AGVとAMRの違い|工場内搬送で選ぶ基準と導入費用の目安

部品箱を載せた台車を運ぶ自律走行搬送ロボットと工場の通路

工場内で荷物を運ぶ作業を自動化するなら、AGVとAMRのどちらを選ぶべきか。どちらも無人で荷物を運ぶ車両ですが、違いの中心は床の目印に沿って走るか、自分で位置を推定して走るかという走り方にあります。

AGV(無人搬送車)は床に貼った磁気テープなどをたどり、AMR(自律走行搬送ロボット)はセンサーで周りを測って地図をつくりながら走ります。運ぶ経路を長い期間変えない現場では、AGVのほうが合理的なことも多くあります。

この記事では、AGVとAMRの違いを比較表で整理します。そのうえで、走行方式、車両の形、選ぶときの判断軸、導入費用の内訳、安全面の要件、導入の進め方の順に、工場内搬送の実務に沿って説明します。

目次

AGVとAMRの違いを一覧で比較

まず全体像をつかむために、両者の違いを表にまとめます。細かな仕様はメーカーや機種によって異なりますが、選定時に効いてくる差はおおむね次のとおりです。

図1:AGVとAMRの違い

差の出発点は走行方式です。そこから、変更のしやすさや費用の構造が分かれます。

AGV(無人搬送車)
AMR(自律走行搬送ロボット)
走り方
床の磁気テープや誘導線など、経路に沿って設置した誘導体をたどる
センサで周囲を計測して地図をつくり、自己位置を推定して走る
ルート変更
誘導体の貼り替え・敷設工事が必要
地図上の設定変更で対応しやすい
障害物への対応
経路上で停止し、取り除かれるまで待つのが基本
機種によっては回避ルートを取って走り続ける
動きの予測しやすさ
毎回同じ線上を走るため、周囲の人が動きを読みやすい
回避時などに走行位置が変わるため、通路幅に余裕が要る
本体価格の傾向
磁気テープ式などは比較的安価な機種が多い
レーザSLAM式は高価になりやすい
向く現場
ルートが固定され、長く変わらないライン間搬送
レイアウト変更が多い、人と通路を共有する現場

※JIS D 6801ではどちらも「無人搬送車」に含まれます。AGV・AMRは業界での呼び分けで、境界があいまいな機種もあります。

AGVとは

AGV(Automatic Guided Vehicle)は、床に貼った磁気テープや埋め込んだ誘導線などに沿って走る無人搬送車です。日本では1965年に、床面に埋め込んだ電磁誘導線に沿って台車をけん引する方式で初めて導入されました。

決まった線の上を決まった速度で走るため、動きが単純で予測しやすく、止まる位置もそろえやすいのが持ち味です。反面、ルートを変えるには誘導体の貼り替えが必要で、経路上に物が置かれると止まって待つことになります。

AMRとは

AMR(Autonomous Mobile Robot)は、環境地図をつくりながら自分の位置を推定して走る搬送ロボットです。位置の推定には、レーザセンサやカメラで測った周囲の壁や柱までの距離を使います。

走行経路に誘導体を設置しなくてよい点が、AGVとの決定的な違いとされています。

行き先やルートはソフトウェア上の地図で指定するため、レイアウト変更や搬送先の追加に床工事なしで対応しやすくなります。機種によっては、通路の障害物を検知して迂回することもできます。

規格上はどちらも「無人搬送車」

JIS D 6801は無人搬送車を「一定の領域において、自動で走行し、荷など人以外の物品の搬送を行う機能をもつ車両」と定義しています。この定義には誘導方式の限定がなく、AMRも走行方式の一つである「自律移動式」の無人搬送車として扱われます。

安全規格も同様で、国際規格ISO 3691-4は無人の産業車両とそのシステムを対象とし、誘導テープで走るけん引車も自由に走るAMRも範囲に含みます。

業界団体の資料でも、無人搬送車といわゆる搬送ロボットとの境界はあいまいになっていると説明されています。呼び名よりも、走行方式と運用条件で比べるほうが選定を誤りにくくなります。

走行方式の違い|経路誘導式と自律移動式

AGVとAMRの差を正確につかむには、JIS D 6801の走行方式の分類を見るのが近道です。大きく「経路誘導式」と「自律移動式」に分かれ、それぞれにいくつかの方式があります。

図2:無人搬送車の走行方式の分類(JIS D 6801)

一般にAGVと呼ばれるのは経路誘導式、AMRと呼ばれるのは自律移動式です。

無人搬送車の自動走行方式荷など人以外の物品を、一定の領域で自動搬送する車両
大きく2つに分かれる
経路誘導式(主にAGV)経路に沿って置いた誘導体をたどる
自律移動式(主にAMR)自己位置推定で、誘導体なしに目的地へ
代表的な方式
電磁・磁気・光学・画像誘導床内の誘導線、発磁体、床上の磁気テープや反射テープ、カメラで読むラインなど
レーザSLAM・画像SLAM・追従式レーザや距離計測カメラで地図作製と自己位置推定。人や先行車を追う追従式も自律移動式の一種

※床のQRコードやマーカーで位置を補正する方式など、両者の中間的な機種もあります。

経路誘導式

経路誘導式は、経路に沿って設置した誘導体で車両を導く方式です。

JISでは、床内に埋めた誘導線の磁界を検知する電磁誘導式、床の発磁体を磁気センサで読む磁気誘導式が定められています。ほかに、床上のテープを光学的に読む光学誘導式、カメラでラインテープを認識する画像誘導式などもあります。

工場で目にすることが多いのは、床に磁気テープを貼る方式です。施工が比較的容易で、テープを貼り替えればルートも変えられます。

ただしフォークリフトや台車の往来でテープが傷む、破れやめくれで読み取りが不安定になるといった保守は避けられず、床の状態が走行品質を左右します。

自律移動式(SLAM)

自律移動式は、車両自身の自己位置推定機能と走行制御機能で、軌道や誘導体なしに目的地へ向かう方式です。

代表的なのがレーザSLAM式で、レーザレンジファインダで周囲までの距離を測って環境地図をつくり、その地図の上で自分の位置を割り出します。

SLAMはSimultaneous Localization and Mappingの略で、地図作製と位置推定を同時に行う技術を指します。

地図は壁や柱、設備の輪郭をもとにしているため、通路に置かれた台車や段ボールが日によって変わる現場では、位置推定が不安定になることがあります。広い空間で目印が少ない場所も苦手です。

停止位置の精度が必要な工程では、マーカーを併用する機種もあります。

追従式と中間的な方式

JISでは、特定の人や先行する車両に一定の距離を保って付いていく追従式を、自律移動式の一種と位置づけています。ピッキング作業者の後ろを台車が付いていく使い方が典型です。

また、床に一定間隔で貼ったコードを読んで位置を補正しながら走る方式や、磁気テープとSLAMを切り替えられる機種も出ています。AGVかAMRかの二択ではなく、工程ごとに必要な精度と柔軟性から方式を選ぶという見方が実務では役に立ちます。

車両の形と運び方

カゴ台車の下に潜り込んでけん引する低床形の無人搬送車

走行方式と並んで選定に効くのが、荷をどう運ぶかという車両の形です。JIS D 6801は無人搬送車を形状で3つに分けており、AGVにもAMRにも同じ分類が当てはまります。

図3:無人搬送車の3つの形と2024年の納入件数比率

近年は、荷を載せて運ぶ台車タイプの比率が上がっています。

53.0%積載形(台車)荷を車両の上に載せて運ぶ。コンベヤやリフトを載せて移載まで自動化する機種もある
38.3%けん引形台車やトレーラを引いて運ぶ。列車のように連結する型と、台車の下に潜り込んで引く型がある
8.7%フォークリフト形積載形の一種で、フォークとマストを備え、パレットを持ち上げて運ぶ
2024年の無人搬送車システム納入は762システム・2,906台。前年の最多はけん引形(50.4%)だったが、2024年は台車が53.0%と過半を占めた。

※比率は日本産業車両協会の集計による納入件数ベース。

日本産業車両協会の集計では、2024年の無人搬送車システムの納入は762システム、2,906台でした。

車両タイプ別の件数では台車が53.0%、けん引車が38.3%、フォークリフトが8.7%で、前年に半数を占めていたけん引車を台車が上回りました。

工場内搬送でよく使われるのは、部品を入れたカゴ台車の下に低床の車両が潜り込み、台車ごと引いていく形です。既存の台車をそのまま使えるため、工程側の変更が小さく済むのが利点です。

一方、パレット単位の重量物を棚やトラック荷台とやり取りする場合は、フォークリフト形が候補になります。有人のフォークリフトと同じ通路を使う場合の安全対策はフォークリフト事故の防止策も参考になります。

導入先は製造業が中心で、2022〜2024年の国内向け件数では次の業種が上位を占めます。

  • 自動車・自動車部品製造:34.5%
  • 一般機械製造業:17.8%
  • 電気機械製造業:10.4%

部品を保管場所から組立ラインへ運ぶ用途が、無人搬送車の代表的な使われ方です。

選ぶ基準|5つの判断軸

AGVとAMRのどちらが向くかは、搬送する物や距離よりも、現場の変わりやすさと人の動きで決まることが多くなります。まず大まかな当たりを付けるために、次の順で問いを立てると整理しやすくなります。

図4:AGVかAMRかを当たり付けする3つの問い

上から順に答え、最初に「はい」となった段で候補を絞ります。

Q1. 搬送ルートや搬送先が、1年以内に変わる見込みがあるかライン増設、機種切替に伴うセル組み替え、倉庫の棚替えなど
はいAMRを軸に検討
いいえ ↓
Q2. 作業者や台車、フォークリフトと同じ通路を頻繁に通るか通路に一時置きの物が出やすい現場も含む
はいAMRを軸に、通路幅と区域分けを検討
いいえ ↓
Q3. 決まった区間を、決まった順で繰り返し運ぶかライン間の定期便、工程間の往復搬送など
はい経路誘導式AGVが合理的

※あくまで当たり付けです。荷の重さ、移載方法、台数、床の状態で結論が変わるため、次の5つの判断軸で確認します。

当たりが付いたら、判断軸ごとに条件を確かめます。どの軸でAGV寄り、AMR寄りになるかを並べると次のようになります。

図5:判断軸ごとのAGV寄り・AMR寄り

5つの軸のうち、どちらに寄る条件が多いかで方向性が見えてきます。

AGV寄りの条件
判断軸
AMR寄りの条件
数年単位で変わらない
ルートの変更頻度
年に何度も変わる、搬送先が増える
搬送専用通路を確保できる
人との混在
人や台車と通路を共有する
重量物、停止位置をそろえた移載
荷と移載
中軽量の部品箱や台車、人手で荷を受け渡す
少数台で単純な往復
台数と連携
多数台を交通整理し、上位システムから指示
通路が狭い、周囲の物が日々変わる
床と環境
壁や柱など目印が安定し、通路幅に余裕がある

※同じ工場でも、工程によって答えが分かれることがあります。

ルートの変更頻度

最も効いてくるのが、ルートがどれだけ変わるかです。機種切替のたびにセルの配置を組み替える工場や、倉庫の棚割りを季節で変える現場では、誘導体の貼り替え工事と停止期間が積み重なります。

逆に、成形機から検査工程までの定期便のように何年も同じ区間を往復する搬送なら、AMRの柔軟性は使われないまま費用だけが乗ることになります。

搬送ルートを検討する際は、工場レイアウト設計の段階で動線を固めておくと、どちらの方式でも手戻りが減ります。

人との混在

経路誘導式は、経路上に人や物があると手前で止まって待ちます。人の往来が多い通路では停止が頻発し、搬送が予定どおり進まなくなります。AMRは迂回できる機種があるため、混在環境で止まりにくいのが強みです。

ただし、迂回するため走行位置は毎回同じではありません。周囲の作業者から見ると動きが読みにくくなる面もあるため、通路幅に余裕を持たせ、走行エリアを床表示で示すといった配慮が必要です。

荷の重さと移載

運ぶ物の重さと、積み下ろしをどうするかも選定を左右します。パレットを棚やラインのコンベヤと自動でやり取りするなら、停止位置と高さをそろえる必要があり、経路誘導式やフォークリフト形の実績ある機種が選ばれやすくなります。

一方、部品箱を載せたカゴ台車を運び、荷の受け渡しは人が行うという使い方なら、停止位置の要求は緩くなります。この場合は既存の台車に潜り込める低床形が扱いやすく、AMRでもAGVでも選択肢があります。

ロボットアームで荷を積み下ろす構成まで考えるなら、産業用ロボットの基本構成も踏まえて機器を組み合わせます。

台数と上位システムとの連携

1〜2台で決まった往復をするだけなら、単体の設定で運用できます。台数が増えると、交差点での優先順位、充電の順番、渋滞の回避といった交通整理が必要になり、運行管理システムの出来が稼働率を左右します。

生産指示に合わせて自動で搬送を呼ぶなら、MESなどの生産管理システムとの連携も検討対象です。車両の性能より、呼び出しと割り当ての仕組みで効率が決まる場面も多いため、見積もりの段階で連携範囲を確認しておきます。

床と環境

床の段差、傾斜、溝、濡れ、油汚れは、どちらの方式でも走行に影響します。磁気テープは摩耗やはがれが課題になり、SLAMは周囲の物が日々入れ替わる環境や、目印の少ない広い空間で位置を見失いやすくなります。

導入前に実際の通路を試験走行させ、床と周辺環境で問題が出ないかを確かめるのが確実です。自動ドアやシャッター、エレベータを通る経路があれば、それらとの連動も早めに確認しておきます。

導入費用の目安と内訳

無人搬送車の価格はメーカー各社とも要見積もりが基本で、公開価格は多くありません。目安としては1台あたり数百万円規模からで、複数台の運用や自動倉庫・上位システムとの連携を含む大規模なシステムでは、総額が数千万円規模になることもあります。

傾向としては、磁気テープ式や追従型が比較的安価で、レーザSLAM式のAMRや無人フォークリフトは高価になりやすいとされます。ただし、比べるべきは本体価格ではなく、次のような周辺費用を含めた総額です。

図6:導入費用の主な内訳

本体のほかに、運用と安全のための費用がかかります。

車両本体台数×単価。荷台のリフトやコンベヤなど移載装置のオプションで大きく変わる
運行管理システム複数台の交通整理、呼び出し、上位システムとの連携。台数が増えるほど比重が増す
充電設備自動充電ステーションや予備バッテリ。稼働時間と充電時間の組み立てで数が決まる
安全対策・設備改修床表示、警告灯、区域のガード、自動ドアやシャッターとの連動、床の補修
設置・調整費AGVは誘導体の敷設、AMRは地図作成とルート設定。試験走行と立ち上げ支援も含む
保守・運用費定期点検、バッテリ交換、ソフト更新。誘導テープの補修もここに入る

※見積もりを比べるときは、項目ごとに含まれる範囲がそろっているかを確認します。

本体価格の例

公開されている価格の手がかりとして、中小企業省力化投資補助金のカタログに登録された無人搬送車があります。補助金情報サイトに掲載された価格をもとに大まかな幅を示すと、次のようになります。

追従型の運搬ロボットから、リフト付きの低床AGVまで幅があります。

図7:補助金カタログ登録の無人搬送車の価格帯(目安)

同じ「無人搬送車」でも、機能と積載量で価格は数倍変わります。

小型・追従型の運搬ロボット
100万円前後〜300万円台
台車・パレットを運ぶ搬送ロボット
300万〜500万円程度
リフト付き低床AGVなど
600万〜700万円程度

※補助金情報サイトに掲載された登録製品の価格から作成したおおよその幅(2026年9月確認)。実際の価格は保証期間やオプション、台数で変わり、運行管理システムや工事費は別になる場合があるため、販売事業者の見積もりで確認します。

この価格帯を見ると、1台だけなら数百万円、複数台と運行管理まで含めると総額が1,000万円を超えることもあると考えておくのが現実的です。

AGVは本体が安くても誘導体の敷設と補修がかかり、AMRは本体が高くても床工事が少なく済むため、総額の差は現場の条件で縮まったり広がったりします。

補助金の使いどころ

中小企業であれば、中小企業省力化投資補助金のカタログ注文型が使える場合があります。補助率は2分の1以下で、補助上限は従業員数に応じて次のとおりです。

  • 従業員5人以下:200万円(賃上げ要件を満たすと300万円)
  • 6〜20人:500万円(同750万円)
  • 21人以上:1,000万円(同1,500万円)

カタログ型は登録済みの製品が対象で、無人搬送車は対象カテゴリの一つになっています。申請の流れや対象経費の考え方は省力化投資補助金の申請手順で詳しく整理しています。

投資回収の考え方

投資判断では、搬送にかかっている人の時間をどれだけ置き換えられるかを数字にします。

仮に、1日あたり延べ6時間の運搬作業を置き換え、人件費を1時間2,000円、年間稼働を250日とすると、年間の削減額は約300万円です。総額800万円なら、単純回収は3年弱という計算になります。

この試算で見落としやすいのが、空いた人の時間を別の付加価値作業に振り向けられるかどうかです。搬送の合間に行っていた段取りや補充が残ると、人は減らせません。

搬送の自動化は、作業の割り振りを見直す省人化の取り組みとセットで考えると効果が出やすくなります。

安全面で押さえること

通路の交差部で作業者の横断を待つ搬送ロボット

無人搬送車の安全要求は、国際規格ISO 3691-4と、それに整合させて2022年に改正されたJIS D 6802「無人搬送車及び無人搬送車システム―安全要求事項及び検証」で定められています。

AGVかAMRかを問わず、同じ考え方が当てはまります。

中心になるのが経路内の人の検出です。車両はバンパのような圧力検知装置か、レーザスキャナなどの電気的検知保護設備を備え、経路上で止まっている人に車体や荷が触れる前に停止することが求められます。

検出範囲は、走行方向で車両と荷の最大幅を超えていなければなりません。

人が検出範囲から離れたあとは、警告を出してから自動で再始動してよいとされ、バンパで止まった場合は少なくとも2秒の猶予を置きます。非常停止装置は、車両の前後と両側面から見えて操作できる位置に付ける必要があります。

一方で、現行の規格は人の検知を必須としていますが、他の機械や車両との衝突防止までは規定していません。無人搬送車同士の干渉や、フォークリフトとの交差、自動ドアやシャッターとの連動は、使う側の現場で対策を決める必要があります。

この点について日本産業車両協会は、旧JISにあった「製造業者と使用者が協議して現場の安全を確保する」考え方を、協会規格JIVAS A10として引き継いでいます。

そこでは、走行と連動する自動ドアやエレベータとのインタロック、制限区域や隔離区域を高さ2.1m以上の固定式ガードで囲うことなどが示されています。

導入時は、走行ルートの交差部、荷の受け渡し位置、充電場所ごとに危険源を洗い出し、リスクアセスメントで対策を決めておきます。

人と同じ空間で動く機械という点では、協働ロボットの導入手順と共通する考え方も多くあります。なお、2025年からは厚生労働省の労働災害統計の起因物に「無人搬送車」が加わっています。

導入の進め方

方眼紙に手描きした搬送ルートの検討図とメジャー

AGVでもAMRでも、導入の流れは大きく変わりません。失敗の多くは車両選びそのものより、搬送の実態を測らずに台数や方式を決めてしまうことから起こります。

図8:搬送自動化の導入6ステップ

現状の把握から本稼働まで、前半の調査で方式と台数が決まります。

検討
01搬送の実態を測る何を、どこからどこへ、1日何回、何kg運んでいるかを記録する
02対象区間を絞る回数が多く、距離が長く、ルートが安定した区間から優先する
03方式と台数を決める判断軸でAGVかAMRかを選び、搬送回数と速度から台数を出す
実行
04試験走行する実際の通路で走らせ、床・通路幅・位置推定・停止精度を確認する
05安全と周辺を整えるリスクアセスメント、床表示、区域分け、建物設備との連動を仕上げる
06段階的に本稼働1区間から始め、稼働率と停止要因を見ながら区間と台数を広げる

※補助金を使う場合は、交付決定前に購入した製品は補助対象外(事前着手は不可)になるため、申請の時期を工程に組み込みます。

搬送の実態を測る

最初に行うのは、搬送の現状を数字で押さえることです。何を、どこからどこへ、1日に何回、どれくらいの重さで運んでいるかを、1〜2週間ほど記録します。担当者の感覚では、運搬の回数や待ち時間はたいてい過小に見積もられています。

記録がそろうと、回数が多く距離の長い区間ほど自動化の効果が大きいことが見えてきます。そこからルートの安定度と人の往来を確認すれば、方式の当たりも自然に付きます。

試験走行と段階的な立ち上げ

方式を決めたら、可能な限りデモ機を借りて実際の通路で走らせます。カタログの仕様では分からない床の段差、通路の混み具合、地図の安定性といった問題は、現場で走らせて初めて表に出ます。

本稼働は1区間から始め、止まった回数と理由を記録して潰していくのが確実です。停止の原因が車両ではなく通路の一時置きや運用ルールにあることも多く、現場の置き場ルールを整えるだけで稼働率が上がる場合もあります。

まとめ

この記事のまとめ
  • AGVもAMRもJISでは「無人搬送車」で、違いの中心は経路誘導式か自律移動式かという走行方式
  • AGVはルート固定の繰り返し搬送に強く、AMRはレイアウト変更や人との混在に強い
  • 選ぶ基準はルートの変更頻度、人との混在、荷と移載、台数と連携、床と環境の5つ
  • 費用は1台数百万円規模からで、運行管理・充電・安全対策・設置調整を含めた総額で比べる
  • 安全はJIS D 6802・ISO 3691-4が基準で、機械同士の衝突や建物設備との連動は現場側で対策する

搬送ロボットの選定は、車両のカタログ比較だけでは決まりません。現場の搬送を測り、変わりやすさと人の動きを見極めることが、AGVとAMRのどちらを選ぶ場合にも出発点になります。

無人搬送車をはじめとする自動化機器を扱う企業についてはFA業界の全体像もあわせてご覧ください。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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