製品のカーボンフットプリント算定の手順|取引先に応える7ステップ

部品トレーに並ぶ金属部品と出荷用の段ボール箱

製品のカーボンフットプリント(CFP)は、製品が原材料の調達から廃棄までに出す温室効果ガスを、CO2の量に換算して表したものです。取引先から「納入部品1個あたりのCO2排出量」を求められたときに答えるのが、この数字です。

算定の中心は、原材料や工程ごとに「使った量」と「排出係数(1単位あたりの排出量)」を掛けて足し合わせる作業です。必要なデータの多くはすでに社内の購買・生産・設備の記録にあります。

難しいのは計算そのものより、どこまでを範囲に含め、どのデータを使うかを決めて記録に残すことです。

この記事では、製品のカーボンフットプリント(CFP)の基本とScope3との関係を押さえます。そのうえで、経済産業省・環境省のガイドに沿った算定の7つのステップ、取引先から求められたときの確認事項、よくある失敗の順に整理します。

目次

製品のカーボンフットプリント(CFP)とは

カーボンフットプリント(Carbon Footprint of Products)は、CFPと略されます。CFPとは、製品のライフサイクル全体で出る温室効果ガスをCO2の量に換算して表したものです。ライフサイクルは、次の5段階に分けて考えます。

  1. 原材料調達
  2. 生産
  3. 流通・販売
  4. 使用・維持管理
  5. 廃棄・リサイクル

CO2以外のメタンや一酸化二窒素なども、地球温暖化係数(GWP:CO2の何倍温暖化に効くかを示す係数)を掛けてCO2の量にそろえます。

単位は「kg-CO2e(CO2換算のキログラム)」で、製品1個あたり、1kgあたりのように製品の単位ごとに示すのが特徴です。

計算の基本は単純で、製品のライフサイクルをプロセスに分解し、それぞれ「活動量×排出係数」を求めて合計します。活動量は原材料の重量や電力の使用量など、排出係数は活動量1単位あたりの排出量です。

足し算と掛け算の積み上げなので、表計算ソフトで十分に計算できます。

日本では経済産業省と環境省が2023年5月に「カーボンフットプリント ガイドライン」を公表しました。あわせて、実務向けの「CFP実践ガイド」を改訂しながら公開しています(最新は2026年3月版)。

ガイドラインは国際規格のISO 14067:2018と、GHGプロトコルの製品基準(Product Standard)に整合する形で作られています。

図1:CFPと組織の排出量(Scope1・2・3)の違い

同じ温室効果ガスの算定でも、CFPは「製品」、Scope1・2・3は「会社」を単位に数えます。

製品のCFP
組織の排出量(Scope1・2・3)
数える単位
1つの製品(1個、1kgなど)
会社や事業所の全体(通常は1年間)
表し方
kg-CO2e/個 など
t-CO2e/年 など
範囲
製品のライフサイクル。部品・素材は原材料調達から出荷までとすることが多い
自社の燃料使用(Scope1)、購入した電気・熱(Scope2)、それ以外のサプライチェーン(Scope3)
主な使い道
取引先への提供、製品の削減策の検討、製品への表示
有価証券報告書などでの開示、全社目標の管理
主なルール
ISO 14067、GHGプロトコル Product Standard、経産省・環境省 CFPガイドライン
GHGプロトコル Corporate Standard・Scope3 Standard

※取引先がScope3を計算するとき、サプライヤーの製品CFPが材料として使われます。

Scope3との関係

取引先がCFPを求める理由を理解するには、Scope3の仕組みを押さえておくと近道です。Scope3は自社以外のサプライチェーンで出る排出量で、15のカテゴリーに分かれます。

Scope1・2・3の全体像は脱炭素・カーボンニュートラルの基本で整理しています。算定でつまずきやすい点はScope1・2・3の違いでQ&A形式で解説しています。

このうち、購入した部品や素材がつくられるときの排出は「カテゴリー1(購入した製品・サービス)」に入ります。業種を問わず、Scope3の上流側で最も大きな排出源になることが多いカテゴリーです。

完成品メーカーはこのカテゴリー1を、調達金額や調達重量に業界平均の排出原単位を掛けて計算するのが主流でした。この方法では、部品メーカーが省エネや再エネ導入で排出を減らしても、完成品メーカーの数字には反映されません。

そこで、サプライヤーから製品ごとのCFP(原材料調達から出荷までの排出量)を受け取り、平均値の代わりに使う動きが広がっています。部品メーカーにとってCFPは、自社の削減努力を取引先の数字に届ける手段ともいえます。

図2:部品メーカーのCFPが取引先のScope3に入る流れ

上流から受け取ったCFPに自社工程の排出を足し、次の取引先へ渡していきます。

素材メーカー鋼材・樹脂などを製造。素材のCFPを部品メーカーへ提供
素材+素材のCFP
部品メーカー(自社)素材のCFP+自社の加工・輸送などの排出=部品のCFP(出荷まで)
部品+部品のCFP
完成品メーカー(取引先)受け取ったCFP×調達数量を、Scope3カテゴリー1として集計
業界平均の排出原単位で計算すると、サプライヤーが削減しても取引先の数字は変わらない。サプライヤー固有のCFP(1次データ)を使えば、その削減が反映される。

※Green x Digitalコンソーシアム「CO2可視化フレームワーク」の考え方をもとに作成。

取引先からCFPを求められる背景

部品工場の出荷場でパレットに積まれた段ボール箱とトラック

取引先からの要請が増えている大きな理由の一つが、上場企業のサステナビリティ情報開示の義務化です。

2026年2月に改正された開示府令により、有価証券報告書でのサステナビリティ情報の開示が義務づけられました。

対象は東京証券取引所プライム市場の上場企業で、時価総額の大きい企業から順に、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)の基準に沿って開示します。

適用開始は、時価総額3兆円以上の企業が2027年3月期、1兆円以上が2028年3月期です。

5,000億円以上の企業についても、2026年1月の金融審議会ワーキング・グループ報告で2029年3月期から適用する方針が示されています。

同報告では、第三者保証はそれぞれ適用の翌期から導入し、当初2年間の保証範囲をScope1・2、ガバナンス、リスク管理に限定するとしています。

SSBJ基準では、Scope3をカテゴリー別に分けて開示することが求められます。加えて、計算に使った活動量・排出係数・仮定や、1次データ(サプライヤーなどから直接得たデータ)をどの範囲で使ったかの開示も必要です。

開示する大企業にとって、主要な部品・素材の取引先固有のデータを集めることは、数字の精度と説明力を高める手段になります。

中小企業の側では、日本商工会議所が2025年4〜5月に実施した調査で、取引先から脱炭素に関する要請を受けている企業は21.3%でした。

そのうち取引先から支援を受けている企業は25.9%にとどまり、要請はあっても、進め方は自社で考えなければならない状況がうかがえます。

取引先がScope3の削減を求める流れ全体は、脱炭素が製造業で注目される背景でも解説しています。CFPの算定は、そうした要請に具体的な数字で応えるための手段です。

CFP算定の全体像|7つのステップ

経済産業省・環境省の「CFP実践ガイド」は、算定方針の検討(Step1)、算定範囲の設定(Step2)、CFPの算定(Step3)という流れで手順を整理しています。

この記事では部品・素材メーカーの実務に合わせ、これを7つのステップに分けて説明します。

図3:製品CFP算定の7ステップ

方針を決め、範囲とデータを固め、計算して報告する、の3段階で進めます。

方針を決める
STEP 01目的と提出先の要件を確認何のために算定するか。取引先の指定ルール・様式の有無
STEP 02対象製品と算定単位を決める最初は1〜数製品。1個あたり・1kgあたりなど。出荷までか廃棄までか
範囲とデータを固める
STEP 03ライフサイクルフロー図を書くモノと工程を洗い出し、算定範囲(バウンダリー)を決める
STEP 04活動量を集める材料重量、電力・燃料、梱包材、廃棄物、輸送距離など
STEP 05排出係数を選ぶ仕入先のCFP(1次データ)か、IDEAなどの2次データベース
計算して報告する
STEP 06配分・カットオフ・シナリオを決める共用設備の割り振り方や除外範囲を算定手順書に残す
STEP 07計算して報告書にまとめる算定シートで合計し、前提とあわせて取引先へ提供

※CFP実践ガイド(2026年3月、経済産業省・環境省)のStep1〜3を、実務の作業単位に分けて整理したものです。

ガイドが強調しているのは、最初から完璧を目指さず、粗い精度でも一度算定を終えることです。結果を見ると排出の大きいプロセスが分かり、どこを精緻にすべきかの優先順位が付けられます。

作る書類は、次の3つです。

  • ライフサイクルフロー図
  • 算定手順書
  • 算定ツール(表計算の算定シート)

いずれも社内用で公開する必要はありません。社外秘の情報も含めて具体的に書いておくと、担当者が替わっても同じ計算を再現でき、第三者検証を受けるときの資料にもなります。

Step1〜2 目的と対象製品を決める

Step1 目的と提出先の要件を確認する

最初に決めるのは、何のために算定するかです。ISOなどの国際ルールは具体的な算定方法までは定めていません。どこまで精度を上げるか、つまりどれだけ工数をかけるかは、目的に応じて算定する側が決めることになります。

取引先への提供が目的なら、提出先が指定する算定ルールや様式が、そのまま算定の前提条件になります。

対象期間、算定単位、範囲、使ってよいデータベースなどの指定があるかを確認してから進めると、後の手戻りを防げます。確認すべき項目は、後半の「取引先からCFPを求められたときの対応」でまとめます。

自社の削減や営業での訴求が目的なら、全社の脱炭素方針とそろえておくことが前提です。ガイドでは、成長の機会を得る「攻め」とリスクを減らす「守り」の両面から、CFPの使い道を考えるよう勧めています。

Step2 対象製品・算定単位・ライフサイクル段階を決める

対象製品は、最初は1〜数製品に絞ります。ガイドでは、総排出量が多い製品や看板製品といった「インパクトの大きさ」と、工程が単純で調達・生産管理のデータがそろっているといった「工数の少なさ」の両面で選ぶことを勧めています。

算定単位は、原則として製品の機能で定義しますが、部品や素材のような中間製品では「1個あたり」「1kgあたり」といった単位で構いません。取引先はCFPに調達数量を掛けて使うため、取引先の発注単位にそろえておくと扱いやすくなります。

ライフサイクル段階は、最終製品なら原材料調達から廃棄・リサイクルまで(Cradle to Grave:ゆりかごから墓場まで)が基本です。中間製品なら、原材料調達から出荷まで(Cradle to Gate:ゆりかごからゲートまで)となります。

部品の使われ方や捨てられ方は完成品によって変わるため、部品メーカーが自分で算定するのは出荷までとするのが一般的です。

図4:ライフサイクル段階と算定範囲

部品・素材などの中間製品は、原材料調達と生産の2段階(出荷まで)が基本です。

1. 原材料調達材料の製造、工場までの輸送
2. 生産加工・組立の電力や燃料、梱包、廃棄物
3. 流通・販売出荷後の輸送、倉庫での保管
4. 使用・維持管理使うときの電力や水
5. 廃棄・リサイクル回収の輸送、処理
Cradle to Gate(中間製品の基本)
Cradle to Grave(最終製品の基本)

※中間製品でも、使用段階や廃棄段階の評価が求められる場合は、個別のガイドラインや製品別の算定ルールを確認します。

なお、ISO 14067への対応には、義務事項と推奨事項のすべてを満たす「準拠」と、主要な義務事項を満たす「参照」があります。ガイドは、現時点では「参照」が現実的かつ一般的だとしており、実践ガイドの手順もこの「参照」の水準で書かれています。

Step3〜5 範囲を決めてデータを集める

射出成形機が並ぶ工場の通路を歩く作業者の後ろ姿

Step3 ライフサイクルフロー図でバウンダリーを決める

対象範囲を決めたら、製品に関わるプロセスを1枚の図に書き出します。これをライフサイクルフロー図と呼び、算定の範囲をはっきりさせることを「バウンダリー(システム境界)の設定」といいます。

書き方は、横軸にライフサイクル段階を並べ、原材料や廃棄物などの「モノ」と、加工・組立・輸送などの「工程」を枠で囲んで矢印でつなぎます。

部品メーカーなら、材料ごとの調達と工場までの輸送、社内の加工工程、梱包材、工程で出る端材や廃棄物の処理までが対象です。

各プロセスに番号を振り、算定手順書と算定シートにも同じ番号を使うと抜け漏れを防げます。部品表(BOM)や工程表を下敷きにすると、材料や工程を網羅的に洗い出しやすくなります。

Step4 活動量を集める

活動量は、それぞれのプロセスで「どれだけ使ったか、どれだけ運んだか」を示す量です。ガイドでは、実測値やその配分による1次データを基本とし、取得が難しい場合は仮定(シナリオ)を置く方針を示しています。

部品メーカーで集めることが多いのは、次のようなデータです。

  • 原材料:BOMの材料重量と、端材を含めた投入重量
  • 購入部品:購買実績の数量・重量と仕入先
  • 電力・燃料:工場やラインのメーター値、請求書の使用量
  • 梱包材:段ボールや緩衝材、パレットの使用量
  • 廃棄物:端材・廃油などの発生量と処理方法
  • 輸送:輸送重量と距離(トンキロ)、車両の大きさ

生産実績や材料の投入量は、生産管理システムやMES・ERPに記録されていることが多く、まずはそこから取り出せるかを確認します。

電力は工場全体のメーターしかない場合も多く、ライン別・設備別の計測が進んでいるほど、製品への割り振りの精度が上がります。計測の考え方は工場の省エネとエネルギー管理と共通です。

Step5 排出係数を選ぶ

排出係数は、活動量1単位あたりの排出量です。原材料については、仕入先からCFPを受け取れればそれを1次データとして使い、難しければ2次データベースの値を使います。

国内でよく使われるのは、次のようなデータベースです。

  • 産業技術総合研究所のAIST-IDEA(日本のデータをもとに約4,700種類の排出係数を収録)
  • 環境省の「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース」
  • 欧米を中心に使われるecoinvent(18,000種類以上)など

電力には、環境省・経済産業省が公表する電気事業者別の排出係数がよく使われます。ただし、この係数は発電時の排出(直接排出)だけの値のため、CFPでは燃料の調達などにかかる間接排出も加える必要がある点に注意します。

図5:排出係数データの優先順位

上にいくほど取引先固有の実態が反映されます。排出の大きい材料から上の段へ置き換えていきます。

優先1
仕入先固有のCFP(1次データ)仕入先が算定した素材・部品のCFP。調達重量や個数に掛けて使う。仕入先の削減努力が反映される
優先2
物量ベースの2次データ材料の重量や個数に、AIST-IDEAなどの材料別の排出係数を掛ける。材料の種類ごとの平均的な値
優先3
金額ベースの2次データ調達金額に、産業連関表をもとにした排出原単位を掛ける。手軽だが、製品の実態との差が大きくなりやすい

※SSBJハンドブックが示すScope3カテゴリー1の算定手法(サプライヤー固有手法、平均データ手法、消費ベース手法)をもとに整理。製品CFPでは優先1・2が中心です。

データベースに一致する項目がない場合は、類似の項目で代用するか、別のデータベースを使います。ガイドの基本方針では、候補が複数ある場合は排出係数の大きい方を採用し、安全側に算定するとしています。

仕入先へのデータ依頼は、購買部門が担うサプライヤー管理と一緒に進めると、依頼先の優先順位や窓口がそろいます。すべての仕入先に一度に頼む必要はなく、排出量の大きい材料から順に1次データへ置き換えていけば十分です。

Step6〜7 ルールを決めて計算し、報告する

Step6 配分・カットオフ・シナリオを算定手順書に残す

工場の電力や燃料は、複数の製品で共用しているのが普通です。この共用分を製品ごとに割り振ることを配分といい、生産個数、重量、金額、設備の稼働時間などを基準にします。

配分はできるだけ避け、ラインや設備の単位でデータを分けられるならそちらを優先するのが原則です。そのうえで、どの基準で配分したかを手順書に書き、毎回同じ基準を使うことが、後で数字を説明するときの支えになります。

影響が小さく算定が難しいプロセスは、算定から除外できます。これをカットオフといいます。

ガイドのモデル事業では、除外する範囲をバウンダリー内の排出量の5%未満(モノの場合は部素材の総重量の5%未満)に留めました。

カットオフは最小限にし、除外した対象と影響は算定報告書に記載する必要があります。

輸送距離のように実測が難しい部分は、前提条件(シナリオ)を置いて計算します。どの前提を置いたかも手順書に残し、次回以降に実測値へ置き換えられないかを検討します。

Step7 算定シートで計算し、算定報告書にまとめる

算定シートは表計算ソフトで十分です。プロセスごとに活動量、排出係数、その出典とデータ項目名、単位を並べ、掛け算で排出量を出して合計します。排出係数の単位に合わせて活動量の単位をそろえるのが、計算ミスを防ぐコツです。

図6:算定シートの例(金属部品1個あたり)

「活動量×排出係数」をプロセスごとに並べて合計します。

プロセス
活動量
排出係数
排出量
① 材料Aの製造
0.50 kg
2.0 kg-CO2e/kg
1.000
② 材料Aの輸送(仕入先→工場)
0.05 tkm
0.2 kg-CO2e/tkm
0.010
③ 加工工程の電力(配分後)
1.5 kWh
0.45 kg-CO2e/kWh
0.675
④ 梱包材(段ボール)
0.05 kg
1.0 kg-CO2e/kg
0.050
⑤ 端材の処理
0.05 kg
0.1 kg-CO2e/kg
0.005
合計(出荷まで)
1.74

※数値は計算の流れを示すための仮の値で、実在の材料や電力の排出係数ではありません。実際のシートには、排出係数の出典(データベース名・版・データ項目名)と活動量の出典(部署・資料名)も記載します。単位はkg-CO2e/個。

計算が終わったら、段階別・プロセス別の内訳を見て、排出の大きい箇所を確認します。どの材料や工程を1次データに置き換えるべきかが数字で見えてくるのが、最初の算定の大きな成果です。

最後に、算定の方法と結果をCFP算定報告書にまとめます。ガイドラインでは20の記載項目が示されていますが、社外に出す際は秘匿性を考慮し、必要な項目を選んで提供できるとされています。

数値を広く公開する「表示」と、顧客企業に1対1で渡す「開示」は区別されており、取引先への提供は後者にあたります。

取引先からCFPを求められたときの対応

打ち合わせ机に置かれた加工部品と資料

取引先からの依頼は、専用の回答フォームや調査票で届くこともあれば、メール1通で届くこともあります。いずれの場合も、計算に入る前に条件をそろえることが先決です。

最初に確認したい5つのこと

  • 対象製品と算定単位(品番ごとか製品群か、1個あたりか1kgあたりか)
  • ライフサイクルの範囲(出荷までか、取引先への輸送まで含むか)
  • 対象期間(どの年度・期間の実績を使うか)
  • 算定方法の指定(製品単位の算定が必要か、会社全体の排出量の配分でよいか)
  • 提出の様式と期限、1次データの比率やデータ品質の記載が必要か

条件が曖昧なまま算定すると、取引先の側で他社のデータと合わせられず、再提出になることがあります。分からない点は、算定前に質問して確認しておくほうが、結果的に早く終わります。

製品ベースと組織ベースの違い

取引先に渡すCO2データには、大きく2つの作り方があります。製品ごとにライフサイクルを積み上げる「製品ベース算定」と、会社のScope1・2・3の排出量を取引先ごとに切り出す「組織ベース算定」です。

図7:製品ベース算定と組織ベース算定

手軽さでは組織ベース、製品の実態に近いのは製品ベースです。

製品ベース算定(CFP)
組織ベース算定
計算の出発点
BOMや工程・設備単位のデータから、製品ごとに積み上げる
会社全体のScope1・2・3を、出荷量や売上などで取引先別に割り振る
主なルール
ISO 14067、GHGプロトコル Product Standard、CFPガイドライン、製品別算定ルールなど
GHGプロトコル Scope3 Standardで、製品別データが得られない場合の方法として認められている
強み
製品の材料や工程の違い、仕入先の削減が数字に表れる
既存の全社算定を使えるため早く出せる
注意点
データ収集とルールづくりに工数がかかる
対象外の製品の排出が混ざりやすい。製品ベースではないことの明示が必要

※Green x Digitalコンソーシアム「CO2可視化フレームワーク」をもとに作成。同フレームワークは組織ベースを暫定的な対応と位置づけ、製品ベースへの段階的な移行を推奨しています。

同フレームワークは、実務で広く行われていることから組織ベースのデータ共有も認めつつ、共有するときには採用した算定方法を示すことを必須としています。

まず組織ベースで回答し、主要製品から製品ベースに切り替えていく進め方も、現実的な選択肢の一つです。

開示する情報の範囲とデータベースのライセンス

算定シートには、材料の構成比や仕入先、工程の条件など、社外秘の情報が多く含まれます。取引先に渡すのはCFPの値と前提条件の要約にとどめ、原価や配合が推測される情報は出しすぎないよう、社内で開示範囲を決めておきます。

もう一つ見落としやすいのが、排出係数データベースの利用規約です。ガイドは、データベースによっては数値の公表やサプライヤーとのデータの受け渡しに制限があるとして、ライセンス条件をよく確認するよう求めています。

CFP算定でよくある失敗と対策

初めてCFPを算定する現場では、似たところでつまずくことが少なくありません。代表的なものと対策を4つにまとめます。

図8:CFP算定でよくある失敗と対策

多くは、計算より前の「決めごと」と「記録」で防げます。

範囲を決めずに計算を始める対策:提出先の要件を確認し、ライフサイクルフロー図で範囲を先に固める
最初から全材料を1次データにしようとする対策:2次データで一度算定を終え、排出の大きい材料から置き換える
配分の基準が毎回変わる対策:基準と理由を算定手順書に書き、年度をまたいで同じ基準を使う
担当者しか計算の中身が分からない対策:排出係数の出典・項目名と仮定をシートに記録し、再現できる形にする

取引先から見たCFPの価値は、数字の小ささだけでなく、どう算定したかを説明できることにあります。

一度算定をやり切り、1次データの範囲を広げ、必要に応じて第三者検証を受けるというように、年ごとに少しずつ精度を上げていくことが、長く使えるCFPにつながります。

算定で排出の大きいプロセスが分かれば、削減策も絞り込めます。ガイドは、使う量を減らす対策(材料や工程の効率化)と、排出係数を下げる対策(新しい材料や工程、再エネ電力、燃料転換)の両面から検討するよう示しています。

まとめ

この記事のまとめ
  • CFPは製品1単位あたりのライフサイクル排出量で、活動量×排出係数を積み上げて求める
  • 部品・素材メーカーのCFPは、取引先のScope3カテゴリー1の計算に使われる
  • 算定は目的と要件の確認から報告までの7ステップで進め、前提を算定手順書に残す
  • 最初は2次データで一度算定し、排出の大きい材料から1次データに置き換える
  • 取引先に回答する前に、範囲・単位・期間・算定方法・様式を確認する

CFPの算定は、環境担当だけでなく、材料データを持つ部署、生産実績を持つ部署、仕入先とつながる部署の協力で進む仕事です。関わりの深い職種としては品質保証・品質管理や生産管理があります。

仕入先へデータを依頼する場面では、購買・調達の仕事の流れもあわせて参考にしてください。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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