造部材と同等の衝撃後圧縮強度や引張強度を持つとされています。

実在する航空機尾翼の一部を模した2m級部材の成形試験でも、ボイドが極めて少なく航空機部材の品質管理基準をクリアするレベルだったとしています。

JAXAも、高額なオートクレーブの導入・維持が新規参入の壁になっているとして、脱オートクレーブの成形技術の実証に取り組んできました。

自動積層(AFP・ATL)

プリプレグの積層を人手ではなく機械で行うのが、AFP(自動繊維積層)やATL(自動テープ積層)です。ロボットの先端でプリプレグのテープを加熱し、ローラーで押し付けながら型の上に貼っていきます。

三菱重工技報(2025年)によると、JAXAと連携して2021年度にAFPを国内に導入しました。手積層で必要だった図面への積層情報の記載や材料のカッティングなどの作業を、省略・削減できることを確認しています。

一方で、特定の条件ではテープ間のすき間や重なりにより強度が手積層より最大約18%下がることも報告されています。

同報告では、積層を最適化する設計によって構造体の強度を約20%高め、この低下を補えるとしており、自動化は設計側の工夫とセットで考える必要があります。

繊維に樹脂を流し込む方法(RTM・HP-RTM・VaRTM)

RTM金型に炭素繊維の織物を2人で敷き込む様子

プリプレグを使わず、乾いた炭素繊維を型の中に置いてから樹脂を流し込むのが樹脂注入系の成形です。材料を冷凍保管する必要がなく、複数の部品を一体で成形しやすい点が評価されています。

図3:RTM成形の工程とVaRTMとの違い

乾いた繊維を型に入れ、あとから樹脂を含ませて固めます。

準備
01プリフォーム製作炭素繊維の織物などを部品の形に合わせて切り、重ねて予備賦形する
02型にセット・型締め上型と下型の間にプリフォームを置き、型を閉じて密閉する
03樹脂の注入熱硬化性樹脂を型内に注入し、繊維のすき間まで含浸させる
成形・仕上げ
04加熱硬化型ごと加熱して樹脂を硬化させる。速硬化樹脂でサイクルを短縮
05脱型型を開けて成形品を取り出し、次のプリフォームをセットする
06トリム・検査外周を切りそろえ、穴あけや非破壊検査を行う
VaRTMは上型の代わりにフィルムで覆い、真空で吸い込む力だけで樹脂を含浸させる。型が片面で済むため大型品向き。

※工程は一般的な流れ(編集部整理)。設備や部品によって順序や内容は異なります。

RTM・HP-RTM

RTM(レジン・トランスファー・モールディング)は、金型に封入した繊維のプリフォームに熱硬化性樹脂を低い圧力で注入し、加熱して硬化させる方法です。

東レ・カーボンマジックは、比較的安定した品質が得られ、中規模の量産に向き、車のフードやルーフのような形状に使われると説明しています。

注入の圧力を上げ、速く固まる樹脂と組み合わせてサイクルを縮めたものがHP-RTM(高圧RTM)やハイサイクルRTMと呼ばれます。

東レは2012年9月の事業戦略説明資料で、コンセプトEV「TEEWAVE AR1」を紹介しました。この車では、CFRP製モノコック(車体骨格)をハイサイクルRTM(10分)で一体成形し、部品数を3点にまとめたとしています。

これは2012年時点の試作車での数値です。同じ資料では、高速RTM技術でメルセデス・ベンツSLのCFRP製トランクリッドを量産化した例も紹介されています。

VaRTM

VaRTM(真空補助RTM)は、片側だけの型に繊維を置いてフィルムで密閉し、真空の力で樹脂を引き込んで成形する方法です。高い圧力に耐える上下の金型がいらないため、型が安く軽くなり、大きな部品を作りやすくなります。

JAXAは、VaRTMがもともと小型船舶や風車のブレードなど、量が少なく低価格が求められる製品に使われてきたと説明しています。

一方で、かける圧力がオートクレーブより低いため、品質の作り込みが課題とされてきました。

東レの2012年9月の資料では、三菱重工業と共同開発した成形技術を紹介していました。

対象は当時開発中だった国産旅客機MRJ(のちの三菱スペースジェット。2023年に開発中止)の実物大の垂直尾翼部材です。

改良型のA-VaRTM(オーブン硬化)で成形し、特長の1つとして繊維体積含有率(Vf)の安定的な制御を挙げていました。

金型で押して短時間で成形する方法(プレス・SMC・スタンピング)

自動車のように年間数万台以上を作る分野で期待されているのが、加熱した金型で材料を押し固めるプレス系の成形です。金型は高価ですが、1個あたりの成形時間を分単位まで縮められます。

図4:公表されている成形時間の例

同じCFRPでも、成形方法と材料によって時間の桁が変わります。

オートクレーブ成形プリプレグ、昇温・降温を含む(東レ・カーボンマジック)
約1〜8時間
ハイサイクルRTMコンセプトEV「TEEWAVE AR1」のモノコック(東レ、2012年時点の資料)
10分
プリプレグのプレス(PCM)速硬化品・140℃、成形サイクルは約10分(三菱ケミカル)
硬化5分
サンドイッチ構造のワンショットプレス1.2m角の自動車ルーフ、CFRF芯材とプリプレグの一体成形(東レ、NEDO事業、2023年2月公表)
5分
CF-SMCのプレス短繊維ランダム配置のシート(三菱ケミカル)
2〜5分
CFRTP(熱可塑)の部品成形GMC Sierraの荷台部品のタクトタイム(帝人、2019年発表)
約1分

※各社の公表値で、部品の大きさ・材料・条件(硬化時間か成形サイクルかも含む)がすべて異なるため単純な比較はできません。三菱ケミカル・東レ・カーボンマジックの値は2026年10月時点の製品・解説ページの掲載値。2012年の値は当時の試作車での数値で、現在の技術水準を示すものではありません。棒の長さは時間の桁を示す対数目盛の目安(編集部作成)。

プリプレグのプレス成形

連続繊維のプリプレグを加熱した金型に入れ、プレスで加圧して硬化させる方法です。東レ・カーボンマジックは、成形サイクルを短縮でき寸法精度が高い一方、形状の設計に制約が出やすいと説明しています。

三菱ケミカルがうたうのは、速硬化型のプリプレグを使ったPCM(プリプレグ・コンプレッション・モールディング)です。140℃・5分での硬化、成形サイクル約10分としています。

同社のPCMは日産GT-R NISMOのカーボンルーフに採用され、約4kgの軽量化につながったといいます。外観の美しさが求められる外板にも使える点を、同社は強みとしています。

SMCのプレス成形

SMC(シート・モールディング・コンパウンド)は、切った炭素繊維と樹脂を混ぜてシート状にした材料です。

金型の中で押しつぶすと材料が流れて隅々まで広がるため、リブやボスのある複雑な形状を一度に成形できます。三菱ケミカルは、同社のCF-SMCはプレスにより2〜5分程度で部材に加工できるとしています。

ただし繊維が短く向きもばらばらなため、東レ・カーボンマジックは物性が低く、強化繊維の優位性を完全には発現できないと指摘しています。強度より量産性と形状の自由度を優先する部品向きの方法です。

CFRTPのスタンピング成形

熱可塑性樹脂を含ませた板をあらかじめ作っておき、加熱して柔らかくしてから金型でプレスし、冷やして形を決める方法です。化学反応を待たずに冷やすだけで固まるため、短いサイクルが狙えます。

東レの2012年の資料でも、PP樹脂のCFRTPのスタンピング成形を1分としていました(コンセプトEVのルーフなど)。

帝人は2019年5月、同社のCFRTP製品がGMのピックアップトラック(GMC Sierra)の荷台部品に採用されたと発表しました。

部品成形のタクトタイムは約1分で、量産車の構造部材にCFRTPが使われた世界初の例だとしています。

研究機関では、名古屋大学ナショナルコンポジットセンターが2013〜2022年度にCFRTPによる量産車の車体構造を研究しました。

NEDO・ISMA(新構造材料技術研究組合)の委託によるもので、長めの繊維と樹脂を混ぜた材料を高速プレスするLFT-D技術を開発しています。

金沢工業大学ICCも、熱可塑性の薄いテープを短冊状に切ってランダムに重ね、複雑形状をプレスできるシートを企業と共同で開発しています。

プレス系の成形は、金型やプレス機の考え方が金属のプレス加工と共通する部分も多くあります。成形全般の分類は加工技術の基礎(切削・鋳造・成形)で整理しています。

パイプ・長尺・小物に向く方法(FW・引抜・シートワインディング・射出)

円筒のライナに炭素繊維を巻き付けるフィラメントワインディング

ここまでの方法が板状や殻状の部品を得意とするのに対し、形がはっきり決まっている製品には専用の成形方法があります。形状が合えば、生産性と性能を両立しやすいのが特徴です。

図5:部品の形状と向く成形方法

形が決まっている部品は、形状から成形方法を絞り込めます。

円筒・回転体(パイプ、圧力容器)フィラメントワインディング。薄肉のパイプはシートワインディング
一定断面の長尺品(丸棒、角パイプ)引抜成形。連続で押し出すように作れる
薄板・パネル(ルーフ、フード、荷台)プリプレグのプレス、SMC、CFRTPスタンピング、RTM
小さく複雑な形(ブラケット、筐体)短繊維の射出成形、SMCのプレス
大型の一体品(ブレード、船体)VaRTM。高品質が必要な翼構造はオートクレーブやOoA
曲面の多い高性能部品(翼の外板、フレーム)プリプレグの積層+オートクレーブ、AFPによる自動積層

※代表的な対応を示した目安(編集部整理)。数量や要求性能によって選択は変わります。

フィラメントワインディング(FW)

樹脂を含ませた炭素繊維の束を、回転する芯(マンドレル)や容器に巻き付けてから硬化させる方法です。繊維を連続したまま、力のかかる方向に合わせて巻けるため、内圧を受ける容器やパイプで高い性能を発揮します。

代表例が燃料電池車の高圧水素タンクです。豊田合成は、トヨタの新型MIRAI用タンクについて、樹脂製のライナにCFRPを何層も巻き付け、700気圧まで水素を圧縮して貯蔵すると説明しています。

工程は成形、溶着、FW、硬化、検査の5つで、FWではCFRPとGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)をライナに巻き付けます。

引抜成形とシートワインディング

引抜成形(プルトルージョン)は、樹脂を含ませた繊維を加熱した型に通し、引き抜きながら連続して硬化させる方法です。断面が同じ丸棒や角パイプを途切れなく作れます。東レ・カーボンマジックは、型の中での硬化時間を30〜300秒としています。

シートワインディングは、プリプレグのシートを芯に巻き付けて硬化させる方法で、ゴルフシャフトや釣竿のような比較的薄いパイプに使われます。スポーツ用品はCFRPが早くから広まった分野で、この方法が支えてきました。

射出成形(短繊維)

熱可塑性樹脂に短い炭素繊維を混ぜたペレットを溶かし、金型に射出する方法です。一般的なプラスチックの射出成形とほぼ同じ設備で作れ、小さく複雑な部品を大量に生産できます。

その代わり繊維が非常に短くなるため、東レ・カーボンマジックは長い繊維を使う方法に比べて強度や剛性はかなり劣るとしています。金属部品の置き換えでは、剛性が足りるかを最初に確認しておく必要があります。

用途別に見るCFRP成形方法の使い分け

成形方法の選び方は、業界ごとの「何を最優先するか」を反映しています。公開されている事例をもとに、主な用途と成形方法の組み合わせを整理します。

図6:用途別の主な成形方法と事例

最優先するのが品質か、タクトか、形状かで選ばれる方法が変わります。

用途
主な成形方法
公開されている事例・理由
航空機の一次構造
プリプレグ+オートクレーブが主流。OoA、VaRTM、AFPの開発が進む
ボーイング787は機体構造重量の50%がCFRP(東レ資料、2013年度受賞)。品質保証が最優先
自動車の量産部品
HP-RTM、プリプレグのプレス、SMC、CFRTPスタンピング
GMC Sierraの荷台にCFRTP(帝人、2019年5月発表)。GT-R NISMOのルーフにPCM(三菱ケミカル紹介)。タクトが最優先
風力発電のブレード
VaRTMなどの樹脂注入が使われてきた
大型で数が少なく低価格が求められる製品にVaRTMが使われてきた(JAXA)。大型化で軽量・高剛性のCFRPが必要に(炭素繊維協会)
圧力容器(水素タンク)
フィラメントワインディング
MIRAIの高圧水素タンクは樹脂ライナにCFRPを巻き付け(豊田合成)。内圧方向に繊維を配置できる
スポーツ用品
シートワインディング、プレスなど
ゴルフシャフトや釣竿などの薄肉パイプ(東レ・カーボンマジック)
産業機器
引抜成形、FW、射出成形
一定断面の棒・パイプは引抜、パイプ状はFW、小物は射出(東レ・カーボンマジックの分類)

※事例は各社の発表時点の情報。採用状況はその後変わっている可能性があります。

航空機では、1機あたりの部品数は少ない一方で、認証を取った材料と工程を変えずに使い続けることが重視されます。そのため成形時間が長くても、実績のあるプリプレグとオートクレーブの組み合わせが中心になってきました。

自動車ではその逆で、年間の生産台数に見合うタクトが出ないと採用されません。数分以内で成形でき、量産ラインに乗せやすい方法の開発が進められています。

完成車メーカーと部品メーカーの分業の仕組みは自動車業界の企業の種類と仕事の流れで解説しています。

成形方法を選ぶ手順と、品質・安全・リサイクルの注意点

最後に、実際に部品の成形方法を検討するときの手順と、見落としやすい注意点をまとめます。

図7:CFRPの成形方法を選ぶ4つのステップ

数量と形状で候補を絞り、性能とコストで決めるのが基本の順番です。

STEP 1年間数量とタクト数十個なら型費の軽い方法、数万個なら金型を使う方法が候補
STEP 2形状回転体・一定断面・薄板・複雑形状のどれか。図5で候補を絞る
STEP 3要求性能連続繊維が必要な強度・剛性か、外観品質、耐熱温度はどこまでか
STEP 4設備・型費と後工程自社設備か外注か、トリム・接合・検査の手間、端材の扱い

※一般的な検討の流れ(編集部整理)。実際には材料メーカーや成形メーカーと試作を重ねて決めます。

架空の部品で考える想定例

たとえば、架空の「搬送装置のアーム(長さ1m、年間数百本)」を金属からCFRPに置き換える場合を考えます。

断面が一定の角パイプで設計できるなら、引抜成形のパイプを買って両端に金具を接合する方法が有力です。形が複雑で数も少なければ、型費の軽いプリプレグ積層+オーブン成形が候補になります。

一方、架空の「年間数万台に使う車両の内装パネル」であれば、型費をかけてもタクトの短いSMCのプレスやCFRTPのスタンピングが候補になります。同じCFRPでも、数量と形状が違えば最適な成形方法はまったく変わることが分かります。

品質:ボイドと繊維体積含有率

CFRPの品質を左右する代表的な指標が、内部の空洞であるボイドと、成形品に占める繊維の割合を示す繊維体積含有率(Vf)です。ボイドが多いと強度が下がり、Vfがばらつくと剛性や重さがばらつきます。

航空機部品メーカーの日機装は、材料の受入時に樹脂含有率や繊維体積率、強度などを検査し、成形品は超音波やX線で非破壊検査していると紹介しています。成形方法を変えるときは、この検査項目と合格基準を先に決めておくことが、後戻りを防ぐポイントです。

安全衛生:粉じんと皮膚への付着

三菱ケミカルは、炭素繊維は細く、折れたり毛羽になった繊維が空中に浮遊すると人体や設備に悪影響を及ぼす可能性があると注意を促しています。皮膚や粘膜に付着すると、かゆみや痛みが出ることがあるともしています。

成形後のトリムや穴あけでは切削粉も出るため、局所排気や集じん機、保護めがね、防じんマスクなどの対策が欠かせません。

また、未硬化の樹脂にも注意が必要です。

たとえばビスフェノールA型の液状エポキシ樹脂は、化学物質評価研究機構(CERI)の有害性評価書で評価されています。ヒトに対して皮膚刺激性と皮膚感作性(アレルギー性の皮膚炎を起こす性質)を持つという判断です。

硬化剤を含め、危険有害性は材料ごとに異なるため、SDS(安全データシート)を確認し、指定された手袋や保護具を使うことが基本です。

三菱ケミカルも、炭素繊維の取り扱いについて詳細はSDSを参照するよう案内しています。

リサイクル:熱分解による炭素繊維の回収

熱硬化性のCFRPは溶かして再成形できないため、リサイクルが課題とされてきました。

東レの資料によると、炭素繊維協会が経済産業省の補助事業(2006〜2008年)で「炭素繊維リサイクル技術の実証研究開発」を進めました。

その後、PAN系炭素繊維メーカー3社がリサイクル技術開発組合(2012年設立、2015年解散)で製造技術を確立しています。

回収の中心は、樹脂を熱で分解して炭素繊維を取り出す熱分解法です。東レと豊田通商は、分解で出る可燃性ガスを燃焼に再利用する省エネルギー型の熱分解炉の開発に取り組み、NEDOの事業に採択されています。

回収した繊維は切った短繊維や粉砕したミルド繊維として再利用されます。熱可塑性のCFRTPは加熱で再成形できる点も利点とされます。

プラスチック全般のリサイクル手法の違いはプラスチックのケミカルリサイクルで解説しています。

まとめ

この記事のまとめ
  • CFRPの成形方法は、中間基材の形、熱硬化性か熱可塑性か、繊維の長さでおおむね決まる
  • 強度・品質を引き出す方法ほど時間がかかり、速い方法ほど繊維の強さを引き出しにくい傾向がある
  • 航空機はプリプレグ+オートクレーブが主流で、OoAや自動積層でコストダウンが進む
  • 自動車量産はHP-RTM、プレス、SMC、CFRTPスタンピングなど分単位の方法が中心
  • 選ぶときは数量→形状→要求性能→設備・後工程の順に絞り、品質基準・安全対策・端材の扱いまで決めておく

CFRPの成形方法の検討には、設計、生産技術、材料の知識が横断的に関わります。関連する職種は生産技術や機械設計、技術テーマとしては材料技術がこの記事と深く関わります。

採用が進む業界の動向は、航空宇宙・造船や自動車・輸送機器、化学・樹脂・ゴムの業種ページから関連記事もあわせてご覧ください。

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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