制御盤設計の進め方|仕様確認から検査・海外規格対応まで7ステップ

扉を開けた制御盤の内部に並ぶ遮断器とPLCと配線ダクト

制御盤設計は、仕様の確認から出荷前の検査まで、7つのステップで進みます。制御盤とは、モータやヒータなどに電気を送り、その動きを制御する機器を1つの箱に収めたものです。

回路図を描くのは、その手順の一部です。

まず、どの規格に合わせるのか、遮断器(異常な電流を止めて回路を守る機器)や電線をどう選ぶのかを決めます。さらに、盤内の熱をどう逃がすのか、出荷前に何を確かめるのかまでを順に決めていきます。

前の工程での決め忘れは、そのまま後の工程でのやり直しになります。

この記事では、制御盤設計を7つのステップに分け、仕様確認、適用規格、回路設計、機器選定と保護協調、盤内レイアウトと熱設計、図面と検査の順に整理します。後半では、北米・欧州向けで変わる点と、よくある失敗も取り上げます。

目次

制御盤設計の全体像|7つのステップ

制御盤は、モータやヒータなどの負荷に電気を送り、その動きを制御する機器を1つの箱に収めたものです。遮断器、電磁接触器、PLC(プログラマブルコントローラ)、インバータ、端子台などが、決められた回路どおりに配線されています。

設計の流れは、会社や案件によって呼び方が違っても、おおむね次の7ステップに整理できます。前半の2ステップで「何に合わせるか」を決め、中盤の3ステップで設計し、最後の2ステップで図面にまとめて確かめるという構成です。

図1:制御盤設計の7ステップ

決める、設計する、確かめるの3段階に分かれます。

決める
01仕様確認電源、負荷、設置環境、操作方法、仕向け先を聞き取る
02適用規格の決定国内規格か、IEC・欧州か、北米かを先に決める
設計する
03回路設計主回路と制御回路を展開接続図に落とし込む
04機器選定・保護協調遮断器、電磁接触器、電線サイズを負荷に合わせる
05盤内レイアウト・熱設計配置と盤の寸法を決め、温度上昇を見積もる
仕上げて確かめる
06図面の仕上げ・製作図面一式と部品表をそろえ、組立・配線へ渡す
07検査・出荷導通、保護の条件、機能を確かめて出荷する

※ステップ3〜5は一方通行ではなく、機器が変われば回路や配置を見直すというように行き来します。

実務では、ステップ3から5を何度も往復します。インバータの機種が変われば発熱量が変わり、盤の寸法や冷却方法に影響するためです。

一方で、ステップ1と2の内容が後から変わると、影響は設計全体に及びます。仕向け先が国内から北米に変わっただけで、使える遮断器も銘板の表示も変わります。上流の2ステップに時間をかけることが、結果として全体の工数を減らします。

なお、制御盤設計が電気設計の仕事全体のどこに位置づくのかは、回路設計との比較で整理すると分かりやすくなります。

ステップ1・2|仕様確認と適用規格の決定

机に広げた電気図面を確認する設計者の手元

最初の2ステップは、図面を1枚も描かない工程です。しかし、ここで決めた内容が、機器の選び方から検査の項目までを左右します。

仕様確認で押さえる項目

仕様確認では、機械設計の担当者や注文主から、盤に求められる条件を聞き取ります。口頭のやり取りで済ませず、項目を決めて書面に残すことが大切です。

  • 電源:電圧、相数、周波数、接地の方式
  • 負荷:モータの容量と台数、始動方式、ヒータやバルブなどの一覧
  • 設置環境:周囲温度、粉じんや水のかかり方、屋内か屋外か
  • 操作と表示:押しボタン、タッチパネル、表示灯、非常停止の位置
  • 仕向け先:国内か海外か、注文主が指定する規格や社内標準
  • 設置場所の短絡電流:盤の電源側で想定される短絡電流の大きさ

聞き取りの漏れを防ぐには、規格に用意された様式が使えます。

機械の電気装置の規格であるJIS B 9960-1(IEC 60204-1)には、附属書B(参考)として「調査書」が載っています。使用者と供給者が条件をやり取りするための様式です。

量産される機械の製造業者用チェックリストとしても使えると規格自体に書かれているため、自社の仕様確認シートの土台になります。

適用規格を最初に決める

次に、その盤をどの規格に合わせて設計するかを決めます。産業機械に付く制御盤で基本になるのは、JIS B 9960-1:2019「機械類の安全性―機械の電気装置―第1部:一般要求事項」です。

国際規格IEC 60204-1:2016と内容が一致しており、2023年には追補1が発行されています。

この規格の対象は、公称電源電圧が交流1,000V以下、直流1,500V以下、公称周波数200Hz以下で動く機械の電気装置です。電源の断路、感電保護、過電流保護、制御回路、配線、表示、技術文書、検証までを一通り定めています。

国内の盤では、日本電機工業会のJEM規格もよく参照されます。

盤内の電線と配線方式はJEM 1122、接地はJEM 1323、構造と寸法はJEM 1459です。定格と試験はJEM 1460というように、項目ごとに規格が分かれています。

日本配電制御システム工業会(JSIA)も、キャビネット形動力制御盤などの団体規格を定めています。

混同しやすい規格もあります。JIS C 8480:2023は「キャビネット形分電盤」の規格で、建物の電気を分ける分電盤が対象です。

機械の制御盤そのものを対象にした製品規格ではないため、盤の箱や構造の考え方を参考にする位置づけになります。

低圧の開閉装置・制御装置を組み合わせた盤の国際規格としては、IEC 61439シリーズがあります。

図2:仕向け先ごとの主な規格

どこで使う盤かによって、参照する規格の組み合わせが変わります。

国内JISとJEMが中心JIS B 9960-1:2019(機械の電気装置)、JEM 1122・1323・1459・1460など。工場の電気設備としては電気設備技術基準、作業者の保護では労働安全衛生規則が関わる
国際・欧州IECと欧州規格IEC 60204-1、IEC 61439-1/-2。欧州向けはEN 60204-1、EN IEC 61439シリーズを使い、CEマーキングで適合を示す
北米NECとUL米国はNEC(NFPA 70)第409条、UL 508A、NFPA 79。カナダはCSA C22.2 No. 286
実際にどれを適用するかは、注文主の仕様書と仕向け先の法令で決まる。迷う場合は、設計に入る前に注文主へ書面で確認する。

法令との関係も押さえておきます。工場に据え付けられた電気設備は、電気事業法に基づく「電気設備に関する技術基準を定める省令」の対象で、第10条は接地、第14条は過電流遮断器の施設を求めています。

作業者の保護の面では、労働安全衛生規則 第329条により、事業者は接触や接近で感電のおそれがある充電部分に、囲いや絶縁覆いを設けなければなりません。

また、配線用遮断器と漏電遮断器は、電気用品安全法の特定電気用品(116品目)に挙げられています。

ただし対象には条件があり、施行令では、交流の電路に使う定格電圧100V以上300V以下、定格電流100A以下のものに限られます。電動機用は適用電動機の定格容量12kW以下で、機械器具に組み込まれる特殊な構造のものは除かれます。

条件に当てはまる製品には、PSEマークの表示が必要です。盤そのものだけでなく、組み込む部品にも法令が関わるため、使う機器が対象かどうかは、機器メーカーの資料と経済産業省の一覧で確認します。

ステップ3|主回路と制御回路の設計

仕様と規格が決まったら、回路設計に入ります。制御盤の回路は、負荷へ電力を送る主回路(動力回路)と、その入り切りを指令する制御回路の2つに分けて考えます。

図3:制御盤の回路の基本構成

電源から負荷へ向かう主回路と、そこから分かれる制御電源で成り立ちます。

受電(三相電源)工場の分電盤や動力盤から供給される
盤の入口
電源断路器・主幹遮断器盤全体の電源を切り離し、短絡から保護する
分岐
モータ回路分岐遮断器→電磁接触器→サーマルリレー
インバータ回路分岐遮断器→インバータ
制御電源変圧器や直流電源→PLC・リレー
端子台を経て盤外へ
負荷・現場機器モータ、ヒータ、センサ、電磁弁、操作スイッチ、表示灯

※代表的な構成を単純化した例です。実際の構成は負荷の種類や適用規格によって変わります。

単線結線図から展開接続図へ

回路設計は、まず電源から負荷までの系統を1本の線で表した単線結線図で全体をつかみ、次に展開接続図へ落とし込む順で進めるのが一般的です。展開接続図は、機器の接点やコイルを動作の順に並べて描いた図で、シーケンス図とも呼ばれます。

図記号はJIS C 0617シリーズ(電気用図記号)に従います。このうち第7部が、開閉装置、制御装置、保護装置を扱っています。

第7部の現行版は、2024年12月に改正されたJIS C 0617-7:2024です。

盤の世界では、展開接続図の様式を定めたJEM 1404や、用語と文字記号を定めたJEM 1115もあわせて使われます。

記号と様式をそろえる目的は、見た目を整えることではありません。製作する人、検査する人、納入後に保全する人が、同じ図面から同じ動作を読み取れるようにするためです。

JIS B 9960-1が回路に求めること

JIS B 9960-1(IEC 60204-1)は、回路の組み方にも具体的な条件を置いています。代表的なものを挙げます。数値には対象と例外があるため、設計に使うときは必ず規格の本文で確認します。

  • 電源断路器(箇条5.3.4):操作ハンドルなどの操作手段は盤の外側に設け、作業面から0.6m以上1.9m以下の、容易に手が届く位置に置く。上限は1.7mが推奨されている(電動式の開閉器には例外がある)
  • 制御回路の電源(箇条9.1.1):交流電源から制御回路に給電するときは、巻線が分離した変圧器などで動力側と分ける(電動機始動器が1つだけの小規模な機械などには例外がある)
  • 制御回路の電圧(箇条9.1.2):公称電圧は、交流は50Hzで230V、60Hzで277V、直流は220Vを超えないことが望ましい。これは規格上の推奨の上限であり、実際の電圧は注文主の仕様や仕向け先の規格で決める
  • 停止機能(箇条9.2.2):動力を即時に遮断するカテゴリ0、停止してから遮断するカテゴリ1、停止後も動力を供給するカテゴリ2に分けて設計する。非常停止は、原則としてカテゴリ0またはカテゴリ1の停止として働かせ、どちらにするかはリスクアセスメントの結果で決める
  • 操作機器の色(箇条10.2):非常停止は赤(背景は黄)。起動は白、灰、黒、緑のうち白が最もよいとされ、赤は使わない

非常停止やガードのインターロックなど、安全に関わる回路は、先に行ったリスク評価の結果から必要な性能が決まります。回路を描く前に、機械側のリスクアセスメントの進め方と結果を確認しておきます。

安全関連の制御系に求められる考え方は、機能安全とIEC 61508の枠組みが土台になっています。

非常停止を含む安全回路の具体的な構成は、この記事の範囲では扱いきれないため、適用する安全規格と安全機器メーカーの資料に従い、経験のある設計者が確認します。

ステップ4|機器選定と保護協調

DINレールに並ぶ配線用遮断器と電磁接触器の接写

回路の骨格が決まったら、1つひとつの機器の形式と定格を決めます。このステップで意識したいのは、機器を単品で選ぶのではなく、前後の機器との組み合わせで選ぶことです。

主な機器と選定の観点

図4:制御盤の主な機器と選定の観点

役割ごとに、確認する項目が異なります。

配線用遮断器・漏電遮断器
保護定格電流、遮断容量、モータの始動電流で誤動作しないこと。仕向け先の認証
電磁接触器
開閉・駆動負荷の種類と容量、開閉頻度、コイル電圧、補助接点の数
サーマルリレー
保護モータの定格電流に合う整定範囲、始動時間、欠相保護の要否
インバータ
開閉・駆動モータ容量と負荷の特性、入力側の保護機器、発熱量と取付けの離隔
PLC
制御・電源・接続入出力の点数と種類、予備の点数、通信方式、増設の余地
直流電源
制御・電源・接続負荷電流の合計と余裕、周囲温度による出力の低下、突入電流
端子台
制御・電源・接続電線サイズと定格電流、接続方式、盤外配線との取り合い
リレー・安全機器
制御・電源・接続接点の容量と構成、安全回路に求められる性能への適合
操作・表示機器
制御・電源・接続押しボタンや表示灯の色と配置、扉面の保護等級、操作する高さ

※観点は代表的なものです。実際の選定は、各メーカーのカタログと選定資料に従います。

PLCは、入出力の点数と種類を先に数えてから機種を決めます。後から信号が増えることは珍しくないため、予備の点数と増設の余地を残しておくと改造が楽になります。スキャン方式などの基礎は、PLCとシーケンス制御の仕組みで確認できます。

保護協調|過負荷と短絡を分けて考える

保護協調とは、異常が起きたときに、どの保護機器がどの順で動くかを整えておくことです。モータ回路では、役割がはっきり分かれています。

富士電機機器制御の選定資料では、サーマルリレーを備えた電磁開閉器が電動機の過負荷保護を担い、配線用遮断器や漏電遮断器が回路の短絡保護を担うという説明です。

同じ資料では、電磁開閉器はAC-3級(かご形モータの始動と、運転中のモータの開路を想定した使用負荷種別)で適用するとされています。

同じ資料の選定表から、1行だけ読んでみます。200V・3.7kWのモータは定格電流が15.5A、始動電流が139Aで、組み合わせる配線用遮断器の定格電流は40Aです。

モータの電流は、同社製の三相全閉外扇形・4極・50Hz・プレミアム効率(IE3)のカタログ値で、機器の形式も同社製品どうしの組み合わせです。

定格電流の2倍を超える遮断器が選ばれているのは、始動電流で遮断器が動作しないようにするためです。

この表には前提があります。直入始動であること、始動時間が6秒以下であること、遮断器は始動電流の1.3倍を最大始動電流として選んでいることです。

始動時間が長い負荷では、遮断器の定格やサーマルリレーの種類を見直す必要があると資料にも注記されています。表の数値だけを写すのではなく、前提が自分の負荷に合うかを先に確かめます。

モータや機器のメーカーが変われば電流値も組み合わせも変わるため、ここに挙げた数値をそのまま別の設計に使うことはできません。実際の選定は、使用する機器のメーカーが公表している最新の選定資料に従います。

電線サイズは許容電流と保護機器の両方から決める

電線の太さは、流れる電流に対して許容電流が足りているか、そして上流の保護機器でその電線を守れるか、の2点から決めます。

JIS B 9960-1(IEC 60204-1)の箇条12.4にある表6には、PVC絶縁の銅電線の許容電流の例が載っています。装置の箱と各機器の間に布設する電線について、周囲温度40℃、定常状態での値です。

電線管や配線ダクトに収める方法(B1)では、三相回路の場合で1.5mm²が13.5A、2.5mm²が18.3A、4mm²が24Aです。

ただし、これは負荷電流が流れる三相のケーブル1系統という条件での例であり、この値でそのまま電線サイズを決められるわけではありません。

束ねる本数が多い場合や周囲温度が40℃と異なる場合は、同じ規格の附属書Dにある係数で許容電流を補正します。

電線の種類が違えば値も変わり、電圧降下(動力回路は公称電圧の5%以内)や、上流の保護機器との組み合わせも別に確認が必要です。

実際の電線サイズは、適用する規格の本文と電線メーカーの資料をもとに、経験のある設計者や有資格者が確認して決めます。

国内向けの盤では、JEM 1122が盤内電線の種類や被覆の色別、配線方式を定めているため、注文主の仕様とあわせて確認します。

ステップ5|盤内レイアウトと熱設計

制御盤上部の換気ファンとインバータ周りの放熱スペース

機器が決まると、それらを盤の中にどう並べるか、盤の寸法をどうするかを決める段階に入ります。レイアウトは見た目の問題ではなく、熱、ノイズ、保守のしやすさを同時に満たすための設計です。

配置で考える4つのこと

  • 熱:インバータや電源など発熱の大きい機器の上下に、放熱のための空間を確保する
  • 配線の分離:動力線と信号線を別のダクトに分け、並走する距離を短くする
  • 接地:感電保護のための保護ボンディングと、誤動作を抑えるための機能ボンディングを区別して計画する
  • 保守:遮断器の操作、端子の増し締め、部品交換ができる空間と向きを確保する

配線の分離と接地は、盤内のノイズ対策の基本でもあります。JIS B 9960-1は、電磁的な影響を減らす方策を附属書Hに参考として示しており、機器メーカーの取扱説明書にも配線や接地の指示があります。

まず機器メーカーの指示に従い、指示がない部分を規格の附属書で補うという順で考えます。

熱計算の想定例

盤内の温度は、レイアウトが固まる前に一度見積もっておきます。リタールの解説によると、盤内の温度は周囲よりおよそ10〜20℃高くなる傾向があります。また、温度が10℃上がると電解コンデンサの推定寿命が半分になるという経験則もあります。

考え方は単純です。盤内で発生する熱が、盤の表面から外へ逃げる熱とつり合ったところで、温度上昇が落ち着きます。

盤用クーラーメーカーのアピステは、必要冷却能力を「盤内の発熱量+熱通過率×盤の有効表面積×(最高周囲温度−盤内の希望温度)」で求める式を示しています。

熱通過率は、一般的な制御盤で5〜6W/(m²·℃)、板厚2mmの鋼板で5W/(m²·℃)が目安とされています。

以下は、計算の流れを示すための架空の想定例です。実在の盤や製品の値ではありません。

機器の発熱量には、同社が公開している機器別の目安値(定格で使ったときの概数)を使いました。自然放熱での温度上昇は、同じ熱のつり合いの考え方から、発熱量を「熱通過率×放熱面積」で割って概算しています。

図5:盤内の温度上昇を見積もる想定例

発熱量を放熱面積と熱通過率で割ると、温度上昇の目安が出ます。

想定した値
前提・計算
盤の寸法
幅700×高さ1,600×奥行400mm
鋼板製。底面を除く5面から放熱すると仮定
放熱面積
3.80m²
前後2.24+側面1.28+天井0.28
盤内の発熱量
371W
インバータ3.7kW(6%)222W、直流電源240W(25%)60W、PLC5スロット30W、遮断器4台25W、電磁接触器2台14W、小形リレー10個20W
熱通過率
5W/(m²·℃)
板厚2mmの鋼板の目安値
自然放熱での温度上昇
約19.5℃
371÷(5×3.80)。周囲が35℃なら盤内は約54.5℃
冷却機器に必要な能力
466W
周囲40℃で盤内を35℃に保つ場合。371+5×3.80×(40−35)。安全率(同社の推奨は1.2〜2倍)を1.2とすると約560W

※架空の条件による計算例です。発熱量と熱通過率はアピステが示す目安値であり、日射や隣接する熱源、盤内の空気の流れや上下の温度差は考慮していません。この数値を実際の設計に使うことはできません。

この例では、自然放熱だけだと盤内が50℃を超える見積もりになります。

機器の使用周囲温度の上限は取扱説明書で確認しますが、アピステの資料は盤内の希望温度を35℃とすることを勧めています。この条件では、換気ファンや熱交換器、盤用クーラーといった冷却機器の検討が必要になります。

繰り返しになりますが、ここで示したのは考え方です。熱通過率も発熱量も目安の係数であり、盤の材質や塗装、設置のしかた、機器の負荷率によって結果は大きく変わります。

実際の設計では、各機器メーカーが公表する発熱量と、盤・冷却機器メーカーの選定資料や計算ツールを使い、経験のある設計者の確認を受けます。

盤の温度上昇を計算で検証する方法は、IEC/TR 60890にまとめられています。

保護等級(IPコード)を環境に合わせる

盤の箱がどの程度、固形物や水の侵入を防げるかは、IPコードで表します。1桁目が固形物、2桁目が水に対する保護の程度です。

国内の規格は、長くJIS C 0920:2003が使われてきましたが、2026年1月20日に廃止されました。同じ日に制定されたJIS C 60529:2026(旧 JIS C 0920)に引き継がれています。

規格番号が国際規格のIEC 60529と同じになり、高圧・高温の水の噴流に対する等級IPX9も加わりました。

古い仕様書や社内標準、カタログには旧番号が残っていることがあり、JIS B 9960-1:2019の本文も旧番号のJIS C 0920を引用しています。

「JIS C 0920」と書かれていたら、現在のJIS C 60529のことだと読み替えます。

JIS B 9960-1(IEC 60204-1)の箇条11.3は、制御装置を収める箱に、例外を除いて少なくともIP22を求めています。

これは規格上の最低限であり、この等級にすれば足りるという意味ではありません。粉じんや水のかかる場所ではより高い等級が必要になり、どの等級にするかは設置環境と注文主の仕様で決めます。

ただし、密閉度を上げるほど熱は逃げにくくなるため、保護等級と熱設計は一緒に検討します。

ステップ6・7|図面の仕上げと製作・検査

制御盤の端子台にテスターを当てて検査する作業者の後ろ姿

設計の成果は、製作と検査の担当者に渡す図面と文書の形でまとめます。ここが不十分だと、設計の意図が現物に反映されません。

図面と銘板にまとめる内容

図面一式は、展開接続図、盤の外形図、盤内の機器配置図、端子の配列、部品表などで構成されます。注文主と製造業者の間でやり取りする図面や仕様書の種類は、JEM 1268に整理されています。

盤の銘板には、供給者名、電圧、相数、周波数、全負荷電流などを記載します。JIS B 9960-1は、据付けのための情報として、各入力電源についての短絡電流定格も求めています。

短絡電流定格は、その電気装置が耐えられる短絡電流の大きさを示す値です。2019年のJIS改正で、箇条7.10として「電気装置の短絡電流定格を決定しなければならない」という規定が加わりました。

決め方は、設計ルールの適用、計算、試験のいずれかによるとされています。北米向けで知られるSCCRと同じ考え方で、詳しくは後の章で取り上げます。

出荷前の検証項目

盤が組み上がったら、図面どおりにできているか、保護が働く条件を満たしているかを確かめます。JIS B 9960-1(IEC 60204-1)の箇条18は、検証の項目を次のように定めています。

図6:JIS B 9960-1が定める検証の項目

機械の個別規格がない場合、4項目は必ず行い、残りは必要に応じて行います。

必ず行う① 技術文書との照合電気装置が図面や文書どおりにできているかを確認する
必ず行う② 保護ボンディング回路の導通保護導体が途切れずにつながっているかを試験で確かめる
必ず行う③ 電源自動遮断の条件電源の自動遮断で故障保護を行う場合に、遮断の条件を満たすかを検証する
必ず行う④ 機能試験電気装置の機能が仕様どおりに働くかを確かめる
必要に応じて 絶縁抵抗試験回路の絶縁が保たれているかを測定で確かめる
必要に応じて 耐電圧試験規定の試験電圧に耐えるかを確かめる
必要に応じて 残留電圧に対する保護電源を切った後に残る電圧への対策を確認する
必要に応じて 漏れ電流の大きい装置の確認接地漏れ電流が10mAを超える装置の追加要求を満たすか確認する

※試験の電圧や判定値は規格本文で定められています。機械ごとの個別規格がある場合は、そちらが優先されます。

国内の盤では、JEM 1460が配電盤・制御盤の定格と試験を定めており、工場試験と現地試験に分けて項目を規定しています。2026年3月に改正されているため、社内の検査要領が古い版を引用していないかも確認します。

通電を伴う検査や現地での試運転は、感電や予期しない起動の危険がある作業です。電源を切って作業する場面では、遮断器を施錠して札を掛けるロックアウト・タグアウトの手順を守ります。

充電部に近づく作業は、社内の安全ルールに従い、必要な教育を受けた人が行います。

海外向け制御盤で変わること|北米と欧州

ここまでの手順は、仕向け先が海外になっても骨格は変わりません。変わるのは、ステップ2で選ぶ規格と、それに伴う機器の選び方、表示、適合の示し方です。

北米|UL 508AとSCCR

米国の電気設備の基準は、NEC(National Electrical Code、NFPA 70)です。

富士電機機器制御の資料によると、NECは州法として取り入れられており、採用している版は州によって異なります。

NECは3年ごとに改訂されており、全米防火協会(NFPA)のWebサイトでは、2026年10月時点の現行版は2026年版です。

以下の説明のうち条文の内容は、同社の資料が引用しているNEC 2017年版とNFPA 79 2018年版によるものです。

条番号や要求は版によって変わることがあるため、実際の案件では、設置先が採用している版の原文で確認します。

NECは第409条で産業用制御盤を扱い、2つ以上の動力回路部品や制御回路部品を組み合わせたものをその対象としています。一般に制御盤と呼ばれるものは、ほぼこれに当てはまります。

盤の製品規格がUL 508Aです。UL Solutionsのパネルショッププログラムに登録した製造者は、設計ごとに審査を受けなくても、UL 508Aに沿って製作した盤にULマークを付けられます。

このプログラムは米国とカナダ向けの認証を対象としています。なお、UL 508Aは2018年4月に第3版が発行され、その後も改訂が続いています。

UL Standards & Engagementの規格ストアでは、2026年10月時点の最新の改訂日は2025年6月26日です。

古い解説資料を使うときは、どの時点の版に基づくものかを確かめます。

北米向けで最も手戻りが起きやすいのが、SCCR(Short-Circuit Current Rating、短絡電流定格)です。

NEC(2017年版)第409.110条は、盤へのSCCRの表示を求めています。産業機械の電気規格NFPA 79(2018年版)の4.9は、機械の電源断路手段での推定短絡電流が銘板のSCCRを超えないことを求めています。

NECは、SCCRを決める方法の一例としてUL 508AのSupplement SBを挙げています。

図7:UL 508A Supplement SBによるSCCRの決め方

部品ごとの値を調べ、最も小さい値が盤全体の値になります。

01部品ごとのSCCRを調べる動力回路の部品について、銘板や取扱説明書の値を使う。表示がなければ規格の表にある既定値を使う
02限流要素で補正する変圧器、限流遮断器、限流ヒューズが上流にある場合は、条件を満たせば値を見直せる
03盤全体のSCCRを決める各回路・部品の値のうち、最小のものが盤のSCCRになる
既定値は、回路遮断器や50馬力以下のモータ用電磁開閉器で5kA。1つでも値の小さい部品があると、盤全体がその値に引き下げられる。

※三菱電機の技術資料に基づく概要です。既定値や補正の条件はUL 508Aの改訂で変わることがあります。実際の判定は、最新のUL 508Aの本文と各部品の認証条件に従います。

SCCRを盤に表示するのは機械・設備メーカーの責任ですが、実際には注文主から必要な値を指定されます。指定が5kAなら通常の部品構成で対応しやすい一方、50kAといった大きな値を求められると、部品の選び方から見直すことになります。

対策として使われるのが、遮断器と電磁開閉器の組み合わせで取得された認証です。

三菱電機の資料には、単体では5kAの電磁接触器とサーマルリレーの例が示されています。指定のUL 489認証遮断器と組み合わせると、交流240Vで25kAになります。

こうした組み合わせは、機器メーカーが公表している条件(遮断器の形式、電圧、定格など)どおりに使うことが前提で、数値は機種ごとに異なります。

NFPA 79は、IEC 60204-1と同じく機械の電気装置を扱う米国の規格です。NFPAのWebサイトによると、2026年10月時点の現行は2024年版で、次の版は2027年版が予定されています。

カナダ向けには、産業用制御盤の規格としてCSA C22.2 No. 286があります。正式名称はIndustrial control panels and assembliesで、現行は2023年版です。

欧州|CEマーキングと機械規則への移行

欧州では、製造者が法令の要求に適合していることを確認し、技術文書とEU適合宣言書を作成したうえで、CEマーキングを表示します。

製品の種類によっては、第三者の認証機関(ノーティファイドボディ)の関与が必要になります。

関係する主な法令は、機械指令2006/42/EC、低電圧指令2014/35/EU、EMC指令2014/30/EUです。

低電圧指令の対象は、交流50〜1,000V、直流75〜1,500Vで使う電気機器です。EMC指令は、機器が出す電磁妨害と、妨害に対する耐性を扱います。

どの法令に基づいて適合を宣言するかは、盤を単体で出荷するのか、機械の一部として出荷するのかといった出荷の形で変わることがあります。この記事だけで判断せず、案件ごとに認証機関や専門家に確認します。

機械指令は、機械規則(EU)2023/1230に置き換わります。欧州委員会によると、2027年1月20日より前に上市する機械には機械指令が適用され、同日から機械規則が義務として適用されます。

納入が2027年にかかる案件では、どちらで適合を示すのかを早めに決めておく必要があります。

技術的な要求事項は、整合規格を使って満たしていくのが一般的です。機械の電気装置はEN 60204-1、盤としてはEN IEC 61439シリーズが代表的です。整合規格の一覧はEU官報で公表されるため、適用する版はその時点の一覧で確認します。

図8:北米向けと欧州向けの違い

基準の成り立ちと、適合の示し方が異なります。

北米
欧州
土台になる基準
NEC(NFPA 70)。州ごとに採用版が異なる
機械指令(2027年1月20日から機械規則)、低電圧指令、EMC指令
盤・電気装置の規格
UL 508A、NFPA 79。カナダはCSA C22.2 No. 286
EN 60204-1、EN IEC 61439シリーズ
適合の示し方
UL 508Aに基づくULマークなど。設置先では、現地の検査当局の確認を受けるのが一般的
製造者が技術文書とEU適合宣言書を作成し、CEマーキングを表示(製品によっては認証機関が関与)
短絡電流定格
銘板にSCCRを表示。設置場所の短絡電流を下回らないこと
EN 60204-1が短絡電流定格の決定と文書への記載を求める
部品の選び方
UL認証を受けた部品を、認証の条件どおりに使う
各指令に適合した部品を、整合規格に沿って組み合わせる

※代表的な項目の比較です。製品や仕向け先によって、ほかの法令や規格が加わることがあります。

制御盤設計でよくある失敗と防ぎ方

最後に、手順のどこで手戻りが起きやすいかを、4つの場面で整理します。いずれも、前の工程で決めておけば防げるものです。

仕向け先と電源の確認漏れ

設計が進んでから「実は北米向けだった」「現地の電圧が違った」と分かるケースです。遮断器や電線、銘板まで影響するため、手戻りの範囲が最も広くなります。

防ぐには、仕様確認の時点で、仕向け先、適用規格、電源条件、必要な短絡電流定格を書面で取り交わします。注文主が決めていない項目は「未定」と明記し、いつまでに決めるかを合わせておくことが有効です。

熱の検討を後回しにする

盤の寸法を先に決め、機器を詰め込んでから温度の問題に気づくケースです。製作後にクーラーを追加すると、扉や側面の加工、電源回路の追加が必要になります。

機器の一覧ができた段階で、発熱量の合計と盤の放熱面積から、温度上昇を一度概算しておきます。精密な計算は後でかまいません。冷却機器が要るかどうかの見当を、盤の寸法を決める前につけることが目的です。

機器を単品で選んでしまう

遮断器は遮断器、電磁接触器は電磁接触器と、カタログの定格だけを見て個別に選ぶケースです。国内向けでは保護協調が取れず、北米向けではSCCRが想定より小さくなる原因になります。

機器メーカーは、モータ容量ごとの組み合わせ表や、SCCRの組み合わせ認証の一覧を公表しています。選定は組み合わせ表から始め、表の前提条件が自分の回路に合うかを確かめる、という順が安全です。

図面と現物が一致しない

製作中や試運転中の変更が図面に戻されず、納入後の図面が現物と食い違うケースです。保全担当者が故障対応で図面を頼れなくなり、改造のたびに現物調査が必要になります。

検証の最初の項目が「技術文書との照合」であるのは、このためです。変更は必ず図面に反映してから出荷する、というルールを検査の項目に組み込んでおきます。

まとめ

この記事のまとめ
  • 制御盤設計は、仕様確認、適用規格、回路設計、機器選定、レイアウト・熱設計、図面、検査の7ステップで進む
  • 産業機械の盤はJIS B 9960-1:2019(IEC 60204-1)が基本で、国内ではJEM規格も参照する
  • 機器は単品ではなく組み合わせで選び、過負荷保護と短絡保護の役割を分けて考える
  • 盤内の温度上昇は、発熱量と放熱面積から早い段階で概算し、保護等級とあわせて検討する
  • 北米はUL 508AとSCCR、欧州はCEマーキングと2027年1月20日からの機械規則が要点になる

制御盤設計の手順は、決める順番を守ることで手戻りを減らせる仕事です。この記事で示した数値や計算は、考え方を説明するための例です。

規格の数値には対象と例外があり、メーカー資料の数値には前提条件があるため、この記事の数値だけで設計することはできません。

実際の設計は、適用する規格の最新版の本文、機器メーカーの選定資料、経験のある設計者や有資格者の確認に従ってください。規格や法令の版は、2026年10月1日時点で確認した内容です。

仕事全体の流れは電気・電子設計の仕事の流れで、盤を組み込む装置やラインをつくる企業の全体像はFA業界の企業の種類と仕事で整理しています。関連する記事は、電気・電子設計の職種ページからもあわせてご覧ください。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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