工場や倉庫の通路では、荷を積んだフォークリフトと歩く人が同じ場所を行き来しています。2025年にフォークリフトが原因となった労働災害の死傷者は1,872人(休業4日以上)、うち死亡者は19人でした。
事故の型では、走行中の車両や荷が人にぶつかる「激突され」と、車体と物の間にはさまれる「はさまれ・巻き込まれ」で、全体の約6割を占めます。
人と車両が同じ場所を使う限り、運転者の注意だけでは防ぎきれないため、通る場所を分ける「歩車分離」が対策の軸になります。
この記事では、令和7年(2025年)の確定値で見る事故の現状、多い事故の型、原因の切り分け方をまず整理します。続いて、歩車分離を軸にした対策、法令で決まっている資格・作業計画・点検、運転者と歩行者のルール、対策の進め方を見ていきます。
フォークリフト事故の現状|2025年の死傷者は1,872人
厚生労働省の労働災害統計(確定値)で、令和7年(2025年)にフォークリフトが起因物となった労働災害を見ます。死傷者数は休業4日以上で1,872人、うち死亡者は19人でした。
日本産業車両協会も同じ統計をもとに毎年の発生状況をまとめており、数字は一致しています。
死傷者数は2022年の2,092人から3年続けて減っていますが、減り方はゆるやかです。死亡者数は34人、22人、16人、19人と推移しており、2025年は前年より3人増えました。
休業4日以上の死傷者数は減少が続く一方、死亡者数は年によって増減しています。
※厚生労働省「労働災害統計(確定値)」、日本産業車両協会「フォークリフトに起因する労働災害の発生状況(確定値)」より作成。いずれも起因物がフォークリフトの災害。
業種別に見ると、2025年は運輸交通業が642人、製造業が558人、商業が345人でした。製造業は全体の約3割を占め、運輸交通業と並んでフォークリフト災害の多い業種です。
製造業の内訳では、食料品製造業が125人、金属製品製造業が76人、化学工業が72人、輸送用機械器具製造業が54人と続きます。
もう一つ押さえておきたいのは、けがの重さです。同じ統計から計算すると、休業4日以上の死傷者に占める死亡者の割合は、全産業・全起因物の合計で約0.5%(700人/135,333人)です。
フォークリフトが起因物の災害では約1.0%(19人/1,872人)になります。2025年の数字で見ると、死亡に至る割合が全体の約2倍です。
死亡者数は年によって増減するため、この割合も年ごとに変わります。
製造業に限ると、2025年のフォークリフトによる死亡者は6人で、前年の1人から増えました。製造業全体の死亡者115人の約5%にあたります。
件数だけを見て「うちは年に1件あるかないか」と考えるのではなく、1件の重さで優先度を判断したい領域です。
多い事故の型は「激突され」と「はさまれ・巻き込まれ」

労働災害の統計では、災害を「事故の型」で分類します。2025年のフォークリフト災害1,872人を型別に見ると、「激突され」が598人、「はさまれ・巻き込まれ」が564人で、この2つだけで全体の約62%になります。
上位2つの型で約6割。墜落・転落、激突、飛来・落下が続きます。
※厚生労働省「令和7年 労働災害統計(確定値)」事故の型別・起因物別の集計より作成。割合は合計1,872人に対する値。「その他の型」は動作の反動・無理な動作51人、転倒48人、崩壊・倒壊43人など。
前年と比べると、「はさまれ・巻き込まれ」は683人から564人に減りました。一方、「激突され」は564人から598人、「墜落・転落」は215人から246人、「激突」は148人から188人に増えています。
型ごとに起き方が違うため、自社で多い型を把握してから対策を選ぶのが近道です。
激突され|走行・後退してきた車両や荷に当てられる
「激突され」は、物が主体となって人に当たった場合を指す分類です。フォークリフトでは、走行中や後退中の車体、フォーク、運んでいる荷が周囲の人に当たる災害がこれにあたります。
運転者本人ではなく、近くで作業していた人や通路を歩いていた人が被災する形です。
厚生労働省「職場のあんぜんサイト」に、一般貨物自動車運送業の事例があります。パレットを前方が見えなくなるほど高く積んで前進走行し、歩行中の作業者に後ろから接触したものです。
原因として、積みすぎで前が見えにくかったことと、歩行者が後方から来る車両に気づかなかったことの両方が挙げられています。
後退時にも注意が必要です。
岩手労働局の花巻労働基準監督署は、管内で令和元年から令和5年までに起きたフォークリフトによる休業4日以上の災害24件を集計しています。そのうち約40%がバック走行時に発生していたと報告しています。
一つの監督署管内の集計であり全国の数字ではありませんが、後退時に後方の確認が抜けやすいことを示す例です。
はさまれ・巻き込まれ|車体と物の間、タイヤ、マスト
「はさまれ・巻き込まれ」は、物にはさまれてつぶされるような災害で、分類上は車両にひかれる場合も含みます。2025年の死亡者19人のうち6人がこの型で、死亡災害では最も多くなっています。
起き方はいくつかあります。車体と柱・壁・荷の間に周囲の人がはさまれる、足をタイヤにひかれる、運転者が運転席から身を乗り出してマストとヘッドガードの間にはさまれる、といった形です。
花巻労働基準監督署の資料には、フォークに荷のひもを掛ける作業中、サイドブレーキを引いていなかったために車両が前進し、ひかれて骨折した製造業の事例も載っています。
墜落・転落|フォークやパレットを足場代わりにする
「墜落・転落」は246人で、死亡者も4人出ています。代表的なのは、フォークやパレットの上に人を乗せて高い場所の作業をする使い方です。
職場のあんぜんサイトには、フォークリフトで持ち上げたパレット上(地上約4.5m)で作業していた人が墜落して亡くなった建設業の事例があります。
この事例では、作業計画がなかったこと、手すりなどのある作業床を用意しなかったこと、安全衛生教育をしていなかったことが原因として挙げられています。
業種は違っても、同じ使い方をすれば工場でも起こりうる災害です。高所の作業は高所作業車など本来の設備で行うのが原則で、後述のとおり用途外使用は法令でも制限されています。
激突、飛来・落下、転倒|運転者自身や荷に関わる災害
「激突」は人が主体となって物に当たる型、「飛来・落下」は落ちてきた荷などに当たる型です。偏った積み方や、傷んだパレットの使用、急な旋回・停止による荷崩れが背景にあります。
件数は多くないものの、死亡につながることがあるのが車両ごとの転倒です。
職場のあんぜんサイトには、資格のない人が運転を指示され、建物の角で曲がった際にスリップして転倒し、車体の下敷きになって亡くなった建設業の事例があります。
タイヤがすり減っていたこと、月次・年次の検査をしていなかったこと、キーが挿したままで誰でも使えたことが原因に挙げられています。
フォークリフト事故の原因を4つに分けて考える
事故の報告書では、原因が「確認不足」「不注意」の一言で片づけられがちです。それでは対策が「注意する」しか出てきません。事例で挙げられている原因を整理すると、大きく4つに分けられます。
「不注意」で終わらせず、どこに原因があるかを切り分けます。
※職場のあんぜんサイトの災害事例、厚生労働省のガイドラインで挙げられている原因・対策をもとに整理。
1と2は職場のつくり、3は管理の仕組み、4は設備の状態に関わる原因です。どれも運転者個人の注意力とは別のところにあります。
フォークリフトは、車体の構造上、運転席からの視界に限界がある車両です。厚生労働省の技能講習用の補助教材も、視界の限界による物や歩行者との接触を主な災害の一つに挙げています。
運転者から見えていない場所に人が入れる状態を残したまま、確認の徹底だけを求めても、作業が立て込んだ場面で同じことが起こります。対策は、1から順に職場のつくりを見直すところから始めるのが基本です。
対策の柱は歩車分離|人と車両が交わる場所を減らす

歩車分離とは、人が歩く場所とフォークリフトが走る場所を分けることです。
厚生労働省は「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン」を示しています。フォークリフト災害の防止策として挙げているのが、「フォークリフトの走行場所と歩行通路を区分すること」です。
このガイドラインは運送事業者向けの名称ですが、荷を受け渡す側の事業場(荷主等)が実施する事項も示しています。その中にも、自社が管理する施設で走行場所と歩行通路を区分することが入っており、トラックが出入りする工場にも関係する内容です。
上にあるものほど、人の注意に頼らずに済みます。上から順に検討します。
※リスク低減措置の優先順位の考え方を、フォークリフトと人の接触に当てはめたもの。どの段階でも災害の可能性がゼロになるわけではありません。
走行場所と歩行通路を区分する
最初に行うのは、構内の図面にフォークリフトの運行経路と人の動線を書き込み、重なっている場所を洗い出すことです。そのうえで、歩行通路を床のラインで示し、交通量の多い区間は柵やガードポールで仕切ります。
労働安全衛生規則第540条は、作業場内に安全な通路を設けて常に有効に保つこと、主要な通路には表示をすることを事業者に求めています。
ラインを引いても、通路に仮置きの荷やパレットがはみ出していれば人は走行場所を歩くことになるため、置き場の決まりとセットで考える必要があります。
通路に物が置かれる状態が続く職場では、置き場の表示と点検の仕組みから見直すことになります。この点は5Sが定着しない原因と対策の考え方がそのまま使えます。
新設や大きな配置替えの機会があるなら、工場レイアウト設計の段階で、物の流れと人の動線が交差しない配置を検討しておくと、後からの対策が軽くなります。
交差点・出入口・死角を管理する
通路を分けても、人が走行場所を横切る地点は残ります。建屋の出入口、通路の交差点、ラックの端、シャッターの前後などです。ガイドラインは、通路の死角部分へのミラー設置と、その周知を挙げています。
横断する場所を決めて表示する、車両側に一時停止を義務づける、出入口は人用と車両用を分ける、といった対応が一般的です。横断箇所を絞ると、運転者が注意を向ける地点も絞られます。
作業エリアへの立入禁止と誘導者
積み降ろしをしている場所そのものには、人を入れないのが原則です。
労働安全衛生規則第151条の7は、運転中のフォークリフトやその荷に接触するおそれのある箇所について定めています。事業者には、立入禁止を表示などの方法で行うことが義務づけられています。
誘導者を配置して誘導させる場合は例外とされ、その場合は一定の合図を定めます(第151条の8)。
2025年4月に施行された省令改正で、こうした立入禁止の対象は自社の労働者だけでなく、その場所で作業に従事する人全体に広がりました。
厚生労働省の資料は、一人親方、他社の労働者、資材搬入業者などを例に挙げています。構内に入る運送会社のドライバーや協力会社の作業者にも、立入禁止の範囲が伝わる表示が必要です。
場所で分けきれないときの考え方
通路幅に余裕がない、ピッキングと補充が同じ棚で行われる、といった理由で分離しきれない職場もあります。
その場合は、フォークリフトが入る時間帯と人が作業する時間帯を分ける、区画ごとに「車両作業中は人が入らない」運用にする、という分け方が候補になります。
定型の搬送が多い区間では、搬送の方法自体を変える選択肢もあります。AGVやAMRによる工場内搬送に置き換えれば、フォークリフトの走行は減ります。
ただし無人搬送車にも人との接触リスクと安全規格があり、置き換えればリスクがなくなるわけではありません。
法令で決まっていること|資格・作業計画・点検

フォークリフトについては、労働安全衛生法と労働安全衛生規則(以下、安衛則)に、事業者が行うべきことが具体的に定められています。
先に挙げた災害事例でも、資格、作業計画、検査が守られていなかったことが原因に挙げられています。主なものを条番号とあわせて確認します。
運転資格は最大荷重1トンが境目
フォークリフトの運転に必要な資格は、車両の最大荷重が1トン以上か未満かで分かれます。1トン以上は就業制限業務にあたり、技能講習を修了した人でなければ運転させられません。1トン未満は、事業者が特別教育を行う必要があります。
最大荷重1トンを境に、必要な資格と根拠条文が変わります。
※いずれも道路上を走行させる運転は対象外で、公道を走るには道路交通法上の運転免許などが別に必要です。特別教育の時間は安全衛生特別教育規程第7条による。
技能講習を修了していない人を1トン以上のフォークリフトの運転に就かせた場合や、特別教育を行わなかった場合は罰則があります。法第119条で、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になります。
資格の種類や取り方は製造業で役立つ資格一覧でも紹介しています。
資格があれば事故が起きないわけではありません。法第60条の2は、危険な業務に現に就いている人への安全衛生教育を事業者の努力義務としています。
応援者や派遣社員、運転から長く離れていた人が乗る場面では、資格の有無に加えて、自社の構内ルールを伝える機会を設けておくことが大切です。
作業計画・作業指揮者・制限速度
安衛則第151条の3は、フォークリフトを使って作業をするとき、あらかじめ作業計画を定め、その計画に沿って作業を行うことを求めています。
計画は、場所の広さや地形、車両の種類と能力、荷の種類と形状に合ったもので、運行経路と作業の方法を示し、関係する労働者に周知しなければなりません。
あわせて、作業の指揮者を定めて計画に基づく指揮を行わせることが定められています(第151条の4)。地形や地盤の状態に応じた制限速度を定めて守ることも求められます(第151条の5。最高速度が時速10km以下の車両を除く)。
ガイドラインは、制限速度や安全通路といった構内のルールを、作業者の見やすい場所に掲示することも挙げています。
毎日同じ作業をしている職場では、作業計画が形だけの書類になりがちです。運行経路の図が現在のレイアウトと合っているか、歩行通路や立入禁止の範囲が書き込まれているかを、レイアウト変更のたびに見直すと計画が生きたものになります。
3種類の点検・検査
車両の状態を保つための点検・検査は、頻度の異なる3種類が義務づけられています。
毎日・毎月・毎年の3つを組み合わせて、車両の状態を保ちます。
※検査項目は条文の要約です。詳細は労働安全衛生規則を確認してください。
年次の検査は「特定自主検査」と呼ばれ、一定の資格を持つ人か、登録を受けた検査業者でなければ実施できません(法第45条第2項)。検査を終えた車両には、実施した年月が分かる検査標章を見やすい場所に貼ります。
先に紹介した転倒の死亡事例では、タイヤがすり減って溝がない状態で、月次・年次の検査も行われていませんでした。作業開始前点検は、チェック表に印を付けるだけの作業になりやすい項目です。
異常を見つけたときに誰に伝え、車両を止める判断を誰がするのかまで決めておくと、点検が機能しやすくなります。
用途外使用の禁止など、使い方のルール
使い方についても、安衛則に具体的な定めがあります。事故の型と結びつきの強いものを挙げます。
- フォークやフォークで支えている荷の下に人を立ち入らせない(第151条の9)
- 偏荷重が生じないように積載する(第151条の10)
- 運転位置から離れるときは、フォークを最低降下位置に置き、原動機を止めてブレーキを確実にかける(第151条の11)
- 乗車席以外の箇所に人を乗せない(第151条の13)
- 荷のつり上げ、人の昇降など主たる用途以外に使わない(第151条の14)
- 強度が足りない、著しく損傷したパレットを使わない(第151条の19)
- 許容荷重を超えて使用しない(第151条の20)
第151条の13と第151条の14には、墜落防止の措置を講じたときや、労働者に危険を及ぼすおそれのないときを除くというただし書きがあります。
ただし、フォークに載せたパレットを足場代わりにする使い方は、まさに墜落・転落の死亡事例で繰り返されている形です。
「少しの間だけ」という判断をさせないよう、高所の作業方法をあらかじめ決めておくことが欠かせません。
職場全体の安全衛生管理の枠組みについては、次の記事で整理しています。

運転者と歩行者、それぞれのルールを決める
設備と計画を整えたうえで、人の行動に関わるルールを決めます。ガイドラインは、フォークリフトを使って荷役作業をする人に守らせる事項として11項目を挙げています。その中には、運転者だけでなく構内を歩く人が守ることも含まれています。
運転者だけでなく、周囲を歩く人と管理する側のルールもそろえます。
※厚生労働省「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン」の遵守事項と、職場のあんぜんサイトの災害事例の対策をもとに整理。
シートベルトについては、2026年9月時点の安衛則のフォークリフトに関する条文(第151条の2〜第151条の26)に、装備や着用を定めた規定はありません。フォークリフト構造規格も同様です。
ただし、着用しなくてよいという意味ではありません。ガイドラインは、シートベルトを装備している車両では着用することを遵守事項に挙げています。
日本産業車両協会の資料によると、陸上貨物運送事業労働災害防止協会の検討会は2022年の報告書で、シートベルト使用の義務化を提言しました。
同協会の労働災害防止計画(令和5〜9年度)でも、着用の徹底が重点対策に入っています。同じ資料は、転倒や転落で運転者が投げ出される死亡災害が毎年数件起きているとしています。
着用していれば車外に放り出されるのを防げた可能性がある、という指摘です。装備車では、着用を構内ルールとして徹底してください。
ルールは、決めただけでは守られません。前方が見えないほど荷を積まなければ間に合わない作業量、通路を歩くと遠回りになる動線など、守れない理由が残っていないかを現場で確かめる必要があります。
警報装置や検知システムは補助として使う
回転灯や走行ブザー、床に光を投影するライトは、車両の接近を周囲に知らせる手段です。事例の対策でも、警告音や回転式警告灯の設置が挙げられています。
花巻労働基準監督署の資料は、構内の騒音や照度といった作業環境に合った警報装置を設けることを挙げています。
騒音の大きい職場や、警報が常に鳴っている場所では、周囲の人に伝わっているかを現場で確かめておく必要があります。
近年は、カメラやセンサーで人を検知する運転支援システムも市販されています。
たとえば豊田自動織機が2021年に発表したシステムは、後方の人と物を見分けて検知し、ブザーとランプで運転者に知らせ、走行速度や発進を制御します。
同社は、動力を遮断して徐々に減速する仕組みであり、ブレーキで自動停止する機能ではないと説明しています。
こうした装置は、分離しきれない場所に残るリスクを下げるための補助です。装置を入れたことを理由に、歩車分離や立入禁止を緩めることは避けてください。検知範囲や作動条件をメーカーの資料で確認したうえで、図4の下の段の対策として位置づけてください。
対策を進める6つのステップ
ここまでの内容を、実際に職場で進める順番に並べ直します。一度にすべてを行う必要はなく、人と車両が最も交わっている場所から着手するのが現実的です。
現状の把握から始め、設備、ルール、点検の順に固めていきます。
※進め方の一例です。事業場の規模や作業内容に合わせて調整してください。
ステップ1〜3:現状を把握して優先順位を決める
フォークリフトによる休業災害が何年も起きていない事業場では、判断材料はヒヤリハットと物損になります。
柱やラックのこすり傷、シャッターのへこみは、そこで車両が思いどおりに動けていないことを示す手がかりです。人が当たっていてもおかしくなかった場所として扱います。
報告が少ない職場では、運転者への聞き取りや、構内を歩いて危ない場所に印を付ける方法が使えます。報告を集める工夫はヒヤリハット報告が集まらない原因と対策で詳しく扱っています。
洗い出した場所は、リスクアセスメントの手順で優先順位を付けます。製造業の事業者には、労働安全衛生法第28条の2により、危険性の調査とその結果に基づく措置が努力義務とされています。
見積りの方法と低減措置の決め方は、次の記事を参考にしてください。

ステップ4〜5:設備の対策を先に、ルールと教育を後に
対策は図4の上から順に検討します。ラインや柵、ミラーといった設備面を先に決め、それでも残る部分をルールと教育で補う順番です。ルールを先に作ると、守れない原因が設備側に残ったままになりやすいためです。
教育では、運転者だけを集めないことがポイントです。運転者だけでなく周囲で作業する人も被災するため、歩行者側のルールは全員に伝える必要があります。新しく入った人、派遣社員、構内に入る運送会社や協力会社の人への伝え方も決めておきます。
荷の受け渡しでは、自社の従業員が運転するフォークリフトで、運送会社のドライバーが被災することもあります。
ガイドラインは荷主等に対し、自社の労働者への安全教育、構内ルールの掲示、作業計画の作成に必要な情報の提供などを求めています。
積み降ろし場所の立入範囲と待機場所は、相手の会社と事前に取り決めておくと混乱が減ります。
ステップ6:守られているかを確かめ、変更のたびに見直す
対策は、時間がたつと元に戻りがちです。通路に荷が置かれる、柵が外されたままになる、ミラーの向きがずれる、といった変化を巡視で拾います。
安全管理者には、作業場を巡視して危険のおそれがあれば直ちに必要な措置を講じることが求められています(安衛則第6条)。
生産品目の変更や増産で置き場や動線が変わったときは、作業計画と運行経路図を見直す機会です。図面と現場が合っているかを定期的に確かめる仕組みにしておくと、計画が古いまま使われ続けることを防げます。
まとめ
- 2025年のフォークリフト災害は死傷者1,872人・死亡者19人で、製造業が約3割を占める
- 事故の型は「激突され」と「はさまれ・巻き込まれ」で約6割。周囲の人が当てられる、はさまれる、ひかれる災害を含む
- 原因は、人と車両の混在、死角、計画とルールの不備、車両や荷の状態の4つに分けて考える
- 対策は歩車分離を軸に、なくす・分ける・交わる地点を管理する・気づかせるの順で検討する
- 資格、作業計画、作業指揮者、制限速度、3種類の点検は法令上の義務。条文に沿って運用を確かめる
フォークリフトの事故対策に、これだけやれば十分という決め手はありません。人と車両が交わる場所を一つずつ減らし、残った場所を計画とルールで管理していく積み重ねになります。
安全の責任を負う立場の仕事は工場長の仕事と責任範囲で、現場を担う職種については製造・オペレーションの職種ページで関連記事をまとめています。
安全衛生や現場管理に関する記事は、工場長・マネジメントの職種ページからもご覧いただけます。
出典
出典・参考資料(17件)を開く出典・参考資料を閉じる
- フォークリフト災害の死傷者数・死亡者数、事故の型別・業種別の内訳(令和7年確定値):厚生労働省 職場のあんぜんサイト「労働災害統計(確定値)」
- 全産業・製造業の死亡者数と死傷者数:厚生労働省「令和7年の労働災害発生状況を公表」(令和8年5月27日)
- フォークリフト災害の年別推移(2022〜2025年):日本産業車両協会「2025年(1~12月)フォークリフトに起因する労働災害の発生状況(確定値)」、同 2024年、同 2023年
- 事故の型の定義:陸上貨物運送事業労働災害防止協会「事故の型分類の解説」
- 就業制限・特別教育・定期自主検査・罰則:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」、「労働安全衛生法施行令」
- 作業計画、作業指揮者、制限速度、接触の防止、用途外使用、点検・検査、通路:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」
- 特別教育の科目と時間:厚生労働省 法令等データベース「安全衛生特別教育規程」
- 走行場所と歩行通路の区分、遵守事項、荷主等の実施事項:厚生労働省「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン」(平成25年3月25日付け基発0325第1号)、同ガイドライン(令和5年3月28日付け基発0328第5号による改正後)
- シートベルトの法令上の扱い、義務化の提言、着用徹底の呼びかけ:日本産業車両協会「フォークリフトの安全のための厚生労働省、協賛団体の取組み紹介」(2023年)、厚生労働省 法令等データベース「フオークリフト構造規格」
- 視界の限界による接触災害:厚生労働省「フォークリフト運転技能講習 補助教材(日本語)」
- 立入禁止等の対象の拡大(2025年4月施行):厚生労働省リーフレット「2025年4月から事業者が行う退避や立入禁止等の措置について」
- 管内の災害分析(バック走行時の割合)と災害事例、対策のポイント:岩手労働局 花巻労働基準監督署「フォークリフトによる労働災害防止を徹底しましょう!」(2024年12月)
- 特定自主検査の実施者・検査標章・記録:建設荷役車両安全技術協会「特定自主検査」
- 災害事例(激突され):職場のあんぜんサイト「フォークリフトにパレットを前方が見えなくなる程高く積み前進走行していた時、歩行中の被災者に接触し負傷させた」
- 災害事例(墜落・転落):職場のあんぜんサイト「フォークリフトのパレット上で作業中、墜落し死亡」
- 災害事例(転倒):職場のあんぜんサイト「フォークリフトを運転中、曲り角で転倒し、運転者が死亡」
- 検知システムの例:豊田自動織機 ニュースリリース(2021年8月26日)
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