協働ロボットの導入手順|リスクアセスメントから立ち上げまで6ステップ

作業台の端に設置した協働ロボットと、同じ台で作業する作業者

協働ロボットは、安全柵で人と隔てずに、人と同じ作業空間で使うことを前提に設計されたロボットです。柵なしで使えるかどうかは、本体の性能に加えて、使い方で決まります。

ここでいう使い方には、ハンド(先端でつかむ部分)や扱うワーク(作業の対象物)、周りの設備、人の動き方まで含まれます。その使い方ごとにリスクを評価し、法令と規格の条件を満たして初めて、柵のない運用が認められます。

この記事では、協働ロボットの導入を任された方に向けて、導入の進め方を6つのステップで整理します。

扱うのは、最初に押さえる法令上の前提、工程の選び方、リスクアセスメント、ISO 10218 などの規格への適合、SIer選定から立ち上げまでです。最後に、よくある失敗と対策をまとめます。

目次

協働ロボットの導入で最初に押さえる前提

工作機械の横に柵なしで設置され、床に区画表示がある協働ロボット

協働ロボットとは、安全柵で人と隔離せず、人と同じ作業空間で使うことを前提に設計されたロボットです。

人と接触したときに力を検知して止まる機能や、人が近づくと減速する機能を備えた機種が多く、組立や箱詰め、機械へのワークの出し入れなどで使われています。

国際ロボット連盟(IFR)によると、2023年に世界で設置された産業用ロボットのうち、協働ロボットは10.5%を占めました。

まだ少数派ですが、人手不足への対応策として、専用の設備を組むほどではない工程に検討されるケースが増えています。

ロボットそのものの構造や動く原理は産業用ロボットの仕組みで整理しているので、ここでは導入に必要なルールに絞って見ていきます。

80Wを境に法令上の扱いが変わる

日本の法令では、産業用ロボットの安全対策は労働安全衛生規則(安衛則)で定められています。このうち、駆動用原動機の定格出力が80W以下の機械は、産業用ロボットの規制の対象外とされています。これがいわゆる「80W規制」です。

一方、80Wを超えるロボットには安衛則第150条の4がかかります。運転中のロボットに接触して労働者に危険が生じるおそれがあるときは、さく又は囲いを設ける等の措置が必要になります。

協働ロボットとして販売されている機種でも、定格出力が80Wを超えればこの条文の対象です。

2013年の通達で柵なしの協働が明確になった

かつては、80Wを超えるロボットと人が柵なしで一緒に働けるのかがはっきりしていませんでした。そこで厚生労働省は2013年12月24日付の通達(基発1224第2号)で、協働作業が可能になる条件を明確にしました。

示された道は2つあり、どちらか一方を満たせば協働作業が可能です。1つは、事業者がリスクアセスメントに基づく措置を実施し、接触による危険のおそれが無くなったと評価できる場合。

もう1つは、国際規格ISO 10218-1/-2に従って設計・製造・設置され、技術ファイルと適合宣言書が作成されたロボットを、その使用条件どおりに使う場合です。

どちらのルートでも、評価や書類の裏付けが前提になっています。

「協働ロボットを買えば安全」ではない

見落とされやすいのが、協働ロボットの安全は本体だけで完結しないという点です。

JIS B 8433-1(ISO 10218-1の日本版)は、ロボットは最終的な協働ロボットシステムの構成品にすぎないとしています。ロボット単体では、安全な協働運転には十分でないと明記しています。

鋭利な部品をつかむハンドを付ければ、ロボットの力が弱くても切り傷のリスクが生まれます。

2025年に改訂されたISO 10218では、「協働ロボット」という言い方をやめました。「協働アプリケーション」として用途ごとに安全を確認する考え方が、よりはっきりしています。

導入の単位は「ロボット」ではなく「工程」だと捉えておくと、以降のステップが理解しやすくなります。

図1:柵で囲う運用と協働運用の違い

同じ80W超のロボットでも、協働で使うなら安全の裏付けを自社で持つ必要があります。

柵で囲う従来の運用
柵なしの協働運用
人との関係
ロボットの可動範囲に人は入らない
人とロボットが同じ空間で作業する
法令上の根拠
安衛則第150条の4の「さく又は囲い」で対応
リスクアセスメント、またはISO 10218準拠で危険のおそれを排除(2013年通達)
安全の決め手
柵・インターロック・光線式安全装置など
力・速度の制限、人の検知、ハンドや周辺設備の設計を含めた評価
レイアウト
柵を含めた専有面積が必要
作業台の横など省スペースで置ける。ただし配置を変えたら再評価
向く生産
高速・大量の繰り返し
人の作業と分け合う工程、多品種で段取りが変わる工程

※定格出力80W以下のロボットは産業用ロボットの規制対象外ですが、ハンドやワークによる危険は別途評価が必要です。

協働ロボット導入の6ステップ

協働ロボットの導入は、大きく「計画」「安全設計」「実装」の3段階、6つのステップで進みます。一般的な設備導入と違うのは、安全設計の段階がロボットの選定と並行して走ることです。

図2:協働ロボット導入の6ステップ

安全の検討は発注前に終わらせ、立ち上げ時に実機で確かめます。

計画
STEP 1工程を選ぶサイクルタイム、ワーク、人の動きを見て、協働に向く工程を絞る
STEP 2協働の形を決める人と何を分け合うか、4つの協働方式のどれで安全を確保するか
安全設計
STEP 3リスクアセスメント危険源の洗い出し、見積り、低減策の決定と記録
STEP 4法令・規格への適合確認安衛則第150条の4、ISO 10218、技術ファイルなどの書類
実装
STEP 5SIer選定・設計・発注安全の要求を仕様書に書き込み、責任分担を決めて発注
STEP 6据付・検証・立ち上げ実機で安全機能を確認し、教育と作業規程を整えて稼働

※ステップ3と4は行き来しながら進めます。設計が変わるたびに評価をやり直すのが基本です。

ステップ1〜2で「どこで、何のために、どう人と関わるか」を決め、ステップ3〜4でその使い方が安全であることを裏付けます。ステップ5〜6は、その結果を設備として形にし、現場に定着させる段階です。順に見ていきます。

ステップ1・2 工程を選び、協働の形を決める

協働ロボットのグリッパがトレーから小さな部品をつかむ様子

最初のステップは、協働ロボットに任せる工程を選ぶことです。ここでの判断を誤ると、後からどれだけ安全対策を積み上げても採算が合わない設備になりがちです。

協働ロボットに向く工程・向かない工程

協働ロボットは、人と接触しても大きな危害を与えないよう、速度や力を抑えて動かすのが基本です。そのため、高速で大量に繰り返す工程では、柵で囲う従来型のロボットの方が向いていることが少なくありません。

反対に、工程の一部だけを自動化したい、段取り替えが多い、設置スペースが限られる、といった条件では協働ロボットの良さが出ます。

人の作業を丸ごと置き換えるより、ワークの供給やねじ締めのような単純作業だけを切り出し、人には判断や微調整を残すという分担が現実的です。業界別の使われ方は省人化の用途と導入事例も参考になります。

図3:協働ロボットに向く工程と、慎重に検討したい工程

「速さ」より「人と分け合えるか」「置き場所が柔軟か」で見るのがコツです。

向く:機械へのワークの出し入れ工作機械や検査装置への投入・取り出し。人は段取りと品質確認に回れる
向く:ねじ締め・部品の挿入同じ動作の繰り返しで、人の隣の作業台で完結しやすい
向く:箱詰め・パレタイズ(軽量品)重量や高さが限られる範囲なら、腰への負担が大きい作業を任せられる
向く:多品種・少量の工程ハンドの交換やプログラムの切り替えで、品種ごとに使い回せる
慎重に:刃物・高温物・重量物ロボットの力が小さくても、ワークやハンドそのものが危険源になる
慎重に:高速・大量生産速度を落とすとタクトが合わず、柵で囲う方が合理的な場合がある

※向き不向きは目安です。最終的にはステップ3のリスクアセスメントの結果で判断します。

工程を選ぶときは、現状のサイクルタイム、ワークの重さ・形状・ばらつき、作業者の動線をあらかじめ測っておきます。

これらはSIerに見積りを依頼するときにも必ず聞かれる情報で、数字がそろっているほど検討が早く進みます。見積依頼から検収までのSIerの選び方はロボットSIerの選び方で詳しく解説しています。

4つの協働方式から安全の取り方を選ぶ

工程が決まったら、人とロボットがどう関わるかを決めます。JIS B 8433-1(ISO 10218-1:2011)は、協働運転の方式として4つを挙げています。どの方式を採るかで、必要なセンサーや安全機能、ロボットの選び方が変わります。

図4:協働運転の4つの方式

「接触させない」方式と「接触しても危害を与えない」方式に分かれます。

安全適合監視停止
接触させない人が協働作業空間に入るとロボットが止まり、その停止状態を安全機能で監視する。人がワークを置いて出た後に再開する使い方
ハンドガイド
接触させない人がロボットの先端近くの装置を持って直接動かす。非常停止とイネーブル装置を備え、速度は安全機能で監視する
速度と間隔の監視
距離で制御センサーで人との距離を測り、近づくほど減速し、決めた間隔を保てなければ保護停止する
動力と力の制限
接触を許容接触したときの力や圧力を設計または制御で制限し、制限値を超えたら保護停止する。一般にイメージされる「協働ロボット」

※名称はJIS B 8433-1:2015の用語を短くしたものです。1つの工程で複数の方式を組み合わせることもあります。

人の隣で柵なしに動かす場合、多くは「動力と力の制限」を中心に考えます。ただし力の制限だけに頼ると、人の頭や首の高さで動く経路、周りの設備との間にはさまれる位置などで評価が厳しくなります。

接触させない方式と組み合わせると、ロボットの速度を上げやすくなる場合もあります。

ステップ3 リスクアセスメントで安全方策を決める

作業場のレイアウト図を囲んで検討する手元を真上から見た様子

協働運用の成否を分けるのがリスクアセスメントです。協働ロボットのリスクアセスメントでも、危険の芽を洗い出し、その大きさを見積もり、優先順位に沿って減らしていきます。

この手順は、労働安全衛生法第28条の2に基づく一般的なリスクアセスメントの進め方と共通しています。

協働ロボットで違うのは、機械向けの指針への留意が求められている点です。2013年の通達にあわせて出された留意事項の通知(基安安発1224第1号)が、「機械の包括的な安全基準に関する指針」に留意するよう求めています。

機械に特有の危険の洗い出し方と、低減策の優先順位が決められているので、これに沿って進めます。

危険源を洗い出す範囲

通常運転中だけを見て終わりにしないことが大切です。指針では、事業者が危険性を洗い出す場面として、次のような作業を挙げています。

  • 意図した使い方での作業(段取り、教示、運転、掃除、保守点検を含む)
  • 運搬、設置、試運転など使用開始時の作業
  • 解体、廃棄など使用停止時の作業
  • 故障や異常が起きている状況での作業
  • 合理的に予見できる誤使用(近道行動など)
  • ロボットを使う作業者以外の人が近づくこと

協働ロボットでは、通路を歩く別の作業者や、ワークの補充に来るフォークリフトの運転者も対象になります。手順書どおりに動く人だけでなく、急いでいるときに人がとりそうな行動まで想定しておくのがポイントです。

工程の故障モードから影響を洗い出すFMEAの手順を使うと、異常時の作業を漏れなく拾いやすくなります。

見積りで特に見る3つの点

2013年の通達は、リスクの見積りで特に留意する点として次の3つを挙げています。

  • ロボットのアームなどが持つ力と運動エネルギー
  • アームと周辺の構造物との間に人が拘束される可能性
  • アームの形状や作業の状況(突起が眼に当たるおそれ、鋭利な部分、関節の間のはさまれなど)

2つ目については、アームと周辺構造物との最接近距離を500mm以上とする場合が、この観点で危険のおそれがないと判断できる一例とされています。はさまれたときに、駆動用の動力なしで人の力で外せる場合も同様です。

作業台の端や柱の近くにロボットを置くと、この拘束の評価が厳しくなりやすいため、レイアウトの段階から意識しておきます。

見積りでは、最も起こりやすいけがの程度で評価するのが基本ですが、起こる可能性が低くても、予見される最も重いけがにも配慮するよう指針は求めています。「ぶつかっても止まるから大丈夫」ではなく、止まるまでの間に何が起こるかを考えます。

低減策は優先順位に沿って選ぶ

見積もったリスクが許容できない場合は、低減策を検討します。このとき、使いやすい対策から選ぶのではなく、指針が定める優先順位に沿って検討します。

図5:リスク低減策の優先順位

上の段で減らしきれなかったリスクだけを、下の段で補います。

1. 本質的安全設計方策ガードに頼らず設計で危険をなくす。はさまれる隙間を広げる・狭くする、駆動力を小さくする、角を丸めたハンドにする、人が入らなくて済むよう供給を自動化する
残ったリスク
2. 安全防護・付加保護方策エリアセンサーやレーザースキャナによる減速・停止、非常停止の配置など
残ったリスク
3. 作業手順の整備・教育残留リスクを作業者に伝える。立入り方、再起動の手順、禁止事項を決める
それでも必要なら
4. 個人用保護具保護メガネや手袋など。最後の手段として使う

※厚生労働省「機械の包括的な安全基準に関する指針」の事業者の実施事項をもとに作成。対策が新たな危険を生んでいないかも確認します。

協働ロボットでは、1段目の本質的安全設計でできることが意外に多くあります。

ロボットの経路を人の頭の高さから外す、ワークを持つ向きを変えて突起を人側に向けない、といった工夫は費用をほとんどかけずに効きます。センサーを足す前に、配置と動きで減らせないかを先に考えるのが順序です。

結果は記録し、変更のたびに見直す

評価の結果、実施した低減策、残ったリスクは記録し、ロボットメーカーから受け取った取扱説明書などの使用上の情報とあわせて保管します。

通達も、リスクアセスメントの評価結果を「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」に基づいて記録・保管するよう求めています。

この記録は、柵なしで運用している根拠そのものです。ハンドの交換、ワークの変更、ロボットの移設など、評価の前提が変わったときは必ず見直すルールを、最初から社内で決めておきます。

ステップ4 法令と規格への適合を確認する

リスクアセスメントと並行して、柵なしで運用する法的な根拠をどちらのルートで持つかを確認します。前述のとおり、2013年の通達は協働作業を認める道を2つ示しており、どちらか一方を満たせば足ります。

協働が認められる2つのルート

図6:安衛則第150条の4で柵なしの協働が認められる2つのルート

どちらを選んでも、書類で説明できる状態にしておくことが前提です。

リスクアセスメントのルート
ISO規格準拠のルート
要件
リスクアセスメントに基づく措置で、接触による危険のおそれが無くなったと評価できる
ISO 10218-1/-2に従って設計・製造・設置されたロボットを、その使用条件どおりに使う
主に動く人
ロボットを使う事業者(ユーザー)
設計者・製造者・設置者(設置の安全条件に責任を持つ者)
残す書類
リスクアセスメントの評価結果の記録
技術ファイルと適合宣言書
注意点
評価の方法と根拠を自社で説明できる必要がある
「設置者」が誰かを契約で明確にしないと、書類の責任があいまいになる

※厚生労働省のパンフレット(2013年12月)をもとに作成。「設置者」は事業者、設置業者、製造者などのうち設置の安全条件に責任を持つ者を指します。

実務では、ロボットメーカーが本体についてISO 10218-1への適合を示し、SIerがシステムとしての設計と評価を行います。そのうえでユーザーが最終的な使い方を確認する、という分担になることが多いでしょう。

どのルートでも、ユーザー側が「何を根拠に柵なしで動かしているか」を答えられる状態にしておく必要があります。

ISO 10218は2025年に改訂された

ロボットの安全規格ISO 10218-1(ロボット本体)とISO 10218-2(ロボットの応用とセル)は、2025年2月に改訂版が発行されました。

2011年版からの大きな改訂で、協働ロボットの詳しい要求をまとめていた技術仕様書ISO/TS 15066の内容は、ISO 10218-2に取り込まれています。

主な変更点は次の4つです。

  • 先に触れた「協働アプリケーション」という用語への変更
  • 危険の小さいロボットを区別するクラス分け(Class 1/Class 2)
  • 安全機能ごとに求める性能レベルを決める考え方への変更
  • サイバーセキュリティや手動の投入ステーションに関する要求の追加

一方、国内のJIS B 8433-1/-2は、2011年版のISOに対応した2015年版が現行です。ISO/TS 15066に対応していた日本の標準仕様書TS B 0033:2017は、有効期限切れにより2025年3月に廃止されています。

2013年の通達もISO 10218の2011年版を前提に書かれています。新旧どちらの版に基づいて評価したのかを、書類に明記しておくと後の説明がぶれません。

技術ファイルと適合宣言書を求める

ISO準拠のルートで重要になるのが技術ファイルと適合宣言書です。厚生労働省のパンフレットでは、技術ファイルに含める内容として、次のようなものを挙げています。

  • 機械の全体図と制御回路図
  • 詳細図面や計算書・試験結果
  • リスクアセスメントの手順と残留リスクを示す文書
  • 使用した規格
  • 取扱説明書の写し

適合宣言書は、製造者などが、その機械が安全規格の関連規定をすべて満たしていると宣言する文書です。

見積りの段階で、どこまでの書類を誰が作成して納めるのかをSIerに確認しておかないと、立ち上げ直前に「本体の書類しかない」という事態になりかねません。

ステップ5・6 SIer選定から据付・立ち上げまで

立ち上げ時に協働ロボットの接触時の力を測定する技術者

安全の要件が固まったら、設備として形にしていきます。協働ロボットは教示がしやすく、自社で立ち上げる企業もあります。ただ、ハンドの設計や安全の評価まで含めると、SIer(ロボットシステムインテグレータ)に依頼するケースが一般的です。

SIerの選び方と仕様書に書くこと

SIerを選ぶときは、ロボットのプログラム経験だけでなく、協働アプリケーションのリスクアセスメントや力の測定を自社で行った実績があるかを確認します。

経済産業省は、中小企業から導入相談を受ける支援機関向けに「中小企業支援機関のためのロボット導入支援の手引き」と「ロボット導入事前チェックリスト」を作成しており、SIerとの相談前に確認しておく項目を整理するのに使えます。

仕様書には、サイクルタイムや対象ワークに加えて、次の項目を書き込みます。

  • 採用する協働方式
  • 許容する接触の条件
  • 評価の基準にする規格の版
  • 納入する書類

機械の包括的な安全基準に関する指針も、安全に配慮した機械を選び、必要に応じて注文時の条件に含めるよう事業者に求めています。発注してから安全の話を始めるのでは、手戻りが大きくなります。

据付後に実機で確かめること

据付が終わったら、設計どおりの安全が実機で出ているかを確かめます。机上の評価と実機では、ケーブルの取り回しや治具の位置が少しずつ違うため、完成した状態で改めて確認することが欠かせません。

設備の据付から量産移行までの一般的な流れは生産技術の仕事の流れで紹介しているので、ここでは協働ロボットに特有の確認項目を挙げます。

図7:立ち上げ時に実機で確認する項目

評価の前提が実機で成り立っているかを、稼働前に1つずつ確かめます。

安全機能
CHECK 01非常停止・保護停止非常停止の位置と効き、センサー検知時に想定どおり止まるか
CHECK 02速度・力の設定値制限値が設計どおりに設定され、勝手に変更できない状態か
CHECK 03接触時の力の測定力を制限する方式では、接触しうる位置で測定し評価の前提と照合
レイアウト
CHECK 04はさまれ・拘束周辺設備との距離、はさまれたとき人力で外せるか
CHECK 05動線と表示協働作業空間の範囲を床表示などで示し、通路と交差しないか
CHECK 06ハンド・ワーク鋭利な部分、落下、把持ミス時の動きを確認
運用
CHECK 07作業規程教示や検査の手順、再起動の手順を文書にしたか
CHECK 08特別教育教示や検査を行う作業者が受講済みか
CHECK 09記録の保管評価結果・書類・設定値の控えを現場で参照できるか

※確認項目は一般的な例です。実際の項目はリスクアセスメントの結果に応じて決めます。

特別教育と作業規程を整える

柵なしで運用できても、教示や点検のルールがなくなるわけではありません。80Wを超える産業用ロボットの可動範囲内で教示等を行う業務や、運転中に可動範囲内で検査等を行う業務には、特別教育が必要です。根拠は安衛則第36条第31号・第32号です。

特別教育は学科と実技で構成されます。安全衛生特別教育規程では、実技として、教示等の業務は操作の方法1時間以上と教示等の作業の方法2時間以上を定めています。検査等の業務は、操作の方法1時間以上と検査等の作業の方法3時間以上です。

可動範囲内で動作の順序や位置を設定・変更する作業は「教示等」に含まれるため、アームを手で動かして教える機種でも特別教育の対象になり得る点に注意が必要です。

あわせて、教示等では操作の方法や手順を規程として定め、異常時にすぐ止められる措置と、起動スイッチなどに作業中である旨を表示する措置をとります(第150条の3)。

作業開始前の非常停止装置の点検(第151条)や、検査・修理時の運転停止と起動スイッチの施錠(第150条の5)も、協働運用で抜けやすい項目です。

協働ロボット導入でよくある失敗と対策

ここまでのステップを踏まえ、導入の現場で起こりがちな失敗を整理します。技術そのものより、検討の順番と責任分担のあいまいさから生まれるものが少なくありません。

図8:協働ロボット導入のよくある失敗と対策

いずれも、発注前の段階で手を打てば防げるものです。

よくある失敗対策
ロボットを先に買ってしまう工程に当てはめたら可搬重量やリーチが足りなかった
工程とワークの条件を先に決めるサイクルタイム、重さ、動線を測ってから機種を選ぶ
速度を落としすぎてタクトが合わない安全のために減速した結果、人より遅くなった
方式の組み合わせを検討する人がいないときは速く動かすなど、接触させない方式と併用する
書類の責任があいまい技術ファイルや評価記録を誰が作るか決めていなかった
見積り段階で納入書類を確定仕様書に書類の範囲と作成者を明記する
移設後に評価をやり直していないラインの組み替えで配置が変わり、はさまれの危険が生じた
変更管理のルールを決めるハンド・ワーク・配置が変わったら再評価する
現場が使わなくなる段取り替えや異常処置を誰もできず、止まったままになった
社内に担当者を育てる特別教育に加え、段取りと復旧の手順を立ち上げ時に引き継ぐ

※導入費用の一部は補助金の対象になる場合があります。申請には公募の要件確認が必要です。

見落とされやすいのが最後の「使われなくなる」失敗です。協働ロボットは段取り替えのしやすさが強みですが、それを生かせる人が現場にいなければ、ただの置物になってしまいます。

立ち上げの時点で、保全や段取りを担う社内の担当者を決めておくことが、導入効果を長く維持するための近道です。

まとめ

この記事のまとめ
  • 定格出力80W超のロボットは安衛則第150条の4の対象で、柵なしの協働には2013年通達の条件を満たす必要がある
  • 協働の安全はロボット本体ではなく、ハンドや配置を含めた「使い方」単位で確認する
  • 工程選定と協働方式の決定の後、リスクアセスメントで低減策を優先順位に沿って決める
  • ISO 10218は2025年に改訂されTS 15066を統合。国内のJISは2015年版が現行なので、準拠した版を明記する
  • 書類の範囲は発注前に決め、立ち上げ時に実機で安全を確かめ、特別教育と作業規程を整える

協働ロボットの導入は、設備を買う仕事というより、人とロボットの分担を設計する仕事です。導入を主導することが多い職種は生産技術、立ち上げ後の維持を担うのは設備保全です。

ロボット技術の全体像や関連する記事は、産業用ロボットの技術テーマページからあわせてご覧ください。

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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