EU機械規則(欧州機械規則)はいつから?2027年1月20日適用|機械指令との違いと対応6ステップ

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EU機械規則は、機械の設計・製造に関する健康と安全の要求事項を定めたEUの法律で、2027年1月20日から適用されます。同じ日に、これまでの機械指令(2006/42/EC)は廃止されます。

新しい規則で加わったのは、サイバー攻撃を想定した制御システムの保護や、機械学習を使う安全機能などです。取扱説明書のデジタル提供、改造した者の責任、輸入業者・販売業者の義務も加わりました。

欧州向けに装置を出すメーカーにとっては、設計と、CEマーキング(EU向けの適合表示)に必要な文書の両方に関わる変更です。

この記事では、EU機械規則(規則 (EU) 2023/1230)の条文をもとに、適用開始日と経過措置、機械指令との違いを整理します。

続いて新しい要求事項、適合性評価、文書の変更点を見ていきます。最後に、装置メーカーが進める6つのステップと、2026年10月1日時点の整合規格・改正の動きを説明します。

先に要点:EU機械規則はいつから?機械指令との違い
  • 2027年1月20日から適用(規則 (EU) 2023/1230 第54条)。同じ日に機械指令 2006/42/EC は廃止され、指令と規則を選べる期間は定められていない。2026年10月1日時点で、適用開始日を延期する提案・法令は確認できない
  • 「指令」は加盟国がそれぞれ国内法に置き換えて運用する形式、「規則」は全加盟国で同じ条文がそのまま適用される形式
  • 機械指令との主な違いは、サイバー攻撃を想定した改変からの保護(附属書III 1.1.9)、機械学習を使う安全機能の第三者認証(附属書I パートA)、取扱説明書のデジタル提供、実質的な変更をした者の製造業者としての責任、輸入業者・販売業者の義務
  • 2027年1月20日より前に機械指令に適合して上市された機械は、その後も流通を妨げられない(第52条1項)。それ以降に上市する機械は、機械規則に基づく技術文書と適合宣言書が必要
目次

EU機械規則とは|2027年1月20日に機械指令と入れ替わる

EU機械規則は、機械の設計・製造に関する健康と安全の要求事項を定めたEUの法律で、正式には規則 (EU) 2023/1230 といいます。

2023年6月29日にEU官報へ掲載され、2027年1月20日から適用されます(第54条)。同じ日付で、2009年12月から使われてきた機械指令 2006/42/EC は廃止されます(第51条2項)。

「指令」は加盟国がそれぞれ国内法に置き換えて運用する形式でした。「規則」は国内法への置き換えを経ずに、全加盟国で同じ条文がそのまま適用されます。国ごとの解釈の差を減らすことが、形式を変えた狙いの一つです。

日付には注意が必要です。官報に最初に掲載された本文では適用開始日が「2027年1月14日」となっていましたが、2023年7月4日付の訂正(コリゲンダム)で20日に直されました。

古い解説資料には14日と書かれたものが残っているため、社内資料を作るときは訂正後の日付を使ってください。

図1:EU機械規則の主な日付

一部の条項は先に動いており、全面的な切り替えは2027年1月20日です。

適用開始まで
2023年6月29日EU官報に掲載7月4日に日付の訂正。7月19日に発効
2024年1月20日通知機関の規定を先行適用第26〜42条。認証機関側の準備が始まる
2026年10月20日罰則の規定を先行適用第50条1項。加盟国は罰則を欧州委員会へ通知
切り替え
2027年1月20日機械規則の適用開始同日付で機械指令 2006/42/EC は廃止
その後
2028年8月2日まで高リスクAIの要求を追加規則 (EU) 2026/1744 に基づく委任法が適用される期限

※日付は訂正(OJ L 169, 2023年7月4日)を反映した統合版の条文によります。

指令と規則を選べる期間は定められていない

条文上は、2027年1月19日までは機械指令、1月20日からは機械規則という切り替えになっており、どちらかを選んで適合を宣言できる期間は定められていません。

1月20日以降にEU市場へ初めて出す機械は、機械規則に基づく技術文書と適合宣言書が必要になります。

欧州委員会のページによると、2027年1月20日より前に上市する機械は機械指令に適合していなければなりません。該当する場合は、その機械が機械規則にも適合していることをEU適合宣言書に併記してよいとされています。

切り替え日の前に出荷する機械でも、新しい要求への対応を先に済ませておくことはできます。

一方で、経過措置もあります。2027年1月20日より前に、機械指令に適合してEU市場に出された製品については、加盟国はその後の流通を妨げてはならないとされています(第52条1項)。

機械指令のもとで発行されたEC型式審査証明書は、有効期限が切れるまで有効です(第52条2項)。

ここでいう「上市」は、その製品をEU市場で初めて提供することを指します(第3条12号)。

同じ型式を継続して出荷している場合に、個々の機械の上市日をどう判定するかは契約や物流の形でも変わるため、EUの認定代理人や認証機関に確認しておくのが安全です。

対象は機械・関連製品・半完成機械

対象は、機械(machinery)、関連製品、半完成機械の3つです(第2条1項)。

関連製品には、交換可能機器、安全コンポーネント、つり具、チェーン・ロープ・ウェビング、着脱式の機械的伝動装置が含まれます。

半完成機械は、それだけでは特定の用途を果たせず、他の機械に組み込まれて初めて機械になる組立品のことです。

定義も今の機械に合わせて見直されました。

特定用途のソフトウェアをアップロードすれば動く状態の組立品は、機械に含まれると明記されています(第3条)。安全コンポーネントにはソフトウェアなどのデジタルのものも含まれます。

自動車や鉄道・航空機・船舶、軍用の機械、低電圧指令の対象となる家電やIT機器、電動機などは適用除外です(第2条2項)。自社製品が対象かどうかは、この除外リストと定義の両方を読んで判断します。

機械指令と機械規則の違い

リスクアセスメントを行い、必須健康安全要求事項(附属書に並ぶ安全上の必須要件。以下、必須要求事項)を満たします。そのうえで技術文書を作って適合を宣言する、という骨格は変わりません。

変わったのは、その骨格に載る中身と、責任を負う事業者の範囲です。

図2:機械指令と機械規則の主な違い

手続きの骨格は同じで、デジタル技術と事業者の責任に関する項目が加わりました。

機械指令 2006/42/EC
機械規則 (EU) 2023/1230
法の形式
指令。加盟国が国内法に置き換えて運用
規則。全加盟国に同じ条文を直接適用
義務を負う事業者
製造業者と認定代理人が中心
製造業者・認定代理人・輸入業者・販売業者を定義し、それぞれに義務
高リスク機械の評価
附属書IV(23類型)。整合規格を全面適用すれば内部チェックも選べた
附属書I。パートA(6類型)は第三者認証が必須、パートB(19類型)は条件付きで内部生産管理も可
サイバーセキュリティ
明示的な要求なし
改変からの保護、悪意ある第三者を想定した制御システム(附属書III 1.1.9、1.2.1)
AI・機械学習
明示的な要求なし
自己進化する挙動を含めたリスクアセスメント、記録の保持、第三者認証
取扱説明書
デジタル提供に関する規定なし
デジタル形式で提供可。求めがあれば紙を無償で提供(第10条7項)
改造した者の扱い
条文上の定義なし
「実質的な変更」を定義。行った者は製造業者とみなす(第18条)
文書の呼び方
技術ファイル(附属書VII)、EC適合宣言書
技術文書(附属書IV)、EU適合宣言書

※両法令の条文に基づいて整理。類型の数は附属書の番号の数です。

輸入業者・販売業者にも義務が課される

機械指令の条文には、輸入業者や販売業者という言葉が出てきませんでした。機械規則では、製造業者、認定代理人、輸入業者、販売業者を「経済事業者」として定義し、流通の各段階に確認と保管の義務を置いています(第10〜16条)。

図3:日本の製造業者から見た事業者と主な義務

日本から輸出する場合、EU側の輸入業者や販売業者も確認する立場になります。

製造業者(日本のメーカー)必須要求事項に適合した設計・製造、技術文書、適合性評価、EU適合宣言書、CEマーキング。技術文書と宣言書を10年以上保管(第10条)
書面で委任/輸出
認定代理人EU域内。文書の保管と当局対応。設計適合と技術文書の作成は委任できない(第12条)
輸入業者製造業者が手続きを済ませたかを確認。自社の名称・連絡先を表示(第13条)
販売業者CEマーキング、適合宣言書、取扱説明書の言語を確認(第15条)
提供
使用者(EUの工場など)購入時に求めれば、取扱説明書を紙で受け取れる

※輸入業者や販売業者が自社の名称・商標で販売する場合や、適合性に影響しうる改変をした場合は、製造業者とみなされます(第17条)。

日本のメーカーにとっての実務上の影響は、EU側の取引先から求められる情報が増える点です。

輸入業者は、製造業者が適合性評価と技術文書の作成を済ませたことを確かめ、適合宣言書の写しを10年以上保管する立場になりました。宣言書や取扱説明書の不備は、現地の取引先が販売できない理由になります。

「実質的な変更」をした者は製造業者になる

機械規則は、実質的な変更(substantial modification)を初めて定義しました。

対象は、上市または使用開始の後に、製造業者が予見も計画もしていなかった変更を物理的またはデジタルの手段で加えた場合です。

そのうえで新たな危険源が生じるかリスクが増し、安全制御システムの変更を伴うガード・保護装置の追加や、安定性・強度を確保する追加の保護方策が必要になるものを指します(第3条16号)。

この変更を行った者は製造業者とみなされ、適合性評価をやり直して自らの責任で適合を宣言します(第18条)。納入後の改造を現地の使用者やシステムインテグレーターが行うケースでは、誰が製造業者の立場になるのかを契約で決めておく必要があります。

メーカー側にもできることがあります。

将来のソフトウェア更新やオプション追加は、あらかじめ設計とリスクアセスメントに含め、取扱説明書に記しておきます。そうすれば、その範囲は「予見・計画されていない変更」にはあたりにくくなります。

ただし個別の改造が該当するかどうかは、認証機関や専門家への確認が欠かせません。

新しく加わった必須要求事項(附属書III)

作業者の手元の近くで部品を置く協働ロボット

必須要求事項は、機械指令では附属書I、機械規則では附属書IIIに置かれています。ガード、非常停止、安定性といった従来の項目は引き継がれ、そこにネットワーク接続と自律的に動く機械を前提にした項目が加わりました。

図4:附属書IIIで新しく加わった主な要求

いずれも「安全に影響する範囲」で求められます。

改変からの保護(1.1.9)安全に関わるソフトウェアとデータを特定し、偶発的・意図的な改変から保護する。介入や変更の証跡を残す
制御システムの信頼性(1.2.1)合理的に予見できる第三者の悪意ある試みにも耐える。安全ソフトウェアの版の追跡ログを5年間利用可能にする
自己進化する挙動学習で挙動が変わる機械は、定めたタスクと動作空間を超えない。安全に関する判断の記録を1年間保持する
人と機械の共存・自律移動共有空間での接触と心理的ストレスを防ぐ(1.3.7)。自律移動機械は囲われた区域か、人・障害物の検知装置を備える(3.3.3)

※要求が適用されるのは、その機械に該当する危険源がある場合です(附属書III 一般原則2)。

サイバーセキュリティ:安全に関わる改変を防ぐ

附属書IIIの1.1.9は「改変からの保護」という項目です。

求めているのは、他の機器の接続や遠隔からの通信が危険な状態を招かないこと、安全上重要なソフトウェアとデータを特定して保護することです。ソフトウェアへの介入や設定変更の証跡を機械が収集することも求めています。

1.2.1では、制御システムが耐えるべき外部からの影響に「合理的に予見できる第三者の悪意ある試み」が加わりました。

上市後にアップロードされた安全ソフトウェアの版と介入のデータは、追跡ログとして5年間利用できるようにします。この記録は、当局から理由を示した要請があったときに適合を示す目的に限って使われます。

EUにはサイバーレジリエンス法(規則 (EU) 2024/2847、2027年12月11日から全面適用)という別の法律もあります。

同法の前文は、機械規則の対象でもある製品は両方の要求に適合する必要があるとしています。そのうえで、サイバーレジリエンス法への適合が機械規則の1.1.9と1.2.1への適合を助けうると述べています(前文53)。

ただし、その相乗効果は製造業者が示す必要があり、適合性評価もそれぞれの法律の手続きに従います。機械規則が見ているのは、あくまで人の安全に影響する範囲の保護です。

AI・機械学習:自己進化する挙動を設計時に織り込む

リスクアセスメントの一般原則にも追加があります。機械が自己進化する挙動やロジックを持つ場合は、上市の時点で予見できるライフサイクル中の変化による危険源を含めることになりました。

学習の段階を含め、危険な状態につながる設定やルールの変更は防がなければなりません。

2026年7月24日に官報へ掲載された規則 (EU) 2026/1744(AIに関するデジタル・オムニバス)は、機械規則にも手を入れています。

欧州委員会は、AI法で高リスクに分類されるAIシステム(安全コンポーネントとして使われるものなど)に関する要求を、委任法で附属書IIIに追加することになりました。その委任法は2028年8月2日までに適用されます。

ロボットが状況を認識して自律的に動くフィジカルAIの技術を安全機能に使う場合は、機械規則の現行の要求に加えて、この委任法の内容も追う必要があります。委任法そのものは、2026年10月1日時点では確認できていません。

人と機械の共存、自律移動機械

可動部に関する1.3.7には、人と機械が同じ空間で働くことを前提にした記述が入りました。接触のリスクに加え、機械との相互作用で生じる心理的ストレスの防止まで対象にしている点が新しいところです。

柵なしで人と並んで作業させる場合の考え方は、協働ロボットの導入手順で扱ったリスクアセスメントと重なります。

移動機械の章には「自律移動機械」の定義が加わりました。

自律移動機械は、リスクアセスメントの結果に応じて、次の一方または両方を満たす必要があります(3.3.3)。ガードや保護装置で囲われた区域の中で動くこと、人や障害物を検知する装置を備えることです。

工場内搬送で使われるAGVやAMRを欧州へ出す場合に関係する項目です。

適合性評価はどう変わるか|附属書IのパートAとパートB

適合性評価は、機械が必須要求事項を満たしていることを示す手続きです。機械規則では、リスクが高いとされる類型を附属書Iに並べ、パートAとパートBで選べる手続きを分けています(第25条)。

図5:附属書Iの区分と適合性評価の手続き

パートAは、整合規格に従って設計しても第三者認証が必要です。

附属書I パートA第三者認証が必須EU型式審査+型式適合、完全品質保証、ユニット検証のいずれか。機械学習で安全機能を担う安全コンポーネントと組込みシステム、車両整備用リフトなど6類型
附属書I パートB条件付きで内部生産管理も可その類型の整合規格(または共通仕様)がすべての関連要求をカバーし、それに従って設計・製造した場合に限る。手動で材料を出し入れするプレスや射出成形機、人を検知する保護装置、安全機能を担うロジックユニットなど19類型
附属書Iに載っていない機械内部生産管理製造業者が自ら技術文書を作り、適合を宣言する(モジュールA)。附属書Iのどの類型にも当たらない機械は、すべてこの手続き(第25条4項)
パートAの類型は、旧附属書IVのうち4類型に、機械学習を使う安全機能の2類型を加えたもの。CEマーキングには通知機関の識別番号が付く(第24条3項)。

機械指令では、附属書IVに載る機械でも、整合規格がすべての必須要求事項をカバーしている場合がありました。その規格に従って製造していれば、製造業者自身の内部チェックで済ませることができたのです。

機械規則のパートAにはその選択肢がなく、必ず通知機関(ノーティファイドボディ。第三者の認証機関)が関与します。

パートAの5番と6番が、機械学習を使う安全機能です。

前文によると、この第三者認証の規定が適用されるのは、機械学習によって自己進化するシステムだけです。学習も進化もせず、決められた自動機能を実行するだけのソフトウェアには適用されません。

安全に関わる制御をどの水準で作り込むかは、機能安全の考え方が土台になります。

自社の機械が附属書Iのどれに当たるのか、どの手続きが必要なのかは、この記事だけでは判断できません。類型の該当性と手続きの選択は、通知機関、EUの認定代理人、CEマーキングの専門家に確認してください。

取扱説明書・適合宣言書・技術文書の変更点

図面を綴じたファイルをめくる設計者の手元

文書まわりは、現行機種をそのまま出し続ける場合でも必ず手を入れることになる部分です。宣言書の参照法令が変わるため、2027年1月20日以降に上市する機械は例外なく作り直しが発生します。

図6:文書ごとの主な変更点

どの文書に何を足すのかを、条文の番号と合わせて確認します。

機械規則での要求
見直しのポイント
取扱説明書
デジタル形式で提供可。アクセス方法を機械に表示し、印刷・保存できる形式で、上市後10年以上オンラインで閲覧可能にする(第10条7項)
購入時に求められれば1か月以内に紙で無償提供。一般消費者が使いうる機械は安全情報を紙で付ける
EU適合宣言書
附属書V パートAの様式。添付するか、取扱説明書にURLや機械可読コードを記載(第10条8項)
参照法令を機械規則に。整合規格は官報掲載日も記載。モジュールAによる場合はその旨
技術文書
附属書IV。上市後10年以上保管(第10条3項)
安全関連ソフトウェアのソースコードまたはプログラムロジック、センサーデータで制御する安全動作の説明を追加
機械への表示
型式・製造年・識別番号、製造業者の名称と住所(第10条5項・6項)
ウェブサイトやメールなどのデジタルの連絡先を加える。輸入業者の表示も必要
半完成機械
EU組込宣言書と組立説明書(第11条、附属書XI)
組立説明書もデジタル提供が可能。技術文書は附属書IV パートB

※取扱説明書の言語は、加盟国が定める「使用者が容易に理解できる言語」です。

取扱説明書はデジタルで提供できる

機械規則は、取扱説明書をデジタル形式で提供できると明記しました。

条件は3つあります(第10条7項)。

1つ目はアクセス方法を機械または包装・添付文書に表示すること、2つ目は使用者が印刷・ダウンロードして端末に保存できる形式にすることです。3つ目は、機械の想定寿命の間かつ上市後少なくとも10年間はオンラインで閲覧できるようにすることです。

紙がなくなるわけではありません。使用者が購入時に求めた場合、製造業者は1か月以内に紙の取扱説明書を無償で提供します。職業として使う人以外が使う可能性のある機械では、安全に使い始めるために不可欠な安全情報を紙で付ける必要があります。

技術文書にソフトウェアの情報が加わる

技術文書の必須項目には、安全関連ソフトウェアのソースコードまたはプログラムロジックが加わりました。

常に提出するものではなく、当局が適合を確認するために必要として、理由を示して要請した場合に提供する位置づけです(附属書IV パートA (m))。

センサーの入力で動く機械、遠隔操作の機械、自律的に動く機械のうち、安全に関わる動作がセンサーデータで制御されるものもあります。

こうした機械では、システムの特性・能力・限界と、データ、開発、試験、検証のプロセスを説明する文書も求められます(同 (n))。

制御ソフトを外部に委託している場合は、この情報を受け取れる契約になっているかを確かめてください。

装置メーカーが進める6つのステップ

工場の通路を走る搬送用の自律移動ロボット

ここからは、条文の構成に沿って対応の順番を整理します。以下に出てくる例は、説明のために設定した架空の装置メーカー(A社)の想定例です。

A社は、協働ロボットを組み込んだ自動組立装置、搬送用のAMR、他社の装置に組み込むユニットの3種類を欧州へ出していると仮定します。

図7:機械規則への対応6ステップ

前半で「何が対象で、何が足りないか」を固め、後半で設計と文書を直します。

把握する
STEP 1対象製品の洗い出し機種ごとに、機械・関連製品・半完成機械のどれかと、2027年1月20日以降の出荷予定を整理
STEP 2附属書Iへの該当確認パートA、パートB、該当なしのどれか。通知機関が必要かを先に確かめる
STEP 3必須要求事項の差分確認附属書IIIを現行の適合チェックリストと突き合わせ、新しい項目を拾う
直す
STEP 4リスクアセスメントの見直し接続・遠隔操作・ソフト更新・自律動作に由来する危険源を追加
STEP 5文書の更新技術文書、取扱説明書、EU適合宣言書、銘板の表示を機械規則に合わせる
STEP 6適合性評価と出荷日の管理手続きを実施し、上市日が切り替え日の前か後かを機種ごとに管理

※ステップ2〜3の結果によって、ステップ4以降の作業量が大きく変わります。

ステップ1:対象製品を洗い出す

最初に、欧州向けに出している機種を一覧にします。機種ごとに、機械・関連製品・半完成機械のどれにあたるか、現在の適合宣言書の参照法令、2027年1月20日以降も出荷するか、を書き出します。

受注生産の装置は、仕様ごとに別の機械として扱うほうが漏れがありません。

A社の想定例では、自動組立装置とAMRが機械、組込み用ユニットが半完成機械になります。半完成機械は適合宣言書ではなく組込宣言書と組立説明書を付けるため、文書の更新対象が変わります。

ステップ2:附属書Iへの該当を確認する

次に、各機種が附属書IのパートA・パートBに当たるかを確かめます。機械そのものが該当しなくても、組み込んでいる安全コンポーネントが該当する場合があるため、部品表の安全関連部品も対象に含めます。

A社の想定例では、AMRの障害物検知に機械学習を使った画像認識を採用し、それを安全機能として使っているなら、パートAの6番に当たる可能性が出てきます。

安全機能は認証済みのセーフティレーザスキャナに任せ、画像認識は経路の最適化だけに使う構成であれば、扱いは変わりえます。どちらに当たるかは通知機関に確認する事項です。

ステップ3:必須要求事項の差分を確認する

機械指令の附属書Iで作ってきた適合チェックリストを、機械規則の附属書IIIと項目ごとに突き合わせます。機械規則の附属書XIIには新旧の条文の対応表があり、どの条がどこへ移ったかをたどれます。

新しく拾う項目は、前の章で挙げた1.1.9、1.2.1、1.3.7、移動機械の章が中心です。

ネットワークに接続しない単体の機械でも、保守用のポートやソフトウェアの書き換え手段があれば1.1.9の検討対象になりえます。「該当しない」と判断した項目は、その理由を技術文書に残します。

ステップ4:リスクアセスメントを見直す

差分が分かったら、リスクアセスメントに危険源を追加します。機械の限界の決定、危険源の同定、リスクの見積りと評価、低減という流れは従来と同じで、ISO 12100に沿った進め方がそのまま使えます。

新しく入れるのは、不正なアクセスや誤った更新で安全機能が働かなくなる場面です。

A社の自動組立装置なら、遠隔保守の接続経由で安全PLCのパラメータが書き換えられる場面や、協働ロボットの速度制限が解除される場面を挙げます。そのうえで、アクセス制限や変更履歴の記録で対処する、という整理になります。

複数の機械が一体で動くラインでは、機械どうしの相互作用によるリスクも対象です。

設計のどの段階でこの検討を入れるかは、機械設計の仕事の流れでいう構想設計とデザインレビューの時点が現実的です。納入先の工場側が行うリスクアセスメントとは目的も範囲も異なるため、区別して進めてください。

ステップ5:技術文書・取扱説明書・適合宣言書を更新する

文書は、図6の項目に沿って機種ごとに更新します。適合宣言書は参照法令と様式を機械規則に合わせ、適用した整合規格を書き直します。

取扱説明書は、デジタル提供に切り替えるかどうかを決め、切り替える場合は10年以上公開し続ける置き場所と管理者を社内で決めます。

A社の想定例では、装置ごとの取扱説明書を自社サイトに置き、銘板に二次元コードを付ける方法が考えられます。機種の改版で説明書が変わったときに、出荷済みの機械に対応する版を残しておく運用まで含めて設計します。

ステップ6:適合性評価を行い、出荷日を管理する

最後に、ステップ2で確認した手続きで適合性評価を進めます。通知機関が関与する機種は、審査の予約と期間を早めに押さえます。

切り替え日の前後にまたがる案件は、どちらの法令で宣言するかを上市日で決めることになるため、受注から出荷までの日程と合わせて管理します。

適用開始まで、2026年10月1日時点で4か月を切っています。全機種を同時に進めるのが難しい場合は、2027年1月20日以降の出荷が確定している機種と、パートA・パートBに当たりうる機種から着手するのが順当です。

2026年10月時点の状況|整合規格・ガイド・改正の動き

法律の本文は確定していますが、運用を支える規格やガイドはまだ出そろっていません。決まったこと、審議中のこと、確認できていないことを分けて把握しておくと、社内での説明がぶれません。

図8:2026年10月1日時点の状況

タグの色で、確定の度合いを区別しています。

適用開始日
決定2027年1月20日。機械指令は同日付で廃止(第51条、第54条)
高リスクAIの要求追加
決定規則 (EU) 2026/1744 が成立。委任法は2028年8月2日までに適用。委任法の本文は未確認
指令側の整合規格リスト
決定実施決定 (EU) 2026/2015 により、2027年1月20日付で廃止
規則側の整合規格リスト
準備中欧州委員会が実施決定を準備中と説明。官報への掲載は確認できていない
宣言書などのデジタル化
暫定合意・未成立オムニバスIVの規則案 COM(2025) 504。2026年6月9日に暫定合意。合意条文では機械規則部分の適用は改正規則の発効から30か月後。本会議採決は2026年11月23日の予定
サイバー要求の適用延期
要望のみ業界団体が1.1.9と1.2.1(f)の2027年12月11日への延期を要望。延期の法案・決定は確認できていない

※欧州委員会、EUR-Lex、EU理事会、欧州議会の公開情報による。未成立の項目は内容が変わる可能性があります。

整合規格とガイド

整合規格は、官報に参照が掲載されて初めて、適合の推定(その規格に従えば対応する必須要求事項を満たすとみなされる効果)を持ちます(第20条1項)。

欧州委員会は2025年1月20日付で、実施決定 C(2025) 129(標準化要請 M/605)を出しました。欧州の標準化機関であるCENとCENELECに、機械規則を支える規格の作成・改訂を要請したものです。

2026年10月1日時点で、欧州委員会のページは機械規則のもとでの整合規格リストを含む実施決定を「準備中」としています。現在機械指令のもとで掲載されている整合規格の大部分が、そこに載る見込みです。

一方、機械指令のもとでのリストは、2026年9月7日に官報へ掲載された実施決定 (EU) 2026/2015 で、2027年1月20日付の廃止が決まりました。

どの規格で適合を推定できるかは、規則側のリストが掲載されるまで確定しません。

条文の解釈を示す適用ガイドも、欧州委員会のページに掲載されているのは機械指令のガイド(第2.3版、2024年4月)です。機械規則のガイドの公表は確認できていません。

パートBの機械を内部生産管理で進めたい場合は、整合規格の掲載状況が手続きの選択に直結するため、官報の動きを定期的に確認する担当を決めておくとよいでしょう。

成立した改正と、審議中の改正

成立済みの改正は2つあります。域内市場の緊急事態に備えた手続きを加えた規則 (EU) 2024/2748 と、先に触れた規則 (EU) 2026/1744 です。

後者は、移行期間の規定も加えています。機械規則のもとで高リスクAIの整合規格が整うまでの間は、AI法に基づく整合規格や共通仕様に適合すれば、機械規則のAIに関する要求にも適合すると推定されます。

まだ成立していないのが、「デジタル化と共通仕様」の規則案(COM(2025) 504)です。2025年5月21日に欧州委員会が提案したもので、オムニバスIVと呼ばれる一括法案の一部です。

EU理事会と欧州議会の交渉担当者は2026年6月9日に暫定合意しました。

理事会の常駐代表委員会は、6月26日に合意条文(理事会文書 10980/26)を確認しました。機械規則に関する主な内容は次のとおりです。

1つは、EU適合宣言書と組込宣言書をデジタル形式で作成し、機械にはそこへ直接アクセスできるURLや機械可読コードを付けることです。

ほかに、当局や通知機関への情報・文書の提供をデジタル形式にすること、「デジタル連絡先」の定義を加えることなども入りました。

適用の時期は、提案から変わりました。

欧州委員会の提案では、機械規則に関する部分を2027年1月20日から適用するとしていました。合意条文では、この改正規則の発効から30か月後に適用するとされています。

それより前に従来の規定に沿って上市した製品の流通は妨げない、という経過措置も置かれました。

合意条文どおりに成立した場合でも、2027年1月20日の時点で求められるのは現行の規定(第10条8項)です。宣言書を添付するか、取扱説明書にURLや機械可読コードを記載します。

欧州議会の公開情報によると、合意した条文は2026年7月14日に議会の委員会で承認され、本会議での採決は2026年11月23日の予定です。

2026年10月1日時点で当サイトが確認した範囲では、条文の法的・言語的な最終確認の段階で、官報には掲載されていません。

成立すれば、数年後に宣言書の扱いが変わります。ステップ5の作業では、宣言書をURLや二次元コードで参照する形にも移しやすいよう準備しておくと、手戻りが少なくなります。

適用開始は延期されるのか

建設機械、工作機械、農業機械などの欧州の業界団体は、2026年1月19日付の共同文書で延期を求めました。

対象は、サイバーセキュリティに関わる附属書IIIの1.1.9(改変からの保護)と1.2.1(f)(追跡ログ)の適用です。サイバーレジリエンス法の全面適用日である2027年12月11日に合わせるよう求めています。

これは業界からの要望であり、法案ではありません。2026年10月1日時点で当サイトが確認した範囲では、機械規則の適用開始日や一部要求の適用を延期する欧州委員会の提案や、成立した法令はありません。

欧州委員会の機械のページも、機械規則は2027年1月20日から義務として適用されると説明しています。

上で触れたオムニバスIVの合意条文にも、機械規則そのものの適用開始日や1.1.9・1.2.1の適用を遅らせる規定は含まれていません。

計画は2027年1月20日を前提に立て、延期の動きは公式発表が出た時点で反映するのが現実的です。

よくある誤解

「自己宣言はできなくなる」わけではない

附属書Iに載っていない機械は、機械規則でも内部生産管理(モジュールA)、つまり製造業者が自ら適合を確認して宣言する方法で進めます(第25条4項)。

第三者認証が必須になるのは、附属書I パートAの6類型と、パートBで整合規格を全面的に適用していない場合です。

「出荷済みの機械が使えなくなる」わけではない

2027年1月20日より前に機械指令に適合して上市された製品は、その後も流通を妨げられません(第52条1項)。

ただし、その機械に後から実質的な変更を加えると、変更した者が機械規則のもとで製造業者の義務を負うことになります。

保全作業の安全手順であるロックアウト・タグアウトのように、使用段階の安全管理は各国の労働安全のルールに従う点は変わりません。

「取扱説明書はPDFを置けば済む」わけではない

デジタル提供には、アクセス方法の表示、印刷・保存できる形式、10年以上の公開という条件が付きます。求められれば紙で無償提供する体制も必要です。言語は、販売先の加盟国が定める、使用者が容易に理解できる言語で用意します。

「罰則は一律に決まっている」わけではない

機械規則は、罰則を効果的で、違反の程度に見合い、抑止力のあるものにするよう加盟国に求めていますが、金額は定めていません(第50条)。

具体的な内容は加盟国ごとの法律で決まり、重大な違反には刑事罰を含めることもできるとされています。販売先の国の罰則は、現地の代理人を通じて確認してください。

まとめ

この記事のまとめ
  • EU機械規則(規則 (EU) 2023/1230)は2027年1月20日に適用開始となり、同日付で機械指令は廃止される。2026年10月1日時点で適用開始日を延期する提案・法令は確認できない
  • サイバーセキュリティ、機械学習を使う安全機能、人と機械の共存、自律移動機械に関する要求が加わった
  • 附属書I パートAの6類型は第三者認証が必須。パートBは条件付きで、附属書Iに載っていない機械は内部生産管理(モジュールA)で進められる
  • 取扱説明書はデジタル提供が可能になり、技術文書にはソフトウェアの情報が加わる。宣言書は全機種で作り直しになる
  • 機械規則のもとでの整合規格リストは未掲載。宣言書のデジタル化の改正は暫定合意の段階で、合意条文では適用は改正規則の発効から30か月後。該当区分と手続きは通知機関や認定代理人に確認する

機械規則への対応は、安全設計、制御ソフト、文書管理、海外営業がそれぞれの持ち場で動く仕事です。関連する職種として機械設計や電気・電子設計の記事もあわせてご覧ください。

業界の動きは、FA・自動化システムや産業機械・工作機械の業種ページにまとめています。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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