製造業で高校生を採用するには、全国で決まった日程に合わせて準備を進める必要があります。2027年3月卒業予定者の場合、応募書類が届くのは2026年9月5日以降、面接などの選考は9月16日以降です。
学校に求人を申し込むには、ハローワークで確認を受けた求人票が必要です。
高校生の求人倍率(求職者1人あたりの求人の数)は3倍を超えており、生徒に選んでもらう工夫がなければ、応募がないまま秋を迎えることも珍しくありません。
なお、中途採用の求人票の書き方は、別の記事「製造業の中途採用の求人票」でまとめています。
この記事では、2027年3月卒業予定者の日程をもとに、高卒採用のルールと年間スケジュール、数字で見た製造業の立ち位置を整理します。
続けて、準備から入社までの7ステップ、求人票の書き方、地域ごとの応募ルール、選考で守ること、定着の工夫を順に見ていきます。
高卒採用のルールと年間スケジュール
高卒採用には、大卒採用にはない全国共通の日程と手続きのルールがあります。毎年、全国高等学校長協会、経団連・日本商工会議所・全国中小企業団体中央会の経済団体、文部科学省、厚生労働省が協議して決めます。
決まった日程は、両省の通知として各都道府県に示されます。
2027年3月卒業予定者の日程は、2026年2月25日付の通知で示されました。主な日付は次のとおりです。
- 求人の受付:6月1日
- 学校への求人申込み:7月1日
- 応募書類の到達:9月5日以降
- 選考と内定:9月16日以降
この日付は例年ほぼ同じで、毎年この時期に同じ流れが繰り返されます。
求人の受付から選考まで、どの企業も同じ日付に沿って進めます。
※文部科学省・厚生労働省の通知(2026年2月25日)をもとに作成。応募・推薦の方法(一人一社制など)は都道府県ごとに申し合わせます。
なぜ全国一律のルールがあるのか
高校生は在学中に就職活動をするため、企業が自由に動くと授業や学校行事に影響が出ます。そこで、学業を守りながら公平に応募の機会をつくることを目的に、学校とハローワークを通す仕組みが続いてきました。
求人票をハローワークが事前に確認するのも同じ理由です。選考日や労働条件が適正かをチェックし、確認印のない求人票で申し込んだ場合、学校は生徒を推薦しません。
民間の職業紹介事業者を使う場合は例外ですが、その場合も開始日や統一応募用紙の使用を守ることが求められています。
大卒採用との違い
大卒採用に慣れた担当者ほど、同じ感覚で進めてつまずきやすいのが高卒採用です。生徒と企業の間に必ず学校が入ることが、最も大きな違いです。
応募の入口から連絡の取り方まで、進め方が大きく異なります。
※大卒の日程は秋田県学校卒業者就職問題検討会議の申合せ(2025年5月)に記載の日付。
生徒は「高卒就職情報WEB提供サービス」で求人を探せますが、IDは生徒本人にだけ配られ、企業への連絡は必ず学校を通すよう指導されています。企業から生徒へ直接電話やSNSで接触するのは避けるべきです。
数字で見る高卒採用と製造業の求人
厚生労働省によると、2027年3月卒業予定者のハローワーク求人(2026年7月末時点)は約45万9千人です。学校やハローワークの紹介を希望する生徒は約12万7千人で、求人倍率は3.60倍でした。
前年同期より0.09ポイント下がったものの、1人の生徒に3件以上の求人がある状態です。
なかでも製造業の求人は14万6,756人で、産業別で最も多く、全体の約3割を占めます。高校生から見れば、製造業の求人票は学校の求人ファイルの中で「数ある中の1枚」にすぎません。
製造業は高卒求人の最大の出し手で、そのぶん企業同士の競争も激しくなります。
産業別の求人数(上位6産業)
製造業の内訳(上位5業種)
※厚生労働省「高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職状況」(2027年3月卒、2026年7月末現在)。単位は人。
地域差も大きく、都道府県別の求人倍率は東京都13.81倍、大阪府8.21倍、愛知県4.54倍に対し、沖縄県は1.42倍、鹿児島県は1.48倍です。
都市部の工場ほど採用は厳しく、地方でも賃金水準の高い近隣の都市部に生徒が流れる傾向を指摘する声があります。製造業全体の人手不足と採用難が、高卒採用にもそのまま表れているといえます。
求人を出している企業の規模を見ると、従業員29人以下が約14万4千人、30〜99人が約13万9千人と、従業員99人以下の事業所の求人が全体の6割を超えます。
大手と同じ土俵で待っていても応募は集まりにくく、学校との関係づくりや求人票の中身で差をつける必要があります。中途採用を含めた製造業の採用市場の動向とあわせて、自社の採用計画を考えるとよいでしょう。
製造業の高卒採用の進め方7ステップ

公式の日程を押さえたうえで、企業側が実際に動くのは次の7ステップです。勝負は7月1日より前の準備でほぼ決まる、と考えておくと動きやすくなります。
準備・募集・選考・入社前の4段階に分けて進めます。
※STEP 05・06の日付は全国共通。複数応募の開始日などは地域の申合せを確認します。
STEP1 採用計画と受け入れ体制をつくる
最初に決めるのは、どの工程に何人配属し、誰が教えるかです。高卒で入社する社員は18歳前後で、社会人経験がありません。配属先と教育係が決まっていない求人は、学校から見ても不安が残ります。
初任給もこの段階で決めます。最低賃金の引き上げが続いており、地域の相場と自社の賃金体系をあわせて確認しておく必要があります。
人件費全体への影響は2026年度の最低賃金と製造業の人件費で整理しています。交替勤務や夜勤がある職場では、配属後しばらくの勤務形態も考えておきます。
STEP2 求人票を作り、ハローワークに提出する
高卒求人票は、6月1日から事業所を管轄するハローワークで受け付けが始まります。求人申込書を出すと、選考日や労働条件が適正かの確認を受けます。確認を受けた求人票は7月1日から返戻され、これを使って学校に申し込みます。
求人票は生徒・保護者・先生が最初に読む資料です。書き方の要点は後の章で詳しく触れますが、6月中に提出しておけば7月1日にすぐ動けるため、5月までに原稿を固めておくのが理想です。
STEP3 学校への求人申込みと学校訪問
7月1日からは、確認印のある求人票を学校に送り、進路指導の先生を訪ねます。先生は多くの求人票の中から生徒に合う企業を紹介するため、仕事の中身や職場の雰囲気を具体的に話せる企業ほど、生徒に勧めてもらいやすくなります。
どの学校に出すかは、過去の採用実績、通勤圏、学科(機械科・電気科・普通科など)から選びます。卒業生が働いている場合は、その社員の近況を伝えると先生の安心材料になります。
学校訪問は原則として学校に求人申込みをした日以降ですが、学校の了解があればハローワークに申し込んだ日以降でも可能です。
STEP4 応募前職場見学を受け入れる
応募前職場見学は、生徒が応募先を決める前に実際の職場を見る機会です。7〜8月の夏休み期間が中心です。求人票に見学の可否と日程を載せておき、学校を通じて申し込みを受けます。
見学では、配属予定のラインと、休憩室や更衣室まで見せるのが効果的です。年の近い先輩社員と話す時間をつくると、生徒は入社後の自分を想像しやすくなります。ただし、見学は選考ではなく、参加の有無で採否を決めてはいけません。
STEP5 応募書類を受け付ける
9月5日以降、学校から推薦を受けた生徒の応募書類が届きます。書類は全国高等学校統一用紙で、生徒が書く履歴書と学校が書く調査書の2種類です。企業独自のエントリーシートなど、統一用紙以外の応募書類を求めるのは避けます。
STEP6 選考と内定
選考は9月16日から始められます。面接のほか、筆記試験や適性検査を組み合わせることもあり、選考方法は求人票にあらかじめ記載しておきます。結果はできる限り速やかに決め、学校を通じて通知するのが原則です。
不採用の生徒は、次の応募先を探す必要があります。結果の連絡が遅れると、その生徒の就職活動そのものが止まってしまう点を意識しておきましょう。
STEP7 内定後のフォローと入社準備
内定から入社までは約半年あります。この間の連絡も学校を通すのが基本で、内定者懇親会や入社前の書類案内なども学校と相談して進めます。入社前の実習や研修も含め、就業を始められるのは卒業後です。
採用内定の取消しは、生徒の進路に大きな影響を与えるため、厳しく扱われています。やむを得ず取り消す場合はハローワークへの事前通知が必要で、内容によっては企業名が公表されることもあります。

高校生に伝わる求人票の書き方
求人票は項目が決まっているぶん、どの企業も似た見た目になります。差がつくのは、仕事の内容と補足事項の欄に、生徒が働く姿を想像できる言葉で書けているかです。
同じ仕事でも、書き方ひとつで生徒が思い描ける情報量が変わります。
製造スタッフ。機械オペレーター業務全般。未経験者歓迎、丁寧に指導します。
- 何を作る会社か分からない
- 1日の作業がイメージできない
- 「丁寧に指導」の中身がない
自動車のブレーキに使う手のひらサイズの金属部品を、NC旋盤という機械で削る仕事です。材料のセット、機械の操作、測定器での寸法確認までを担当します。最初の3か月は先輩がマンツーマンで教えます。
- 製品と、それがどこで使われるかが分かる
- 作業の流れが具体的
- 教え方と期間が書かれている
※記入例は架空の企業を想定したものです。専門用語は一言で言い換えると伝わりやすくなります。
仕事の内容は「製品・作業・教え方」の3点で書く
製造業の求人票でよく見るのが「製造スタッフ」「オペレーター業務」といった一言だけの説明です。高校生の多くは工場で働いた経験がなく、製造オペレーターの仕事の実態を知りません。
何を作り、1日にどんな作業をし、誰がどう教えるのかまで書くと、先生も生徒に説明しやすくなります。
求人票には、将来見込まれる仕事内容の変更範囲も記載します。数年後に検査や設備保全に移る道があるなら、それも書いておくと将来の姿が伝わります。
賃金・就業時間・休日は誤解のないように
賃金欄には「現行」と「確定」があり、現行は採用予定者の賃金がまだ決まっていないため、その年に採用した新規高卒者の賃金を参考として示すものです。
固定残業代を含む場合は、その時間数と金額を特記事項に明記します。手取りの目安を面接や見学で聞かれたときに答えられるよう準備しておくと、保護者の信頼にもつながります。
交替制や変形労働時間制は、高校生にはなじみのない働き方です。勤務シフトの具体例や、夜勤に入る時期の目安を補足事項に書くと、入社後のギャップを減らせます。交替勤務や休日の実態は製造業の働き方改革の現状も参考になります。
青少年雇用情報と補足事項を活用する
高卒求人票には、若者雇用促進法にもとづく情報欄があります。主な項目は次のとおりです。
- 直近3事業年度の新卒採用者数と離職者数
- 平均勤続年数
- 研修制度の有無
- 月平均の所定外労働時間
- 有給休暇の平均取得日数
先生や保護者はこの欄をよく見ています。離職者がいる場合でも、その後の改善策を補足事項に書けば、隠すより誠実な印象を与えられます。資格取得の支援や寮・社宅の有無も、高校生の応募先選びでは大きな材料です。
一人一社制と複数応募は地域で違う
高卒採用の応募方法は、都道府県ごとの高等学校就職問題検討会議で申し合わせます。長く定着してきたのが、一定の時期までは1人の生徒が1社にしか応募できない「一人一社制」です。
一人一社制は、内定辞退が起こりにくく、企業にとっては計画的に採用できる仕組みです。一方で、生徒が十分に比べずに応募先を決めてしまうとの指摘もあり、2019年の規制改革推進会議の答申などを受けて、各地で見直しの検討が進んできました。
同じ近畿の中でも、府県によってルールが異なります。
※京都府高等学校就職問題検討会議ワーキングチーム報告(2026年2月)、秋田労働局の申合せ公表(2025年5月)をもとに作成。
複数応募が認められる地域では、内定を出しても辞退される可能性があります。内定後のフォローを厚くし、生徒が納得して選べる情報を出しておくことが、一人一社制の地域以上に大切になります。
京都府の報告に収められた近隣の労働局の聞き取りでは、大企業・中堅企業は今のルールで採用できているため現状維持を望む傾向があるとされています。一方、小規模企業は求人を出しても応募がない状況から、複数応募を望む傾向があります。
応募が集まらない企業にとっては、ルールの違いを理解したうえで、見学や学校訪問で生徒の目に留まる機会を増やすことが現実的な対策です。

選考・面接で守るべきルール

高卒採用の選考は、応募者の適性と能力だけで判断することが強く求められます。相手が未成年であり、学校が推薦して送り出していることもあって、質問ひとつが学校や労働局への相談につながることがあります。
統一応募用紙が見直された
全国高等学校統一用紙は2026年3月卒業者から新しい様式になりました。履歴書の主な変更点は次の3つです。
- 性別欄と趣味・特技欄を削除
- 学歴・職歴欄を在籍校欄と職歴欄に分割
- 志望の動機欄を「志望の動機・アピールポイント」欄に変更
学校が書く調査書では、身長・体重・視力などの身体状況欄が削除され、押印も不要になりました。職業上どうしても必要な身体条件がある場合は、特記事項に記載する形です。
履歴書を手書きにするかパソコンにするかは企業が指定できますが、作成方法で有利不利をつけてはいけません。
聞いてはいけない質問
厚生労働省は、就職差別につながるおそれのある14の事項を示しています。面接で雑談のつもりで聞いた家族の職業や愛読書が、この事項に当たることがあります。
面接の質問や応募書類で、これらを把握しないことが公正な採用選考の基本です。
※厚生労働省「公正な採用選考の基本」をもとに作成。
面接官が複数いる場合は、事前に質問項目をそろえておくと安全です。「部活動で工夫したこと」「ものづくりの授業で印象に残ったこと」など、本人の経験と意欲を聞く質問に絞ると、評価の基準もぶれにくくなります。
応募者へのセクハラ防止も義務に
2026年10月1日からは、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置が事業主に義務付けられる予定です。
職場見学や面接、内定者との接触について社内ルールを明確にし、相談窓口を整える必要があります。高校生と接する社員には、事前に注意点を共有しておきましょう。
よくある失敗と入社後の定着

高卒採用は、採用して終わりではありません。厚生労働省の調査では、2022年3月に卒業した高卒就職者の3年以内の離職率は37.9%でした。
製造業は28.6%と産業全体より低いものの、事業所の規模が小さいほど離職率が高い傾向がはっきり出ています。
小さな職場ほど、入社後の支えが定着を左右します。
※厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」(2025年10月公表)。
よくある4つの失敗
高卒採用がうまくいかない企業には、共通するつまずきがあります。
- 7月に入ってから求人票を作る:学校訪問が出遅れ、先生が生徒に紹介する時期を逃します。5月までに原稿を固め、6月に提出します。
- 求人票を毎年使い回す:仕事内容や賃金が実態とずれ、見学で不信感を持たれます。毎年、配属先の現場と一緒に見直します。
- 学校訪問を郵送で済ませる:先生に仕事の中身が伝わりません。卒業生の近況も含め、顔を合わせて説明します。
- 内定後は入社日まで連絡しない:不安が膨らみ、辞退や早期離職の芽になります。学校を通じて、入社前の案内を計画的に送ります。
定着のための工夫
入社後は、配属先に年の近い相談役を置き、教育係とは別に話せる相手をつくると効果的です。仕事を覚える順番と期間を決めておけば、本人も周囲も進み具合を確認できます。最初の1年で「できるようになった」実感を持てるかが、その後の定着を左右します。
18歳前後の社員は、仕事だけでなく一人暮らしやお金の管理にも慣れていません。寮生活の相談、給与明細の見方、有給休暇の取り方など、会社として一度説明しておくと安心感が違います。
学校の先生に入社後の様子を伝えることは、次年度の採用にもつながる大切な関係づくりです。
まとめ
- 高卒採用は、6月1日の求人受付、7月1日の学校への申込み、9月16日の選考開始という全国共通の日程で進む
- 2027年3月卒の求人倍率は3.60倍で、製造業は高卒求人の約3割を占める最大の出し手
- 準備から入社前フォローまでの7ステップのうち、7月1日より前の準備が結果を大きく左右する
- 求人票は「製品・作業・教え方」を具体的に書き、応募ルールは都道府県の申合せを確認する
- 選考は適性と能力だけで判断し、入社後は相談役と育成計画で定着を支える
高卒採用は、学校との信頼関係を毎年積み重ねていく採用です。入社後の育て方は製造業の技能伝承と人材育成、配属先の仕事の幅は製造業の職種一覧もあわせてご覧ください。
出典
出典・参考資料(9件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 採用選考期日・手続き:文部科学省・厚生労働省「令和9年3月新規中学校・高等学校等卒業者の就職に係る推薦及び選考開始期日等並びに文書募集開始時期等について(通知)」(2026年2月25日)
- 求人数・求人倍率・産業別求人:厚生労働省「令和8年度 高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職状況 取りまとめ(令和8年7月末現在)」
- 前年度の求人倍率:厚生労働省「令和7年度 高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況(令和8年3月末現在)」
- 一人一社制と複数応募:京都府高等学校就職問題検討会議「ワーキングチーム報告」(2026年2月5日)
- 秋田県の申合せ・大卒の日程:秋田労働局「令和7年度 秋田県学校卒業者就職問題検討会議における申合せについて」
- 求人票の項目:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「求人票(高卒)の見方のポイント」
- 統一応募用紙の見直し:厚生労働省「全国高校統一応募用紙の見直しについて」
- 就職差別につながるおそれのある14事項:厚生労働省「公正な採用選考の基本」
- 3年以内離職率:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します」(2025年10月24日)
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