協働ロボット(安全柵で囲わずに、人のすぐそばで作業できる産業用ロボット)の国内出荷台数は、業界団体の公開統計には載っていません。統計には、協働ロボットかどうかという区分がないためです。
手がかりになるのは、産業用ロボット全体の国内出荷統計と、世界の協働ロボット市場を扱う民間調査や国際統計の数字です。どの統計で何が分かるかを押さえると、国内の台数の目安が見えてきます。
この記事では、どの統計で何がわかるのかを整理したうえで、産業用ロボット全体の国内出荷台数の推移、協働ロボットの市場規模、国内の台数の目安、伸びている用途と業種、今後の見通しの順に、数字で確認していきます。
協働ロボットの国内出荷台数はどの統計でわかるか
協働ロボットは、安全柵で囲わずに人のすぐそばで作業できるよう設計された産業用ロボットです。
矢野経済研究所は、人と直接やり取りする作業向けに設計され、ISO 10218-1・10218-2とISO/TS 15066に適合したロボットと定義しています。
国内のロボット出荷を最も網羅的に集計しているのは、日本ロボット工業会(JARA)の統計です。ただし公表されているのは受注・生産・出荷の総額と、業種別・用途別の一部の内訳で、協働ロボットかどうかという区分は公開資料にありません。
協働ロボットに絞った数字は、国際ロボット連盟(IFR)や民間の調査会社が出しています。ただし多くは世界市場の数字で、単位も台数だったり金額だったりとまちまちです。
数字を引用するときは、どの統計の、どの範囲の数字なのかを取り違えないことが大切です。
国内の台数はJARA、協働ロボットの比率や市場規模はIFRと民間調査で確認します。
※JARAの統計は同会の会員・非会員の調査対象企業(主に国内のロボットメーカー)の実績で、調査対象外の海外メーカーが日本で販売した台数は反映されません。IFRの「設置台数」とは集計の考え方が異なります。
産業用ロボット全体の国内出荷台数の推移
協働ロボットの国内台数を考える土台として、まず産業用ロボット全体の国内出荷台数を見ておきます。JARAが会員と非会員の実績をまとめた年間統計によると、2025年の国内出荷台数は37,816台で、前年から18.3%減りました。
2022年の52,415台をピークに3年連続で減少し、2025年は4万台を下回りました。
※日本ロボット工業会「マニピュレータ、ロボット統計 受注・生産・出荷実績」(会員+非会員、暦年)。サービスロボットを除く。棒の長さは6万台を100%として表示。
一方で、同じ2025年の総出荷台数は211,139台と前年より16.4%増えています。
輸出が173,323台と28.2%伸びたためで、JARAの調査対象企業の出荷の8割超を輸出が占める構造になっています。
国内だけを見ると弱く、海外を含めると好調という、ちぐはぐな姿が2025年の特徴です。
金額で見ると、2025年の国内出荷額は2,041億円で前年比10.8%減でした。台数の減り方より金額の減り方が小さいのは、1台あたりの単価が高い機種の比率が上がった可能性があります(統計から要因までは特定できません)。
業種別:電気機械と自動車がともに減少
JARAは国内出荷のうち、電気機械製造業向けと自動車製造業向けの2業種を公表しています。この2業種で国内出荷台数の6割前後を占めており、国内市場の動きはほぼこの2業種の設備投資で説明できます。
2025年は電気機械向け、自動車向けとも前年から大きく減りました。
(−16.6%)
(−26.4%)
(−18.3%)
※日本ロボット工業会の年間統計(会員+非会員)より作成。業種は公表されている2業種のみ。
2025年のJARAの概況では、国内向けは自動車製造業向けを中心に主要な業種・用途で低調だったとされています。自動車向けは前年に3年ぶりの増加となった反動もあり、26.4%減と落ち込みが目立ちました。
ここで押さえておきたいのは、この統計の主役が溶接や搬送、電子部品の実装といった従来型のロボットだという点です。
協働ロボットは中小規模の工場や食品・物流など、この2業種の外側で使われる例も多く、全体の数字の減少がそのまま協働ロボットの減少を意味するわけではありません。
2026年は4〜6月期に6四半期ぶりの増加
2026年に入ってからの動きは、会員ベースの四半期統計で追えます。2026年4〜6月期の国内出荷台数は7,722台で前年同期比7.3%増となり、6四半期ぶりに増加へ転じました。
内訳を見ると、電気機械製造業向けが3,277台で30.6%増えた一方、自動車製造業向けは1,684台で10.9%減と6四半期連続の減少です。
JARAも国内向けは前年同期の反動増にとどまり勢いに乏しいとしており、国内の回復はまだ電機頼みの段階と読むのが妥当です。
産業用ロボットを含むFA機器全体の市場の動きは、FA業界の市場規模と需要先の内訳もあわせて確認すると、ロボットの位置づけがつかみやすくなります。
協働ロボットの市場規模を数字で見る
協働ロボットそのものの数字は、世界市場の調査で確認できます。調査によって単位や対象年が異なるため、主なものを並べて整理します。
台数では2033年に2024年の7.4倍、金額では2030年に2025年の約1.8倍に伸びる見通しが示されています。
※調査ごとに協働ロボットの定義や集計方法が異なるため、数字どうしを直接比較することはできません。
矢野経済研究所の調査では、2024年の協働ロボットの世界出荷台数は92,496台の見込みで、前年の約1.5倍に増えました。2033年には68万台を超えると予測しており、今後も高い伸びが続くとの見立てです。
IFRによると、2023年に世界で設置された産業用ロボットのうち、協働ロボットは10.5%でした。台数では伸びていても、産業用ロボット全体から見ればまだ1割程度の存在です。
富士経済は、2025年の協働ロボット世界市場を1,280億円とし、2030年には2,350億円に達すると予測しています。
自動車関連と電子デバイス関連を中心に、多様な業種・用途で需要が増えるとの見立てです。需要の中心はアジア、特に中国で、欧州でも中国メーカーの販売が伸びているとしています。
日本についても「着実な伸びが続いている」と記しており、国内の産業用ロボット全体が減るなかでも、協働ロボットは伸びているという見方が示されています。
国内の協働ロボットは何台くらいか
公表統計に国内の協働ロボット台数がない以上、正確な数字は出せません。ただ、規模感をつかむための目安なら、手元の数字から大まかに試算できます。
全体の国内出荷台数に、世界の協働ロボット比率を当てはめた単純な試算です。
JARAの2025年の国内出荷台数37,816台に、IFRが公表した2023年の世界の協働ロボット比率10.5%を掛けると、約4,000台になります。
これは公表された統計値ではなく、年も集計範囲も異なる数字を組み合わせた本記事独自の推定です。そのうえで、年間で数千台規模というのが、国内の協働ロボットのおおよその桁と考えられます。
ただしこの試算には、上にも下にもずれる要素があります。数字を社内資料などで使う場合は、試算であることと前提条件を必ず添えてください。
日本の比率が世界と違いうる理由
上振れ要因は海外メーカーの存在です。JARAの統計は同会の調査対象企業(主に国内メーカー)の実績ですが、協働ロボットは海外メーカーの存在感が大きい分野です。
矢野経済研究所も、世界の主要な協働ロボットメーカーが日本市場に参入し、業界や用途に特化した製品で拡販していると指摘しています。
下振れ要因は日本の現場の慎重さです。富士経済は2024年の調査で、日本は安全性への要求が高く、大量導入に至るケースは限定的だと分析しています。少数台から試しながら導入する現場が多ければ、台数は一気には積み上がりにくいと考えられます。
柵なしで運用するには、リスクアセスメントなどの手順を踏む必要があり、その手間が導入の速度を左右します。具体的な手順は協働ロボットの導入手順と80W規制の考え方で詳しく整理しています。
協働ロボットが伸びている用途

台数の伸びを支えているのは、これまで人手に頼っていた「ロボットを入れるほどでもない」作業です。IFRは主な用途として溶接、マシンテンディング(加工機へのワークの出し入れ)、ビンピッキング、ライン末端のパレタイズを挙げています。
重い物を運ぶ、機械の番をする、細かい作業を繰り返す、の3系統に分かれます。
※日本ロボット工業会の協働ロボット事例集、IFR、富士経済の資料をもとに作成。
パレタイズ・重量物の搬送
いま最も伸びが目立つのが、ライン末端で製品をパレットに積むパレタイズです。富士経済によると、協働ロボットの販売の中心は可搬重量が一桁kg台から10kg台へ移っており、パレタイズ用途では可搬重量20kg台から30kgのモデルも伸びています。
安川電機のテクニカルレポート(2026年8月)では、食品工場で一斗缶や粉体原料の袋など20kgを超える重量物の搬送が作業者の大きな負担になっていることを挙げ、可搬35kgの協働ロボットでパレタイズや原料投入を自動化する例を紹介しています。
マシンテンディング
工作機械やプレス機の前に立ってワークを入れ替える作業は、単調なうえに人を機械の前に縛りつけます。協働ロボットは柵を設けずに置けるため、既存の機械の横に後付けしやすく、中小の加工現場でも検討しやすい用途です。
組立・検査・食品の盛付け
日本ロボット工業会の協働ロボット事例集には、LEDの組立、ねじ締め、基板検査、冷蔵庫のガス漏れ検査、ラベル貼付、弁当の盛付けといった例が並びます。人の作業ラインの一部だけを置き換える使い方が多いのが、従来型ロボットとの違いです。
用途ごとのロボットの使い分けは、協働ロボットに限らない産業用ロボット全般の用途整理を読むと、どこに協働ロボットが入り込んでいるかが見えてきます。

協働ロボットの需要をけん引する業種

富士経済は、協働ロボットの需要の中心を自動車部品を含む自動車関連と、半導体・プリント基板・電子部品を含む電子デバイス関連としています。そのうえで、コンシューマ機器や食品・医薬向けにも広がっていると分析しています。
自動車と電機は、国内の産業用ロボット全体でも2大需要先です。ただし協働ロボットが入るのは、溶接ラインのような大規模な自動化ではなく、部品の供給や検査など、人が残っていた周辺工程であることが多い点に注意が必要です。
食品・医薬は、自動車や電機に比べてロボットの導入が遅れていたといわれる業界です。品種が多く、1ラインあたりの生産量が少ないため、大型ロボットでは採算が合いにくい工程が多かったためです。
場所を取らず、段取り替えに対応しやすい協働ロボットは、こうした業界の自動化の入口になっています。
背景には深刻な人手不足があります。製造業の就業者数や有効求人倍率の推移は製造業の人手不足の現状と企業の打ち手で確認できますが、特に中小規模の工場では、採用だけで人員を補うのが難しくなっています。
国内で協働ロボットの導入が広がる背景

国内での協働ロボットの普及には、制度・技術・人手・資金の4つの変化が重なっています。どれか1つではなく、組み合わせで導入のハードルが下がってきました。
制度が整い、ロボットが使いやすくなり、人が足りなくなったことが重なっています。
制度面の転機は、2013年12月の厚生労働省の通達改正です。それまでモーター出力が80Wを超える産業用ロボットは、柵や囲いで人と隔離するのが原則でした。
改正により、リスクアセスメントに基づいて危険のおそれがなくなる措置をとれば、柵なしで人と同じ空間で働かせられることが明確になりました。
技術面では、AIを使ったティーチングの簡略化が進んでいます。矢野経済研究所は、AIソフトウェア技術の導入で教示作業が高度化・容易化し、協働ロボットの活用範囲が広がると見ています。
こうした流れはフィジカルAIが製造現場で変えることとも重なります。
資金面では、中小企業の省力化投資を支援する補助金など、ロボット導入の費用に使える制度が整ってきました。対象となる補助金の公募状況は製造業で使える補助金のまとめで整理しています。
今後の見通しと、数字の追い方
JARAは2026年のロボット受注額を前年比16.7%増の1兆2,200億円、生産額を11.1%増の1兆500億円と見込んでいます。ただし伸びの中心は輸出で、AI関連の大規模投資や世界的な自動化需要が追い風とされています。
日本国内については、IFRが2025年の需要を低い一桁台の伸びとし、その後は中程度の一桁台の伸びに加速すると予測しています。国内市場は急回復ではなく、緩やかな持ち直しを見込むのが現実的です。
その中で協働ロボットは、富士経済が日本でも着実な伸びが続いているとしていることや、人手不足を背景に、全体より高い伸びが続く可能性があります。
国内の足元はJARA、世界と協働比率はIFR、協働ロボット単独の規模は民間調査で押さえます。
※公表時期は過去のリリース日をもとにした目安です。
協働ロボットの国内台数は、今後も業界団体の統計で直接示される可能性は高くありません。複数の統計を組み合わせ、前提を明示して読むのが、この分野の数字との付き合い方です。
なお、ロボットそのものの仕組みや種類を押さえておくと、統計の用途区分も読みやすくなります。基礎は産業用ロボットの仕組みと種類で解説しています。
まとめ
- 協働ロボット単独の国内出荷台数は、日本ロボット工業会の公開統計には載っていない
- 産業用ロボット全体の国内出荷台数は2022年の52,415台から3年連続で減り、2025年は37,816台
- 協働ロボットの世界出荷台数は2024年に92,496台の見込みで、2033年には68万台超と予測されている
- 国内出荷台数に世界の協働比率10.5%を当てはめた単純試算(推定)では、国内は年間数千台規模が目安になる
- 伸びている用途はパレタイズ、マシンテンディング、組立・検査、食品の盛付けなど
協働ロボットの数字は、統計ごとに範囲も単位も違うため、読み方を知っているかどうかで結論が変わります。導入を検討する立場なら生産技術の記事、技術動向を追うなら産業用ロボットや人手不足・省人化の記事もあわせてご覧ください。
ロボットメーカーやSIerを含む業界の全体像は、FA・自動化システムの業種ページから関連記事をたどれます。
出典
出典・参考資料(15件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 2025年の国内出荷台数・業種別内訳・2026年見通し:日本ロボット工業会「マニピュレータ、ロボット統計 受注・生産・出荷実績 2025年 暦年」(2026年6月1日)
- 2024年の国内出荷台数:日本ロボット工業会「同 2024年 暦年」(2025年6月2日)
- 2023年の国内出荷台数:日本ロボット工業会「同 2023年 暦年」(2024年6月3日)
- 2022年の国内出荷台数:日本ロボット工業会「同 2022年 暦年」(2023年6月1日)
- 2021年の国内出荷台数:日本ロボット工業会「同 2021年 暦年」(2022年5月31日)
- 2026年4〜6月期の国内出荷台数:日本ロボット工業会 四半期統計(2026年7月23日)
- 協働ロボットの事例:日本ロボット工業会「協働ロボット」事例紹介
- 日本の設置台数と見通し:IFR「World Robotics 2025 report」(2025年9月25日)
- 協働ロボットの比率と用途:IFR「Collaborative Robots – How Robots Work alongside Humans」(2024年12月4日)
- 協働ロボットの世界出荷台数:矢野経済研究所「協働ロボット世界市場に関する調査を実施(2024年)」(2024年8月5日)
- 協働ロボットの世界市場規模:富士経済 FAロボットの世界市場調査(2026年7月2日)
- 協働ロボット市場の金額(2025年・2030年):オートメーション新聞「富士経済、FAロボット世界市場調査」(2026年8月)
- 日本市場の特徴と用途:富士経済 世界の製造業向けロボット市場調査(2024年3月19日)
- 食品現場での重量物搬送:安川電機 テクニカルレポート(2026年8月7日)
- 2013年の通達改正:厚生労働省 基発1224第2号「産業用ロボットに係る労働安全衛生規則第150条の4の施行通達の一部改正について」(2013年12月24日)
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