アイソレータ(信号絶縁器)とは?役割と仕組み・回り込み防止

制御盤内に並ぶ信号絶縁器と入出力の配線

アイソレータ(信号絶縁器)は、入力回路と出力回路を直流的に切り離し、測定値を別の回路へ伝える機器です。4-20mAなどの信号を受け取り、同じ種類の信号や1-5Vへ変換して出力します。

入力側で流れていた電流が、そのまま絶縁部分を通り抜けるわけではありません。測定値の情報を磁気や光などで伝え、出力側で対応する信号を作るため、接地の異なる機器をつなげます。

役割と内部の仕組みを確認した後、絶縁・ノイズ対策・回り込み防止の違いを整理します。複数の受信器をつなぐ回路図と負荷抵抗の計算例から、仕様書で見る箇所まで説明します。

動画の0:27〜1:45には、高周波用の一方向伝送・終端抵抗の説明が混在しています。計装用は入力値を絶縁して再現する機器であり、逆向きの反射波を吸収する部品とは役割が異なります。

1:50頃の逆向き遮断は、計装用の絶縁の定義ではありません。2:03頃の漏電・電源変動からの保護にも、個別の機能と定格が必要です。回り込みは接地電位差のほか、共通接地で受信抵抗が迂回される場合にも起こります。

目次

アイソレータの役割

英語のisolateは分離する、絶縁するという意味です。計装用アイソレータは、信号が表す測定値を伝えながら、回路間の直流の導通を切る役割を持ちます。

例えば、圧力発信器の4-20mAを受け、制御盤へ同じ4-20mAを出します。入出力を同じレンジにする場合でも、現場側と制御盤側を電気的に分ける意味があります。

図1:電流は二つの回路を流れ、測定値が絶縁部分を渡る

独立した二つの閉回路で、同じ測定値を対応する電流として表します。

図は横にスクロールできます。

圧力発信器入力側出力側受信計器入力電流出力電流破線の境界:直流の導通なし出力源入力抵抗受信抵抗情報

※給電済み発信器と外部電源式アイソレータの信号部分を簡略化した模式図です。出力電流源を動かす電力は、アイソレータの電源側から供給します。

4-20mAは測定範囲の下限を4mA、上限を20mAで表す信号です。電流で値を伝える理由と異常時の扱いは、4-20mAの仕組みを押さえると理解しやすくなります。

絶縁に加え、4-20mAを1-5Vへ変える機能を持つ製品もあります。受信側が要求する信号に合わせる変換と、接地系統を分ける絶縁は、別々に仕様を読む項目です。

制御盤から見れば、計器の測定値を受ける端子はAI(アナログ入力)です。指令を出すAOとの向きの違いは、DI/DO・AI/AOの種類と方向で整理できます。

2出力形とディストリビュータの違い

一つの測定値を記録計と制御装置へ別々に送りたい場合は、2出力形が選択肢になります。出力同士も絶縁された製品なら、受信機器間の共通端子を信号変換器の内部で切り離せます。

一方、計装用のディストリビュータは、2線式伝送器へ電源を供給して信号を受け取る機器を指します。絶縁や2出力を備える製品もありますが、「2出力ならディストリビュータ」とは決まりません。

2線式では信号線が伝送器の電源線も兼ねるため、給電する機器がどれかを決めます。信号を受けるだけの入力へ伝送器を接続しても、駆動電源がなければ測定回路は動きません。

アイソレータの仕組み

DINレールに取り付けられた信号変換器と細い信号配線

トランスを使う方式では、直流の入力値を交流やパルスなどへ変調し、磁気結合で絶縁境界を渡します。出力側で復調して、元の測定値に比例する電流や電圧へ戻す仕組みです。

直流をそのまま通常のトランスへ加えて伝えるのではなく、伝送できる変化のある信号へ変えるのが要点です。ほかに光を使う方式などもあり、内部構成は製品によって変わります。

図2:信号用と電源用の絶縁経路を分けて考える

入力・出力・電源を分離するには、動作電力の経路にも絶縁が必要です。

図は横にスクロールできます。

入力側変調回路出力側復調・出力信号の絶縁入力専用給電絶縁変換出力専用給電絶縁変換外部電源共通なのは絶縁前の電源側

※上段はトランスによる変調・復調の原理、下段は3ポート絶縁に必要な独立給電を示す概念図です。二つの絶縁変換の出力側は共通接続していません。破線は絶縁境界で、矢印付きの線は電力供給を表します。

3ポート絶縁とは、入力・出力・電源の三つを相互に直流的に分ける構成です。入力と出力の間だけが絶縁されていても、電源の共通線が別経路で両側をつなぐ場合があります。

端子の「COM」「−」「0V」は、必ずしも大地と同じ意味ではありません。どの端子同士が内部で共通かは、制御回路のコモンの考え方と、メーカーのブロック図を照合して読みます。

外部電源が不要なループ給電式も、エネルギーなしで動くわけではありません。信号の入力ループや出力ループから動作電力を受けるため、その分の電圧降下を配線設計に含めます。

電流入力には、信号を受け取る受動入力と、2線式伝送器へ給電する入力があります。出力側にも電流を送り出す方式と、受信側の電源を使う方式があるため、単に「4-20mA同士」だけでは接続を決められません。

例えば、給電機能付きのPLC入力と外部電源式の電流出力を組み合わせる場合、双方の結線条件を照合します。電源を含む二つの出力を無条件につなぐと、意図した電流制御が成立しない原因になります。

アイソレータの用途

主な用途は、絶縁、ノイズの影響の低減、電気信号の回り込み防止の三つです。どこから不要な電流や電圧が入るかを見極めると、アイソレータで改善できる問題を切り分けられます。

絶縁

現場側と制御盤側の接地電位が異なると、その差が信号回路へ加わることがあります。入出力を絶縁すると、両側の基準電位を分けたまま、測定値を受け渡せます。

ただし「絶縁」の表示だけで、人の感電を防ぐ保護絶縁や雷への耐性が決まるわけではありません。必要な保護は、端子間の絶縁クラス、使用電圧、設置条件と過電圧保護を組み合わせて設計します。

例えばエムジーM2VSの仕様書には、耐電圧2000V AC・1分間という試験条件が示されています。これは所定時間の絶縁耐力の値であり、2000Vを常時かけて運転できるという意味ではありません。

同じ仕様書でも、EN 61010-1に関する絶縁クラスや300Vの表示は別項目です。適合コードと端子の組合せで条件が変わるため、試験電圧だけを抜き出して機器の保護能力を判断しません。

アイソレータは、漏電を検出して回路を遮断する機器とも役割が異なります。人や設備の漏電保護には、配線用遮断器と漏電遮断器の違いを踏まえた保護回路が必要です。

ノイズ除去

絶縁が役立つのは、信号回路と大地などの間に加わる同相の妨害や、接地経路を流れる不要電流への対策です。信号の2本の線の間へ混入した雑音まで、一律に除去する機能ではありません。

図3:同相の妨害と、信号に重なった雑音は経路が違う

絶縁で切る経路と、帯域・配線で抑える雑音を分けます。

図は横にスクロールできます。

信号線と大地の間2本の信号線の間同相の電位変化破線矢印は配線ではない帯域・フィルタ・配線を検討

実際の入力に測定値と雑音が重なっていれば、変換器には両方が入力されます。信号と同じ周波数帯の雑音を、測定値だけ残して取り除くことは難しく、発生源や配線の改善が先になります。

フィルタを備える製品では、速い変動を弱める代わりに測定値への追従も遅れます。応答時間の短い機種を選ぶか、変動を平滑化するかは、監視や制御に必要な速さと合わせて決めます。

応答時間は、何%まで変化する時間かも含めて比較します。M2VSでは0→90%の応答が標準形0.5秒以下、高速形約25ミリ秒と記載されており、同じシリーズでも選択によって速さが違います。

電力線との離隔、より対線、シールド処理も信号品質に影響します。シールドの接続は、シールド線の役割と接地を踏まえ、機器の取扱説明書と設備の接地設計に合わせます。

変動が急に始まった場合は、近くのインバータの運転や電源変更との関係も調べます。絶縁器の追加だけで完了とせず、電源側の変動、信号線への誘導、接地経路を別々に記録すると原因を絞れます。

回り込み防止

4-20mAの信号を複数の受信器で読むときは、受信抵抗を直列にする構成があります。このとき各受信器の信号端子が大地や共通0Vへつながると、予定外の電流経路ができます。

図4の上段は、受信器AとBのマイナス端子がともに接地されている例です。AのマイナスとBのマイナスが接地線でつながるため、その間に置いたBの受信抵抗を迂回する経路が生まれます。

図4:共通接地が直列受信器をバイパスする経路

受信器の信号端子が接地される条件を示した例です。絶縁2出力なら受信回路を分けられます。

図は横にスクロールできます。

直列接続+両受信器の信号−を接地Aの抵抗Bの抵抗Bを迂回電流源入力・各出力間が絶縁された2出力形入力AB出力ごとの閉回路で受信する

※上段の破線は信号−の共通接地による回り込み経路です。信号端子が浮いている受信器なら、この図と同じバイパスはできません。下段は信号経路だけを示し、電源と保護接地は省略しています。

この現象は、大地の電位が違う場合だけに起こるものではありません。共通線が受信抵抗を短絡する経路を作れば、接地電位差がなくても直列にしたつもりの回路が崩れます。

さらに離れた接地点に電位差があれば、信号線と接地系統でできた閉回路に不要な電流が流れます。これが接地ループによる誤差で、絶縁はその直流経路を切る対策になります。

保護接地を外して解決する方法は採りません。受信器の絶縁入力を使う、信号経路へ絶縁器を設ける、出力間も絶縁された分配器を使うなど、必要な接地を保った構成にします。

既設の表示計へPLC入力を追加する場合は、追加先の端子共通を先に調べます。PLCの入出力構成では、ユニット単位の絶縁と各チャネル間の絶縁を分けて読むことが大切です。

選定と配線で確かめること

機種は入力と出力のレンジだけでは決まりません。最初に信号を出す機器と受ける機器を決め、信号線上で誰が給電するか、どの端子が内部で共通かを結線図へ書き込みます。

  • 入力・出力の種類、レンジ、極性と給電の有無
  • 入力−出力−電源、出力相互の絶縁範囲
  • 入力抵抗や電圧降下、出力の許容負荷抵抗
  • 精度、応答時間、周囲温度、異常時の出力
  • 使用電圧と絶縁クラス、設置・配線条件

2線式・3線式・4線式の違いは、信号線と電源線の関係に表れます。機器間の端子を対応させる前に、計装機器の線式と配線を整理しておくと、給電の重複や不足を防げます。

負荷抵抗は出力ごとに合算する

電流出力は、接続した抵抗が大きいほど高い端子間電圧を必要とします。出力が用意できる電圧を超えると、指定した電流を維持できず、特に測定範囲の上限側で誤差が出ます。

エムジーM2VSの4-20mA出力は、負荷抵抗750Ω以下が仕様です。例として、受信抵抗250Ωの計器2台と往復配線50Ωを直列につなぎ、他の分岐がない条件で計算します。

図5:750Ωの出力負荷を、受信器と配線に配分する

受信器2台と往復配線を合計すると550Ω。750Ωとの差は200Ωです。

A:250ΩB:250Ω50Ω残り200Ω
合計負荷と最大電流時の端子間電圧
RL = RA + RB + RW
= 250 + 250 + 50 = 550Ω
VL = ImaxRL
= 0.020 × 550 = 11V
750 − 550 = 200Ωの余裕
RL:出力ループの合計負荷[Ω]、RA/RB:受信抵抗[Ω]、RW:往復配線抵抗[Ω]、Imax:最大信号電流[A]、VL:負荷の電圧降下[V]。750ΩはM2VSの製品値、ほかの抵抗は説明用の仮定です。

※負荷条件の成立だけでは、受信器の共通接地による回り込みは解消しません。2出力形なら各出力ループを別に計算します。

一方、アイソレータの入力抵抗は、その前にある発信器にとっての負荷です。出力側の750Ωとは別の条件なので、発信器側でも入力抵抗と配線抵抗を含めて成立を確かめます。

同じ4-20mA入力でも、M2VSには入力抵抗250Ωと50Ωの選択肢があります。最大20mAで必要な電圧はそれぞれ5Vと1Vとなり、前段の発信器に残せる電圧に差が生まれます。

抵抗250Ωへ4-20mAを流すと、両端電圧は1-5Vになります。電流入力と電圧入力の接続を比べるときは、4-20mAと1-5Vの配線・負荷の違いを区別して扱います。

配線後は入力と出力を対応させて試験する

試運転では、承認された手順で安全な状態を確保し、下限・中間・上限の模擬信号を与えます。4-20mAから1-5Vへの変換なら、4・12・20mAに対して1・3・5Vとなる対応を照合します。

入力値だけでなく、アイソレータ出力と最終表示値を分けて記録します。変換器の端子で正しく、画面上だけ違う場合は、受信側のレンジ設定や単位の換算へ調査を進められます。

下限と上限の双方が一定量ずれる場合はゼロ点、下限付近が合って上限でずれる場合はスパン設定が調査対象です。まず入力レンジと配線負荷を照合し、原因が残ったまま調整器で表示だけを合わせることを避けます。

上限付近だけで頭打ちになるときは、出力端子間電圧と負荷条件を見直します。入力が変わっていないのに複数表示が同時に動けば、共通電源や共通端子の接続を調べる手掛かりになります。

信号を切り離すと、運転中の制御装置が異常や操作量の変化として受け取る場合があります。点検は運転への影響を関係者と整理してから実施し、復旧後に端子と設定を元の承認状態へ戻します。

分配出力では両側をそれぞれ試験し、一方の停止や切離しが他方へ与える影響も設計どおりか調べます。信号の行き先は、P&IDと信号ループの関係から端子図まで追える形で残します。

よくある質問

アイソレータを入れると測定精度は上がりますか?

回り込みなどの誤差を減らせますが、変換器自体にも精度や温度変化の影響があります。センサー、変換器、受信器を合わせた誤差を評価し、必要な絶縁を満たす機種を選びます。

3ポート絶縁なら、どこもつながっていませんか?

製品内部の入力・出力・電源が相互に直流的に分離されるという意味です。外部配線で信号の共通線をつなげば別経路ができるので、機器単体の絶縁と設備全体の接続を合わせて見ます。

4-20mAを2台へ並列に分けられますか?

単純な並列配線では電流が分かれ、各受信器に元の4-20mAが流れません。直列接続の成立条件を満たすか、出力ごとに信号を作る絶縁2出力形を使用します。

電源不要形は外部電源式より使いやすいですか?

別の電源配線を省けますが、信号ループから取る電力に応じた電圧降下が生じます。発信器や受信側電源の余裕を確かめ、信号レンジと出力負荷に合う構成を選びます。

高周波回路のアイソレータも同じものですか?

用途が異なり、高周波用は順方向へ信号を通し、逆方向の反射を吸収する部品です。3ポートのサーキュレータの一つを抵抗で終端し、残りの2ポートを入出力にする構成が代表例です。

まとめ

この記事のまとめ
  • 計装用アイソレータは、測定信号を伝えながら入出力の直流の導通を切る機器
  • 入力・出力・電源や、出力同士の絶縁範囲は製品のブロック図で読む
  • 接地ループ対策と、信号に重なる雑音へのフィルタ処理は別の機能
  • 複数受信器の共通接地が迂回経路を作る場合は、信号回路を絶縁して分ける
  • 試験の耐電圧と連続使用条件を区別し、入出力それぞれの負荷を確認する

現場の機器を調べる際は、型式とレンジに加えて、結線図の絶縁境界を見つけると役割が分かります。信号と電源、保護接地を区別し、測定値が届くまでの経路を一つずつ追ってみてください。

出典

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MONOSCOPEの運営者

プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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