プラスチックのケミカルリサイクルとは?マテリアルとの違いと実用化の壁

粉砕された色とりどりの廃プラスチック片と再生樹脂ペレット

使用済みのプラスチックを溶かして別の製品に成形し直す方法を、マテリアルリサイクルといいます。これに対し、化学的に分解して油やガス、原料の分子まで戻す方法が、ケミカルリサイクルです。

分子まで戻すため、汚れや色、混ざった樹脂の影響を受けにくい一方、分解のためのエネルギーや設備は大がかりになります。日本で出る廃プラスチックのうち、ケミカルリサイクルに回っている量はまだ3%ほどにとどまります。

この記事では、ケミカルリサイクルとは何かを、数字と実際の設備を交えて整理します。マテリアルリサイクルとの違い、5つの方式、日本での使われ方、実用化の壁、両者の使い分けという順で見ていきます。

目次

プラスチックのケミカルリサイクルとは

倉庫に積み上げられた使用済みプラスチック容器包装の圧縮ベール

ケミカルリサイクルとは、使用済みプラスチックを化学的に分解し、化学製品の原料として再利用する方法です。

分解して得られるのは、プラスチックの元になる分子(モノマー)、石油に近い油、水素や一酸化炭素を含むガスなどで、これらを化学メーカーや製鉄所の工程に戻します。

プラスチックは、エチレンやテレフタル酸といった小さな分子が鎖のように長くつながった物質です。樹脂を含む材料の分類で見ると、同じ「プラスチック」でも分子の種類によって性質が大きく違います。

この鎖をいったん切って、つなぎ直す前の段階まで戻すのがケミカルリサイクルの考え方です。

日本では、プラスチックの再資源化の方法を大きく3つに分けて整理するのが一般的です。

  • マテリアルリサイクル(溶かして樹脂や製品として再利用する)
  • ケミカルリサイクル(化学的に分解して原料として再利用する)
  • サーマルリサイクル(燃やして熱や電気として回収する。エネルギー回収とも呼ぶ)

図1:廃プラスチックがどこまで戻るか

3つの方法の違いは、廃プラを「どの段階まで戻すか」にあります。

使用済みプラスチック容器包装、製品くず、成形ロス、フィルムなど
回収・選別
マテリアル樹脂のまま溶かし、ペレットや成形品に戻す
ケミカル分子を切り、モノマー・油・ガス・還元剤に戻す
サーマル燃やして熱・電気として回収する
行き先
成形工程再生樹脂、パレット、建材など
化学・製鉄の工程重合、ナフサクラッカー、アンモニア合成、高炉・コークス炉
ボイラ・発電ごみ発電、固形燃料

※国際的にはサーマルリサイクルを「リサイクル」に数えないことが多く、日本の「有効利用率」とは数え方が異なります。

3つの中で、ケミカルリサイクルはいちばん深いところまで分解して戻す方法です。深く戻すほど元の汚れや色、混ざった樹脂の影響を受けにくくなる反面、分解のためのエネルギーや設備が大がかりになります。

なお、日本で「有効利用」に数えられているサーマルリサイクルは、欧州などでは「リサイクル」に含めず、エネルギー回収として区別するのが一般的です。

海外の取引先や規制と話すときは、「日本の有効利用率が高い」ことがそのまま「リサイクル率が高い」ことを意味しない点に注意が必要です。

日本の廃プラはどこへ行っているか

プラスチック循環利用協会が2025年12月に公表したマテリアルフロー図によると、2024年の廃プラスチック総排出量は911万tでした。内訳は家庭などから出る一般系が395万t、工場などから出る産業系が516万tです。

このうち有効利用されたのは89%ですが、その大半は燃やして熱や電気を回収するサーマルリサイクルで、67%を占めます。マテリアルリサイクルは20%、ケミカルリサイクルはわずか3%です。

図2:2024年の廃プラスチック911万tの行き先

ケミカルリサイクルは全体の3%。量の上ではまだ小さな存在です。

サーマルリサイクル発電・熱利用・固形燃料
67%
マテリアルリサイクル約180万t(輸出110万tを含む)
20%
ケミカルリサイクル高炉・コークス炉・ガス化など
3%
単純焼却69万t
8%
埋立32万t
4%

※出典:プラスチック循環利用協会「プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況(2024年)」。端数処理のため合計は100%になりません。

マテリアルリサイクルに数えられる約180万tにも、プラくずや再生原料として輸出された110万t(マテリアルリサイクル量の約6割)が含まれています。国内で実際に樹脂や化学原料へ戻っている量は、見た目の数字よりさらに少なくなります。

マテリアルリサイクルとの違い

ケミカルリサイクルとマテリアルリサイクルは、どちらも廃プラスチックを「材料」として再び使う点では同じです。違うのは、戻る段階と、受け入れられる廃プラの幅、そして得られる再生材の品質です。まず全体を表で比べます。

図3:マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの比較

品質と受け入れ幅ではケミカル、手軽さとコストではマテリアルに分があります。

マテリアルリサイクル
ケミカルリサイクル
戻る段階
樹脂のまま(フレーク・ペレット・成形品)
モノマー・油・ガス・還元剤など分子レベル
向いている廃プラ
単一素材で汚れの少ないもの。工場の端材、PETボトルなど
複数樹脂の混合品、汚れの軽いもの。方式によっては塩素を含むものも
再生材の品質
熱履歴や異物で物性が落ちやすく、色も付きやすい
精製を経るため、石油由来とほぼ同等の原料になる
主な用途
再生樹脂、パレット、建材、日用品など
新しい樹脂・化学品の原料、アンモニア、製鉄の還元剤
設備とエネルギー
破砕・洗浄・押出が中心で比較的小規模
熱分解・ガス化などに大きな熱と大型設備が必要
担い手
中小のリサイクラーも多い
化学・石油・鉄鋼の大手とその関連会社が中心

※一般的な傾向を示したもので、方式・設備・原料の状態によって差があります。

戻る段階の違い

マテリアルリサイクルは、洗浄・破砕したプラスチックを溶かし、ペレット(粒状の樹脂)にして成形工場へ戻します。樹脂の分子そのものは変えずに、形だけを作り直す方法です。

一方のケミカルリサイクルは、分子の鎖を切ったうえで精製し、化学工場の上流に戻します。

戻す先は方式によって変わります。樹脂を重合する工程、ナフサ(粗製ガソリン)を分解してエチレンなどをつくるナフサクラッカー、製鉄所の高炉などです。

受け入れられる廃プラの違い

マテリアルリサイクルは、原料の質がそのまま製品の質に出ます。異なる樹脂が混ざると溶け方も強度もばらつくため、単一素材で汚れが少ない廃プラほど向いています。工場で出る成形ロスや、分別回収されたPETボトルが代表例です。

食品包装に多い多層フィルムのように、PEやナイロンなど複数の樹脂を貼り合わせた素材は、物理的に分けるのがほぼ不可能です。

こうした素材も、分解して油やガスにしてしまえば原料として使えるため、マテリアルリサイクルで拾えない廃プラの受け皿になるのがケミカルリサイクルの役割です。

品質とコストのトレードオフ

マテリアルリサイクルでは、溶かすたびに熱で分子が傷み、繰り返すほど物性が落ちていきます。色や臭いが残ることもあり、食品容器や外観部品など品質要求の高い用途には使いにくいのが実情です。

ケミカルリサイクルは精製工程を通すため、新品とほぼ同じ品質の原料が得られます。その代わり、分解と精製に手間とエネルギーがかかります。

NEDOのプロジェクト評価資料では、2030年の経済効果を試算する際の再生原料の単価を置いています。その値はマテリアルリサイクルで120円/kg、ケミカルリサイクルで62.1円/kgです。

原料として売れる価格は、手間のかからないマテリアルリサイクルのほうが高いという前提です。

ケミカルリサイクルの5つの方式

廃プラスチックの熱分解で得た油のサンプル瓶を持つ手元

ひとくちにケミカルリサイクルといっても、分解の方法と戻す先によっていくつかの方式に分かれます。プラスチック循環利用協会は、国内で使われている技術を次の5つに整理しています。

図4:ケミカルリサイクルの5つの方式

得られるものと戻す先で、化学原料型と製鉄利用型に分かれます。

原料・モノマー化
化学原料樹脂を元の分子(モノマー)まで分解し、再び重合する。PETボトルからPET樹脂を再生する例が代表的
油化
化学原料熱や触媒で分解して炭化水素油にする。製油所やナフサクラッカーで原油・ナフサの代わりに使う
ガス化
化学原料高温で水素と一酸化炭素が主成分のガスにする。アンモニアなど化学品の原料に使う
高炉原料化
製鉄利用粒状にした廃プラを高炉に吹き込み、鉄鉱石から酸素を奪う還元剤としてコークスの代わりに使う
コークス炉化学原料化
製鉄利用石炭と一緒にコークス炉で熱分解し、炭化水素油・コークス・炉ガスとして利用する
共通の前処理
どの方式も異物除去・破砕に加え、方式によって脱塩素や塩ビ(PVC)の除去が必要になる

※分類はプラスチック循環利用協会の整理に、容器包装リサイクル協会の手法定義を合わせたものです。

原料・モノマー化

原料・モノマー化は、樹脂を元の分子まで分解し、精製してから再び重合する方法です。元の樹脂とほぼ同じものに戻せるため、ボトルからボトルへといった水平リサイクルに向いています。

代表例が、川崎市にあるペットリファインテクノロジー(JEPLANグループ)のPETボトル再生工場です。

PETフレークをエチレングリコールで溶かしてBHETという中間物質まで分解し、脱色やイオン交換で不純物を除いたうえで重合し直します。再生PET樹脂の製造能力は最大で年2万2,000tとされています。

ただしこの方法が成り立つのは、PETのように分解しやすく、回収ルートが整った樹脂に限られます。

PETボトルは2024年度のリサイクル率が85.1%、ボトルからボトルへ戻す比率が37.7%まで上がっていますが、多くの樹脂ではここまで条件がそろっていません。

油化

油化は、廃プラを熱や触媒で分解して、石油に近い炭化水素油にする方法です。得られた油は製油所の精製装置やナフサクラッカーに入れられ、エチレンやプロピレンを経て再び樹脂になります。

ナフサから最終製品までつながる化学業界のサプライチェーンの、いちばん上流に戻すイメージです。

ポリエチレンやポリプロピレンなど、容器包装に多い樹脂を混ざったまま扱えるのが強みです。一方で、塩ビのように塩素を含む樹脂が混ざると、分解時に塩化水素が出て装置を傷めるため、脱塩素の工程や原料の選別が欠かせません。

ガス化

ガス化は、廃プラを高温で分解し、水素と一酸化炭素を主成分とするガス(合成ガス)にする方法です。油化よりもさらに小さな分子まで分解するため、原料の選り好みが少ないのが特徴です。

国内で長い実績を持つのが、レゾナックが川崎事業所で2003年から続けている「KPR」です。使用済みプラスチックをガス化して水素を取り出し、アンモニアの原料にしています。

同社は塩素を含むプラスチックでも分別せずにリサイクルできる点を強みに挙げており、使用済みプラスチックの処理量は年間約7万tです。

取り出したCO2も、ドライアイスや液化炭酸ガスとして利用されています。

高炉原料化・コークス炉化学原料化

残る2つは、製鉄所の設備を使う方法です。高炉原料化は、鉄鉱石から酸素を取り除くための還元剤として、コークスの一部を廃プラで置き換えます。コークス炉化学原料化は、石炭と一緒に廃プラを蒸し焼きにし、炭化水素油、コークス、炉ガスとして使います。

製鉄所の既存設備と大量処理の仕組みを使えるため、日本の容器包装リサイクルでは長くケミカルリサイクルの主力となってきました。

ただし高炉そのものは、水素還元製鉄や電炉への転換が進むと役割が変わっていく設備であり、長期的には受け皿の変化も考えておく必要があります。

日本ではどの方式が使われているか

家庭から出るプラスチック製容器包装は、容器包装リサイクル法(容リ法)に基づいて市町村が集め、日本容器包装リサイクル協会を通じて再商品化されます。このルートの手法別の実績を見ると、日本のケミカルリサイクルの実像がよく分かります。

図5:容リ法ルートのプラスチック再商品化の手法別内訳(2025年度)

ケミカルリサイクルの中心は製鉄所の設備。油化の実績は0tです。

材料リサイクル233,814t
64.7%
コークス炉化学原料化71,686t
19.8%
ガス化44,144t
12.2%
高炉還元剤化11,787t
3.3%
油化0t
0%

※出典:日本容器包装リサイクル協会「数字で見るリサイクルのゆくえ プラスチック製容器包装」(令和7年度、合計361,430t)。容リ法ルート以外で処理される廃プラは含みません。

2025年度の販売実績36万1,430tのうち、材料リサイクルが64.7%、ケミカルリサイクルが残りの約35%でした。

ケミカルの内訳はコークス炉化学原料化が19.8%、ガス化が12.2%、高炉還元剤化が3.3%で、油化は3年度続けて0tです。

2023年度の同じ統計では、コークス炉化学原料化が44.9%と材料リサイクルの42.1%を上回っていました。

ただし協会の注記によると、2023・2024年度の実績には製品プラスチックも含まれており、2025年度とは集計の範囲が異なります。

そのため、この比率の変化をそのまま手法の入れ替わりの傾向と読むことはできず、年度をまたいだ比較には注意が必要です。

動き出した油化の商業設備

容リ法ルートでの油化の実績は0tですが、化学・石油の大手による油化設備は2025年以降に相次いで完成しています。いずれも生成油を自社グループの製油所やナフサクラッカーに入れ、化学品の原料として使うモデルです。

図6:国内の主なケミカルリサイクル設備

製鉄所型に加え、化学原料に戻す設備が商業運転の段階に入りつつあります。

事業者・拠点
方式
処理能力
ポイント
レゾナック
川崎事業所(KPR)
ガス化
年約7万t
2003年から稼働。水素をアンモニア原料に、CO2はドライアイス等に
三菱ケミカル・ENEOS
茨城事業所(神栖市)
油化(超臨界水)
年2万t
2025年7月竣工。生成油を石油精製装置とナフサクラッカーで使用
ケミカルリサイクル・ジャパン(出光興産子会社)
市原事業所
油化(触媒による接触分解)
年2万t
2026年4月27日に商業運転開始。軽質原油相当のCR油を生産
ペットリファインテクノロジー
川崎市
モノマー化(PET)
再生樹脂 最大年2.2万t
PETボトルをBHETまで分解し、再びボトル用樹脂に

※処理能力・時期は各社の公表資料に基づきます。三菱ケミカル・ENEOSの時期は竣工式(2025年7月2日)の時点です。

三菱ケミカルとENEOSの設備は、英国Mura Technology社の技術を使い、高温・高圧の水(超臨界水)の中でプラスチックを分解します。

廃プラの回収・調達はリファインバースグループが担い、生成油はENEOSの石油精製装置と三菱ケミカルのナフサクラッカーで原料として使われます。

出光興産の子会社ケミカルリサイクル・ジャパンの市原事業所は、触媒を使った接触分解で軽質原油に相当する「CR油」をつくります。

2026年3月には国際的な認証制度ISCC PLUSの認証と、千葉県の産業廃棄物処分業の許可を取得しました。処理能力はどちらも年2万tで、国内の廃プラ排出量911万tから見ればまだ小さな規模です。

ケミカルリサイクルの実用化の壁

選別ラインのコンベヤで廃プラスチックから異物を取り除く作業員

技術としては確立していても、ケミカルリサイクルが廃プラの3%にとどまっているのには理由があります。事業として回すうえでの壁は、大きく5つに整理できます。

図7:ケミカルリサイクルの5つの壁

技術よりも、原料・コスト・説明責任といった事業面の壁が大きいのが実情です。

① 原料を安定して集める廃プラは各地に薄く散らばる。数万t規模の設備を回すには、自治体や企業からの継続的な集荷網が要る
② 不純物への対応塩ビ由来の塩素、金属、石灰などの無機物が装置の腐食や触媒の失活を招く。選別と前処理の負担が大きい
③ エネルギーとCO2分解に大きな熱が必要。環境への効果はLCA(製品の一生を通じた評価)で確かめる必要がある
④ ナフサとのコスト競争再生原料は新品のナフサや原油と価格で比べられる。集荷・前処理の費用を上乗せすると割高になりやすい
⑤ マスバランスの説明責任再生原料は石油由来と混ぜて使うため、製品の「再生材比率」を割り当てで示す。表示の根拠が問われる
共通する背景国内の廃プラの多くはすでに発電・熱利用に回っており、ケミカル向けに原料を振り向ける仕組みづくりが必要

原料を安定して集める

化学プラントは、同じ品質の原料が同じ量だけ毎日届くことを前提に設計されています。ところが廃プラは、家庭や工場から少しずつ、しかも季節や地域で中身を変えながら出てきます。

三菱ケミカルも、廃プラスチックを安定的に収集する仕組みづくりが重要だとしており、回収・調達を専門の会社と組んで担う形をとっています。

しかも国内の廃プラの67%は、すでにごみ発電などのサーマルリサイクルに使われています。新しくケミカルリサイクルを始めるには、既存の焼却・発電ルートから原料を振り向けてもらう必要があり、集荷網づくりは技術開発と同じくらい重い課題です。

塩素や無機物などの不純物

油化では、塩ビから出る塩素が装置を腐食させるため、脱塩素や塩ビの除去が必要です。触媒を使う方式では、さらに別の問題もあります。

NEDOのプロジェクトでは、廃プラに含まれる石灰などが強い触媒毒になることが分かり、目標の転換率70%を達成できる廃プラの種類に制約が出たと報告されています。

ガス化のように塩素を含む廃プラも受け入れられる方式もありますが、その分、ガスの洗浄や精製の設備が大がかりになります。どの方式でも、「何が混ざっているか」を前工程でどこまで管理できるかが歩留まりと設備の寿命を左右します。

分解に使うエネルギーとCO2

プラスチックの分子を切るには、数百℃以上の熱や高圧が必要です。三菱ケミカルも油化の課題として、熱分解を起こすための消費エネルギーが大きいことを挙げています。

燃やすよりCO2が減るかどうかは、集荷の輸送から分解、精製までを含めて評価しないと分かりません。

取引先から再生材の環境効果を問われたときは、どこからどこまでの排出を比べているのかを確認することが大切です。考え方は製品のカーボンフットプリント(CFP)算定と同じです。

なお、レゾナックはKPRでつくるアンモニアについて、バージンナフサ由来と比べて温室効果ガスを約80%削減できると公表しています。

ナフサとのコスト競争

油化でつくった油は、ナフサや原油の代わりとして使われます。つまり再生原料の価格は、市況で動く新品の石油原料と比べられます。集荷、選別、前処理、分解の費用を積み上げると、平時の原油価格では割高になりやすいのが現実です。

一方で2026年は、中東情勢を背景にナフサの調達不安が意識されました。日本経済新聞は2026年7月、廃プラを水素やナフサなどの化学原料に再生する動きに中東危機が追い風になりうると報じています。

国内で集められる「都市の資源」としての価値が、コスト以外の判断材料として見直されつつあります。

マスバランス方式の説明責任

ケミカルリサイクルでつくった油やガスは、既存のプラントの中で石油由来の原料と混ざります。そのため製品のどの粒が再生由来なのかを物理的に区別できません。

そこで使われるのが、投入した再生原料の量に応じて、製品の一部に「再生材」の特性を割り当てるマスバランス方式です。

環境省は2024年9月に、マスバランス方式の活用に関する基本的な考え方を公表しました。そこでは、次の3要素を満たすことが必要とされています。

  • 環境効果の把握
  • 環境価値の適正な管理
  • 適切な表示・コミュニケーション

ISCC PLUSのような第三者認証を取得するのはこのためで、買う側も「再生材○%」の表示がどの方式に基づくのかを確かめる必要があります。

マテリアルとケミカルをどう使い分けるか

ここまで見てきたように、マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルはどちらが優れているというより、廃プラの状態によって向く方法が違うと考えるのが実務的です。NEDOのプロジェクトも、廃プラをその汚れ具合で振り分ける考え方で目標を立てています。

図8:廃プラの状態で考える使い分け

価値を残せる順に、マテリアル→ケミカル→エネルギー回収と振り分けます。

廃プラの状態
A汚れがほとんどない単一素材の端材、分別回収したボトル、PE・PP・PSなど
B汚れが軽い・混ざっている複合フィルム、複数樹脂の混合品、軽い付着物がある容器包装
C汚れがひどい異物や食品残さが多く、洗浄しても品質が出ないもの
向く方法
A →マテリアルリサイクル樹脂のまま戻す。手間が少なく、原料としての値もつきやすい
B →ケミカルリサイクル分解・精製で新品同等の原料へ。マテリアルで拾えない分の受け皿
C →エネルギー回収高効率な発電・熱利用で、燃やす価値を最大化する

※NEDO「革新的プラスチック資源循環プロセス技術開発」終了時評価資料(2025年10月)の考え方をもとに作成。同資料は2030年度に、未利用の廃プラのうちマテリアル86万t、ケミカル87万t、エネルギー回収108万tを処理する目標を掲げています。

メーカーから見た判断の軸

再生材を使う側のメーカーから見ると、判断の軸は主に3つです。1つ目は用途に求められる品質で、外観や食品衛生、強度の要求が厳しい部品ほどケミカルリサイクル由来の原料が候補になります。

パレットや建材のように品質要求が比較的緩い用途なら、マテリアルリサイクルの再生材で十分なことが多くあります。

2つ目は必要な量と調達の安定性です。マテリアルリサイクルの再生材はロットごとに色や物性がばらつきやすく、量産品では受け入れ検査の負担が増えます。

3つ目は表示の方法で、マスバランス方式による割り当てを、自社の顧客や規制が再生材として認めるかを事前に確かめておく必要があります。

制度が後押しする再生材の需要

使い分けの議論が現実味を帯びているのは、再生材の利用を求める制度が動き出したからです。

改正資源有効利用促進法は2025年5月に成立し、6月に公布され、2026年4月1日に施行されました。この法律は、プラスチック製容器包装、家電4品目、自動車のメーカーや輸入事業者に再生プラスチックの利用を求めています。

一定規模以上の事業者は、再生プラの利用に関する計画の提出と、その実施状況の毎年度の報告が求められます。規模の基準は施行令で定められており、生産量または輸入販売量で次のとおりです。

  • プラスチック製容器包装:年1万t以上
  • 自動車:年1万台以上
  • 家電4品目:年5万台以上

海外でもEUが2025年12月に、廃自動車(ELV)規則で政治合意しました。新車に使うプラスチックの再生材比率を施行6年以内に15%、10年以内に25%とする方向です。

求められる再生材の量が増えれば、マテリアルリサイクルだけでは品質面でも量の面でも足りなくなる場面が出てきます。ケミカルリサイクルは、その不足分を埋める手段として位置づけられつつあると言えます。

まとめ

この記事のまとめ
  • ケミカルリサイクルは、廃プラを化学的に分解してモノマー・油・ガスなどの原料に戻す方法
  • マテリアルリサイクルより品質と受け入れ幅で有利な一方、エネルギーと設備の負担が大きい
  • 方式は原料・モノマー化、油化、ガス化、高炉原料化、コークス炉化学原料化の5つ
  • 2024年の国内廃プラのうちケミカルリサイクルは3%。油化の商業設備はようやく動き出した段階
  • 原料の集荷、不純物、エネルギー、コスト、マスバランスの説明責任が実用化の壁になっている

ケミカルリサイクルは、マテリアルリサイクルの代わりではなく、拾いきれない廃プラを原料に戻すための補完の手段です。

背景にある排出削減の考え方は脱炭素・カーボンニュートラルの基本で、石油化学の設備集約を含む業界の動きは化学業界の市場規模と動向であわせて整理しています。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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